ジョブ型に関する調査レポート|取り組み状況と導入に関する賛否の声

ジョブ型に関する調査レポート|取り組み状況と導入に関する賛否の声

公開日 2022年5月10日
更新日 2022年5月11日
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ジョブ型雇用は、企業があらかじめ定義した職務内容に基づいて必要な人材を採用する制度です。日本経済団体連合会からのジョブ型シフトへの提言、新型コロナウイルス対応での在宅勤務/テレワークの普及により、近年注目が高まっています。

今回、当社では統合人事システムCOMPANYのユーザー119法人を対象にWHI調査レポートとしてジョブ型雇用に関するアンケート調査を実施しました。

職務内容や要件を細かく定義する「ジョブディスクリプション(職務記述書)」や、役割を言語化して定義する「役割等級制度」の導入状況をおうかがいし、「職務や職責を言語化・明確化する」という考え方がどれほど浸透しているのかを測りました。本記事では、その調査結果とレポートを監修したコンサルタントによる考察をご紹介します。

※本調査では、従来日本で採用されてきた人事制度である「職能資格制度」に代わり、「職務や職責を定義して基準を設ける制度」を「ジョブ型」と定義しています。


【WHI調査レポートとは?~HR領域における大手法人の実態を調査~】
当社の製品・サービスは約1,200の日本の大手法人グループにご利用いただいており、そのほとんどが当社のユーザー会「ユーザーコミッティ」へ加入しています。オンライン会員サイトをはじめとしたユーザーコミッティのネットワークを通じて、当社では適宜、社会・経済情勢に合わせた諸課題について調査を実施。その結果を製品・サービスに反映するとともに、ユーザー法人様・行政機関・学術機関への還元を行っています。(ユーザーコミッティについては
こちら

 

目次

ジョブディスクリプション(職務記述書)に関する取り組み状況
 ジョブディスクリプションの導入検討状況
 
ジョブディスクリプションの適用範囲
 ジョブディスクリプションの導入で気になる点
役割等級制度に関する取り組み状況
 役割等級制度の導入検討状況
 役割等級制度の適用範囲
ジョブ型雇用に関する取り組み状況
 ジョブ型雇用におけるコロナ前後での社内の意識変化
 ジョブ型雇用に関するご意見
調査監修者による考察


ジョブ型雇用に関するアンケート調査

統合人事システム「COMPANY」のユーザー119法人を対象に「ジョブ型雇用」に関するアンケート調査を実施しました。

 

<調査概要>

1.調査期間
 2021年1月27日~2月19日
2.調査対象
 
当社ユーザーである国内大手法人
3.有効回答数
 
119法人


※小数点以下の切り上げ、切り下げにより合計100%にならないことがございます。

 

ジョブディスクリプション(職務記述書)に関する取り組み状況

ジョブディスクリプションの導入検討状況(n=119)

図1.jpg

 

ジョブディスクリプションの導入検討状況については、既に導入している法人が12.6%、導入しておらず検討予定もしていない法人が最も多く39.5%という結果でした。導入理由には、「同一労働・同一賃金の実現のため有期雇用の従業員に対して導入した」「中途採用に関して、特定の業務の補充のため」との回答がありました。また検討理由には、「職務・職責に応じた人事制度改定の検討を具体的に進めるため」といった回答もありました。

それぞれの回答理由を下記にてご紹介します。

〈導入検討状況における回答理由〉 ※回答一部抜粋

■「既に導入している」を選んだ方の回答

・脱年功序列をめざし職能資格制度から変更
・専門性の高い能力を評価するため一部導入
・人材育成や評価の納得性向上に活用すべく導入
・定期採用者については未実施。中途採用者を募集する場合、特定の業務へ補充したい
・各部署の職務の棚卸や部門・グレードごとの職務の明確化、従業員のキャリアパス検討の参考資料として活用するため


■「導入を予定している」「検討している」「今後検討予定」を選んだ方の回答

・コロナ禍で在宅勤務/テレワークが一般的になる中、従業員の行動・成果が見えにくくなるため、業務で求められる内容を明確にしておく必要があるため
・在宅勤務/テレワークのような働き方の変化によって成果主義への変化に対応するには不可欠であると感じるため
・現在の職能給の再検討のため


