週休3日制で給料はどうなる?メリット・デメリットを徹底解説

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週休3日制で給料はどうなる?メリット・デメリットを徹底解説

2021年6月9日(水)に経済財政諮問会議にて政府から2021年の骨太の方針の原案が公開されました。

『多様な働き方の実現に向けた働き方改革の実践、リカレント教育の充実(フェーズⅡの働き方改革、企業組織の変革)』の中では「育児・介護・ボランティア、地方兼業に活用できることから、選択的週休3日制の導入を企業に促し、普及をはかる。」と説明されています。育児にかかる社員に対しては法定で短時間勤務や休暇等の措置が義務付けられており、労働時間を短縮したり休日を増やしたりする制度を導入している企業が少なくありません。
今回の方針は、介護やボランティア、地方兼業にも活用できるような制度として普及することが期待されています。

 

厚生労働省の令和元年雇用均等基本調査によると、休日を増やすことを含んだ所定労働時間を短縮する制度のうち、育児によるものは72.1%の事業所で導入、17.7%の社員が実際に利用しています。また、多様な正社員制度として用意されている短時間正社員制度は、16.7%の事業所で導入され、2.2%の社員が実際に利用しています。両制度とも多様な働き方を実現するための制度であるものの、利用率は非常に低くなっていることがわかるでしょう。
 

本記事では、これらの理由を選択的週休3日制の導入企業における事例を参考に探っていきます。

 

目次

週休3日制の概要

週休3日制の3パターンにおけるメリット・デメリット

給料以外に気を付けたい、週休3日制で変わる3つのポイント

週休3日制はいつから導入するべき?

 

週休3日制の概要

選択的週休3日制とは、希望する労働者に対して、企業が1週間に3日の休日を付与する制度です。増えた休日を大学院での学びなおしに活用したり、副業や兼業、子育て、介護、治療、ボランティア活動等に活用することが想定されています。(※第4回経済財政諮問会議に提出された資料「1-1.ヒューマン・ニューディールの実現に向けて」より)

ここでは、休日を1日追加付与する制度に加えて、育児・介護等でよく利用されている短時間制度をあわせて選択的週休3日制とし、先行導入企業における休日分の労働時間と基本給(給料)の扱いをもとに、3つに分類して説明していきます。

1つ目は「休日分の労働時間を別の日の労働時間に加えて給料はそのままの制度」、
2つ目は「休日の労働時間分を基本給(給料)から減額する制度」、
3つ目は「時間単位で労働時間を短縮し、短縮した分を給料から減額する制度」
です。

それでは詳しく見ていきましょう。

 

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①労働時間変形型(変形型)

労働時間変形型では、休日を1日単位で増やします。休日に労働する予定の時間は残りの労働日に分配し、給料も据え置きとする制度です。給料が減らないため、社員への金銭的な影響は少ないものの、1日の労働時間は長時間になります。
また、恒常的に労働時間が1日8時間を超えるため、割増賃金が増加し、人件費が上昇することにもなります。そのため多くの企業では、フレックスタイム制、1か月単位の変形労働時間制を利用し、割増賃金発生の抑制も同時に行います。

②休日増加型(休日増型)

休日増加型ではその名の通り、休日を1日単位で増やします。その代わり、休日に労働する予定の時間分の給料を減額する制度です。
週5日・フルタイムの正社員が休日を1日増やすと、給料は、1日(休日増分)/5日(フルタイムの週勤務日数)で約2割ほど減額されます。

③労働時間短縮型(時短型)

労働時間短縮型は、休日増加型と違って、休日を1日単位ではなく、時間単位で労働時間を短縮し、短縮した時間分の基本給を減額する制度です。
丸1日休むほどではないものの、週に1回毎週金曜日の午後は地域の活動に充てたい、兼業の時間に充てたい等、社員のニーズへの柔軟な対応が可能になります。

 

週休3日制の3パターンにおけるメリット・デメリット

もちろん上記3つのパターンにはそれぞれ、メリットとデメリットがあります。
1つずつ見ていきましょう。

①労働時間変形型(変形型)

メリット:
・給料が減額されないため、経済的な不安なく制度を利用できる。
・週1日分の時間をすべて別のことに充てることができる。
 大学院をはじめとする本格的な学びなおしに取り組むことが可能。

デメリット:
・フレックスタイム制、1か月単位の変形労働時間制等、労働時間を柔軟にする取り組みをあわせて実施する必要がある。(すでに実施済みの場合は不要)
・恒常的に1日の労働時間が長くなるため、健康管理対策を強化する必要がある。

②休日増加型(休日増型)

メリット:
・週1日分の時間をすべて別のことに充てることができる。
 大学院をはじめとする本格的な学びなおしに取り組むことが可能。
・企業にとっては人件費を削減することができる。

デメリット:
・給料が大幅に減額されるため社員に経済的な不安がある。
・労働力が1日分少ないため、部署運営をする管理職の負担が増える。

③労働時間短縮型(時短型)

