電子申請の義務化が今年4月から一部対象の法人で実施されています。
そして義務化ではないものの、現在、政府が就業規則変更届の電子申請化を推し進めています。
しかしながら、就業規則変更届の電子申請での提出率は非常に低く、2019年の提出率は2.48%となっています。
※厚生労働省 書面規制、押印、対面規制について(行政手続関係)<「労働基準法に基づく就業規則、36 協定等の届出」、「労働安全衛生法に基づく各種届出等」>
そこで弊社では、より電子化を加速させるための政府への提言を視野に入れ、弊社製品のユーザー様に対して、就業規則変更届にまつわる業務の実態を調査するアンケートを実施しました。加えて、分科会としてユーザー複数社様に集まっていただき、ディスカッションのを実施も行いました。
そもそも就業規則の変更に対してどのくらいの工数がかかっているのか、どういった悩みを持っているのか。対して、電子申請を取り入れている企業はどういう部分を評価しているのか。
就業規則変更届の電子申請化といった提出方法に関する対応だけではなく、就業規則にまつわる業務についてもフォーカスして企業の実態を見ていきます。
目次
ー就業規則の変更について
ー電子申請を利用している企業が考えるメリット
ー電子申請を利用していない理由と解決策
ーまとめ
就業規則の変更について
そもそも、就業規則は実際どれくらいの頻度で変わるものなのでしょうか。
・就業規則を変更する頻度を教えてください。(単一選択)(有効回答数:41)
ユーザー様へのアンケート結果を見てみると、およそ75%の企業が1年に2~3回、法改正や制度変更の際に就業規則を変更するとの回答がありました。
そしてその変更の届出先については、2箇所という企業から、グループ会社を含めるものの350箇所という企業までありました。これは、変更の際に意見書をもらう数や意見を聴取する先の数におおよそ比例するようです。
就業規則と一口に言っても、正社員、非正規社員、パートアルバイトなどの身分によって就業規則が異なる場合もあるため、変更の手間が2倍3倍になることも起こりえます。また、就業規則変更届の届出を行った後も新旧対照表や改め文の作成、従業員への周知など、変更に伴って非常に多くの業務が隠れていることが改めて明らかになりました。
電子申請を利用している企業が考えるメリット
就業規則変更届の提出方法が電子化されていると、届出先が多い場合であってもスムーズに届出を進めることが可能になり、作業負荷を軽減することができます。
しかしながら、就業規則変更届の提出に電子申請を利用している企業は前述の通り非常に少なく、ユーザー様のアンケートを見ても約10%と非常に少ない割合となっています。
・就業規則変更届の提出に電子申請(e-Gov)を利用していますか。(単一選択)(有効回答数:41)
電子申請を利用している企業からは
・担当者の業務時間を削減できた
・郵送、印刷費用を節約できた
・公文書を電子データで受領できる
・紙で届け出ないのでミスがない、ミスをしたとしても修正ができる
・以前は手打ちでデータ入力をしなくてはならなかったが
今はCSVでデータを取り込めるようになったので申請が楽
という声があり、電子申請によるメリットを感じていることがわかります。
同時に、
・提出先の労働基準監督署の数が多い
・就業規則の分量が多い
・ペーパーレスを推進したい
という課題を抱えている企業に対して電子申請をおすすめしたいという回答がありました。
また、全国に事業所を展開している企業からは、「グループ会社のものを取りまとめて一括で出すことができている」との声もあり、地域ごとに規則に差分がない、もしくは労働組合がある企業の場合は、本社からまとめて提出することでより一層申請が楽になるのでおすすめしたいとの声もありました。
これから電子申請という提出方法を考えるにあたっては、各事業所の規則を統一するところも視野に入れて検討するとより効果が見込めて理想的であるようです。
ただ、電子申請を利用している企業からの改善要望ももちろんあります。
分科会の中で、
・添付する意見書について、原本のスキャンではなく電子的に作成したものを利用できるようにしてほしい
・種類の異なる就業規則も同時に提出できるようにしてほしい
・就業規則と変形労働制・36協定の変更届でそれぞれCSVの形式が違うのでそろえてほしい
といったように、実際に利用しているからこその使い勝手を加味した意見が上がり、まだまだ電子申請に対して改善の余地があることが伺えました。
電子申請を利用していない理由と解決策
電子申請を利用している企業が上記の通りポジティブな意見を持っている中で、
利用していない企業に電子申請を利用しない理由を伺ったところ、以下のような回答が得られました。
・就業規則変更届の提出に電子申請(e-Gov)を利用していない理由を教えてください。(複数選択)(有効回答数:37)
実際お客様に詳しく話を聞いてみると、
・そもそも電子申請ができることを知らなかった
・紙の方が安心
・システムが不安定な気がして、抵抗を感じている
など、認知不足や何となくのマイナスイメージによって実施に至っていないことが明らかになりました。
しかしながら、分科会の中で
未利用企業「今e-Govを利用していれば就業規則変更届の電子申請も使えますか?」
利用企業 「使えます」
未利用企業「手惑うポイントはありませんか?」
利用企業 「最初は届出先や申請先などを選ぶところが細かいため間違えないようにすることが少し大変ですが、基本はフローに沿っているので慣れれば問題ありません」
未利用企業「電子申請でも控えは出るのですか?」
利用企業 「印のようなものが押されたPDFが届きます」
といったように、実際に電子申請を利用している企業とのやりとりの中で電子での提出方法の実態が分かることで電子申請への疑問点がある程度解消されていき、下記のような前向きに検討したいという意見をいただきました。
・使い方さえ覚えたらできそう
・CSVで取り込めるようになったという話が魅力的なので、検討したい
・控え書類が電子でも捺印をいただけるとの話を聞いて、利用できそう
分科会終了後のアンケートで就業規則変更届の提出について電子申請を利用したいかと伺ったところ、9割以上の方が電子申請(e-Gov)の導入に前向きであるということがわかりました。
・今後、就業規則変更届提出の電子申請(e-Gov)を利用したいですか(有効回答数:28)
まとめ
電子申請で何をどこまでできるのか、どういう点がメリットなのか、ということがまだまだ認知されていないがゆえに検討・実施に至っていない企業が多くありました。しかしながら逆にきちんとメリットや方法が認知されれば電子申請の普及は比較的進んでいくのではないか、ということが伺えた今回の分科会。
電子申請を利用している企業からは効果を感じている声が上がっています。そして、システムに改善点はあるものの、これから導入企業が増えていけば改善要望等も集まるため、より一層使いやすいものになっていくと考えられます。
また、今回のレポートでは詳しく触れていませんが、分科会の中では就業規則変更届に留まらず、36協定の変更届や健康診断に関する届出の電子申請についても話が及びました。電子申請について各社興味はあり、様々検討はするものの実現に至っていない、懸念点が多い、ということも判明した分科会でした。
ワークスHIでは、そういった日々のお悩みを解決する場を提供すべく、今後ともさまざまなテーマでユーザー様同士の分科会を開催してまいります。