人事異動のやり方は?成功のポイントと優秀な社員の異動における注意点

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最終更新日 2023年6月6日

人事異動のやり方は?成功のポイントと優秀な社員の異動における注意点

人事異動には多くのメリットがあり、必要に応じて実施することが求められます。しかし、異動にはデメリットもありますし、失敗すると人材の社外流出に繋がりかねません。

特に、優秀な社員の人事異動は難しいものです。現場は優秀な人材に留まって欲しいと考える一方で、人事部としては多くの部署で能力を発揮してもらいたいという思いがあり、本人の希望も尊重しなければなりません。

難易度の高い優秀な社員の人事異動は、どのような点に注意して行うべきでしょうか。適材適所の人材配置を実現する人事異動のやり方と、優秀な社員の異動における注意点を解説します。

目次

人事異動をなぜ行うのか?企業における人事異動の目的
人事異動のメリットは?異動実施する効果とデメリット
人事異動のメリット
人事異動のデメリット
優秀な社員は人事異動させるべき?
人事異動の適切なやり方とは?ポイントを紹介
優秀な社員の人事異動で注意すべき点


人事異動をなぜ行うのか?企業における人事異動の目的

企業にとって人事異動は非常に重要であり、多くの企業では規模を問わず定期的、あるいは随時に人事異動が行われています。人事異動の必要性を目的から説明します。

人材配置を最適化するため

人事異動は人材配置を最適化し、社員の能力・スキルが発揮できることを目的に行われます。企業活動の目的である利益を追求するためには、適材適所の人材配置が必要です。また、どんなに優秀な人材でも見合った場所でなければ、高い能力やスキルを発揮することはできません。

人材育成のため

人の成長は企業としての成長・発展に繋がります。そのため、企業は研修で教育を行いますが、人事異動にも人材育成の役割があります。人事異動があると新しい環境で働き、新しい経験を積むことになり、社員の能力開発・スキルアップに大きく貢献することが可能です。

人事異動のメリットは?異動実施する効果とデメリット

人事異動は企業にメリットとデメリットの両方をもたらす可能性があります。

人事異動のメリット

人事異動のメリットは次の通りです。

各業務に必要な人材配置ができる

各業務で必要なスキル・能力は異なります。支障なく業務が遂行されるためには業務に必要な能力を持った人材が配置される必要があり、人事異動を実施することで必要な人材配置を実現することができます。これは、本人の適性やスキルを活かすことにも繋がります。

業務の属人化を防げる

人事異動を実施することで従業員は新しい業務の経験を積むことができ、業務を担当できる従業員が増えることで知識やスキルが社内へ浸透します。また、業務の属人化や従業員のマンネリ化によるモチベーション低下を防ぐ効果にも繋がるでしょう。

反対に、人事異動がなく、ある従業員でなければ業務が遂行できないような状態は、組織として健全ではありません。

組織の活性化が図れる

人事異動で従業員が入れ替わることには、部内または部署間のコミュニケーション促進に繋がるでしょう。人事異動により部署を越えた横断的な交流が生まれるため、企業全体が活気づくことや士気が上がることが望めます。また、組織の活性化はアイデアの創出に繋がる可能性もあります。

モチベーションの向上

やりがいのある業務や本人の特性を生かせる部署に異動した場合には、仕事に対する興味・意欲が高まります。特に人事異動が希望通りのものであった場合、モチベーションは非常に高くなるでしょう。意欲的な従業員が増えることで、部署にもポジティブな影響があると考えられます。

人事異動のデメリット 

メリットがある一方で、次の点に注意をして人事異動を実施する必要があります。

生産性が一時的に低下する可能性がある

人事異動によって業務の遂行者が変更されると、不慣れであるために遅れやミスが生じ、生産性が一時的に低下するリスクがあります。

失敗すると離職率が上がる可能性がある

納得しない人事異動が行われてしまうと、異動対象の従業員のモチベーションが低下する可能性があります。モチベーションの低下が進むと離職に至るリスクがあるため、注意が必要です。

また、異動後すぐの離職は仕事のやり方を教えた従業員の時間や労力も無駄になってしまい、部署全体に失望感が生じてしまうでしょう。

優秀な社員は人事異動させるべき?

上記の通り異動にはメリットとデメリットがありますが、特に優秀な社員の異動では注意が必要です。

現在の部署で活躍し続けて欲しい思いから異動を悩む企業もあると考えますが、優秀な社員はポテンシャルが高く、多くの伸びしろを持っています新たな環境でも積極的に学べる人材であり、人事異動によって現状を越える成長や活躍が期待できるでしょう。

また、優秀な社員を同じ部署に留めると、本人が成長の可能性を求めて転職してしまいかねません。本人の希望するキャリアプランや、やりがいのある業務を担うといった異動によって、離職を阻めるのは企業にとって大きなメリットでしょう。

一方で、優秀な社員が抜けた後の部署では一時的な生産性低下や業績悪化が予想されます。この点は、空いてしまった穴を埋めようとする他メンバーの活躍による回復が見込まれるため、優秀な社員の人事異動が他の社員の成長に結びつく可能性も大いにあるでしょう。

