ジョブローテーションに関する調査レポート|働き方の変化による影響と方針

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ジョブローテーションに関する調査レポート|働き方の変化による影響と方針

ジョブローテーションとは、定期的な配置転換によって、従業員に様々な職務を経験してもらう人材育成施策のひとつです。

従来、日本企業、特に大手企業では、従業員に一定期間で多くの部署や支店を経験させ、計画的に従業員の配置転換を行う、ジョブローテーションの実施が主流でした。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大後、在宅勤務/テレワークの導入が進むことで働き方が変化し、ジョブローテーションによって発生する転居を伴う異動(転勤)や単身赴任を見直す企業が出てきています。

今回、統合人事システム「COMPANY」のユーザーである国内大手39法人を対象に、WHI調査レポートとしてジョブローテーションの実施状況や働き方に与える影響に関する調査を行いました。

【WHI調査レポートとは?~HR領域における大手法人の実態を調査~】
当社の製品・サービスは約1,200の日本の大手法人グループにご利用いただいており、そのほとんどが当社のユーザー会「ユーザーコミッティ」へ加入しています。オンライン会員サイトをはじめとしたユーザーコミッティのネットワークを通じて、当社では適宜、社会・経済情勢に合わせた諸課題について調査を実施。その結果を製品・サービスに反映するとともに、ユーザー法人様・行政機関・学術機関への還元を行っています。(ユーザーコミッティについてはこちら

 

目次

アンケート調査概要
アンケート調査結果
 ・ジョブローテーション実施状況    
 ・異動に関する企業の方針や運用詳細
 ・新型コロナウイルスとジョブローテーション・転勤への影響
 ・ジョブローテーションに対する今後の方針や意見
調査監修者による考察
 

アンケート調査概要

統合人事システム「COMPANY」のユーザー39法人を対象に「働き方の変化とジョブローテーションへの影響」に関するアンケート調査を実施しました。
 

<調査概要>

1.調査期間
 2022年8月10日(水)~9月16日(金)
2.調査対象
 
COMPANYユーザーである国内大手法人・団体
3.有効回答数
 
39法人39名
4.調査方法

 インターネットを利用したアンケート調査
 ※小数点以下の切り上げ、切り下げにより合計100%にならないことがございます。


※ジョブローテーションの定義は「会社主導により、従業員を一定の期間で異なる職務または異なる勤務地に配置転換すること」としています。
 

アンケート調査結果

ジョブローテーション実施状況

ジョブローテーションの実施有無(n=39、単一選択)

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在宅勤務の実施有無 / 現在の在宅勤務率(記述)(n=30、単一選択)

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ジョブローテーションの実施状況は、「行っている」と回答した企業が76.9%(30法人)で、7割以上の企業が会社主導で計画的に従業員の配置転換を行っている状況でした。

そのうち在宅勤務を「行っている」企業は76.7%(23法人)です。ただし在宅勤務率は多くの企業が50%以下であり、50%より高い企業は2社のみという結果でした。

 

ジョブローテーションを行う理由・目的(n=30、複数選択)

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ジョブローテーションを行う目的で最も多かったのは「幅広く業務を経験することで、広い視野を養ってもらうため」で、ジョブローテーションを行っているすべての企業が選択していました。様々な業務を経験することによる人材育成面の効果が重視されていることがわかります。

ついで「適材適所のため」「業務の属人化を防ぐため」が多く見られることから、人材を流動化させ、適切な人材を配置し業務の属人化を防ぐことも重視されていることがうかがえます。

異動に関する企業の方針や運用詳細

異動発令前の本人打診有無(n=30、複数選択)

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ジョブローテーション案の決定後、異動発令前に本人への打診を行っている企業は60%(18法人)でした。
 

ジョブローテーションでの異動における本人の拒否権有無(n=22、単一選択)

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ジョブローテーションによる異動を拒否できる理由(n=16、複数選択)

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異動に関して、対象者本人に「拒否権がある」とした企業は9.1%(2法人)でした。この2法人では「本人の希望する部署、勤務地」ではない場合にも拒否することが可能で、従業員の意向が大きく尊重されています。


また、「条件によっては(拒否権が)ある」とした企業は63.6%(14法人)で、拒否できる条件は「家族、近親者の都合」や「本人の体調、精神面の不調」が多くを占めました。やむを得ない理由は認められますが、職種や勤務地が本人の希望ではないという理由では異動を拒否することはできないといった企業が多いようです。
 

新型コロナウイルスとジョブローテーション・転勤への影響

ジョブローテーションによる転勤(転居を伴う勤務地変更)有無(n=30、単一選択)

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転勤についての今後の意向(n=24、単一選択)

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ジョブローテーションによって転勤が発生する企業の割合は80.0%(24法人)でした。そのうち、転勤についての今後の意向は「現状維持」が50.0%(12法人)と半数を占めました。

