給与デジタル払い解禁はいつから?2022年最新情報やメリットとは

給与デジタル払い解禁はいつから?2022年最新情報やメリットとは

公開日 2021年2月26日
更新日 2022年7月20日
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2022年5月現在、厚生労働省は「給与デジタル払い(デジタルペイロール)」を導入する検討を続けています。

企業が銀行の口座を介さず、スマートフォンの決済アプリや電子マネーを利用して振り込むことができる制度である「給与デジタル払い」。こういった厚生労働省の給与デジタル払い導入に向けた方針は、人事担当者にどのような影響を与え、どのように備えていくことが必要となるのでしょうか。

本記事では、給与デジタル払いの基本やメリット・デメリット、実際に取り入れる場合の方法を、当社で実施したアンケートの結果とあわせてご紹介します。
 

 

目次

給与のデジタル払いとは?
政府が給与のデジタル払いを解禁する4つの理由
アンケート調査:給与のデジタル払いにおける企業の検討状況
給与のデジタル払いを実施する場合のしくみ
給与のデジタル払いによる企業や従業員へのメリット
給与のデジタル払いによる企業や従業員へのデメリット
給与のデジタル払いを実施する場合は、段階的な着手が有効
 

給与のデジタル払いとは?

給与のデジタル払いとは、企業が銀行の口座を介さず、スマートフォンの決済アプリや電子マネーを利用して振り込むことができる制度のことです。

厚生労働省が中心となり、制度の導入に向けて検討を進めています。

これまで、給与は通貨による支払いを原則としていましたが、QRコードを利用したキャッシュレス決済が広まる時代に合わせ、デジタル化の動きが普及しています。

 

政府が給与のデジタル払いを解禁する4つの理由

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厚生労働省は、なぜ給与のデジタル払いを推進しようとしているのでしょうか。その理由として、下記の4点が挙げられます。

①「新たな生活様式」に対応した規制改革推進の一環としての位置づけ
② 外国人労働者の受け入れ拡充に向けた施策の一環
③ キャッシュレス決済の推進、およびフィンテックを活用した、金融サービス提供の拡大、国際競争力の強化
④ 厚生労働省の調査で、約4割の利用者(※)がデジタル払いを「検討する」と回答し、一定のニーズがあると判断 
 ※厚生労働省「資金移動業者の口座への賃金支払について」より
 

このように、給与のデジタル払いを推進することで、外国人労働者の受け入れや金融サービス市場の拡大、規制緩和といった複合的な課題の解消や成長促進を図ることができます。

一方で、政府内の検討会においては、様々なリスクや懸念点についての指摘も挙がっています。代表的なものは下記の2点です。

①資金移動業者の経営の安定性や資金保全についてのリスク管理の観点
 → 従業員の賃金を預けても問題がないスキームとなっているのか?

②換金性の担保や個人情報保護等、従業員の保護の観点
 → デジタル払いによって従業員に不利益やリスクは生じないのか?
 (換金時の利便性や手数料の発生有無、個人情報保護やスマートフォン紛失時のリスク等)

給与のデジタル払いは、これまでのように金融機関を介した通貨による支給ではありません。資金移動業者と呼ばれるQRコード決済や電子マネーによる決済を運営する企業を介してデジタル情報で支給が行われます。

そのため、資金移動業者の破綻や統廃合といった経営面の都合で、資金保全のリスクが発生しない制度設計が必要です。

また、仮に給与のデジタル払いが浸透していく場合も、日常生活の中で一定以上の割合では通貨の利用は必要となるでしょう。そのため、従業員が換金しようとした時に手数料が発生したり、制約が発生したりすることがないようなしくみにする必要があります。

こういったリスク・懸念点は、給与デジタル払い解禁に向けての最低ラインの議論といえるでしょう。


アンケート調査:給与のデジタル払いにおける企業の検討状況

では、給与デジタル払いについて、各社ではどのような検討がされているのでしょうか。

当社では、人事システムCOMPANYをご利用中のお客様に、給与デジタル払いの検討状況についてアンケートを実施しました。下記の回答をいただいています。
 

<調査概要>

1.調査対象
 COMPANY利用中の法人・団体
2.調査方法
 
インターネットを利用したアンケート調査
3.調査期間
 
2021年2月15日(月)~3月5日(金)

※ 中間速報としての有効回答数:185法人
※ 同一法人複数名による回答を含みます

 

デジタル払いの利用意向

 

デジタルペイロール_利用意向.png

 

 

デジタル払いの利用目的

 

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デジタル払いの利用における障壁

 

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約3分の1の方が、給与デジタル払いを「検討中」ないしは「検討予定」だとわかりました。また、利用の目的は「銀行振込手数料の削減」と「従業員への福利厚生」が中心とのことです。

ただし、システムコストおよび運用コスト、運営会社の与信を障壁と考えている方も多いようです。

総じて検討に値する制度であることは確かでありますが、コスト面やリスク面において考慮すべき点が多く、実現に向けてすぐに動き出せる段階ではない、というのが現状かと考えます。 
 

給与のデジタル払いを実施する場合のしくみ

各企業で給与デジタル払いを実施する場合、どのようなしくみ・方法で運用することになるのでしょうか。必要なことは、下記の4点です。

・中間連携を行うための事業会社の選定
・事業会社のシステムに対する出力用のデータ形式の要件決定
・既存給与システムにおける各従業員との連携用のキー情報の収集と登録
・既存給与システムからのコード決済・電子マネー用のデータ出力とシステムへの連携

