Withコロナの今こそ見直すべき労働時間の客観的把握方法とは

Withコロナの今こそ見直すべき労働時間の客観的把握方法とは

公開日 2020年8月26日
更新日 2021年9月22日
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働き方改革関連法が施行されてから1年以上が経過しました。

年次有給休暇を入社半年後に付与している多くの企業においては、大多数を占める4月入社者に対し、年間5日以上の年休取得状況を本格的に確認し始めている頃かと思います。

働き方改革関連法は、「少子高齢化による生産年齢人口の減少」や「育児・介護との両立など労働環境へのニーズの多様化」という社会的課題の解決のため、労働者一人ひとりの事情によって様々な働き方を選択できる社会の実現を目指すのものとしていますが、代表的には以下のような改正ポイントがありました。
 

・長時間労働の是正
・多様で柔軟な働き方の実現
・雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保のための措置

 

第一弾の法改正では、上記1点目の「長時間労働の是正」に関するものが中心となっていました。その前提として労働安全衛生法の内容が改正され、健康管理の観点から「客観的な方法による労働時間の把握」が直接的に義務化されたことが大きな特徴です。

"【労働安全衛生法 第66条の8の3 】

事業者は、第66条の8第1項(*1)又は前条第1項の規定による面接指導(*2)を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第1項に規定する者(*3)を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。"

この法律に応じ、慌てて労働時間の客観的な把握方法を導入した企業も多くあったかと思います。

導入例:

  • ・各勤怠管理システム標準の打刻機能の導入
    ・ICカードなどの入退館時刻の連携
  • ・PCのログイン・ログアウト時刻の連携 
     

また、働き方改革関連法の施行直後は、来る2020年東京オリンピックに向けて時差出勤や在宅勤務/テレワークの導入、夏季休暇期間の変更などを検討し始めていた頃かと思いますが、新型コロナウイルスの影響を受ける形で実現するとは想像もしていなかったでしょう。

本記事では、在宅勤務/テレワークが浸透する以前に導入した労働時間の客観的把握方法についてご紹介します。Withコロナ時代の今だからこそ、「現在のやり方が形骸化していないか」「在宅勤務/テレワーク前提でより良い方法がないか」といった視点で改めてアプローチ方法を見直してみましょう。
 

目次

ー 自社の労働時間について対応状況を把握する
ー 現在の出社率と目標値を確認する
ー 労働時間の把握状況別の主な改善ポイント
ー 労働時間を把握し従業員のパフォーマンス最大化を

 

自社の労働時間について対応状況を把握する

まずは「労働時間の客観把握」について、自社の対応がどの段階にあるのかを把握することが重要です。

カーネギーメロン大学の提唱する「能力成熟度モデル統合」になぞらえると、対応を5つの段階に分類することができます。

STEP1:現認残存段階

「自己申告による労働時間の管理・計算は実現しているが、客観的な労働時間については使用者自らの現認に留まっている。」

勤怠管理システムを利用している企業であれば、現認がいつでも可能な範囲を超える規模であることは明白ですので、全社的にこの段階ということはほぼないと思います。ただし、システム化が未対応なケースだと、自己申告による管理・計算に留まる段階に該当すると考えられます。
 

STEP2:手段先行導入段階

「従業員が打刻可能なシステムは導入しているが、打刻を習慣化する教育や上長による労働時間の管理が徹底できておらず、現場に責任が委ねられている。」

働き方改革関連法の施行直前に打刻システムを導入した企業においては、急ピッチで整えた仕組みであるために定着化まで手が回っておらず、結果的にこの段階に該当しているケースがよく見受けられます。
 

