在宅勤務に伴って交通費の実費支給を検討する際に考えるべき5つのこと

在宅勤務に伴って交通費の実費支給を検討する際に考えるべき5つのこと

公開日 2020年7月8日
更新日 2021年1月19日

 

新型コロナウイルス感染症予防に伴う在宅勤務/テレワークの浸透により、多くの企業で交通費支給に関する見直しが検討されています。    
    
例えば、カルビー様における下記の取り組みは、インターネットやSNS上でも大きな反響を呼びました。    

カルビー コロナを機にオフィス勤務者のモバイルワークを標準化    
 ニューノーマルの働き方「Calbee New Workstyle」を7月より開始
」   

また、弊社におけるユーザー企業への緊急アンケートにおいても、約3分の1の企業において、交通費支給見直しの検討、実施が行われていることがわかります。    

通勤交通費_グラフ1.png通勤交通費_グラフ2.png

(弊社アンケート「在宅勤務における通勤交通費支給に関するアンケート」結果より)
   
交通費支給を見直すにあたりまず検討されるのが、これまでの定期代支給を実費支給へ切り替えることでしょう。実際、上記アンケート結果でも、切り替えを実施した企業からは次のような内容が報告されています。    

通勤交通費_グラフ3.png

一般的には、
・6か月定期、3か月定期を実費支給に切り替える
・次の一斉支給のタイミングで実費支給に切り替える
・月の出社日数に応じて、定期⇔実費支給を都度切り替える
・出社したときの交通費を経費として実費支給する
というやり方を試みる企業が多いようですが、実際多くの企業からは    
    「正直何から手を付ければいいかわからない」
    「他社がどうしているのかを参考にしたいから聞いてみたけど、そちらも同じ状態で・・・」
と、検討自体は行っているものの、実際に制度や運用まで固めて制度変更に着手したり、システム変更を検討したりしている企業は全体でも1割に満たないようです。

    

通勤交通費の申請・管理をもっと簡単にするなら

 

お問い合わせはこちら

    
そこで本記事では、交通費を実費支給に切り替えるにあたり、どのようなプロセスで制度と運用を検討すべきか、いくつかポイントを整理してみます。    
 

目次


在宅勤務/テレワークの実態の把握から始める
定期割引率を侮らない
前払いの定期券と後払いの実費支給は本来は両立できないことを認識しておく
見過ごされがちな交通費と社会保険の関係に注意
就業規則の変更や労働組合への報告が必要か確認
最後に
 

在宅勤務/テレワークの実態の把握から始める

 

まずは新型コロナウイルス感染症などの社会情勢に関連して、自社で在宅勤務やテレワークがどれくらい浸透しているか、今後どういった計画となっているか、から見てみましょう。
「貴社の6月の在宅勤務/テレワーク率ってどれくらいですか」
「半年後、1年後の在宅勤務/テレワーク率ってどれくらいを想定していますか」

この問いに対して、正確な回答が可能でしょうか?
少なくとも給与担当者にとって、正確な数値までは回答できないケースが多いのではないでしょうか。
しかしながら、在宅勤務やテレワーク、出社でも勤務していることには変わりがないため、給与を支給するという観点では、在宅勤務/テレワーク率の高低はさほど意識する必要がないことが多いため、回答できないことは至極当然なことです。
したがって、在宅勤務やテレワークの日数集計に必要な情報が勤怠情報に入っていない、入っていても、機械的に集計可能な状態となっていないということは十分考えられます。

その一方で通勤交通費の支給には在宅率が大きく影響します
「在宅勤務/テレワークが多い=実費支給にすればコストメリットがある」、ということが実費支給に切り替える最大の理由であるはずですが、もし、在宅勤務/テレワーク率を正しく把握していない、今後の在宅勤務/テレワーク率の計画を立てていない場合、想定したほどのコストメリットが出なかった、場合によってはむしろ支給額が増えた、ということが起こりえます。