具体的に想定されうる給与デジタル払いの構成は、下記のフローとなります。
 

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各企業が直接コード決済、電子マネー運営業者と連携することは現実的ではありません。

そのため、中間に「給与データからコード決済や電子マネー用のデータへの変換」と、「各運営会社へのデータ連携」を行うための事業会社が参画し、システムを導入する必要があります。

 

給与のデジタル払いによる企業や従業員へのメリット

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給与のデジタル払いを実施すると、企業や従業員にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

 

①銀行口座を持たない従業員へ給与デジタル払いでの支給が可能

外国人労働者のような銀行口座開設へのハードルが高い従業員への給与支給方法として、デジタル払いという選択肢が広がります。

ただし、コロナ禍において、新規の外国人労働者の受け入れが大きく減退している状況があるため、ニーズが低下している可能性があるでしょう。
 

②従業員への福利厚生の一環

「給与のうち、一定額はQRコード決済や電子マネーでの支給を可能としてほしい」というニーズがあることがアンケート調査の結果からも判明しています。

そのため、給与のデジタル払いを選択肢として用意することは、企業の福利厚生の一環とすることが可能でしょう。

また、QRコード決済や電子マネー決済が促進されると、キャッシュバックやポイント還元といった具体的なメリットが拡大することにもつながります。

今後、各運営会社が給与のデジタル払いに合わせたポイント還元等のキャンペーンを実施するのであれば、従業員(場合によっては企業)側もメリットが得られる機会が増える可能性があるでしょう。
 

③振込手数料の削減

各従業員に複数口座への給与振込を認めている場合、メイン口座以外の口座への振り込みがデジタル化されれば、その分の振込手数料を削減することにつなげられるでしょう。

 

④社会の変化へ対応している企業というイメージの向上

給与のデジタル払いを許可・促進するという企業の姿勢は、社会の変化や多様性を理解し、重視するという企業メッセージを内外に与える効果があると考えます。そして結果的に、採用面や従業員のエンゲージメントの観点でプラスの効果が期待できます。

 

給与のデジタル払いによる企業や従業員へのデメリット

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前項のようにメリットと考えられる点も数多くありますが、法律上定められている「賃金支払いの5原則(※)」を大きく見直すということもあり、慎重な検討が必須です。

(※)労働基準法第24条において、賃金は、(1)通貨で、(2)直接労働者に、(3)全額を、(4)毎月1回以上、(5)一定の期日を定めて支払わなければならないと規定されています。今回の給与デジタル払いは、(1)通貨が大きく変化することになります。

給与デジタル払いでデメリットや運用リスクとされている点は下記の通りです。

 

①給与のデジタル払いと賃金払いの二重運用が発生

「給与の一部をデジタルで支給してほしい」という従業員は多くても、給与の全額をデジタル化することを希望する従業員はわずかでしょう。

したがって、銀行口座・デジタル給与のキーといったデータの二重管理や、銀行振込データ・デジタル連携データの二重出力といったように、運用面での二重化が進んでしまいます。

 

②個人のキーを担保する方法が困難

給与のデジタル払いにおける連携については、そのキー情報を従業員から収集する必要があります。そのため、正統性をどのように担保するか、という課題が発生するでしょう。

銀行口座のデータであれば、銀行名や支店名、口座名義によってある程度視認することができますが、キー情報はそういった識別をすることが困難な可能性があります。

 

③システム連携費用や運用工数の増大

上記①②のポイントにより、中間連携システムにおいて、従業員からの情報をなるべく自動的に反映させるためのしくみが必要です。

ただし、自動連携化を進めれば進めるほど、既存の給与システムへの改修も必要となることが予想されます。結果的に、開発や運用のコストに跳ね返ってくるでしょう。

通常、業務のシステム化は、様々な利便性や効率化につながるものですが、給与デジタル払いは、これまでの運用がそのまま残ったうえに、追加のシステム構築が必要となります。

そのため、前項に記載したメリットのうち、定性的なメリット面が大きく評価されなければ、コスト面のデメリットが発生してしまい、実施につながらなくなるのではないでしょうか。

 

 

給与のデジタル払いを実施する場合は、段階的な着手が有効

給与デジタル払いを少しずつでも進めたいということであれば、賞与の一部から先行的に実施する方法もよいかと思います。希望者は全社一律3万円分のみといったように、決まった形でスタートすれば、混乱も少ないでしょう。

また、実際に企業の給与全体で実施する場合は、まず希望者の第2銀行口座、第3銀行口座で実施するという形になると考えます。

以上を踏まえると、特に企業側は、メリットに比べてデメリットやリスクが大きいように感じられます。ですが、今後デジタル化が加速していくことは間違いありません。そのため、社会の変化に対応するためのしくみを準備しておくことは大切です。

したがって、将来を見据えた段階的な変化を実施したいという場合、給与のデジタル払いはその検討に値するのではないかと考えます。
 

 

この記事を書いた人

ライター写真

伊藤 裕之(Ito Hiroyuki)

2002年にワークスアプリケーションズ入社後、九州エリアのコンサルタントとして人事システム導入および保守を担当。その後、関西エリアのユーザー担当責任者として複数の大手企業でBPRを実施。現在は、17年に渡り大手企業の人事業務設計・運用に携わった経験と、1100社を超えるユーザーから得られた事例・ノウハウを分析し、人事トピックに関する情報を発信している。

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