回答企業の中では、まだ転勤の廃止が大きな流れになっているとは言えませんが、16.7%の企業(4法人)は転勤を「減らしていく」と回答しており、一部企業で転勤を見直す動きが見られます。
 

ジョブローテーションに対する今後の方針や意見

ジョブローテーションについての今後の方針や、個人の意見(記述)

〈勤務地限定制度や公募制を導入〉
・勤務地限定社員等の制度が必要になる可能性があるため、対応できる設計検討を行っていく
・本人希望による異動のしくみはほとんどないため、今後の検討事項と認識している

〈従業員の事情や意向を考慮〉
・経験の幅や人脈の広がり、思考が深まることから、人材育成には必要不可欠であり、組織維持にも必要であると位置付けている。ただし、事情のある従業員も増えていることから、確認方法の検討は必要である
・リモート化の普及により、転勤を指示した際に退職を選択する可能性が以前よりも高いことを懸念している

〈ジョブローテーションを積極的に推進〉
・役職上位者にも実施し、役員になるまでに複数部門を経験してもらいたいが、難易度が高いと考えている
・事業所の数も少ないため、幹部候補を育てるためには、事業所間の異動も含めて行っていくべきと考えている

〈その他〉
・今後、ジョブ型の採用・雇用管理に移行していく場合は、「ジョブローテーション」は限定的、縮小に向かうと予想されるが、そもそも「ジョブローテーション」という単一用語で「会社の意図」と「従業員のキャリア自律」といった両面を表すことは不可能と考える
・本人の希望、能力、会社のニーズが一致することが望ましいが、個人の成長と専門性能力向上を鑑みて決める必要がある
・業務習熟度を高めるために、ローテーション期間を延ばすことを考えている
・適材適所を推進するために、タレントマネジメントシステムを用いた従業員情報の見える化が必要


勤務地限定制度や公募制を導入するといった方針のほか、より従業員の事情や意向を考慮していくという意見が見られます。一方でジョブローテーションは幹部候補の人材教育には不可欠で、これからも積極的に行っていきたいという意見もありました。

各企業によって対応の差はありますが、ジョブローテーションをこれからも実施していく企業が多くを占めています。


調査監修者による考察

総括(解説:WHI総研 井上 翔平)

一定の期間で職務や勤務地が変わるジョブローテーションは、職務や勤務地を限定しないメンバーシップ型雇用の日本に特徴的な施策です。海外で一般的なジョブ型雇用ではジョブディスクリプションによってあらかじめ職務内容、勤務地を定めて人材を採用するため、その後、職務や勤務地が頻繁に変わることは通常ありません。

さらに日本企業では新卒一括採用が行われているため、スキルが明確に定まっていない新卒人材の適性の見極め、人材育成の手段としてもジョブローテーションが活用されてきました。

本調査でも、7割以上の企業でジョブローテーションが実施されており、その目的は「幅広く業務を経験することで、広い視野を養ってもらうため」と教育的価値が重視されていることがわかります。

ただジョブローテーションそのものは明文化された制度ではなく、企業がその時々の方針や従業員の状況に合わせて運用しています。

最近では、従業員が主体的にキャリアを形成していくキャリア自律の考え方も注目されています。また在宅勤務/テレワークが普及する中で、転勤を原則廃止し、勤務地を自由とする企業もあり、従業員が自ら職務や勤務地を選択することを後押しする動きも見られるようになりました。

しかしながら、本調査では、転勤の今後の意向について「現状維持」とする企業が半数であり、転勤を減少させる、廃止する動きはまだ一部の企業に限られています。

また、ジョブローテーションの今後の方針や意見では、「経験の幅や人脈の広がり、思考が深まることから、人材育成には必要不可欠」という声がある一方で、ジョブローテーションを減らしていく、廃止していくという声はありませんでした。

ジョブローテーションはその教育的価値が重視され、日本企業に深く根付いていることがわかりましたが、かつてのような経済成長が見込めなくなっている今、従業員も自身のキャリアを会社に任せておけば安心という時代ではなくなってきています。場当たり的で理由が明確でないジョブローテーションは従業員の納得を得られない可能性もあります。

企業は従業員との対話の機会が十分に確保できているか、そしてジョブローテーションの意図、目的、期待する役割を伝えられているか、改めて見直すことが必要でしょう。
 

<引用・転載時のクレジット記載のお願い>

本調査の引用・転載にあたりましては、「Works Human Intelligence調べ」という表記をお使いいただきますようお願い申し上げます。

この記事を書いた人

ライター写真

井上 翔平(Inoue Shohei)

2012年、政府系金融機関に入社。融資担当として企業の財務分析や経営者からの融資相談業務に従事。2015年、調査会社に移り、民間企業向けの各種市場調査から地方自治体向けの企業誘致調査まで幅広く担当。2022年、Works Human Intelligence入社。様々な企業、業界を見てきた経験を活かし、経営者と従業員、双方の視点から人事課題を解決するための研究・発信活動を行っている。

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