よって、きちんとコストメリットを出すためにも、まずは在宅勤務/テレワークの現状と今後の計画の把握を行うことから始める必要があります。

 

定期割引率を侮らない

 

在宅勤務/テレワーク率の把握や今後の在宅率の見通しがついたら、次に、実費支給への切り替えによる交通費の削減額をシミュレーションしてみましょう。    
    
例えば、現在支給している各従業員に関して次のような通勤交通費関連のデータがあれば、過去の定期代支給実績に対して、同期間を実費支給(片道運賃×2×期間で想定される出社日数)した場合の差額を計算できるはずです。    
    ・通勤経路
    ・支給した定期代
    ・定期代区間の片道運賃
    ・想定される出社日数
    
※弊社製品「COMPANY」でも、駅すぱあと等の経路検索エンジンを利用した経路管理をしていれば、統合的な検索機能である「社員情報検索」によって、データを出力することができます。  

 

通勤交通費の申請・管理をもっと簡単にするなら

 

お問い合わせはこちら

   
削減効果をシミュレーションするにあたって、ポイントとなるのはJRの区間です。    



例えば、「東京~横浜」「京都~大阪」間の6か月定期と6か月の実費額を比較した場合、月の出社日数が12日以上の場合、実費の方が支給額を上回ってしまいます。もし、2020年6月のように、平日が22日あるような月であれば、45%以上、平日が少ない月でも3割以上の在宅勤務もしくはテレワークが必要です。半年先、1年先もこの割合の維持が可能でしょうか?

また、出社日数10日の場合の定期代との差額も、月に直すと1経路当たり2000円程です。
制度変更や運用変更に伴う対応工数と比べて、費用対効果は発生するでしょうか。

実費支給への切り替えによって、本当にコストメリットを出すことができるか、まずは在宅勤務/テレワーク率を把握した上で、具体的な削減額を出すことから始めてみてください。この時点で、思ったほどの削減額が算出されないのであれば、実費支給化実施の見送りをお勧めします。

 

前払いの定期券と後払いの実費支給は
本来は両立できないことを認識しておく

 

ここまでくると、実施に向けた枠組みが見えてくるはずです。    
例えば    
    ・東京エリアに比べると他エリアは在宅率がそこまで高くない
    ・本社や大阪支社の多くがJR沿線で、電車定期にそこまで削減効果が見られない
  ・ただし、東京エリアのバス定期は削減効果が見込めそう
ということであれば    
    ・東京エリアのバス定期を実費支給に切り替える
というようなジャッジが可能になります。    
そうすれば次に、    
    ・現状の通勤交通費支給期間が完了したタイミングで、対象者の経路を実費支給に切り替える
    ・次月以降のバス経路については、対象者の勤務地情報に基づいて実費か定期か振り分ける
というような具体的な運用が見えてきます。    
    
ただ、弊社が把握している各企業の検討事例の中には、    
「1か月の出社日数が〇日未満であれば、通勤費は実費支給、〇日以上であれば定期代を支給」    
というようなケースが多々見受けられます。    
「出社日数に応じて実費にするなんて、至極当たり前では?」    
そう思われる方も多いでしょうが、この制度、果たして運用可能なのでしょうか?    
    
従業員の視点で考えてみましょう。    
例えば、出社日数12日以上であれば定期代、それ以下であれば実費支給、という制度にします。    
出社日数を完全に自分でコントロールできる従業員はいいですが、そうでない場合、    
    ・定期を買ったけど思ったよりも出社日数が少なく、12日未満となった
    ・定期を買わなかったけれども思ったより出社日数が多く、12日以上となった
いずれかのケースで従業員に不利益が発生する可能性があります。    
この場合、どう対処するのでしょうか。従業員から訴えがあれば差分を補填するのでしょうか。    
想像しただけで、給与担当者の方はストレスを感じるのではないかと思います。    

さらには   
    ・前々月の勤怠データの登録が間違っていて、本当は出社日数は15日ではなく10日だった
こういったケースがあるたびに、支給しすぎた実費支給額を従業員から差し引くのでしょうか。    
仮に、対象の従業員が退職している場合は、どうしたらよいのでしょう?    
    
