キャリア形成事例インタビュー|従業員のキャリア自律を支援するために

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最終更新日 2023年6月27日

キャリア形成事例インタビュー|従業員のキャリア自律を支援するために

Works Human Intelligence(以下WHI)では、統合人事システムを提供しており、これまで、様々な業種業態の大手企業様の人事業務に触れてきました。

そして実は、WHIも1,000名以上の従業員が所属している「大手企業」。

本コーナーでは、人事業務のノウハウを持つ私たち自身が「大手企業の人事部」として実施している人事施策事例をご紹介していきます。

今回は、「従業員のキャリア形成支援」のために、WHIが実施した取り組みをご紹介します。


▼WHI人事メンバー

笠間 久智
Human Resources & General Affairs Div. 人事 Dept. Dept Mgr
入社後、導入・保守コンサルタントを経て人事部に異動。採用責任者を経験後、現在は人事部門の責任者として制度改定等に携わる。

周藤 俊昭
Human Resources & General Affairs Div. 人事 Dept.
Learning & Organization Development Grp. Grp Mgr
金融、IT、メーカーの人事を経て2020年にWHIへ入社。現在はWHIにおける人材・組織開発の責任者として各種施策の企画設計、展開に携わる。

上村 太郎
Human Resources & General Affairs Div. 人事 Dept.
Learning & Organization Development Grp.
Career & Professional Development Team Leader
新卒入社後、約10年間エンジニア、マネージャーを経て人事部に異動。現在はキャリア開発、専門職教育等に携わる。
 

 

人事が抱えるキャリア自律の課題とは

Q1. 人事が感じていた、キャリア自律の課題は何ですか?

WHI 笠間:
これまで人事は、企業として従業員のキャリア形成にあまり干渉していませんでした。

そのため従業員は自身のキャリアに向き合う機会がなく、マネジメント層もどのように支援すればいいかわからない状態。そうした状況に対して、人事としても、制度を通じた機会提供でのサポートができていませんでした

WHIで人事権を持つのは、基本的に現場です。現場の従業員やマネジメント層が、自身・部下のキャリアについて主体的に考えられるよう、支援施策を計画する必要がありました。

▼WHIのキャリア自律の課題

従業員 ・自身のキャリアを主体的、定期的に見つめ直し、計画する機会がない
・人によって、キャリアについて考える頻度や自覚の大きさが異なる
マネジメント層 ・おもにGrp長(課長相当)が、どのような考え方で部下のキャリアに向き合えばよいかわからない
・部下のキャリアの実現と組織目標の達成について、折り合いのつけ方がわからない
・人によって、部下のキャリアを支援する姿勢に差がある
人事 ・キャリア形成に関する意識づけや、制度を通した機会提供等の支援が十分にできていない
・WHIでの職務経験がキャリアにどのように影響するか、現場メンバーの持つイメージを把握できていない

従業員が自身のキャリアに向き合い、上司がそれを支援するための施策とは

Q2. 従業員・マネジメント層・人事それぞれの課題意識に基づく、キャリア形成支援の全体像を教えてください

WHI 周藤:
従業員へのキャリアに関する意識付けと、自律的なキャリア開発のPlan-Do-Seeサイクルを計画しました。

キャリア支援施策の全体像.png

従業員のキャリアに関する意識づけ

WHI 周藤:
まず活用準備として、従業員やマネジメント層へのインプット期間を設けています。

従業員に対して実施したのは、キャリア自律の必要性やキャリア自律の考え方について意識づけを行う「キャリアデザイン研修」です。短い動画コンテンツの複数回にわたる受講と、自主ワークを通じて、主体的なキャリア形成についての考え方を定着させました。

マネジメント層向けには、「キャリア支援研修」を実施し、部下のキャリアに向き合うためのスキルを身に着けてもらいました。

自律的なキャリア開発のPlan-Do-Seeサイクル運用

WHI 周藤:
その後、自律的なキャリア開発のPlan-Do-Seeサイクルを開始しました。

「Plan」の部分で重要なのは、Career Discovery Sheet(以下、CDS )の作成とCareer Interviewの実施です。全従業員がCDSを作成し、それをもとに上長とのCareer Interviewで自身のキャリアについて語り合います。実施頻度は半期に一度です。
※CDS内の「キャリアプラン」(後述)は一般的な「キャリアプランシート」にあたる

「Do」の部分では、人事によって、従業員が描いたキャリアの実現を支援します。例として、以下のものがあります。

  • ・上司による業務アサイン・成果創出支援(MBOや中間面談、評価フィードバック等を通して)
    ・キャリアの選択機会(社内公募、手上げ昇格)
    ・キャリア実現に向けた学習機会(リーダーシップ研修、ビジネスコア研修、組織マネジメント研修、職種別専門領域研修、その他自学支援策)

「See」部分では、CDS作成・Career Interviewの実施状況や、従業員向けアンケートの結果を確認し、次回へのアップデートを行います。

Q3. CDS作成とCareer Interview実施について、人事の設計意図を教えてください。

WHI 上村:
Career Interview実施の狙いはふたつです。ひとつは従業員が自身のキャリアに向き合い言語化する機会を作ること。次に上司が部下のキャリアを把握し、日頃の業務で支援する機会を作ること。

さらに人事としても、実施率やアンケートを通じて従業員のキャリア観を把握し、必要な支援に繋げたいという意図があります。そのCareer Interviewを実施するために、土台として用意したのがCDSです。

Q4. CDSはどのように作成されていますか?

