ウェルビーイングの意味とは?ビジネスで注目される背景や企業事例を解説

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最終更新日 2024年2月21日

ウェルビーイングの意味とは?ビジネスで注目される背景や企業事例を解説

よい人材を確保するための施策、あるいは会社の成長戦略として、「ウェルビーイング」を取り入れる企業が増えています。

今回は、心と体の健康・生きがいに関係するウェルビーイングが、経営に与える影響や実践方法について、海外や国内の事例をもとに解説します。

目次

ウェルビーイング(well-being)の意味とは?
ウェルビーイングを構成している5つの要素
ウェルビーイングを測るための3つの側面
ウェルビーイングが現代のビジネスで注目される背景
企業にとってウェルビーイングに取り組むメリットとは?
海外におけるウェルビーイングの取り組み
日本国内におけるウェルビーイングの取り組み
ウェルビーイングの実践方法

ウェルビーイング(well-being)の意味とは?

ウェルビーイング(well-being)とは、「幸福」「健康」「福利」等の言葉で表される概念のひとつです。

WHOの設立に先立って1946年に採択された『世界保健憲章』には、ウェルビーイングについて「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳)」と書かれています。

また、厚生労働省がまとめている『雇用政策研究会報告書 概要(案)』には、一人ひとりの豊かで健康的な職業人生を実現するために、ウェルビーイングの向上と生産性向上の好循環を目指すことが示されています。

※引用:
厚生労働省『雇用政策研究会報告書 概要(案)
日本WHO協会『健康の定義

ウェルビーイングを構成している5つの要素

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アメリカの世論調査・コンサルティング会社のギャラップ社は、160か所以上の国や地域への調査をもとに、ウェルビーイングには5つの要素が存在すると定義しています。

幸福度に関するこの調査では、次のようなポジティブ体験とネガティブ体験に関する設問が採用されました。
 

ポジティブ体験の例 ネガティブ体験の例
・よく休めているか?
・日々を楽しめているか?
・身体的な苦痛を感じているか?
・なにか心配事があるか?

 

上記の体験に基づく設問と、自分の人生を点数で自己評価する設問を通して、網羅性のある調査結果を導きだしています。

ここからは、この調査結果を踏まえて、ギャラップ社が定義したウェルビーイングの5つの要素について説明します。

①キャリア ウェルビーイング:キャリアの幸福

キャリアとは、仕事上の経歴や評価だけではありません。ここでいうキャリアとは、自分自身の生き方そのものを指します。

たとえば、仕事や家事・育児、ボランティア活動、自己啓発、趣味にいたるまでの毎日の生活が生き方であり、キャリアです。

仕事も含めて日々の生活に満足できているか、充実した毎日を送れているかが、キャリアの幸福における指標です。働き方改革やワークライフバランスは、キャリア ウェルビーイングに貢献する可能性のある活動といえます。

②ソーシャル ウェルビーイング:人間関係の幸福

ソーシャルとは社会的・社交的等の意味を持つ言葉です。また、SNSはソーシャルネットワーキングサービスの略であり、インターネットを使った人と人との交流の場といえます。

つまり、ソーシャル ウェルビーイングは人間関係の幸福を表す概念です。

ここでいう「幸福」とは、友人・知人との交流が多いか少ないかだけではなく、信頼と愛情をもった関係性をいかに築けているかがポイントです。

ビジネスにおいてのソーシャル ウェルビーイングの実現には、上司や部下、同僚と信頼関係を築きやすい環境づくりが求められます。

③フィナンシャル ウェルビーイング:経済の幸福

フィナンシャルとは金融・財政などの意味を持ちます。つまり、フィナンシャル ウェルビーイングは、経済的な幸福度を表す概念です。

具体的には、仕事によって報酬を得られているか、自分自身に対する報酬に満足できているか等の指標で測られます。また、資産を自己管理できているかどうかもポイントです。

④フィジカル ウェルビーイング:身体の幸福

フィジカル ウェルビーイングは、身体的な幸福を表します。心も体も健康で、思い通りの行動ができているか、ポジティブな感情を持って活動できているかが指標となります。

ビジネスにおいては、仕事に対するモチベーションを保てているか、ポジティブに仕事に取り組めているか等が関係します。

このフィジカル ウェルビーイングは、労働時間や業務量、職場環境などの影響を受けやすいため、企業努力によって従業員の健康とメンタルヘルスを向上させることが可能です。

