リカレント教育とは?リスキリング、生涯学習との違いや導入の3つのメリット

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最終更新日 2023年10月18日

リカレント教育とは?リスキリング、生涯学習との違いや導入の3つのメリット

少子高齢化が進む中、企業は労働力の確保への取り組みが大切です。従業員満足度を高め、人材の流出を防ぐことで、労働力の確保へ繋がると考えられます。従業員満足度を高めるには様々な方法がありますが、従業員の成長を支援することは離職者の減少が期待でき、労働力不足を解消する方法のひとつです。

リカレント教育はリスキリングと並んで、従業員の成長を促す教育制度として多くの企業が高い関心を示しています。

近年注目されるリカレント教育とリスキリング、生涯学習にはどのような違いがあるのでしょうか。リカレント教育が注目される背景や導入のメリット、導入事例をあわせて紹介します。
 

リカレント教育とは?

本章では、リカレント教育の概要を紹介するとともに、リスキリングと生涯学習との違いを説明します。

リカレント教育とは?

リカレントとは英語で、「繰り返す」「循環する」という意味で、リカレント教育とは、学校教育から離れた後も、必要なタイミングで再び教育を受け、就労と教育のサイクルを繰り返すことです。

自分の仕事に関する専門的な知識やスキルを学ぶことが目的であり、特に決まった分野があるわけではありません。

具体的には、経営学・法律・会計等のビジネス系科目、英語や中国語等の外国語、資格取得系科目、ITリテラシー等があります。また、地域に特化した科目として観光や農業、社会的に求められている科目として介護・福祉分野も該当します。

リカレント教育とリスキリングとの違い

リスキリングとは、 「企業が従業員に対して新しいスキル、技術を身に付けさせることで、新たな価値、サービスの創出や生産性の向上、ひいては従業員の市場価値の向上につなげること」を指します。リスキリングにおいて、新しいスキルを習得する目的は、主に業務のDX化への対応です。

リカレント教育とリスキリングとの違いは、リカレント教育は長期間に広い範囲の学習を反復して行うことが多く、古くからある言葉です。

一方リスキリングは、比較的短期間で行い、DX化への対応として特化されることが多く、最近注目されることが多い言葉となります。

リカレント教育と生涯学習との違い

生涯学習は、一生学ぶことを意味しています。リカレント教育が仕事上で必要とされている能力向上を目指して行うのに対し、生涯学習は人生を豊かなものにするために行うことが目的です。


リカレント教育はスキルアップやキャリア形成を目指して行う教育で、生涯学習よりも狭義な概念とされています。

リカレント教育が注目される背景

リカレント教育が注目される背景として、以下の4点が考えられます。

平均寿命の延伸による就労期間の延長

「人生100年時代」といわれるように、平均寿命は延伸しています。2010年時点では男性79.64年、女性86.39年でしたが、2050年には女性の平均寿命が90年を超える見通しです。
参考:平均寿命の推移|内閣府ホームページ 

2013年の法改正では65歳までの雇用機会確保が義務化され、2021年の法改正では70歳までの就業機会を確保することが努力義務となりました。
参考:高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~|厚生労働省 

平均寿命が伸びるということは、働く期間も長くなり、これまで定年後ととらえられてきた60歳以降も働き続けることを希望する人が増えるでしょう。高齢でも働き続ける理由は、生活のためや、充実した人生のために自ら働き続けたい等様々なことが考えられます。

定年退職の年齢が引き上げられる中、長期的に働くことができるよう、知識や技術のアップグレードが求められるようになったことが、リカレント教育が注目されるに至った背景のひとつに挙げられます。

技術進展のスピードアップ

デジタル分野における技術革新が急速に進展したことで市場環境や産業構造が大きく変化しました。直近では、ビッグデータの活用促進が進み、AI(人工知能)が驚異的な早さで普及しています。


2030年頃には、IOTやビッグデータ、人工知能等の技術革新がより一層進展し、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、人類史上5番目の新しい社会の到来が予想されています。
参考:文部科学省におけるリカレント教育の取組について|文部科学省


このような背景から、市場の変化や技術の進展に対応できる人材が必要であることも、リカレント教育が注目される理由の一つと考えられます

働き方の多様化

現代では多様性が重視されるようになり、働き方も様々な形態が認められる社会に変容しています。ボランティアのために職から離れる、キャリアチェンジのために転職する、育児・介護をしながら働くといった個人の事情やライフスタイルに合わせた様々な就労が可能になりました。