人事異動の適切なやり方とは?ポイントを紹介

人事異動において、できるだけデメリットを減らすためにはどうしたらよいでしょうか。適切な方法で行うための人事異動のステップ(一例)を紹介します。
 

  1. 従業員のキャリア意向やスキル情報の収集
  2. 現場で異動に携わる人材に必要な情報を開示
  3. 現場が決めた意向をヒアリング
  4. 人事部が現場と調整しながら、異動案を作成
  5. 決定した異動案について、経営陣等の承認を得る
  6. 必要に応じて異動者本人への説明
  7. 異動


企業によって異動の方法や決定プロセスは様々ですが、上記に挙げたステップを踏まえて押さえておくべきポイントを紹介します。

ポイント1:社員情報の集約と可視化

人事異動のステップで重要なことは、最初のキャリア志向やスキル情報の収集です。正しく、必要な情報を収集しておくことは人材配置の最適化に役立つでしょう。

異動の際に考慮する情報は評価、業務経験、スキル、資格情報、本人の異動希望の有無、上司との面談記録等があります。評価や面談のように社内の活動によって生まれる情報もあれば、本人からの申告によって得られる情報もあります。

幅広い情報を整理しておき、異動を考える際にどの部署にどのような人材がいるのか、見える化されていることが理想です。なお、情報の見やすさは、現場に必要な情報を開示する際にも重宝します。

情報管理が難しいと感じた場合は、タレントマネジメントシステムを活用する方法があります。タレントマネジメントシステムの中には、情報集約や可視化だけでなく人事データの分析が可能なものもあるため活用を検討してみるといいでしょう。

ポイント2:自社に合った異動の方法を考える

異動のステップを現場主導で行うか、人事部主導で行うかは企業ごとに異なります。

現場主導で異動案を作成する場合は、現場の実態に即した異動が可能ですが、自部門の目線だけで考えてしまいがちです。また、人事部が主体的に異動案を作成する場合は、自社の事業計画や戦略に根差した人材配置が可能ですが、現場の要望が聞き入れられないこともあるでしょう。

最近は、従業員の希望を重視するキャリア自律を目指す企業も増えています。本人の希望を聞き取り、キャリアプランに沿った異動を実現することは、モチベーションアップが見込めるでしょう。

また、異なる職場や職種を一定期間ごとに異動するジョブローテーション制度ならば、自社の育成戦略に沿って人材を育てることが可能です。育成戦略があれば異動の目的や今後の展望が明確となり、本人も納得しやすいでしょう。一方、部署異動を繰り返すことによる一時的な生産性低下や、ミスマッチによる離職のリスクに繋がる可能性もあります。

それぞれに一長一短があり、自社の業務特性や人事戦略に応じて重視する点は変わるため、異動の決定方法や異動にどのような情報を使うかを考えるとよいでしょう。

優秀な社員の人事異動で注意すべき点

人事異動の失敗は社員の社外流出に繋がり、特に優秀な社員の退社は企業にとって大きな損失になる恐れがあります。また、優秀な社員の異動は現場に与える影響も大きいため、多方面での対応が求められるでしょう。

以下では、優秀な社員を人事異動させる際に注意すべき点を記載します。

本人に理解を求める

優秀な社員は仕事に対しての意欲が高く、キャリア形成や人生設計も計画的に行っている傾向にあります。意思にそぐわない人事異動であれば反発も強いと推測され、退職してしまうこともあり得ます。強制や無理強いとならないよう、丁寧な対応や本人の意向とのすり合わせが大切です。

また、異動先が重要なポジション・部署であることや、次の部署で本人に期待する役割等、異動の意義を伝えることも大切です。「将来会社を担ってもらいたいから次はこの経験をしてもらいたい」といった、今後の育成計画を説明して異動を理解を得ることも有効でしょう。

現場を説得する

人事異動で優秀な社員がいなくなる現場では、反対の声が挙がることが予想されます。適した後継者を配置すること、しっかりとフォロー体制を整えることを伝え、現場をしっかり説得する必要があります。

また優秀な人材を育成、輩出したことを評価対象にすることで、異動に前向きになってもらう方法もあります。さらに新たな優秀人材の輩出へと意識を向けてもらえるとよいでしょう。めぼしい新人材がいない場合は外部からの採用を検討することで現場に歩み寄る方法があります。

そして、今後のために、現場のマネジャーに全社的な視点を持ってもらうことが重要です。現場だけの視点でなく、会社全体の利益を判断できるマネジャーを育てていきましょう。

フォロー体制を整える

優秀社員の人事異動では、業務を引き継ぐ社員に対するフォローも必要に応じて行うとよいでしょう。優秀社員がこなしていた業務が高難度であり、後任が当該業務を未経験であった場合には相当なプレッシャーがかかることも想定されます。

退職や精神疾患の危険も考慮し、現場と協力しながらフォローできるとよいでしょう。フォロー体制が十分であれば、異動する側も安心して次の業務に進めます。

ポイントを押さえ、適正に人事異動を行おう

人事異動によって企業は人材配置の最適化を実現し、人材の育成や組織の活性化を図ることができます。適材適所の人材配置となるよう、社員の能力やスキルを十分に高められるよう、適正に行わなければなりません。

そのためには自社に適したやり方を選択し、異動のメリットを最大化することが求められます。また、優秀な社員の人事異動では本人の意志を尊重しつつ、異動の目的や意義を理解してもらうことも求められます。企業の成長・発展に向けて、適正に人事異動を行っていきましょう。

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