⑤コミュニティ ウェルビーイング:地域社会での幸福

コミュニティとは、地域や身近な人との共同体を表します。町内会や子ども会、マンションの住民同士の集まり等もコミュニティの一種です。

ギャラップ社が定義したコミュニティ ウェルビーイングにおいては、家族や親戚、友人同士のまとまりや、学校や職場等である単位の集まりを形成することをコミュニティと呼んでいます。

コミュニティ ウェルビーイングでは、所属するコミュニティを形成できていて、その中で幸福を感じていることが必要です。ビジネスにおいては、会社単位や所属部署ごとのコミュニティにおいての幸福度で測られます。

ウェルビーイングを測るための3つの側面

ウェルビーイングを取り入れるにあたっては、現状を測る必要があります。従業員の「ウェルビーイングの状態」を把握するためには、3つの側面からの検証が必要です。

医学的側面におけるウェルビーイング

フィジカル ウェルビーイングに定義されているように、健康を損なった状態はウェルビーイングとはいえません。

心身ともに、問題が生じていないかを確認すれば、ウェルビーイングではない状態を見つけることが可能です。これは医学的な領域となるため、通常の健康診断やメンタルヘルスのチェックシート等で健康状態を確認することにより測定できます。

また、心身のウェルビーイングを保つためにも、普段から自分自身の健康状態に関心を持たせる取り組みが必要です。

快楽主義的なウェルビーイング

快楽心理学をもとに、感情的な状態を測ります。

具体的には、心拍数やホルモンの状態等の生体反応と、日誌や資料等の自己認識を用いて精神状態を分析する手法が挙げられます。

自己認識とは、ポジティブ体験やネガティブ体験の評価や、人生の満足度を自己申告するものです。ただし、この方法ではその時の気分や、直近の体験の影響が強く関係するため、主観的な感情をベースとした判断基準になりかねません。

また、豊かさや幸福の判断基準としては範囲が狭いという側面もあります。

持続的かつ包括的に捉えるウェルビーイング

その時々の感情に左右されることなく、持続的・包括的な心の豊かさを捉える考え方が、近年主流となっています。具体的には、自分自身の潜在能力の発揮や、人生の意義を見つけることが重要視される手法です。

持続的ウェルビーイングでは、モチベーション維持に関係する以下の3項目を軸としています。

自律性 生き方に自己決定権を持っている
関係性 課題を解決できる能力が自分にあると感じる
有能感 他者とのつながりを感じ、受け入れられていると感じる

 

※Ryan, Richard M., and Edward L. Deci. “Self-determination theory.” Basic psychological needs in motivation, development, and wellness (2017). 「自己決定理論における動機づけ概念間の関連性―メタ分析による相関係数の統合」 岡田涼 パーソナリティ研究2010 第18巻 第2号 152–160

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これらの項目が満たされているかだけではなく、阻害されているかどうかによってマイナス要因になるケースもあります。

ウェルビーイングが現代のビジネスで注目される背景

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ビジネスにおいてウェルビーイングに注目が集まっている背景には、現代における様々な課題との関係性があります。ここからは、企業がウェルビーイングを取り入れることでプラスとなる要素についてご紹介します。

ダイバーシティを重視する社会への変化

ダイバーシティとは、人種や性別、年齢やワークスタイル、宗教や価値等にとらわれず多様性を受け入れることです。ビジネスにおいては、多様な人材を受け入れることにより、企業の競争力を高めることを目的としています。

今後は、さまざまな価値観を持つ人同士がコミュニケーションを交わす社会となります。多様化するグローバルなニーズに対応するため、革新的な技術・サービスを創造するには、人材の多様化が近道といえるためです。
 

それぞれの能力が妨げられることなく発揮できるよう、従業員の幸福感を守るための環境整備や、意識改革などのウェルビーイングへの取り組みが求められます。

働き方改革への取り組み

2019年4月から始まった働き方改革は、働く人の事情にあわせて、柔軟な働き方が選べる社会の実現を目指しています。これは、働き手を守るための改革だけではありません。

