キャリア自律支援で企業と従業員を成長に導く|セミナーレポート

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最終更新日 2023年6月6日

キャリア自律支援で企業と従業員を成長に導く|セミナーレポート

2022年6月24日、株式会社Works Human Intelligence主催のセミナーを開催しました。今回のテーマは、「次世代リーダーを育てる! キャリア自律支援で企業と従業員を成長に導く」。

講師にはキャリア開発において第一線で活動されている法政大学教授・プロティアンキャリア協会代表の田中研之輔氏をお招きし、当社からはWHI総研 Grp.の奈良が対談相手として登壇しました。

セミナー当日の内容を一部抜粋してお届けいたします。

目次

開催概要
第1部:次世代リーダーを育てる!キャリア自律支援で企業と従業員を成長に導く
第2部:大手企業におけるキャリア自律支援のお悩みに答える

開催概要

「次世代リーダーを育てる! キャリア自律支援で企業と従業員を成長に導く」

日  時:2022年6月24日(金) 15:00~16:30
開催方法:オンライン

参加者属性

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講演者

■田中 研之輔氏
法政大学教授 / プロティアン・キャリア協会 代表理事

〈経歴〉
法政大学 教授 UC.Berkeley元客員研究員 一般社団法人 プロティアン・キャリア協会 代表理事GLOSA代表取締役/ 博士:社会学。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員(PD:一橋大学 SPD:東京大学) メルボルン大学元客員研究員。2008年に帰国。現在、法政大学キャリアデザイン学部教授。専門はキャリア論、組織論。著書25冊。新刊『プロティアン―70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本論』。最新刊に『ビジトレ−今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』

 

■奈良 和正
株式会社Works Human Intelligence WHI総研 Grp.

〈経歴〉
ワークスアプリケーションズ入社後、首都圏を中心に業種業界を問わず100以上の大手企業の人事システム提案を行う。現在は、入社以来継続して実践している各企業の人事部とのディスカッションと、それらを通じて得られるタレントマネジメント、戦略人事における業務実態の分析・ノウハウ提供に従事している。

第1部:次世代リーダーを育てる!キャリア自律支援で企業と従業員を成長に導く

田中研之輔氏 法政大学教授 / プロティアン・キャリア協会 代表理事

コロナで変わったキャリア自律支援の在り方

田中:
今回のセミナーでは、皆さんに次世代リーダーを育てるキャリアグロースのプロデューサーになっていただきたいと思っています。私も大学で次世代を担う若者を育てており、プロティアンキャリアの知見も交えながら次世代リーダーをいかに育てるのかをお話いたします。

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まず、新型コロナウイルスはわれわれの「パンドラの箱」だったと捉えています。コロナを乗り越えるために、各企業ではハイブリッドワーク、人事制度、戦略人事の導入等、変化に対して柔軟に対応してきました。

これらの取り組みはキャリアの方向性を定めることにもなりました。今までの組織内キャリアに戻ることはなく、自律型キャリアをどれだけ企業が支援できるのか、ということです。

また、自律型キャリアの推進は、従業員のリテンションや採用ブランディングにも繋がっているため次世代リーダー育成に関しても同様です。

メディアでは、企業がメンバーシップ型からジョブ型に移行すると取り上げたりもしますが、1つの例でしかありません。変化した1点だけにフォーカスするのではなく、総合的に取り組む必要があります。

キャリア自律支援に求められる2つの企業内役割

 

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田中:
キャリア自律支援を取り巻く社会動向として、従業員の捉え方が「人的資源」から「人的資本」へと転換しています。

日本企業の生産性と競争力を再活性化する鍵はまさに「人的資本」への転換であり、見過ごすと日本企業の遅れは取り戻せないでしょう。

人的資源の考え方は入社時点の従業員のパフォーマンスをそのまま使うことでしたが、人的資本の考え方は従業員に目の前の業務を行っていただきながら、企業側で3,5年後まで成長できるよう支援をする形です。

ポイントは2点あります。

1つ目は人的資本の最大化です。

従業員一人ひとりが、やりがい・働きがい・生きがいを感じながら仕事をし、躍進していただく。企業が支援を推進することは欠かせないものとなっています。人が少ない、業務が過多等の事情もあるかもしれませんが、何よりもキャリアグロースにリソースを当てることが重要です。

2つ目は人的資本の情報開示です。

政府も本格的に準備をはじめていますが、数年以内に上場企業はIR、もしくは統合レポートの中に人的資本の情報開示が求められると思います。ISO30414の11項目は国際基準ですが、日本でも近い項目が検討され人的資本の情報開示の義務化が進むことになるでしょう。

また戦略的な視点で考えると、ステークホルダーに対して企業情報の透明性が担保できていると発信しており、自然と投資が集まりやすくなります。

新時代のキャリア戦略 プロティアンキャリア

 

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田中:
昭和のキャリアは伝統的で、組織の中で転勤し、ジョブローテーションはすべて組織の意向であることが主でした。家族が子育て中もしくは介護を抱えていても、はたらく上では無関係といったように、組織が強い状態です。

そこで従業員の方が描かれたのは組織の中で昇進や昇格をしていくことであり、これを古きよき昭和の時代と捉えられている方もいると思います。

しかし、平成は組織意向だけではキャリア形成できない時代となりました。つまり、昭和は組織内キャリアでしたが、平成では自律型の人が増えています。

ただし、平成の時代は個々が強く生き過ぎたため個人と組織の関係性にズレが生じ、たとえば転職について不信感が出てしまうこともありました。

そこで令和にすべきことは、再活性化です。個人にも組織にもよりよい関係性を創りあげるリレーショナルアプローチこそが大切であり、徹底的に進めていきたいと考えています。

