子の看護休暇・介護休暇の法改正に見る積立休暇の有用性とは

子の看護休暇・介護休暇の法改正に見る積立休暇の有用性とは

公開日 2020年11月1日
更新日 2020年11月4日

いよいよ令和3年(西暦2021年)1月1日より、働き方改革の一環として育児・介護休業法の改正が施行されます。
この改正により、これまでは全日または半日単位での取得しか認められていなかった子の看護休暇および介護休暇について、時間単位での取得も認められることになります。
また、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は取得ができませんでしたが、全ての労働者が子の看護休暇・介護休暇を取得できるようになります。

本改正は、働き方改革の中でも「多様で柔軟な働き方の実現」、そして「雇用形態にかかわらない公正な待遇確保のための措置」に繫がるものであり、在宅勤務/テレワークが普及した現在、現実的な活用が見込める改正内容であると言えます。

一方で、子の看護休暇・介護休暇というのは無給扱いでもよい休暇のため、減給というデメリットとどう天秤にかけるかが、労働者側としては悩ましいところです。

このような労働者側の悩みに対して企業側が提示できる解決策の1つに、積立休暇の活用があります。今回はその活用方法に焦点を当てていきます。
 

目次

子の看護休暇・介護休暇の現状
子の看護、介護の観点における積立休暇の活用余地
積立休暇の導入・拡充において考えるべきこと
おわりに


子の看護休暇・介護休暇の現状

本題に入る前に、まず子の看護休暇・介護休暇の普及状況を確認してみましょう。
そもそも子の看護休暇・介護休暇とは、育児・介護休業法に基づく制度です。
 ※ この法律について全般的におさらいをしたい方は厚生労働省の動画をご覧ください
 「知っておきたい 育児・介護休業法」:https://www.youtube.com/watch?v=oke59MDP0kM

厚生労働省の平成30年度の雇用均等基本調査によると、未就学児を持つ労働者のうち、子の看護休暇の取得経験者は女性が54.9%、男性が44.9%という結果が出ています。
一方で、平成26年度の同調査においては、女性は25.3%、男性は5.2%という結果でした。
平成29年度より子の看護休暇・介護休暇の半日取得が認められたことで、それ以降の普及は確実に進んだということがわかります。
また、令和3年からは時間単位での子の看護休暇・介護休暇取得が認められるようになるため、より一層の普及が進むことが予想されるでしょう。

しかしながら、先にも述べた通り、無給扱いであるために減給を覚悟せねばならないという場合が多く、それがブレーキになり、結果的に仕事と家庭の両立に苦心せざるを得ない一面もあるかと思います。

実際、先ほどの平成30年度の雇用均等基本調査を見ると、子の看護休暇が無給扱いである事業所の割合が65.2%、一部有給である割合が6.2%でした。

働き方の多様性を高めるうえでは、もう一歩踏み込んだ制度設計が必要なのかもしれません。

 

子の看護、介護の観点における積立休暇の活用余地

制度の見直し方法の1つとして、子の看護休暇・介護休暇そのものを有給扱いにしてしまうことも考えられますが、もう1つの着眼点として積立休暇が挙げられます。

積立休暇とは、失効年次有給休暇積立制度(失効年休積立制度)という、失効した年次有給休暇を積み立てて、病気で長期療養する場合などで引き続き取得を可能とするしくみに基づく休暇です。
失効年休積立制度については、法的な定めが特にないため実施は任意の制度ですが、その性質上、有給扱いとして利用できます。
したがって、企業側としては前述のような従業員の悩みに応えるために、積立休暇を福利厚生として活用することが可能、という訳です。
 

子の看護_介護休暇.jpg

 

ただし、この制度は任意であるため、積立休暇そのものの導入状況やその用途の制限については企業ごとに差異があります。

人事院から発行されている「平成28年民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要」によると、500名以上規模の企業において正社員用の失効年休積立制度が存在している割合は54.6%でした。

一般的に、積立休暇は私傷病の際に使われることが多くあります。ですが、上記の54.6%のうち、利用事由として看護を認めている企業は56.1%、介護を認めている企業は68.4%でした。
つまり、看護や介護を理由とした積立休暇の利用が可能な500名以上規模の企業は、全体の約1/4ということです。

