1年間で実施したLGBTQに関する制度の整備。従業員のポジティブな声も

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最終更新日 2023年6月6日

1年間で実施したLGBTQに関する制度の整備。従業員のポジティブな声も

Works Human Intelligence(以下WHI)では、統合人事システムを提供しており、これまで、様々な業種業態の大手企業様の人事業務へ触れてきました。

そして実は、WHIも1,000名以上の従業員が所属している「大手企業」。

本カテゴリでは、人事業務のノウハウを持つ私たち自身が実施している、人事施策の事例をご紹介していきます。

今回ご紹介するのは、LGBTQの働きやすさ向上のために実施している取り組みです。

WHIでは福利厚生の制度から服装ルール、ハラスメントまで、LGBTQ当事者が働くうえで直面する課題を解消するため、現場従業員の声を発端にプロジェクトが発足。約1年間の取り組みで、企業のLGBTQの取り組み状況を評価する「PRIDE指標*1」にて最高ランクである「ゴールド」を受賞しました。
(1*)PRIDE指標とは:https://workwithpride.jp/pride-i/

WHIの取り組み事例が必ずしも正解ではなく、まだまだ改善の余地があるものだと考えており、さらなる改善に向けてディスカッションを重ねている最中です。少しでも、読者のみなさまのご参考になると幸いです。

LGBTQに関する基本知識や企業が取り組むべき施策については下記の記事をご覧ください。

目次

WHIで実施したLGBTQに関する取り組みの概要
きっかけは経営陣への意見。LGBTQに関する制度整備がはじまった理由は?
ガイドラインの改訂や講座の開催も。1年間で実施した取り組み内容
アンケートの結果、従業員からポジティブな反響も

LGBTQに関する取り組みの概要

▼プロジェクト発足:
 2020年7月〜

▼施策:
 - 人事部門向けLGBTQ勉強会実施
 -  服装ガイドラインの改訂
 - コーポレートサイトにトップメッセージを掲載
 - 同性パートナーへの福利厚生拡大
 - 従業員向けアンケート実施
 - 人事部門向けLGBTQ研修の実施
 - 自認する性を尊重できる通称名利用を可能に
 - 全社向けにLGBTQに関する講座を実施    等

 

きっかけは経営陣への意見。LGBTQに関する制度整備がはじまった理由は?

WHIがLGBTQに関する制度整備等に取り組みはじめたのは、全従業員が経営陣に向けて意見を投稿できる目安箱「iBox」に、「LGBTQ等の性的マイノリティが職場で抱える課題の解消」について意見が投稿されたことがきっかけでした。
※WHIの制度についてはこちらで詳しくご紹介しています
 

当時は性的マイノリティ当事者の在籍を想定して社内規程を制定しておらず、たとえば「同性パートナーがいる従業員の場合、パートナーが福利厚生の対象にならない」といった課題がありました。
 

この障壁を取り除くことで、WHIをより働きやすい会社とすることを目的に、有志の現場従業員と人事部メンバー合同のプロジェクトを発足。すべての従業員が企業理念の「はたらくを楽しく」を実現できる環境整備を目指しました。
 

ガイドラインの改訂や講座の開催も。1年間で実施した取り組み内容

取り組みのひとつの指標として、LGBTQに関する企業等の取り組みを評価する「PRIDE指標」の評価項目を参考に、約1年間で様々な取り組みを実行しました。そして2021年にはPRIDE指標の最高ランクである「ゴールド」を受賞しています。

ここでは、WHIにて1年間で実施した取り組みの内容を具体的にご紹介します。

2020年7月:プロジェクト発足

プロジェクトの目的や内容について認識を合わせるため、CHROを含めた関係者全員でキックオフを実施しました。
 

2020年9月:人事部門向けLGBTQ勉強会実施(全3回11月/2月実施)

任意での勉強会を実施し、基礎知識や歴史、世界や国内での状況等について取り上げました。
 

2020年10月:服装ガイドラインの改訂

女性用、男性用で分かれていた服装規程を変更し、性差を区別しないものに改訂しました。(画像は服装規程のイメージです。)


<Before>

服装規程before-1.png

 

<After>

服装規程after-1.png

2020年11月:コーポレートサイトにトップメッセージを掲載

コーポレートサイトに「Respect & Ally」ページを追加。代表取締役最高経営責任者の安斎より、従業員の多様性の受容に関するWHIの姿勢を明らかにしました。
 

2020年11月:同性パートナーへの福利厚生拡大

以下の福利厚生に対し、同性パートナー・事実婚パートナーへも適用されるよう社内規定の変更を行いました。

・結婚休暇、忌引休暇、配偶者出産休暇
・結婚祝い金、出生祝い金 等
・家族帯同の国内赴任旅費、国内赴任休暇 等

規定変更に伴い、人事申請システムにて従来の結婚届に加え、「家族」として同性パートナーや事実婚パートナーを申請する「パートナーシップ届」を作成しました。
 

※現状の日本の法律では、同性パートナーシップを取得していても法律上は配偶者とみなされず、税・健康保険の扶養に入れることはできません。そのため、税計算等を行う際の管理方法は人事・給与システムに合わせて検討が必要です。

