働き方改革関連法施行から1年。5つの法改正ポイントと実現に向けて必要なことまとめ

ビジネスコラム

人が真価を発揮する、
人事・経営・はたらく人のためのメディア

最終更新日 2024年3月13日

働き方改革関連法で変わる業務とは?【対策ポイントは5つ】


「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」、いわゆる「働き方改革関連法案」が2018年5月31日に衆議院で、同年6月29日には参議院でそれぞれ可決され、成立しました。

改正事項によって時期は異なりますが、2019年4月から順次、労働基準法を始めとする関連法令の改正が施行されています。

この記事では、改めて働き方改革関連法の概要や実施背景を紹介し、施行に伴い変更が生じる5つの人事業務範囲の変更点と、それに応じる対策を紹介します。
           ​​​​

目次

働き方改革関連法の概要 - 通称「残業代ゼロ法案」

働き方改革関連法により生じ得る従来の制度との違い5つ

働き方改革関連法の施行で対応すべき業務範囲は5つ

 

働き方改革関連法の概要 - 通称「残業代ゼロ法案」

働き方改革関連法は、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会の実現を目的としています。
法案には働き方改革を推進するための

  1. 長時間労働の是正
  2. 多様で柔軟な働き方の実現
  3. 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保のための措置

が具体的に盛り込まれています。

この検討背景には、労働環境を見直し、生産性を向上させたいという政府の意図のほか、労働人口の減少や少子高齢化といった長年続く日本の社会問題も検討を促進させています。

2018年6月29日に国会で成立した働き方改革関連法は大きく8つのテーマに分かれていました。

  1. 残業時間の上限規制
  2. 有給休暇の取得を義務化
  3. フレックスタイム制の見直し
  4. インターバル性の普及促進
  5. 高度プロフェッショナル制度の新設
  6. 同一労働・同一賃金の実現
  7. 中小企業での残業60時間超の割増賃金率引き上げ
  8. 産業医の権限強化

中でも「高度プロフェッショナル制度」が注目されていますが、「働き方改革」に向けて、労働基準法をはじめとする働き方改革関連法令が多岐にわたって改正され、2019年4月から順次施行されています。
 

働き方改革関連法により生じ得る従来の制度との違い5つ

ここでは、働き方改革関連法の中でも現状と大きく変わる可能性のある制度をピックアップしました。 

時間外労働の上限を厳格化 ー生産性の上がらない残業とはもうおさらばー

労働時間は原則1日8時間・週40時間ですが、労使協定、いわゆる36協定で定める範囲内で企業は社員に時間外労働をさせることができます。

現状、36協定で定められる時間外労働の限度は、原則1か月45時間・1年間360時間とされています。
ただし、年6か月までの臨時的で特別な事情の場合については、それらの限度時間を超えて時間外労働をさせることが可能です。

今回の改正により、36協定で定めることができる時間外労働と休日労働の限度時間に上限規制が設けられました。
さらに、上限規制の枠内で36協定を締結しても、企業は1か月100時間以上もしくは2~6か月での月平均80時間超となる時間外労働および休日労働をさせることができなくなります。

これらの時間を超えて時間外労働や休日労働をさせると、罰則※を科せられることになります。(※6か月以下の懲役または30万円以下の罰金) 

年次有給休暇取得の義務化 ー年5日の有給休暇が保証されるー 【罰則あり】

働き方改革関連法により、企業は年10日以上の年次有給休暇が付与される社員に対し、1年以内に5日の年休を時季を定めて取得させるように義務付けられます。

社員は自ら時季を指定して、取得した日数と計画年休の日数を5日から差し引くことができます。違反した場合は、罰則の対象となります。

労働時間把握の義務化 ーより実績に近い管理に向けてー 

勤怠の実績管理において、自己申告ではなく客観的方法での実績管理が求められます。
例えばタイムカード、ICカード、Web打刻、PCログオンログオフ等、機器により時刻が記録されるものを指します。 

 

インターバル制の努力義務化 ー適切な休息を確実にー 

インターバル制は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保を目的とした制度です。
働き方改革関連法により、その制度を努力導入することが求められます。
休息時間の指定はありませんが、本制度の参考となるEU労働時間指令では、24時間につき最低連続11時間の休息が定められています。 

フレックスタイム制の見直し ー精算期間や計算式の変更ー 

精算期間が現行の「1か月以内」から「3か月以内」に延長になります。
また、精算期間が1か月超・3か月以内の場合、精算期間内の1か月ごとに1週平均50時間を超えた労働時間は、割増賃金の対象にしなければなりません。

 

上記のような制度変更、特に義務化や罰則となる点が働き方改革関連法の中でおさえておくべきポイントになるでしょう。では、実際はどのような対策が必要になるかという事例を最後に紹介します。

 

働き方改革関連法の施行で対応すべき業務範囲は5つ

法改正により影響を受ける5つの業務範囲と、その対策案をまとめました。

1. 勤務実績

新しい勤務制度に応じた管理方法の見直しが必要です。

  • ・全員を対象としたWeb打刻やPCログ等、客観的データを取得する基盤の整備
  • ・一定の休憩(インターバル制)が取得できているかチェックする仕組みの構築
  • ・入力時のチェックやアラート通知の効率化..等

 

2. 就労申請

勤怠実績の入力段階で労務リスクを防止することが、より必要になっていきます。

  • ・事前の残業申請の義務化
  • ・残業時間と実績との乖離理由申請の義務化
  • ・有給の一部を時季指定とし、強制的に消化を促す仕組みの構築
  • ・通知やアラートによる申請漏れや遅延の防止...等

3. 集計

勤務制度変更に伴い集計ロジックを改修する必要があります。

  • ・高度プロフェッショナル制やフレックス制の管理対象者への集計ロジックの見直し及び、給与計算への反映
  • ・勤怠締日前に残業時間を集計し、チェックをする仕組み作り...等

4. 照会

今後はより現場レベルで労務改善を進めていくことができる体制作りが求められます。 

  • ・リアルタイムでの労務状況を把握できることによる、就労管理者が早期に業務調整を実現できる仕組み
  • ・通知やアラートを充実させる/残業通知や注意喚起メールの自動化...等

5. 分析

労務状況の可視化と、さらなる改革を見据えた基盤整備が求められます。 

  • ・労働基準法遵守のための部署別残業時間や個人別有給消化率の可視化
  • ・高度プロフェッショナル制、フレックス制、インターバル制など、新制度に基づく新たな分析軸の追加...等

 

227.png

 

本サイトは、快適にご覧いただくためCookieを使用しています。閲覧を続ける場合、Cookie使用に同意したものとします。 Cookieポリシーを表示