キャリア開発とは?企業が個人の成長を支援するための取り組みやメリット

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キャリア開発とは?企業が個人の成長を支援するための取り組みやメリット

キャリア開発とは、企業が自社の従業員を育成する手法の一種です。
 

昨今、組織外でのキャリア支援も含めて再注目されており、実際に多くの企業でキャリア自律を支援するためのキャリア開発の導入や検討がなされています。

一方で、これらの活動が必ずしも成功しているわけではありません。

本記事ではキャリア開発のメリットとリスクに着目し、特に次世代を担う20代から30代におけるキャリア開発を実施する際のメリットと注意点について解説します。

目次

キャリア開発とは?
 ー「キャリア開発」と類似用語の違い
 ー キャリア開発の目的と現状
キャリア開発が再注目される背景
キャリア開発のメリット
キャリア開発でメリットを得られやすい企業
キャリア開発のリスク
キャリア開発を推進するための具体的な方法
 

キャリア開発とは?

「キャリア開発」と類似用語の違い

キャリア開発とは、企業が自社の従業員を育成する手法の一種です。

キャリア開発とともに、「キャリアデザイン」や「キャリアパス」等、「キャリア〇〇」と示される言葉が多く存在し注目されている印象ですが、それぞれの意味の違いを下記にて紹介します。
 

用語 定義
キャリアデザイン スキルや役職といったビジネスに関することに限定せず、結婚やワークライフバランスといった個人的なビジョンも包括した「人生設計」のこと
キャリアプラン 仕事や働き方の将来像を実現するために作成する、具体的な行動計画のこと
キャリアパス 従業員が目標としている役職や職位に到達するために、経験やスキルを高めていく方法のこと
主に企業側が従業員側に提示するものを指す
キャリアアップ 従業員自らのスキルを磨いて役職や仕事のレベルをあげていくこと
キャリア形成 職業経験や人生の中で継続して経験を積むプロセスのこと
 

従業員は人生設計として大きな「キャリアデザイン」を描き、それを元に詳細な行動計画も含んだ「キャリアプラン」を作ります。このキャリアプランは個人の目線で作るため、自社にとどまらないものができる事もあるでしょう。

その際、企業側は従業員がキャリアプランを描きやすいように、自社における「キャリアパス」を提示することがあります。そして従業員は、提示されたものを参考にキャリアデザインとキャリアプランを考えます。

作成されたキャリアプランを元に日々の仕事を実践することで「キャリアアップ」を実現し、「キャリア形成」をすることが可能です。

それぞれ、似た響きですが、ぜひ意味の違いを理解したうえで使い分けていきましょう。

キャリア開発の目的と現状

キャリア開発の目的は、各従業員のキャリアプランの実現を支援することで、エンゲージメントを向上させ、育成を支援することです。

企業による従業員のキャリア開発という手法は1980年代には既に存在しており、目新しいものではありません。

ただ、キャリア開発と言っても対象とする年齢層によって実施すべきことが変わります。年齢層によって、今の従業員の能力や役職、今後のキャリアプランの幅や感じている思いに大きな違いがあり、キャリア開発における目的や注意するポイントが異なるためです。

特に今後の企業を牽引する存在であり企業間での取りあいが激しくなる20.30代の若手〜中堅は、将来の発展に直結する層です。

本記事では、次世代を担う20,30代の若手〜中堅層を対象としたキャリア開発に着目して整理します。

キャリア開発が再注目される背景

いま、キャリア開発が再注目される理由

古くからあるキャリア開発ですが、昨今では「キャリア自律」という言葉とセットで注目されています。

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キャリア自律は1990年末から2000年代にかけてよく取り上げられました。それ以前のキャリア開発では、仕事で必要とされる知識やスキル等、企業が必要とする能力の開発が重要視されており、訓練/指導型の教育が中心でした。

しかし、ビジネス環境の変化が早くなるにつれ、「企業主導での能力開発より、従業員自らが能動的に能力開発に取り組むほうが、企業成長に資する」という考えが生まれました。

この流れをうけ、従業員がキャリアプランを持ち、それを元に働くことを企業は支援するようになりました。つまり、従業員個人のキャリア自律を企業が支援する点が重要視され、それに伴いキャリア開発手法も変化していきました。

そして2020年以降、キャリア開発、キャリア自律支援という言葉が再注目されています。

これまでとの違いは、従来のキャリアは組織内(自社)を指していましたが、今は組織外(他社)までも含む点です。

2010年代の前半まで、企業が使う「キャリア自律」という言葉は組織内キャリアを前提として考えられていました。しかし、今では組織外キャリアの可能性も企業は考慮するようになっています。

この流れは、下記の出来事が要因として考えられます。

2016年、『ライフ・シフト-寿命 100年時代の人生戦略』が発刊され「人生100年時代」という言葉が日本で大流行し、複数のキャリアという可能性が個人の中に浸透しはじめました。

そして、2018年に厚生労働省が副業・兼業のガイドラインを制定することで複数のキャリアという概念が国として肯定されました。

2019年〜2020年には、経済界から企業による終身雇用の維持の限界と、企業内でのスキル育成による限界への言及がありました。これにより、企業として従業員が組織外キャリアを加味したうえで自律的にキャリア選択をすることに価値を見出すようになりました。
 