その都度、必要な知識や技術を習得する学習形態が求められることも、リカレント教育が注目されるようになった背景のひとつといえるでしょう

終身雇用の前提が崩壊

日本の雇用制度の特徴であった終身雇用制が当たり前ではなくなったことも、リカレント教育が注目されるようになった要因のひとつです。一社で定年まで勤め上げる場合は、企業による教育だけで十分に就労に必要な知識や技術の習得が可能でした。

しかし、転職が一般的となった現代では、労働者が自分自身のキャリアを考え、それに応じたスキル習得が必要であることからリカレント教育が求められています。

リカレント教育の3つのメリット

企業がリカレント教育を支援することで得られるメリットとして、ここでは以下の3つをピックアップします。

人材流出の防止

少子高齢化が加速する中、労働力の確保や人材の流動化進行への対応は、日本企業にとって喫緊の課題になっています。そのため、優秀な人材を自社内に定着させることが重要です。

リカレント教育を通じて、従業員のスキルアップを支援することで、従業員は自らのキャリアパスを描きやすくなり、キャリアアップのために転職しようと考える必要性が薄らぎます。

また、自社が従業員のキャリアを尊重しているという事が伝われば、エンゲージメントの向上や帰属意識が醸成され、人材の流出を防ぐ事ができます。
リカレント教育は、優秀な人材の育成と定着に貢献する一施策だと言えるでしょう。

生産性向上

リカレント教育を行うことで、従業員の能力向上が図れます。従業員一人ひとりが新しい技術を習得することや、すでに身につけているスキルがレベルアップされることで、業務効率化が進み、生産性向上や業績拡大が期待できるでしょう。

企業競争力強化

リカレント教育を積極的に支援することにより、従業員は企業が定めた教育内容だけでは習得が難しい新たなスキルを習得でき、専門性の高い従業員が増えることによって、企業の競争力強化に繋がるでしょう。

リカレント教育が浸透することで、従業員が現状に満足することなく学び続ける文化が生まれ、常に成長し続け、さらなる競争力強化が図れるという好循環が生まれます。

リカレント教育を導入する3つのポイント

本章では、リカレント教育の導入を成功させるためのポイントを3つ解説します。

教育支援の充実

リカレント教育導入成功の鍵は、教育支援の充実にあります。具体的には、以下のような制度を充実させることが大切です。

・自己啓発支援制度
・教育研修奨励金制度
・社内公募制度

学習環境の整備

従業員が進んでリカレント教育を受けようとするためには、企業は学習環境の整備も行う必要があります。具体的には、以下のようなことが考えられます。

・外部講師による研修の実施
・オンライン学習環境の提供

休職・復職制度の確立 

リカレント教育を受けるために一度職場を離れるケースもあり、離職することへの不安解消を図ることも必要です 。具体的には、以下のことを行います。

・リカレント教育の受講を支援する休職・復職制度を確立すること
・リカレント教育により職場を離れる人材がいても業務が円滑に回るよう、柔軟な人材配置を実現すること

リカレント教育の導入事例 

本章では、リカレント教育の導入事例を2つ紹介します。

事例1. 建材、金属加工品の開発・製造・販売 

同社では、富山大学による社会人向けのリカレントプログラム「次世代スーパーエンジニア養成コース」に、選抜した数名の技術部門社員を派遣しました。
同コースは週末に開催される20コマ程度のプログラムで、新しい分野の知識の習得や既知の分野の振り返りを目的として行われています。

また、地域産業界からの要請を受け、同社の役員や従業員がコースの一部で講師を務めており、地域産業発展にも貢献しています。

事例2. 損害保険業

同社では、大学や民間企業が実施するリカレント教育を活用し、デジタル人材の育成を開始しました。


民間企業が提供するリカレント教育も活用し、大学による講座とは異なり、受講する人数の制限がなく多くの従業員が活用できるため、従業員のデータ分析スキルの拡大が期待されます。

参考:イノベーション創出のためのリカレント教育 事例集|経済産業省(PDF)     

リカレント教育を導入し、組織全体の成長へ繋げよう

リカレント教育の重要性が増す中で、企業が従業員の成長を支援することが求められています。従業員の成長だけでなく、企業側としても、生産性向上等のメリットがあることから、組織全体の成長へと繋がるでしょう。

本記事で紹介した導入のポイントや事例を参考にして、自社に合ったリカレント教育を検討してみてはいかがでしょうか。

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