副業にメリットはある?企業で制度を導入する際に取り組むべきこと

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副業にメリットはある?企業で制度を導入する際に取り組むべきこと

2022年6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太方針2022)では、労働者の多様なキャリア形成を促進する目的で、副業・兼業の拡大・促進に関する取り組みを強化していくことが決定されました。

また、7月には厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改定されています。本改定は、企業の副業に対する情報開示を求めることで、副業の機会創出や利用促進を期待したものです。

社会的に副業容認、推進に向けた動きが進む中、副業制度の導入検討や従業員からの希望への対応を求められる企業も増えているのではないかと思われます。一方で、副業者の副業先就業実績の把握や本業への影響に、課題感を持つ人事担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、近年の副業拡大の流れを整理しつつ、企業として悪影響やデメリットを抑止するためのポイントについて整理します。

目次

副業制度とは
副業制度を取り巻く状況
アンケート結果:企業における副業制度の実態
副業制度の導入状況
副業者の受入れ状況
副業に関する課題やデメリット
副業制度のメリット
副業制度促進の流れに対して企業が取り組むべきこと


副業制度とは

副業制度とは、労働者が勤務時間外において本業以外の企業等の業務に従事できる制度です。

2018年1月に策定された厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、過去の裁判例を踏まえると、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由とされています。

ただし、下記4点に該当するときのみ企業による制限が可能です。

① 労務提供上の支障がある場合
② 業務上の秘密が漏洩する場合
③ 競業により自社の利益が害される場合
④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

副業の形態は多岐にわたり、他の企業と雇用契約を結んで業務外に数時間の業務に従事する、業務委託契約を結んで成果物を提供する、といった通常の仕事の延長線となるものが挙げられます。

また、休日に知り合いのカフェを手伝う、中学生のサッカーの審判を行う等、趣味やプライベートに関するものもあるでしょう。

副業制度を取り巻く状況

「副業元年」と言われた2018年以降、国や政府は副業制度を促進する施策を進めています。日本全体の労働力人口が不足していく中で、雇用確保・適正化や生産性の維持、社会全体での学び直しやキャリアの多様性を促進して、生産性や付加価値の向上を目指したものです。

さらには、働き方改革の一環として、副業による長時間労働の発生を防ぎ、企業側の雇用契約や就業時間管理に支障が出ないように、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の整備によって、副業促進を進めています。

一方で、従業員側も副業を希望する人が増えているとされています。2017年の総務省「就業構造基本調査」副業希望者の推移では年々増加傾向であり、翌年の副業制度解禁に向けた一つのエビデンスとなりました。

また、パーソル総合研究所の「副業の実態・意識に関する定量調査」では、副業未実施者の40%近くが副業を希望する結果になっています。

実際にするかどうかはともかく、副業・兼業自体は決して特殊なものではなく、すでに働き方の選択肢の一つとして社会的にも認められつつあるといえるでしょう。

アンケート結果:企業における副業制度の実態 

当社では、2022年の5月から6月にかけて大手65法人を対象に、副業制度における実態の調査を実施しました。

<調査概要>

1.調査期間
 2022年5月12日(火)~6月3日(金)
2.調査対象
 当社製品「COMPANY」ユーザーである国内大手法人
3.有効回答数
 65法人
4.調査方法
 インターネットを利用したアンケート調査

 

副業制度の導入状況

国や政府が副業を解禁、促進して5年近く経過しましたが、各企業の導入状況はどのようになっているでしょうか。

副業を認めている、あるいは副業制度の準備を進めている企業は約49%で、禁止している企業と約半数ずつとなりました。(図1)業種的には、小売・サービス業が全体を10ポイント程度上回っていたのが特徴です。

また、内閣府調査「令和4年5月内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局 基礎資料」では300名以上の企業において全面禁止が40%を超え、パーソル総合研究所の「副業の実態・意識に関する定量調査」では45%で全面禁止となっています。

