等級制度とは?3つの種類とメリット・デメリット、企業の導入事例を紹介

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最終更新日 2024年2月29日

等級制度とは?3つの種類とメリット・デメリット、企業の導入事例を紹介

等級制度は、従業員を能力・職務・役割等によってランク(等級)分けする人事制度です。

企業人事において、以前は当たり前だった年功序列制は崩壊しつつあり、多くの企業が新しい人事制度の導入を進めています。等級制度は、人事制度を構築する際の土台の一つです。

本記事では、等級制度の種類やメリット・デメリット、導入手順をわかりやすく解説します。
 

等級制度とは

本章では、等級制度の概要や目的、3つの種類を解説します。

等級制度の概要

等級制度は、従業員を能力・職務・役割等によってランク分けする人事制度です。等級には序列が設けられ、その高低に応じて給与や処遇が定められます。また、人材育成や配置の決定等にも用いられます。

等級制度の目的

等級制度は、人事管理を効率化するために導入されます。この制度の役割は、明確な基準のもとに従業員の処遇を決定し、必要な業務レベルを明示することです。それによって、人事異動や人材育成、採用において客観的な判断ができ、組織運営を円滑に行えます。

等級制度の種類

等級制度には主に、職能資格制度職務等級制度役割等級制度の3種類があります。

職能資格制度

職能資格制度は、従業員を能力によって評価し、等級付けする制度です。

等級は職務遂行能力によって区分され、経験によって等級が上がることを前提としています。基本的に降格がないため、年功序列や終身雇用制といった、日本ならではの人事制度と相性がよいとされています。

分野を問わずに導入でき、あらゆる業務の遂行能力を持つゼネラリストを育成しやすい等級制度です。

職務等級制度

職務等級制度は、従業員を職務によって評価し、等級付けする制度です。

等級は担当する職務の内容や難易度により区分され、達成できる状態になると等級が上がります。職務の価値と業績に対して公正な評価が行われることから、成果主義とも呼ばれます。

専門性が高い業務の遂行能力を持つ、スペシャリストを育成しやすい等級制度です。
 

役割等級制度

役割等級制度は、従業員に与えられた役割と能力によって評価し、等級付けする制度です。

等級は役割の内容や遂行能力で区分され、達成度合によって等級が変動します。年齢や経験値、過去のキャリアに関係なく、役割を果たせば高評価となることから、ミッショングレード制とも呼ばれます。


これら3つの等級制度は、単独で用いられる場合もあれば、組み合わせて用いられる場合もあります。日本では終身雇用制が一般的だったため、勤務期間の長さが評価に繋がりやすい職能資格制度がもっともよく採用され、大手企業を中心に広く導入が進んでいます。

職務等級制度や役割等級制度は、新興企業や成長企業での採用が目立ちます。特に役割等級制度は、年齢や経験といった属人的要素に左右されずに等級を上げることが可能です。そのため、立ち上げから年数の浅いベンチャー企業や、スタートアップ企業等に多く取り入れられています。

種類別にみる等級制度のメリット・デメリット

本章では、職能資格制度・職務等級制度・役割等級制度の3つについて、それぞれメリットとデメリットを解説します。

▼等級制度3つのメリット・デメリット

等級制度の種類 メリット デメリット
職能資格制度 ・業種や職種を問わず導入しやすい
・勤続年数を重ねるほど等級が上がるため、従業員の帰属意識が高まりやすい
・明確な評価基準を設けにくく、評価の公正さや分かりやすさに欠けることがある
職務等級制度 ・明確な評価基準を設けやすく、人事評価の公正さを保ちやすい ・成果が主な基準となるため、誠実さや勤勉さ等が評価に反映されにくい
役割等級制度 ・従業員の評価を多角的に行える
・給与の抑制がしやすい
・従業員の貢献度に応じた評価ができる
・役割の設定にかかる作業が難しく、設定ミスがモチベーション低下に直結するおそれがある

職能資格制度のメリット・デメリット

メリット

分野を問わずに導入しやすいため、たとえば複数事業を展開する企業では、全社で統一した人事制度とすることが可能です。様々な経験や知識を有したゼネラリストの育成ができます。

また、業務に長く携わることで等級が自然に上がり、基本的には降格もありません。異動を重ねながら確実にキャリアを積み上げていくため、従業員の帰属意識が高まりやすいともいわれています。