年齢層に適したキャリア開発へ高まる関心

各企業では、「ミドル/シニア層(主に40代以降の厚い層)」と、企業間の取り合いが激しい「若手/中堅層(主に20,30代の薄い層)」の2つの層を意識したキャリア自律支援への関心が高まっています。

たとえば、ミドル/シニア層では能力やパフォーマンスを現報酬に見合うものに伸ばすことや、報酬を適正化させることを目的としたキャリア開発が意識される傾向です。

一方、「若手/中堅層」では能力開発のスピード向上に加え、エンゲージメントを高め自社に魅力を感じてもらうことを意識したキャリア開発といったように、年齢層によって違いがあります。

 

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実際、筆者も新卒や中途の方々の採用活動に携わる際、「入社後、社内外でどのようなキャリアを築けるか」、または「企業が従業員に対してどのようなキャリア支援をしているか」について言及する例が増えました。

若手・中堅層にとって、企業による従業員のキャリア開発施策が魅力付けに繋がっていることを強く感じます。

ここまで、キャリア開発やキャリア自律支援が、「組織外キャリア」も考慮にいれたうえで、近年改めて着目されるようになったこととその背景や実態について整理しました。

以降では、キャリア開発に取り組む際のメリットやリスクについて記載します。

キャリア開発のメリット

キャリア開発には、エンゲージメントの向上に繋がる短期メリットと、個人の能力・組織力向上に繋がる長期メリットが存在します。

キャリア開発を行うことによる従業員の行動変化と企業が得られるメリットは下図の通りです。

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従業員は、まず初めに自身の目標を含めたキャリアプランを作り、それを元に今の仕事を見つめなおします。

例として、今の仕事が自身のキャリアプランに適していると認識すると、エンゲージメントが向上し、目の前の仕事にこれまで以上に意欲的に取り組むでしょう。

一方、別の仕事をしたくなった場合でも、キャリアプランを支えるための副業、公募/異動希望等の社内制度を利用できる文化があれば、従業員個人のエンゲージメントは向上します。

このように、エンゲージメント向上は短期的には生産性の向上が期待できます。長期的には従業員個人が自発的に仕事に取り組み、勉強をするようになることで、能力向上スピードを高められるでしょう。

さらには、新しい分野の知見を習得する可能性もあり、イノベーションに繋がる可能性も秘めていると考えられます。

キャリア自律支援のプログラムを組み立てる際には、短期的なエンゲージメント向上だけでなく、その先のイノベーションに繋がることをも見据えて検討してみてはいかがでしょうか。

キャリア開発でメリットを得られやすい企業

では、どのような企業がキャリア開発のメリットを得られやすいのでしょうか。

①直近の業績ではなく将来の業績に関心が強い企業
②自社の仕事の魅力を従業員に説明できる企業

今回は2つのポイントで、以下にてくわしく説明します。

①直近の業績ではなく将来の業績に関心が強い企業

そもそも、キャリア開発は即時性の強い施策ではなく、徐々にその効果が表れるものです。「キャリア開発のメリット」で記載したように、短期的には従業員個人のエンゲージメント向上が望めますが、すぐには業績に繋がりません。

特に今年を乗り越えるのが精一杯、コスト改善が必須といった企業では、従業員に今持っている能力を発揮してもらうことが優先されます。優秀な従業員が部署内で抱え込まれるといった事象も発生するでしょう。

この状態でキャリア開発を強行してしまうと、従業員が希望するキャリアや目標を実現できず、かえって不満をためてしまう結果になってしまいます。

そのため、直近の業績よりも将来の業績に関心がある企業の方が経営層や現場管理職から協力を得やすく、キャリア開発のメリットを享受しやすい環境と言えるでしょう。

②自社の仕事の魅力を従業員に説明できる企業

キャリアや目標を見直す際、従業員は今の仕事や自社の仕事が自分にどのような価値があるのか見定めますが、結果として魅力を感じないケースもあります。

この際に、自社における仕事の価値とそこで得られる経験やスキルを魅力的に伝えられる企業は、従業員を自社に引き止めるという点でキャリア開発のメリットを得やすいです。

採用活動を行う際は、自社の仕事の価値や仕事で得られる経験について、アピールをする企業が多いと思います。同様に、従業員にむけて自社の仕事のよさをアピールできる企業がキャリア開発のメリットを受けやすいと言えるでしょう。


キャリア開発のリスク

一方で、キャリア開発にはリスクもあります。先ほどの図をもとに、リスクとなり得るポイントを3つ紹介します。

①上長や人事部等のフォロー不足による今の仕事からの逃避
②キャリア自立支援制度の不在/形骸化による組織への落胆
③やむを得ない転職の発生

それぞれ下記にて詳しく説明します。

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①上長や人事部等のフォロー不足による今の仕事からの逃避

従業員個人が考えたキャリアプランがその従業員にとって必ずしもよいプランであるとは限りません。

たとえば、業務上の困難な課題に直面しているタイミングで、上長や人事にキャリアプランを相談したとします。そこで何も気づきを得られなかった場合、「もっと自分に合った仕事があるはず」と、一種の逃げの異動希望や転職活動が発生する可能性があるでしょう。