この割合を多いと捉えるか少ないと捉えるかは賛否があろうかと思いますが、日本の大手企業においても、働き方の多様性を高めるために休暇制度を充実させる余地はあると考えます。
 

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積立休暇の導入・拡充において考えるべきこと

では、実際に積立休暇の導入や拡充を検討する際はどういった点を考慮せねばならないのでしょうか。この場合、代表的な以下の6点について決定し、就業規則上定義する必要があります。

・取得単位
・有効期限
・年間積立日数の上限
・総積立日数の上限
・利用事由の制限
・他の休暇との取得優先順位

それぞれ見ていきましょう。
 

取得単位

全日単位のみとするか、半日単位も認めるか、時間単位まで認めるか、を考える必要があります。
ポイントとしては、積立休暇は任意の制度であるため、必ずしも年次有給休暇の単位に合わせる必要はないということです。極論、年次有給休暇は時間単位は認めていないが積立休暇は時間単位を認めるということも可能ですが、どうあるべきかについては慎重な検討をおすすめします。
 

有効期限

積み立てられた休暇の有効期限についても定めが必要です。無期限とすることも可能ですが、その場合には後述の総積立日数に上限を設けることが一般的です。
 

年間積立日数の上限

失効した年次有給休暇のうち、1回の積み立てで何日分までの積み立てを認めるかを検討します。
上限を特に設けない形も可能ですし、1回の積み立ての制限と前述の有効期限を設けることで間接的に総積立日数をある程度コントロールすることも可能です。
 

総積立日数の上限

毎年累積していく積立休暇の合計残日数に上限を設けるべきかも検討が必要です。
結果的に、無限に積み立てが可能な事例はほぼないと言ってもよいですが、総積立日数の上限を何日にするかは企業ごとにまちまちなようです。
元々、この制度は長期で入院が必要な私傷病の治療にあてることを主目的として定義されています。そのため、長期入院として考えうる一般的な日数(40日や60日など)が十分に収まる日数にしているところが多い印象です。
 

利用事由の制限

年次有給休暇は利用事由を制限することができません。ですが、失効した年次有給休暇を継続して使えるようにするという制度の目的上、積立休暇はいくつかの事由に制限をする必要があるでしょう。
前述の通り、現状では私傷病のみとしている企業が最も多く、ついで介護や看護にまで広げる場合があり、一部では自己啓発のための取得資格や短期留学、ボランティアにも利用可能にしている企業もあるようです。
このように、利用事由の制限内容自体は自由度が高いですが、そもそも年次有給休暇に有効期限があることと矛盾が生じるため、無制限とする必要はありません。
 

他の休暇との取得優先順位

年次有給休暇、特に法定の有給休暇と積立休暇についてはどちらを先に取るべきかという優先順位の定義ができるとよいですが、法律の制限はありません。
したがって、積立休暇から先に取得させるようにすることも可能ですが、現在は働き方改革により年次有給休暇は年間5日の取得を従業員に徹底してもらう必要があります。そのため、まずは法定の有給休暇から優先的に取得してもらうようにするのがよいでしょう。
 

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おわりに

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今回は働き方改革として法改正が施行される子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得に触れつつ、より先を行く制度設計の可能性の1つとして、積立休暇の導入やその拡充方法について取り上げました。

法律による定めのない任意の制度に基づいているからこそ、積立休暇は企業ごとに工夫が可能な領域であり、福利厚生面での差別化にもなりえると考えます。

また、積立休暇は従業員にとってもメリットが大きいため、労働組合からの賛同も得やすいです。就業規則の変更さえ行えば対応できるというお手軽さもありますので、

・看護や介護を利用事由に追加する
・半日単位や時間単位での取得を認める

といった対応をまだとられていない場合には、ぜひご検討いただければと思います。
 

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この記事を書いた人

阿弥 毅(Ami Tsuyoshi)

2011年にワークスアプリケーションズ入社後、勤怠領域を中心に大手企業の人事システム導入および保守コンサルタントを担当。その後、首都圏の導入プロジェクト責任者を務めながら、自らはアメリカ・中国など海外法人へのシステム導入も複数経験。現在は、保守部門のチームマネジメントを担う他、約10年間の人事・勤怠領域に関する豊富な業務知見をもとにノウハウを発信している。

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