一般的な前提として、定期代は前払い、実費支給は後払いで本来両立できるものではない、という理解が必要です。混在させることによって、どのような問題が発生しうるか、想定しなければなりません。    
少なくとも上記のようなケースにおける運用想定や、従業員からの問い合わせに対する回答想定がない場合、まず会社としての見解を準備しておくことが最優先となります。    
    
ただ、いずれにせよ    
    ・実費支給対象者を勤務実績に合わせて変動させることは、運用工数を大幅に増加させる
    ・制度設計としての問題であるため、運用面・システム設計面のみの解決は困難である

ということは認識しておいた方がよいでしょう。  



通勤交通費の制度設計を見直したいならこちらの記事も併せてチェック
 

見過ごされがちな交通費と社会保険の関係に注意

 

上記のようなケースでもう一つ考えなければならないのは、仮に金額を調整するとして、イレギュラーで従業員に金額を支給(控除)する場合、従業員への支給(控除)だけではなく、社会保険で利用する月割額(報酬額)を調整する必要があるということです。その運用負荷は想定されているでしょうか。

「実費支給で経費扱いだったら社会保険の報酬額に入れなくてもいいんじゃないの?」
と思う方も多いかもしれませんが、勤務先⇔自宅の交通費をどのような形で支給しているにせよ、社会保険の報酬額として加算しなくてもよいという根拠は存在しません。

※参考:平成28年の参議院における質問主意書に対する安倍首相の回答
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/190/touh/t190096.htm

仮に、「自社の業務状況であれば、経費とみなして社会保険の報酬額に組み込まなくてもよいはずだ」と判断される場合、管轄の年金事務所にお問い合わせいただくことを強くお勧めします。

 

就業規則の変更や労働組合への報告が必要か確認

 

ここまで検討することで、かなり合理的なプランとなっていることでしょう。    
しかしながら、通勤交通費支給の制度見直しにあたっては、    
    ・就業規則の変更が必要ないか
    ・労働組合への説明が必要ないか

という確認は事前に必ず行う必要があります。    
    
就業規則内で、実費支給を行うことに反するような規定はないでしょうか。    
従業員に不利益であるということで、労働組合から指摘を受けるケースはないでしょうか。    
実費支給への切り替えスケジュールを検討するにあたり、労働組合との合意までの期間は考慮されているでしょうか。    
    
ここまでの検討が無駄にならないよう、先に確認が必要です。    
    

最後に

       beige-and-red-train-1181202 (1).jpg

いかがでしたか?    
    
定期代を実費支給へ切り替えるにあたって、最低限上記の検討事項を踏まえておく必要があることをご理解いただけたでしょうか。新型コロナウイルス対応に追われて多忙な中かと思いますが、各企業・ご担当者の一助になれば幸いです。    

そして、企業も担当者も従業員も、不幸な制度と運用になりませんように。    

 

通勤交通費の申請・管理をもっと簡単にするなら

 

お問い合わせはこちら

 

 

この記事を書いた人

伊藤 裕之(Ito Hiroyuki)

2002年にワークスアプリケーションズ入社後、九州エリアのコンサルタントとして人事システム導入および保守を担当。その後、関西エリアのユーザー担当責任者として複数の大手企業でBPRを実施。現在は、17年に渡り大手企業の人事業務設計・運用に携わった経験と、1100社を超えるユーザーから得られた事例・ノウハウを分析し、人事トピックに関する情報を発信している。

本サイトは、快適にご覧いただくためCookieを使用しています。閲覧を続ける場合、Cookie使用に同意したものとします。 Cookieポリシーを表示