WHI 上村:
CDSはCOMPANY Talent Management(以下、CTM)のキャリアシート機能を利用して作成しています。シートの記入欄は、以下4つのパートに分かれています。

  • (1)キャリアアンカー
    (2)キャリアヒストリー
    (3)キャリアプラン
    (4)キャリアデザイン

(1)キャリアアンカー

WHI 上村:
キャリアアンカーの欄には、自分が大事にしている価値観や資質(強み・弱み)、興味・関心を記載します。

ポイントはエピソードを交えて書くという点です。これによって各自のキャリア観の解像度が上がり、本人と上司の認識齟齬を減らせるのではないかと考えています。

興味・関心については業務に関連するものに限定しておらず、たとえば趣味や副業の話等でも問題ありません。普段このような会話を得意としないような方でも、コミュニケーションがとりやすくなるように設けている項目です。

キャリアアンカー.png

(2)キャリアヒストリー

WHI 上村:
キャリアヒストリーには、これまでの職務内容や経験を記載します。

前職のある方はそれも含めてよいとしており、記載の粒度にも制約は設けておりません。職務内容だけでなく、職務の中で学んだことや得られた知識・スキル等も記載させている点がポイントです。

ちなみにシート作成当初は10行だったのですが、勤続年数の長い従業員から「行数が足りない」という声があり、現在は20行にしています。

キャリアヒストリー.png

(3)キャリアプラン

WHI 上村:
キャリアプランのパートは、「5年後になりたい姿」「3年後になりたい姿」「1年後になりたい姿」と、未来から現在へ近づく構成にしています。

なりたい姿だけでなく、「なりたい姿との現時点とのギャップ」や「達成するために取り組むこと」を記載することで、キャリアプランの具体化をサポートします。

キャリアプラン.png

(4)キャリアデザイン

WHI 上村:
キャリアデザインは、事前に実施したキャリア研修と連動しています。

研修内で実施したワークの内容を振り返り、変化があったかどうかを確認するきっかけにしたいという思惑です。また「WHIキャリアパス制度の活用」の欄で、会社からの支援策があることを思い出しながら今後の学習計画を立ててもらうことで、さらに自律的なキャリアプラン形成を促しています。

キャリアデザイン.png

Q5. CDSやCareer Interviewで集まるのは定性的な情報だと思いますが、人事ではどのように分析や活用をしていますか?

WHI 上村:
CDSについてはあくまで現場での活用を想定して設計しているため、現状として、人事では従業員の記載内容を分析していません。

Career Interview実施後のアンケートは、定量的な数値を含め確認・分析し、従業員の傾向を把握することで、次回実施に活かしています。

Q6. Career Interview実施後のアンケートで寄せられた、従業員の反応を教えてください

WHI 上村:
実施回によらず全体の75%前後がポジティブな反応、25%前後はネガティブな反応です。

従業員からのポジティブな反応

  • ・長期的な目標を見直して、そこから日頃の業務の取り組み方を意識できた
    ・上司と部下でやり取りをすることで、考え方の違いが見えて面白かった
    ・先輩がどんなことを考えて働いているのかを知ることができた 他

  • 従業員からのネガティブな反応

  • ・半年だとキャリア観があまり変わらない 他


WHI 上村:
「半年だとキャリア観があまり変わらない」という指摘に関して、毎回どれくらいの方がキャリア観の変化を感じているか観察してみました。

結果として、3割から4割程度の方に考え方の変化が見られています。逆に6割ほどは特に変化がないということですが、キャリア観が変わるきっかけ(ライフイベントや新たな業務への挑戦等)は、いつどこでやってくるかわかりません。

小さな変化のきっかけを見逃さないよう、今後も半期に一度の頻度で続けるつもりです。

 

従業員のキャリア形成を支援するための自学支援例

Q7. CDSやCareer Interview以外に、従業員のキャリア自律に向けた取り組みはありますか?

WHI 上村:
描いたキャリアの実現に向けて、いくつか学習機会の提供を行っています。

自学支援として実施しているのは、GLOBISやUdemy等のオンライン学習サービスを利用した「学び放題」です。また、業務に役立つ書籍の購入費用を会社が負担する「書籍購入支援制度」を設けています。

書籍費用はCOMPANY Web Serviceで申請し、提出時の書評入力が必須です。制度を開始した2022年7月から半年ほどで利用者数約500名、利用冊数1,600冊超と、多くの従業員に活用されています。
 

キャリア形成支援やCTM活用における今後の展望

Q8. キャリア形成支援やCTM活用の施策について、今後実施を検討しているものは何ですか?

WHI 上村:
これまでお話しした施策を実施する中で、新たに以下の課題が見えてきました。

・個人のキャリアビジョンが明確になった一方で、社内で求められる専門知識やスキルを従業員が具体的に理解することが難しい
・上司が従業員のキャリアプラン実現を支援する際に、具体的な支援策を提示しづらい

これらの課題を解決するために、職種別のスキルマップを社内公開し、キャリアプランの解像度をより高めたうえで効果的な打ち手を模索していきたいと考えています。具体的には以下の通りです。
 

全従業員 ・職種別のスキルマップをもとに、自身の保有スキルおよびスキルレベルについてCDS上で自己申告する
全従業員
(上司部下)
・自己申告したスキルについて、上司部下でCareer Interviewを実施する
・スキルレベルの妥当性、今後伸ばしたいスキル、スキルエンハンスの具体的な手段について会話し、アクションプランに落とし込む
人事 ・自己申告情報をもとに従業員の保有スキル情報を集約し、各組織にスキルレポートを作成
・各組織のスキル傾向を考慮し、業務アサインや今後の人材育成方針に繋げる

※本記事は2023年5月時点の情報です。

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