メリット:
・丸1日休むほどではないが、週に半日ほどボランティアに参加したい、副業の時間に充てたい等、柔軟に社員の希望を反映できる。
・給料の減額を時間単位で行うため、減収を生活に影響のない範囲にコントロールできる。
・企業にとっては人件費を削減することができる。

デメリット:
・所定労働時間、給与等を時間単位で短縮するため、勤務管理・給与計算が煩雑になる。
 

週休3日制では給料が減る確率のほうが高い

上記の②と③の制度については給料が減額されます。多くの場合、給料と連動して計算される賞与もまた、同様に減額されます。そのため、給料の減額は月収ではなく年収で判断することとなります。

例として、年収が600万円の正社員が週1日休日を増やした場合、年間120万円、月にすると10万円、給料が減額になります。大学院やビジネススクール等に通う場合は、さらに学費も必要です。冒頭で説明した厚生労働省の調査で、週休3日制はあっても利用率が2.2%と低いのは、このような経済的不安からデメリットを感じているものと思われます。

制度のメリットを伝え、利用を推進するのために、自民党の一億総活躍推進会議が金銭的な課題を解決する必要があると言っているのも頷けます。
 

給料以外に気を付けたい、週休3日制で変わる3つのポイント

休日の増加や労働時間の短縮で気を付けるべきポイントは、所定労働時間や給料・賞与に関することだけではありません。他にも、諸手当や退職金、休暇等も考慮する必要があります。

ここからはそれぞれの制度ごとに週休3日制を構築する際の制度設計における気を付けるべきポイントを3つ説明します。

 

各種手当

大手企業では給料以外に、通勤手当、扶養手当、単身赴任手当等、生活関連手当と呼ばれる手当があります。これらは長期継続雇用を前提に、従業員のライフステージに応じた生計費の増加に対処する目的で支給されています。

通勤定期を利用している場合は、通勤のための費用は休日が2日でも3日でも変わりません。家族を扶養するための負担も、休日の日数によって増減するものではありません。このような手当に対して、労働時間が短縮された分を減額することは、制度を利用したいと考えている社員の納得を得られないでしょう。そのため、給料とはわけて、それぞれの手当の目的にあわせて減額する・しないを判断する必要があります。

 

退職金

退職金には、勤続年数型、ポイント型、給与切出型の確定拠出年金(DC)・確定給付年金(DB)等、様々なものがあります。
勤続年数型やポイントの算出に基本給、職能等級、勤続年数を利用しているのであれば、基礎となる基本給に応じて勤続年数、ポイントを減額する必要があると考えられます。

逆に、毎月の基本給の一部を取り崩して退職金に積立てる、給与切出型のDB・DCは、基本給の金額とは関係なく社員の希望で毎月の金額が決まります。そのため、連動せず希望の額をそのまま積み立てることが妥当でしょう。基本給と連動するものは減額し、連動しないものは減額しない、と切り分けると整理がしやすいです。

 

年次有給休暇

週に1日、休日を増やした場合、週の勤務回数が5日から4日に減ります。この場合、年次有給休暇の付与日数は週5日勤務の社員との均衡を考慮し、週4日勤務者用の日数を付与することが公平と考えられます。しかし、労働基準法では週の勤務日数が4日以下かつ週の労働時間が30時間未満の場合、比例付与してもよいことになっています。週休3日制で休日を1日増やしても労働時間は40時間から32時間となり、週の労働時間が30時間以上となるので比例付与はできません。
つまり年次有給休暇は、週休2日と週休3日どちらも同じ付与日数にしなければならない点に注意が必要です。

 

週休3日制はいつから導入するべき?

今回は選択的週休3日制の概要とメリット・デメリット、そして関連する人事制度における変更点・注意点をご紹介しました。ではこの制度を、企業はいつから導入すればよいのでしょうか。急いで準備をしたほうがよいのでしょうか。

現段階ではリカレント教育を目的とした選択的週休3日制の導入に対する政府からの具体的な支援は決まっていません。また、休日を増やした際の給料の減額による社員の負担は大きなもので、利用者が急拡大することはあまり見込めないと言えます。
そのため、いつから導入したほうがよいか、というと、労働組合や多くの社員から制度の導入を強く要請されない限りは、急いで準備をする必要はないでしょう。環境の変化に備えて先行導入企業の状況を見ておくことで問題ないと考えられます。

 

本記事が各企業ご担当者の一助となりましたら幸いです。
 

 

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この記事を書いた人

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井口 克己 (Iguchi Katsumi)

朝日新聞社で人事管理、給与計算、労働・社会保険事務等を担当した後、ワークスアプリケーションズへ入社。
人事給与システムの導入コンサルタントとして導入支援を行う傍ら、自社の規模拡大に伴う導入部門組織の構築、役員・他部門との連携・調整、メンバーのマネジメントを手がける。
2017年には社会保険労務士の資格を取得。働き方改革関連法に関して社内随一の知識をもち、社内外に向けて数多くの勉強会を開催している。
 

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