■「導入しておらず検討予定もない」「導入しないことを決定した」を選んだ方の回答

・ジョブ型雇用=専門特化のイメージがある。総合的に業務ができるジェネラリストを育成する比重が高く、ジョブ型雇用に関連する職務記述書は話題になっていない
・維持管理が困難と判断

 

ジョブディスクリプションの適用範囲(n=62)

      ※検討中含む・複数選択可

図2.jpg


ジョブディスクリプションの適用範囲は、「特定の職種」が最も多く21件、次いで「全従業員」「一定の役職」が20件という結果でした。その他の回答には、「管理職層と高度専門人財」や「資格が必要な職種や特定の地方での採用」といった組み合わせでの適用や、「段階的に対象範囲を広げていく」との回答もありました。
 

ジョブディスクリプションの導入で気になる点(n=71)

      ※複数選択可

図3.jpg

 

ジョブディスクリプションの導入で気になっている点をうかがったところ、「制度導入のメリット」が45件、次いで「対象とする範囲の考え方」が43件という結果でした。その他の回答では「導入にかかる工数」や「運営コスト(工数)と効果のバランス」等が懸念点であることがわかりました。

 

 

役割等級制度に関する取り組み状況

役割等級制度の導入検討状況(n=119)

図4.jpg


役割等級制度の導入検討状況については、既に導入している法人が44.5%という結果でした。導入理由には、評価に関するものや「脱年功序列のために、職能資格制度から変更した」という回答もありました。

それぞれの回答理由を下記にてご紹介します。

〈導入検討状況における回答理由〉 ※回答一部抜粋

■「既に導入している」を選んだ方の回答

・脱年功序列のため職能資格制度から変更
・専門性の高い能力発揮を評価するため一部導入
・等級ごとに求められる役割を明確化し、人材育成や評価の納得性向上に活用するため


■「導入を予定している」「検討している」「今後検討予定」を選んだ方の回答

・組織風土を改革するため
・現在の職能等級制度に対し、評価・処遇への従業員の不満が存在しているため


■「導入しておらず検討予定もない」「導入しないことを決定した」を選んだ方の回答

・配置・任用のしくみが役割等級制度に馴染まないため
 (役職任用が昇進と同義ではないため乱高下する)
・業務をジョブ型として捉えていないため

 

役割等級制度の適用範囲(n=82)

      ※検討中含む・複数選択可

図5.png


役割等級制度の適用範囲については、「全従業員」という回答が36件で、次に「一定の役職」、「特定の職種」という回答が続きました。導入済みの法人では、「全従業員」に適用しているという回答が約半数を占める割合となりました。その他には、具体的に「正社員のみ」や「パート、定年後再雇用者を除く全従業員」といった回答もあります。
 

 

ジョブ型雇用に関する取り組み状況

ジョブ型雇用におけるコロナ前後での社内の意識変化(n=119)

図6.jpg


ジョブ型雇用におけるコロナ禍前後での意識変化については、以前と比べ「導入に対して積極的になった・やや積極的になった」と回答した法人が15.1%ありました。意識に変化があった企業も見られましたが、大手企業においては新型コロナウイルスの感染拡大前から人事制度変更が検討されており、ジョブ型もその延長線上で実施・検討されていることがわかりました。

また、ジョブ型雇用に関する意見や疑問点について、メリットやデメリットのほか、日本の人事制度との融合に関する回答が見受けられました。
 

ジョブ型雇用に関するご意見

※回答一部抜粋

▼ジョブ型導入に前向きな意見

・求人者の特筆したスキルが目立つため即戦力となる人材を採用でき、採用者も職務のミスマッチで退職しにくくなる
・旧来の職能等級制度による運用が成り立たなくなっており、仕事を中心としたしくみへの変更が不可欠となってきている
・ジョブ型雇用への変化に伴い、年功序列型から成果型へのシフトや異動についても再検討する必要がある
・労働生産人口が高齢化する中で年功序列的な運用は難しく、職務と処遇を一致させる必要がある
・報酬のポリシーを明確にしたうえで、外部労働市場と連動した納得性の高いジョブ型雇用及び報酬制度を検討する時期だと思う