STEP3:単一環境実現段階

「在社での勤務前提においては、確実に客観的労働時間の記録が可能な仕組みを導入している、もしくは教育と管理の徹底により高い打刻率が実現できている。」

入退館時刻やPC時刻の連携により、確度の高い客観時刻の記録ができているケースはこの段階に該当します。また、従業員自らの打刻実施について教育と管理が根付き、漏れが少ない場合もこの段階です。
ただし実現当時が在社での勤務前提であった場合、その仕組みが形骸化している可能性があります。特に入退館記録は在宅勤務/テレワーク時には取れないですし、この環境の変化により打刻の習慣が薄れて打刻率が低下していることも考えられます。
 

STEP4:環境変化追従段階

「在宅勤務/テレワークも含めた労働環境の変化をきっかけとして、客観的な労働時間の把握方法について見直しをすべきかの調査・検討を実施できている。」

新型コロナウイルス感染症拡大防止のために在宅勤務/テレワークが普及したことを機に、労働時間を客観的に把握する現在の方法が有効かどうか調査を行い、見直しを検討することができている場合には、この段階にいると考えてよいでしょう。
ただし、実際に労働時間の把握方法の見直しを実施すべき結果になった際、「どう検討をすればよいのかがわからない」「明確な正解や事例がなく困っている」というお悩みを持っていることもあるようです。
 

STEP5:最適化成功段階

「客観的な労働時間の把握方法について定期的に見直しを行うことで、法改正や労働環境変化に対して最適化できた事例が作れている。また継続的なプロセス改善が見込めている。」

「入退館時刻だけではなくPC時刻も連携するようにした」というように、在宅勤務/テレワークの普及に応じる形で最適な把握方法へと変化させることができている場合はこの段階にあると言えるでしょう。ぜひ一連のプロセスの振り返りを行った上で、改善サイクルを標準化することを検討してみてください。


いかがでしょうか。
大体の場合においてはSTEP2~3のいずれかかと思いますが、まずは自社の労働時間の現状を把握することが改善案の検討への準備となります。

現在の出社率と目標値を確認する

労働時間の現状を的確に把握するために、「そもそも現在の自社の出社率やその目標値がどの程度か」をしっかり確認することも重要です。
これは、労働時間の客観的把握方法について見直しを早急に行うべきかどうかが、会社の出社率にかかっているためです。

Withコロナ時代へと突入した現在、「財務などの管理部門や工場などのライン部門については出社率は高い水準に戻っているが、営業や研究開発職などは在宅勤務/テレワークが依然として多く、出社率が低い水準のままである」というケースがみられます。
この場合は、出社が少なく(つまり在宅勤務/テレワーク率が高く)今後もそれが望ましいとされる職種や部署について優先的に見直しを行うべき、という判断ができます。

一方で、出社率が正確に把握できる状況にないというケースもあります。
在宅勤務/テレワークであるか出社であるかを全従業員に毎日申告させることも選択肢のひとつではありますが、従業員側に一定の負荷や煩わしさを強いることになります。

従業員の入力による出社率の管理・計算を行う以外の方法について、最もわかりやすい方法は「入退館記録の有無による判断」です。事業所に出入りする際に社員証などのICカードをかざしたり、指紋や静脈による認証の必要があったりするのであれば、その時刻と記録はシステムとして管理・計算が可能なデータです。
このデータを勤怠管理システムに連携することそのものが「出社時の客観的な労働時間の把握」になるのですが、同時に「出社の事実確認」にもなり得ます。

よって、入退館記録があれば出社していた、一切なければ在宅勤務/テレワークもしくは事業場外勤務をしていた、という一律の判断をシステム上で行うことが可能となります。これを利用することで、かなり正確な出社率を計算することができます。
 

労働時間の把握状況別の主な改善ポイント

客観的労働時間の把握に関する現状と見直しの必要性、その対象が確認できたらいよいよ具体的な見直しと改善の検討に移ります。
詳細な部分は各社の業務設計によりさまざまかと思いますが、先ほどご紹介した5つの段階別に代表的な改善ポイントをご紹介します。
 