これは、企業だけでなく従業員にとってもよくありません。この事態を防ぐには、上長や人事部が定期的に従業員のキャリアプランを聞き、気づきを与える話合いの場を設けることが必要です。

②キャリア自立支援制度の不在/形骸化による組織への落胆

従業員が別の仕事に興味を持った時、受け皿となる制度や文化が根付いていないと、「自社では自身のキャリアプランを実現できない」と組織に対し落胆する可能性があります。結果として、エンゲージメントの低下、さらに転職の誘発にもつながるでしょう。

たとえば、自己申告制度を取り入れていても十分に活用されていない企業事例は多くあります。

特に目標達成が困難な部署であるほど、優秀な従業員を自部署の外に出したくないものです。

ある優秀な従業員には異動への想いがありましたが、上長の説得により申告上は希望を出していませんでした。そのため人事は従業員の希望をキャッチできず、1年後の退職面談で初めて事実を知る、といった例が多くの企業で存在します。

従業員個人にとっては適切な行動であるケースも多々ありますが、企業にとっては痛手です。この事態を防ぐには、自部署から優秀な人が異動する可能性も考慮に入れたうえで、現場管理職層や経営陣にキャリア開発に対して協力的になってもらう必要があります。

③やむを得ない転職の発生

従業員が自身のキャリアや目標について見直した際、自社の仕事がキャリアプランにおいて有意義でないという結論に至る例があります。

やむを得ないこともありますが、注意が必要なのは自社・自部署での仕事の魅力を従業員に伝えられているかという点です。

従業員のキャリア自律を支援することは、従業員個人が改めて俯瞰して職場を見つめなおし選択をすることにつながります。そのため、企業側が自社での仕事について魅力を伝えられない場合は、従業員が離れる結果を招くことにもなるでしょう。

キャリア開発をする際、従業員は自身の仕事を見直しますが、企業としても「自社の仕事が従業員個人にとって価値のある仕事なのか」見直す必要があります。

キャリア開発を推進するための具体的な方法

実際にキャリア自律度の向上を目的としたキャリア開発はどのように行えばよいでしょうか。主なキャリア開発の流れを3つのステップで説明します。

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ステップ①啓発

まずは、企業が従業員に対して「キャリア自律の重要性」を喚起し、「キャリアプランを持ってもらう」という「啓発」から始めましょう。

たとえば、人事部がキャリア支援プログラムとして「なぜ、キャリアをデザインすることが必要なのか」というセミナーを用意することや、従業員個人がキャリアや目標を考える機会としてキャリアプランシートを準備する等が挙げられます。

これらの啓発プログラムにより従業員はキャリアプランの重要性を認識し、自身のキャリアを模索することで、キャリアプランが「誕生」します。

ステップ②育成

次に、誕生したキャリアプランの「育成」です。企業がキャリアプランシートを基にした面談の機会や目標に対する定期的な振り返りの場を設けることで、従業員のキャリアプランは「育成」されます。

企業によっては、定期的な上長との面談だけでなくキャリアカウンセラーとの面談機会を提供している例もあります。

ステップ③実現支援

従業員のキャリアプラン育成後は、キャリアプランシートを基にした「実現支援」を実施します。

この段階では、従業員は下記のような行動・思考になりはじめます。

・今の仕事にこれまで以上に自律的に取り組む
・自発的に学習をしたい
・別の仕事もやってみたい

この想いに応える形で、企業は学習機会の提供や仕事を選択する機会としての公募・FA(フリーエージェント)・社内外副業等の制度を整備し、従業員が育成したキャリアプランの「実現」を支援するとよいでしょう。

自社の状況とメリット・リスクを踏まえたうえでのキャリア開発を

昨今のキャリア開発は、従業員のキャリア自律を組織外キャリアも考慮した施策として注目されています。

しかし、ここまで紹介したようにキャリア開発は無条件に「取り組むべきもの」ではなく、メリットとリスクが存在し、その内容は企業の状況や従業員の年齢層に応じて変わります。

キャリア開発をうまく実施できている企業とできていない企業では将来的に差が出る可能性がありますが、経営層や現場管理職層の理解が得られていないまま進めると、従業員は企業に落胆しエンゲージメント低下・離職の誘発につながる恐れもあるでしょう。

キャリア開発は経営陣や現場管理職が本気で施策に向き合わない限り、期待どおりのメリットは得られません。

人事部には、従業員のキャリア開発が本当にいま必要かを、経営層・現場管理職と丁寧に議論し、効果的なキャリア自律支援の検討をしていただければ幸いです。

この記事を書いた人

ライター写真

奈良 和正(Nara Kazumasa)

2016年にワークスアプリケーションズ入社後、首都圏を中心に業種業界を問わず100以上の大手企業の人事システム提案を行う。現在は、入社以来継続して実践している各企業の人事部とのディスカッションと、それらを通じて得られるタレントマネジメント、戦略人事における業務実態の分析・ノウハウ提供に従事している。

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