働き手にとって魅力ある職場環境を整えることが、優秀な人材の確保につながり、ひいては企業の業績向上へとつながると考えられています。

企業においては、深刻化する人材不足への対策としても有効です。優秀な人材の確保と労働効率の向上を狙うには、多くの人にとって幸福感のある働きやすい環境や制度を検討する必要があるでしょう。

SDGsへの取り組み

SDGsとは、持続可能なよりよい社会の実現を目指して掲げられた世界全体の目標です。2015年に国連サミットで採択され、2030年までに実現を目指す具体的な17のゴールを設定しています。

ウェルビーイングは、この17の目標(ゴール)のなかで以下のように挙げられています。

「Good Health and Well-Being」(すべての人に健康と福祉を)

職場においては、安全な職場環境づくりやオーバーワークを防ぐしくみの構築などがまさにSDGs
であり、ウェルビーイングへの取り組みといえます。

企業にとってウェルビーイングに取り組むメリットとは?

ウェルビーイングは、働く従業員にとっても、企業にとってもよい影響を与える考え方です。ここでは、ウェルビーイングに取り組むメリットをご紹介します。

従業員のモチベーション向上によって生産性が向上する

ウェルビーイングには、モチベーションの維持に関わる指標があり、従業員のモチベーションの推移を把握できます。

ウェルビーイングの取り組みは、企業に対する不安・不満の高い状態を長引かせることなく、良好な状態を保つことにつながります。さらに、従業員のモチベーションを維持して、やりがいを持たせることで生産性の向上も期待できるでしょう。

職場内のウェルビーイングを高め、一人ひとりのパフォーマンスを向上させることは企業の業績向上にもつながると考えられます。

従業員の離職率が低下しやすくなる

ウェルビーイングを通して、会社や仕事への満足度が上がれば離職率が低下しやすくなります。居心地のよい職場環境や、自律して仕事へ取り組める制度を導入することで、「長く勤められる会社」として社会的な評価も高まるでしょう。

 

また、安定して自社へ長く勤める人材を増やすことで、教育にかかる費用を減らすこともできます。ほかにも、会社に愛着を持って働いてもらうことで、会社への貢献度が高まり、ひいては企業力の強化につながります。

優秀な人材が集まりやすくなる

離職率の低下や業績の向上、魅力ある働き方の提案・制度の充実によって、優秀な人材が集まりやすくなるといったメリットもあります。

在宅勤務/テレワークの推進やコミュニケーションが取りやすい環境整備等を通して、さまざまな状況に応じた新しい働き方のモデルを実践すれば、職場環境や人間関係の充実した会社として認知され、求職希望者を確保しやすくなります。

海外におけるウェルビーイングの取り組み

海外では、ウェルビーイングにどのように取り組んでいるのでしょうか。ここでは、海外におけるウェルビーイングの取り組み事例をご紹介します。

A社:情報サービス系

健康情報サービス系企業では、企業向けのウェルネスプログラムを提供しています。

このプログラムでは、従業員のウェルビーイングを評価して、個人向けにカスタマイズした改善プランを提案することで心身の健康維持を支援しています。

また、欠勤者やパフォーマンスの低い従業員の減少度合い、医療費の削減、離職率の低下等の評価基準をもとに、成果を測定するしくみも構築しています。測定しにくいウェルビーイングの成果を、企業にとって有用な指標で示した例の一つです。

B社:IT系

B社は、「デジタル」におけるウェルビーイングを提唱しました。具体的には、デジタル機器への依存を防ぐ取り組みです。

開発製品の設計思想に、デジタルへの依存を防ぐしくみを取り入れており、実際に製品へ使いすぎを防止する機能の搭載を義務付けました。

これは、デジタル機器に振り回される時間が多いほど、自分らしい生き方ができなくなるとの考えに基づきます。デジタル機器への依存を防ぐために、端末の使用量を見える化をしたり、夜間に電源を切る時間を設定したりできるアプリの開発を行っています。