各調査の結果を見ると、副業を認めている企業は日本全体で約半数程度というのが実態といえるでしょう。

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図1:「COMPANY」ユーザーへのアンケート調査より
 

副業者の受入れ状況

さらに、副業者の受け入れ状況も、前出調査では63%の企業が受け入れを行っておらず検討の予定もなし(図3)、パーソル総合研究所の「副業の実態・意識に関する定量調査」でも現状は76%が受け入れを実施していない結果でした。副業先自体も決して多い状況ではありません。

結果、パーソル総合研究所の同調査では、2018年と比較して正社員の副業利用状況もほぼ横ばいとなっています。現時点で副業制度は一定の選択肢として受け入れられているものの、今のままでは大きく増加しないことが想定されます。

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図3:「COMPANY」ユーザーへのアンケート調査より

副業に関する課題やデメリット

副業制度の導入や副業者の受け入れを実施する企業が増加しない背景として、下記図のような理想・現実のギャップがあり、副業元企業、副業先企業、副業希望の従業員それぞれに解消されていない課題、デメリットがあることが原因といえるでしょう。
 

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副業元企業

  • ・副業者の労働時間管理、過重労働の確認が大変
  • ・本業への影響、副業先への流出への不安
  • ・副業を許可したことによるメリット実感の乏しさ


特に、在宅勤務/テレワークの浸透によって労働時間の管理そのものが多様化し、把握しづらくなっている中、副業者の副業先の就業時間管理は企業側にとって大きな労力が必要です。当社の調査でも、副業を認めない理由の86%を占めています。

また、多くの企業で副業制度導入の目的・メリットとして従業員のスキルアップや成長促進をあげていますが、その定量的な効果を実感しにくいことも一因として考えられるでしょう。

副業希望者

  • ・適切な副業先が見つからない
  • ・今の仕事に手一杯で副業どころではない


副業希望者にとっては、副業をターゲットとした明確な労働市場が存在しているとはいえない中、自らが希望する副業先を見つけ、自身の業務調整やワークライフバランスを保ちながら副業を行うことは決して容易ではありません。

総じて、企業も従業員もこのままではこれ以上の副業拡大は見込めない状況にあるといえるでしょう。

副業制度のメリット

一方で、調査では企業が副業を容認する理由の1位として従業員の成長、スキルアップが挙げられ、内閣府の調査では従業員のモチベーションアップ、定着が上位を占めています

実際に当社の副業実施者に対してインタビューを行ったところ、副業のメリットとして下記の意見が挙げられました。

本業へのフィードバック

副業⇔本業、副業⇔副業でフィードバックループが回せる。特に、本業では試せなかった新しい技術が思い切って試せることもあり、本業側へのよいフィードバックとなっている。

マネジメントとメンバーとしての役割の切り替え

本業側でマネジメントして部下のレビューを行うときに、手を動かしていないと新しいテクノロジーについて判断ができない。そういった時に副業側で手を動かす機会があることが生かされる。

他のサービスを知ることができる

転職せずに他のサービスの裏側や特性を見られることがよい。
BtoBの自社では得られないSNSを通じた顧客からのダイレクトな反応がBtoCの副業先で経験できた。

自身のキャリアの検討材料になる

転職を考える前に副業で入ることによって、外の会社のよさ、悪さがわかり、結果的に自社のよさ、悪さもわかる。また、ぼんやりではなく、輪郭をもってキャリアを考えることにも繋がる。

上記の理由から、副業がキャリア形成や働き方におけるポジティブな選択肢であることに疑う余地はないでしょう。

また、副業を禁止している場合、副業によって得られるはずだったキャリア機会の損失を知らず知らずに与えている可能性があります。それは特に高スキル・ハイパフォーマーの流出に繋がるリスクがあるともいえるのではないでしょうか。

副業制度促進の流れに対して企業が取り組むべきこと

国も社会も副業容認、促進の方向性があり、企業や従業員にとっても一定のメリットがある中、企業は対外的にも従業員向けにも副業を認めていかざるを得なくなると考えます。その際、どのような方針で臨むことが必要でしょうか。