STEP1:現認残存段階

大手企業においても、一部の工場などで客観的な労働時間については現認に依存せざるを得ない状況である場合には、実態としては客観把握が困難な可能性があります。こういった場合は、早急にシステム化を検討しましょう。
スピードを重視すべきかと思いますので、少なくとも打刻システムの導入だけ、入退館時刻の連携だけ、というようにまずは絞った形での展開も視野に入れましょう。
可能であれば、自己申告時間との乖離のチェック方法も導入できると理想です。
 

STEP2:手段先行導入段階

客観的な労働時間の把握を打刻行為に委ねている場合、習慣化・定着化がポイントとなります。
理想論としては後続のSTEPで紹介する改善ポイントを取り入れるのが良いですが、習慣化・定着化に関しては、まず従業員およびその上長への通知をシステム的に行う手段を検討してみてください。

「毎日、前日の打刻有無をチェックして打刻漏れがある場合にはシステム上で通知する」などの方法の採択が考えられます。通知をした上で、それを改善に活かしてもらえるような従業員教育も定期的に実施できるとなお良いです。
 

STEP3:単一環境実現段階 ~ STEP4:環境変化追従段階

習慣化・定着化のための意識は、従業員の入れ替わりが激しい企業だと教育コストがかかってしまいます。また、在宅勤務/テレワークが一般化した現在、仕事場とプライベート空間の境界線が曖昧になって形骸化してしまうリスクが非常に高いです。例えば、「もう少し仕事を行うつもりで休憩に入ったが、家庭の事情などでそのまま業務を終了せざるを得なくなった」といったように、退勤打刻漏れが多くなるケースが挙げられます。

したがって、Withコロナ時代の現在においては、可能であれば客観的労働時間の把握手段を打刻のみとすることをやめる検討をしましょう。

システムを利用した打刻は、法律上で見ると、改ざんや改変の余地が残されていないという意味で客観的な把握手段のひとつとされていますが、本来は従業員が出退勤の意思表示を能動的に行うためのものです。これを100%客観性のある時刻データと見なすかどうかは一考の余地があるでしょう。
より客観性の高い、業務用PCのログオン・ログアウト時刻の連携や、社内ネットワークに入るためのVPN接続開始終了時刻の連携についてもシステム構築を検討してみることをおすすめします。

もし打刻以外の手段の選択が難しい場合には、貸与携帯や私用携帯でも打刻を可能にするなど、なるべく手軽に実現できる形への改善を視野に入れましょう。
 

STEP5:最適化成功段階

ここまで来ていれば特に改善すべきポイントはありませんが、定期的な見直しを仕組み化するなど、継続的な改善が見込める状況を作れていると更に理想的です。


 

労働時間を把握し従業員のパフォーマンス最大化を

新型コロナウイルス感染症の拡大動向の予測が難しい中、働き方改革についても予定されている法改正がそのまま展開されるとも限らないと思われます。本記事をきっかけに、不測な変化ポイントが急に発生する事態に備え、今のうちに自社業務の見直しに関して習慣化を行っていただければ幸いです。

また、冒頭で述べた通り、働き方改革は社会的課題の解決と働きやすい社会の実現の両立を目指すことを本来の目的としているものです。加えて、従業員のパフォーマンス向上により組織としてのパフォーマンスも最大化されることは、企業側が追求したいメリットでもあるかと思います。

働き方改革関連法対応の業務運用設計が、逆に従業員にとっての負担にならぬよう工夫を心がけたいところです。

この記事を書いた人

阿弥 毅(Ami Tsuyoshi)

2011年にワークスアプリケーションズ入社後、勤怠領域を中心に大手企業の人事システム導入・保守のコンサルタントを務める。その後、海外法人への導入プロジェクトや首都圏の導入担当責任者などを経験。現在は業務コンサルタントチームのマネジメントの傍ら、人事業務課題解決の経験と事例を活かした業務分析・ノウハウ提供に従事している。

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