日本国内におけるウェルビーイングの取り組み

日本国内にも、ウェルビーイングの取り組みをする企業が増えています。

C社:食品系

C社では、「健康宣言」としてウェルビーイングを掲げており、従業員の健康経営を推進しています。

具体的には、定期的に実施する健康診断結果をもとに、健康改善度合いを評価して表彰するしくみや、データ活用によって健康管理をしやすくする取り組みが行われています。

▼データ活用例
・健康診断結果の履歴を可視化
・就労時間や有休取得日数の確認
・ヘルスケア情報の提供
・運動、食事、睡眠、気分について可視化
・食堂メニューとの連動

ほかにも、禁煙プログラムによる支援や健康に関するセミナーの開催を通じて、従業員の健康促進を図っているようです。

D社:情報通信系

D社では、コロナ禍による働き方の変革による影響や、人と人とのつながりが薄れたこと等を視野に入れ、ウェルビーイングを取り入れています。

チームとしてお互いを配慮しながら健康で幸福な企業活動ができるように、ウェルビーイングにかかわるガイドラインを作成しました。

業務活動がオンライン化されたことで、仕事を詰め込みすぎることによる弊害があると考え、一定の時間を意識的に取り入れることが重要視されています。これにより、持続可能なチームの醸成に役立てているようです。

E社:部品製造業

E社では、従業員の健康を重要な資源と考えてウェルビーイングに力を入れています。

従業員とその家族の幸せには、心身の健康が不可欠です。そのため、従業員とともに進める健康づくりを経営課題の一つとしています。

メンタルヘルスの分野への支援も行っており、職場と連携した支援を行う「心の相談室」や管理職へのメンタルヘルス研修、ストレスチェック等が代表的な取り組みです。

さらに、心や体の病気によって長期休業した従業員への復職支援制度、生活習慣病予防対策、食堂での食育活動等を通して健康に配慮したサポートも行っています。

このように、経営課題として従業員の健康を管理することで、企業として従業員を大切にするという姿勢を行動で示せるため、従業員との信頼関係も高まっています。

ウェルビーイングの実践方法

ウェルビーイングは、従業員だけではなく企業にとってもよい影響を与える施策です。ここからは、実際にどのような手法で実践するのかについてご紹介します。

人間関係を良好にするための制度導入と環境改善

上司と部下、同僚の間で活発にコミュニケーションが取れるような環境は、ウェルビーイングを向上させます。

そこで、オフィス内にオープンスペースを設置して従業員同士の交流機会を増やす、休憩室を居心地のよいスペースに改善する等の施策を通じて、風通しのよい職場環境を整えることが効果的です。

キャリアを充実させるための制度導入と環境改善

キャリア(生き方)を充実させるためには、ワークライフバランスの実現が欠かせません。

たとえば、従業員の労務管理を適切に行うために、就業管理システムを取り入れて、残業の削減や有給休暇の取得を促す方法が効果的です。

また、残業を削減した従業員、有給取得率のよい従業員、その従業員の管理職に報奨を与えたり評価を上げたりする方法も有効でしょう。

ほかにも、住居の移転を伴う転勤を減らす、親元への帰省費用を補助する施策等によって従業員の経済的・精神的負担を和らげて、より快活な生活をサポートする方法もあります。

身体を健康に保つための制度導入と環境改善

従業員の健康を守るには、従業員自身が自分の健康に関心を持ち、適切に管理する必要があります。自身の健康状態に関心を持たせるために、健康診断の結果や推移を確認できるシステムをはじめ、健康状態にあわせたアドバイスを受け取れるしくみが有効です。

たとえば、通常の健康診断以外の項目を補助したり、ストレスチェックの結果を管理して、相談窓口でカウンセリングが受けられるしくみを整えたりする制度の構築が挙げられます。

健康診断やストレスチェックの結果、問題があると考えられる従業員が見つかった場合には、企業側が医療機関での受診を後押しすることも大切です。

従業員の幸福を重視した取り組みで目指す健全な企業運営

多くの従業員が健康でいきいきと働き、不安がなく満ち足りたウェルビーイングの状態であれば、業務への意欲も高まり、会社への貢献度を底上げします。

反対に、多くの従業員に不安・不満があり、忙しくて健康にまで気を回せない状態を放置することは、健全な企業運営にとってはリスクといえます。

会社全体の理念としてウェルビーイングを浸透させて、心身の健康や、快活な生活をサポートする制度を整えることで、従業員のエンゲージメント向上を目指しましょう。

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