▼ジョブ型導入に慎重な意見・懸念点

・会社として、業務をジョブ型として捉えておらず、付随する対応についても検討予定はない
・長年かけて培われた日本人の気質上、一律でジョブ型雇用を行う状況にはまだ至っていないと考えるため現時点では検討していない
・「ジョブ型に変えることで給与を成果に応じて変えていく」という考え方自体には同意するが、ジョブ型ありきというのはいかがなものか
・専門職として一定のジョブ型雇用を拡大する可能性はあるが、一方で業務のマンネリ化や業務内容がブラックボックス化しやすい傾向がある
・新卒一括採用の状況では、マッチしないように思える
・維持の労力を考えるとメリットは少ないのではないか
・ジョブ型雇用は専門職のイメージが強く、部署異動や管理職昇格の判断に制限をかけてしまう可能性があることを懸念している。「与えられた仕事だけをこなせばよい」と捉える従業員が出てきそう


▼その他の意見

・まずはメンバーシップ型とのハイブリッド型の制度に移行していきたい
・欧米型のジョブ型雇用はマッチしない部分もあると思うので、日本企業に適したジョブ型雇用の形についてぜひ考えていきたい
・「ジョブ型雇用」と「ジョブ型人事制度」が社内でも混同されて使われているため、言葉の定義を明確にすべき。職務基準や役割基準の人材管理(ジョブ型の人事制度・人財管理)を実施する目的と範囲を明確にして、導入の検討を行うべき

調査監修者による考察

各企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)に代表されるデジタル化やグローバル化、さらにはコロナ禍といった、近年の企業環境の変化に対応する経営戦略が求められています。人事戦略についても、経営戦略と連動した多くの変化が求められており、ジョブ型雇用はその解決策の一つとして注目を集めています。

ただし、現在日本の多くの企業で検討されトレンドとなっているジョブ型は、本来のジョブ型雇用とは異なります。その特徴は、新卒採用や(特に非管理職の)ジョブローテーション・定期昇給/昇格といった日本型の人事制度(メンバーシップ型雇用)の要素はある程度そのままにしたうえで、ジョブ型雇用の「職務定義および評価、報酬の明確化」「職務に対する最適な配置と人材の自律的な育成」を可能とする人事制度、運用設計です。

現在、人事戦略においては、アンケートのコメントにも見られた通り、下記の3点が重視される傾向にあります。

 1.処遇や機会の公平性
 ・同レベルの職務を行っている従業員の処遇や報酬への納得感
 ・職務やポジションに適したスキルや意欲のある従業員を登用しやすい環境

 2.適所適材の要員配置
 
・必要な職務やポジションに適切な人員が割り当てられている状態
 ・3年後、5年後等、将来を見据えた次世代の育成
 ・多様性を持った人材の活用による、イノベーションや組織活性化・社内のローテーションや公募、または外部採用の実施判断の最適化

 3.従業員の自律的なキャリア形成
 ・自らキャリアを意識することによる、学びや経験へのモチベーション向上
 ・企業環境の変化に対応するための学び直しや専門性の向上
 ・人事のみにとどまらず、現場の管理職や上司のサポートによる成長の加速

ジョブ型がクローズアップされている背景には、職務や職責(役割)を定義し採用や配置の基準として運用することが、結果的に企業や組織の生産性やパフォーマンス向上、従業員の成長促進につながるという認識があるからだと考えます。アンケート結果からも、多くの人事部門が上記の背景を踏まえつつ、現実的な解を求めて慎重に模索を行っている最中であることがわかるでしょう。

ジョブ型というと、等級のランク付けをどのように行うのか、報酬や評価制度をどれだけ厳密に運用するのかといった議論に集中することが多いです。しかし、まずは自社が何を目指すのか、つまり経営戦略と連動した人事戦略としてジョブ型の制度運用が適切であるか判断する必要があります。そのうえで、職務や職責をどこまで規定するのか(どこまで詳細化されていれば、求めるものが実現できるのか)を明確にする必要があるでしょう。

まずは自社の戦略や人事のありたい姿、従業員に求める人材像や成長プランを明確に打ち出したうえで、社内に発信し、浸透させることからはじめてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

ライター写真

伊藤 裕之(Ito Hiroyuki)

2002年にワークスアプリケーションズ入社後、九州エリアのコンサルタントとして人事システム導入および保守を担当。その後、関西エリアのユーザー担当責任者として複数の大手企業でBPRを実施。現在は、17年に渡り大手企業の人事業務設計・運用に携わった経験と、約1,200のユーザーから得られた事例・ノウハウを分析し、人事トピックに関する情報を発信している。

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