2020年12月:従業員向けアンケート実施

LGBTQに関する理解度・意識調査や意見収集のため、社内向けに匿名アンケートを実施しました。

2021年3月:人事部門向けLGBTQ研修の実施

人事部門に所属する従業員に対して研修を実施しました。基礎知識はもちろん、働くうえでの困りごとやハラスメントになりうる行為や言動、カミングアウトの際の対応方法等にも触れています。

2021年4月:自認する性を尊重できる通称名利用を可能に

トランスジェンダー(出生時に割り当てられた性別とは異なる性を自認する人)の従業員は、戸籍上の性別や名前を(自認する性に合ったものへ)変更する人もいれば、戸籍上の名前は変えずに名刺や社内で利用する名前は変更したい、というニーズもあります。

WHIでは、戸籍上(法律上)の姓名とは異なる通称の利用は「婚姻等により旧姓の利用を希望した場合」にはすでに認められています。
 

加えて、「自認する性を尊重できる通称名の利用を希望する場合」において、姓だけでなく名の通称名を利用することも可能(※新入社員だけでなく在職中の従業員も可)となりました。

2021年6月:全社向けにLGBTQに関する講座を実施

人事部門向けから拡大し、全従業員を対象にE-learningによる講座を実施しました。

以上が、2020年7月から約1年間でWHIにて行った取り組みです。

他にも並行して、社内報での情報発信や、LGBTQアライの社内コミュニティ運営(コロナ禍のためオンラインで懇親会や映画鑑賞会等を開催)等、従業員の理解促進のための施策も実施しました。

アンケートの結果、従業員からポジティブな反響も

2020年12月、2021年12月にはそれぞれ従業員向けにLGBTQに関するアンケートを実施しました。

 

<アンケート概要>

1.調査目的
・LGBTQに関する知識や認識について、従業員の現状把握
・施策の効果測定

2.調査対象
 WHIの従業員

3.調査方法
 Webアンケート

4.調査期間
 2020年:12月4日~18日 2021年:12月6日~22日

5.調査項目(例)
・「LGBTQ」という単語を知っていましたか
・同僚・後輩・上司等から、 LGBTQ等の性的マイノリティであると打ち明けられた場合、 ご自身の気持ちに近いものを選択してください
・過去約1年間で社内(飲み会等社外活動含む)でご自身が体験した・見聞きしたものを選択してください
・普段社内のコミュニケーションにおいて(飲み会等社外活動含む)、気を付けていることはありますか

6.有効回答数
 2020年:384 2021年:510

 

アンケートの結果、2020年と比較して、基本的な認知の面では「LGBTQという単語を知っている」人の割合が増加し、社内のコミュニケーションにおいては「LGBTQに関して差別的な言動を見聞きした」人の割合が低下しました。

また、取り組み全体を通し、WHIの従業員からは以下の反響がありました。

「ぜひ、よい形に発展することを期待し、LGBTQの一人として応援しています。」
「LGBTQに限らず、人の特徴や思想に対しての理解が深まる機会があるといいと思っていました。こういった取り組みが社内で始まっていることにとても感動しています。」
「これまで強く意識できていなかった内容だったが、会社全体として細かい情報を発信し誘導しているので、細かい点も気をつけて意識しやすくなっている。」
「個人的な見解ですが、LGBTQの中でも、トランスジェンダーの方々へのサポート・対応は、周囲への配慮も含め、非常に注意が必要と感じております。」

また、人事部向けに実施した勉強会へ参加した従業員からは、下記のコメントがありました。
 

▼人事、産育休担当
「勉強会の開催ありがとうございました!産育休担当としては、実際に同性婚・事実婚の方から配偶者出産休暇があったときの運用フローを事前に考えて、まとめておきたいなと思いました。希望があったときにすぐ対応できるようにしたいです。」

 

▼人事、採用担当
「ケーススタディでは、自分の中では差別をしているつもりではなくても、無意識に恋人の有無や結婚等の話題に触れてしまうことがあるかもしれないと思い、きちんと意識してコミュニケーションをとらなければいけないなと学びました。」

すべての従業員が「はたらくを楽しく」を実現できる環境整備を目指して

本施策の実施にあたり、LGBTQにかかわるダイバーシティへの取り組み自体へ経営や人事部から反対の声はあがりませんでした。所属部署にかかわらず、声をあげた人が中心になって進められました。

一方で、プロジェクト担当者が気を付けていたのは、「細部の理解浸透」でした。制度改定を行う、全社研修に組み込む、さらに当事者の方が入社する可能性が増えるとなった時に、「従業員ひとりひとりが同僚として、上司として、準備ができているか」という点です。
 

その土壌を整えていくために、どの順番で誰に何を打ち出し、どう働きかけていけば会社全体で理解が浸透するのか、物事を進める順番やタイミングを意識してロードマップに落としていきました。

今後もWHIは、個々人がアイデンティティに誇りを持ち、すべての従業員が互いに尊重しあい、安心・安全に就業できる環境作りを目指していきます。

LGBTQに関する当社の取り組みについて詳しく話を聞きたい方は、お気軽にお問い合せください。
 

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