①副業を促進・許容するためのしくみ作り

副業を促進・許容するための方策には注視が必要です。しかしそれ以上に働き方の変化やキャリア意識について社内の理解と、人材流動が発生し、それが許容されるしくみが必要です。具体的には下記の準備を考えておくべきでしょう。

経営層や事業部門への説明

単に従業員の多様性を守るだけでなく、政府からの要請、市場による企業価値判断材料といった、外的要因についての説明を実施

セミナーや勉強会への参加機会を提供

他社の同業種、同職種の人材交流、情報交換、セミナーや勉強会への参加等、外部へ目を向けるための機会を提供

社内副業や社内公募の導入

副業以前に社内における人材交流が少ないのであれば、社内副業や社内公募の導入による人材流動、違う職種、業務を経験する機会の創出

社内理解の促進

キャリアへの悩みや現在の業務への不満、転職の検討等、従業員の退職リスクに対する打ち手として、副業や社内における人材流動が選択肢となりうることについての社内理解

社内副業の導入は、副業に類する経験を社内で積めるため、従業員にとってもチャレンジしやすい施策として注目が集まっています。ただし、結局本業と似たような業務についてしまい兼務と同じようになる、労働時間を分けきれず長時間労働に繋がる、といったリスクがあるため注意が必要です。

②副業実施による実態把握と効果測定

自社の副業実施者・希望者の実態把握と効果測定を定量的、かつ定期的に行っておくことは、今後の方向性を考えるうえでは必要となるでしょう。

副業を禁止している企業

従業員の副業希望とその理由について調査を実施

副業を許容している企業

  • ・労働時間の超過、自社業務への好影響・悪影響、自律的なキャリア形成への寄与・転職活動へのきっかけ等、ポジティブ面・ネガティブ面の効果測定の実施および定期的な状況確認
  • ・副業を実施している従業員と実施していない従業員の間に、定量的な差異が発生しているかチェック
  • ・業務上の定量成果以外にも、人事考課による周囲の評価、自己申告やストレスチェックによる定点的なレポート、エンゲージメント調査による定量的なスコアチェック等、派生する様々な情報を含めて多角的に分析


これらを定期的にモニタリングして、副業導入の可否、実施条件の見直し、業務把握方法の運用を改善していくことが求められます。また、判明した課題の解消手段として副業を選択肢として考えることもできるでしょう。

副業実施における業務時間管理の課題を解消するためには、副業条件を業務委託契約に限り、副業先との雇用契約を認めないことも一案と考えます。

副業先にとっても、業務時間によらず対象業務を切り出して任せることで、報酬を設定しやすく、採用や管理のコストを低減できるのではないでしょうか。

多様な働き方やキャリアを叶える副業制度を活用するために

新型コロナウイルス感染症拡大により、場所や時間にとらわれない働き方が浸透し、働くことに対する価値観が多様化した一方、各従業員の労働実態の把握が困難になりました。

このような状態下での副業制度推進は、副業者の労務管理や就業時間管理等、人事・労務部門の業務増大に繋がる懸念もあるため、副業推進において大きな課題になっていると言えるでしょう。

現時点では従業員側、企業側双方ともに積極的な拡大に向けては課題が多いのが実情です。今後は、国や政府の副業制度促進における方向性や副業希望者の増加を踏まえ、うまく活用する方法を日本全体で考えて共有されていくことが求められます。

本記事が皆様のご検討の一助となれば幸いです。
 

この記事を書いた人

ライター写真

伊藤 裕之 (Ito Hiroyuki)

2002年にワークスアプリケーションズ入社後、九州エリアのコンサルタントとして人事システム導入および保守を担当。その後、関西エリアのユーザー担当責任者として複数の大手企業でBPRを実施。現在は、17年に渡り大手企業の人事業務設計・運用に携わった経験と、1100社を超えるユーザーから得られた事例・ノウハウを分析し、人事トピックに関する情報を発信している。

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