デメリット

明確な評価基準を設けにくいため、公正でわかりやすい人事評価が困難な場合があります。

評価が年齢や経験値に偏りがちになり、仕事をこなすほどに能力が上がると考える場合は、勤務期間に応じて給与を上げていかなければなりません。そのため職能資格制度では、長期間勤務する従業員が増加すると、人件費の負担が大きくなるおそれがあります。

職務等級制度のメリット・デメリット

メリット

仕事の成果によって評価する職務等級制度では、明確な評価基準を設けやすく、人事評価の公平性を保てるメリットがあります。適切な人材配置が行いやすく、業務とのミスマッチによる弊害が起こりにくいという特長もあります。

デメリット

職務等級制度のデメリットは、成果が主な基準となるため、誠実さや勤勉さ等が評価に反映されない点です。職務等級制度が向いている業務・組織がある一方で、向いていない業務・組織もあることでしょう。

職務等級制度の適用に向いていない業務・組織で導入すると、評価に対する不平不満が生じるおそれがあります。また、同制度では職務を超えた異動がしにくいことから、属人化や組織内のメンバーの固定化による悪影響にも注意が必要です。

役割等級制度のメリット・デメリット

メリット

役割と能力によって評価する役割等級制度のメリットは、従業員の評価を多角的に行えること、給与の抑制がしやすいこと、従業員の貢献度に応じた評価ができることです。与えられた役割をきちんとこなすことによって評価を上げることができるため、従業員のモチベーション向上も図れます。

デメリット

役割の設定にかかる作業が難しく、設定ミスがモチベーション低下に直結するおそれがあります。また、降級もめずらしくないため、不平・不満から労働意欲がそがれる従業員が出てくる可能性もあります。

5STEP|等級制度の導入手順

STEP1 等級制度の導入目的・導入方針を決定する

はじめに、自社の抱える問題や解決したい課題を洗い出し、等級制度の導入目的・導入方針を決定します。

STEP2 等級制度の種類を決定する

ステップ1で明確にした等級制度の導入目的・導入方針から、ふさわしい等級制度を決定します。導入する等級制度はひとつである必要はなく、2種類、もしくは3種類を組み合わせても問題ありません。

職能資格制度・職務等級制度・役割等級制度それぞれのメリット・デメリットを十分に把握し、自社に合う等級制度を選択しましょう。

STEP3 等級数を決定する

導入する等級制度の種類を決定したら、次に区分として設ける等級の数を決めます。

等級の数が適切でなければ、十分な導入効果は期待できません。多すぎると等級ごとの差があまりなくなり、従業員自身が等級を理解できないことがあります。また、少なすぎると同じ等級内に能力・レベルが明らかに違う従業員が存在することになり、等級制度の意味がなくなります。

管理職層は2~3、それ以外の一般層は3~4が一般的な等級数です。多すぎても少なすぎても運用が難しくなる点に注意し、適切な等級数に区切りましょう。

STEP4 各等級の定義を明確にする

各等級の要件や役割、有するべき能力を定めます。公平な評価を行うためには、等級の定義を明確にすることが重要です。定義があることで、等級や役職について具体的な目標設定がしやすくなります。

STEP5 等級制度の運用方法を決定する

等級制度について、現制度からの移行方法や、給与・処遇等の運用体制を決定します。

等級制度の導入事例3つ

本章では、日本企業における等級制度の導入事例を3つ紹介します。

大手電気機器メーカーS社|等級制度の導入で評価基準を刷新

等級制度による評価制度を運用開始したことによって、管理職比率の半減と、年功要素の全廃を達成しました。個を「伸ばす」「活かす」ことを重視し、過去の実績にとらわれない評価を実現しています。

大手機械メーカーE社|役割等級制度をグローバルに拡大

海外グループ会社の従業員がこれまでより重要なポジション(グローバルキーポジション)で活躍できるよう、グローバルで統一された役割等級制度を導入しています。同社はこれを、グローバルでの持続的成長を実現するための基盤整備と位置づけています。

大手電気機器メーカーP社|個人と組織が報われる処遇制度を構築

処遇の透明性・納得性向上のほか、多様な人材がチャレンジしやすい土壌づくりを目的に、役割等級制度を導入しています。チャレンジが報われる組織の実現や組織活性化、ポジティブな組織風土の構築も目指しています。

等級制度の種類やメリット・デメリットを理解し、自社に合った制度の導入を

等級制度には3種類あり、それぞれ異なるメリット・デメリットがあります。

自社に合う等級制度を導入するためには、自社の問題点・課題をきちんと認識したうえで導入目的・導入方針を決定する必要があります。適切に等級制度を取り入れて、組織力強化やモチベーションアップを図りましょう。

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