フレームとなるのが変幻自在なプロティアン・キャリアです。プロティアン・キャリアやキャリア自律は、キャリアを客観的で未来のものとして考えることを指し、これまでの主観的で過去のものとして捉えられていたキャリアとは一線を画すものです。

経営戦略や事業戦略も未来軸で分析して考えていますよね。キャリア戦略も同様に、未来思考で考えていきましょうということです。

そのためには、キャリアのブレーキとアクセルを使い分けていくことが重要で、継続して伴走することが求められます。

研修をするにしても、今はオンラインが主流となってきたので、予算的にもかなり浮いてくるでしょう。もっと総合的に、キャリア診断をして適切な施策に投資をする、そしてブレーキとアクセルを使い分けることが、企業と従業員を成長に導くキャリア開発に繋がると考えています。

第2部:大手企業におけるキャリア自律支援のお悩みに答える

田中 研之輔氏 法政大学教授 / プロティアン・キャリア協会 代表理事
奈良 和正   株式会社Works Human Intelligence WHI総研 Grp.

キャリア自律支援を推進していきたいのですが、経営層・管理職の理解が得られません。重要性を理解してもらうにはどうすればよいでしょうか?

奈良:
経営層にただ説明するだけではキャリア自律支援の重要性を理解いただけない、という話も人事の方からよく伺います。推進していくための具体的なコツはありますか?

 

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田中:
基本的に経営層の方はプロティアン型です。自企業を自律させるためには変化に適合しながら自分の事業ドメインをピボットしなければならないので、普段から「変化に適合したい」「事業を伸ばしたい」と思っています。

そこで、キャリア自律と経営がどう結びつくか考えます。キャリア自律とは、人的資本最大化の近道であり、皆さんがいるチームでもキャリア自律を実践したほうがよいでしょう。

まずはチームとしてスモールアップでキャリア自律支援策を実施しながら、伸びてくるロールモデルを育てることで経営層は次第に納得していきます。

しかし、実は難しいのが管理職の方々の理解を得ることです。「キャリア自律支援が重要なのはわかったが、現場で実行に移すのは難しい」という話になってしまいます。

その場合、私は管理職の特にキープレイヤーの方々に、直接キャリア自律の必要性や施策を伝えにいっています。管理職の方々も柔軟な方が多いので、感覚としては7割ほどはできる、3割ほどはできないとおっしゃるイメージですが、7割できれば十分です。

キャリア自律型で結果的にグロースしていくので、様々な施策をやっていくのがよいと思います。具体的な例を挙げると、プロティアン・キャリアドッグという伴走型です。

どんな講師の方でも大丈夫ですが、まず理論的知見、キャリアリテラシーを伝えます。認識の共有ができたら、実際の行動にむけて周囲に施策を共有し実行、その行動変容を確認しましょう。

4プログラムを3か月ほどで回していき、フィジカルトレーニングと同じようにキャリアに対する認識や行動を変えていくプログラムを作ります。いままでのキャリア開発支援は、1年に1回データを取るというものでした。そうではなく、小さい施策を繰り返し伴走していき、手入れをしていくことが重要です。

もう一つのコツは、数字で示すことです。いままで数字で示さず感覚的にキャリアを考えていたので、納得されづらいことがありました。経営会議の中で、組織エンゲージメントスコア・心理的幸福感がポイントアップしていることを数字で示すと、納得されやすいですね。


奈良:
はじめから大きなキャリア支援をするのではなく、スモールアップで段階を踏んで小さな成果を積み重ねることで、経営層・管理職の方に理解いただくことが重要ですね。
 

キャリア自律支援における施策は、実際にどのような効果が出ていますか?

奈良:
小さな施策を繰り返し伴走していく必要があるとのことですが、本当に効果がでるのか気にされている企業の方も多くいらっしゃいます。キャリア自律支援の効果はいかがでしょうか。

田中:
効果はもちろん大事ですよね。まさに私はすべてをデータ化しようと取り組んでいます。効果を語るのはデータだと思うので、感覚・主観では語らない形にしたいですね。

企業と取り組んでいる部分では、キャリア自律支援のためのキャリア開発を行うと、キャリアオーナーシップスコアやキャリア資産のスコアが確実に高まっています

理由は2点ありまして、1つは組織内キャリアの弊害です。組織内キャリアではたらくことに対してキャリアビジョンが持てない方が多くいらっしゃいます。

もう1つは新型コロナウイルスの影響によるものです。自分のキャリアは自分で築こうという世の中の流れのなかで、「全員出社だ」「全員組織内キャリアだ」「他の企業は見るな」とすると人がどんどん流出します。

このような従業員の状態を前提としたキャリア開発を行うことで、スコアが高まるという流れです。

いま興味深いのは、キャリア自律支援がどれほど売上に結びついているのかということです。ゆくゆくはデータも算出できるようになります。

人的資本の情報開示でいうと、生産性のスコアやサクセッションプラン、後継者育成プラン等で相関を取ることができ、キャリア開発・後継者育成・生産性の3つがどのような関係性になっているかもわかるようになると思います。

これを人力で行うと属人的すぎるので、人事部ではテクノロジーやデータ、一つひとつの施策情報をプールして分析できるプラットフォームを準備していく必要がありますね。

願わくは過去のデータも集めたうえで現状を把握して、未来の戦略を設計していけるとよいのではないかと思います。

 

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