近年、働き方改革の一環として、企業は従業員がそれぞれの事情に合わせて働けるように、選択肢や制度を設けることが重要となっています。「カフェテリアプラン」も、そのような社会の変化を背景に、必要性が高いと注目されている制度のひとつです。
今回は、カフェテリアプランとはどのような福利厚生制度なのか、概要やメリット、おすすめの使い道をご紹介します。
カフェテリアプランとは
カフェテリアプランとは、企業が従業員に対してポイントや補助金の支給をし、提供可能なサービス内容の提示を行います。従業員は支給されたポイント・補助金を使用して、提示されたサービスの中から受けたいもの・利用したいものを選べるという福利厚生制度です。
カフェテリアプランという名称は、食べたいものを選択できるカフェメニューに似ている点に由来しています。1970年代にアメリカで誕生し、日本では1995年頃から導入する企業が出てきたと言われています。
カフェテリアプランが注目される背景
カフェテリアプランが注目される背景のひとつとして、働き方の多様化が考えられます。
近年では、性別にかかわらず、育児や介護等と両立してそれぞれの事情に応じて働くことも多く、また、個人のキャリア形成やライフスタイルに合わせた多様な働き方も出てきました。
近年、企業に求められるものの一つとして、DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の推進があります。
DEIのDは多様性、Eは公平性、Iは包括性を意味し、DEIは「あらゆる人が公平に扱われ、尊重され、組織・社会において包括される」状態を目指すこと、あるいはそのための取り組みを意味します。
これらの社会の変化に伴い、一人ひとりが持つ個性が尊重されるようになったことで、従業員に提供する福利厚生も、一律のものでは対応が難しい面があります。カフェテリアプランは、個人の事情や希望に寄りそうことのできる福利厚生制度の一つとして注目されています。
カフェテリアプランのしくみ
カフェテリアプランの多くは、ポイント制によって運用されています。たとえば「100円=1ポイント」と設定されたポイントが従業員に付与され、従業員は付与されたポイントの範囲内で、自由に受けたいサービスを選ぶことが可能です。
多くの場合、ポイントには有効期限が設定されています。有効期限を超過したポイントを無効とし使えなくすることで、従業員に確実に福利厚生制度を活用してもらうことが主な目的です。
カフェテリアプランの運営は、自社で行う方法とアウトソーシングする方法の2種類があります。専門会社にアウトソーシングすることで、自社で運営する負担を軽減でき、様々な種類のサービスを提供可能となります。
カフェテリアプランのおすすめの使い道
カフェテリアプランでは、多種多様なサービスが提供され、従業員はその中から興味のあるもの、自身にとって価値があると考えるものを自由に選択できます。本章では、おすすめの使い道や代表的なサービスをご紹介します。
余暇活動を楽しみたい
レジャーに関するサービスや宿泊費用の補助といったサービスもあります。
プライベートの時間を充実させてリフレッシュすることで仕事とのメリハリも出て、仕事へのモチベーションアップも期待できるでしょう。
・レジャー施設の利用補助
・ホテルや旅館等の宿泊費用の割引
健康に気を付けたい
人生100年時代と言われる現代では、健康管理は重視されますが、自費での人間ドックは敬遠される傾向があります。カフェテリアプランのポイントの利用であれば、受診のハードルが下がるでしょう。また、ジムの月額割引も利用のハードルを下げてくれます。
・トレーニング施設の利用料金割引
・人間ドック費用補助
自己啓発に取り組みたい
カフェテリアプランでは、資格取得や自己啓発に関連したサービスも用意されています。
・セミナー参加費用
・受講費用補助
育児・介護のサポートをお願いしたい
カフェテリアプランでは、個人の事情に合わせて育児・介護との両立を支援してくれるサービスも充実しています。
・保育園や託児所利用の補助
・育児用品の購入費用の補助
・介護サービス利用補助
カフェテリアプランのメリットとデメリット
本章では、カフェテリアプラン導入に向けて、知っておくべきメリットとデメリットを解説します。
カフェテリアプランのメリット3つ
カフェテリアプランのメリットとして以下の3つが挙げられます。
予算管理の負担軽減
カフェテリアプランは、従業員に対して事前に一定のポイントの付与を行うため、費用の支出が予算を上回ることはありません。コストオーバーが発生せず、またコストが明確となるため、予算管理の手間が削減されるでしょう。
多様なニーズに対応可能
カフェテリアプランでは、従業員は利用するサービスを自分で選択します。働き方の多様化が進み、それとともに福利厚生のニーズも多様化していると考えられます。
カフェテリアプランを利用することで、年代や性別、ライフスタイル等が異なる従業員のニーズに対応可能となり、従業員の満足度向上にも繋がるでしょう。
採用時の企業アピールの一つに
カフェテリアプランを導入することで、多様なニーズに合わせた福利厚生制度を用意していることを対外的に示せます。
個人のライフスタイルに寄り添った福利厚生制度が用意されていることは、求職者にとってもメリットとなるため、採用時の企業アピールの一つになると考えられます。
カフェテリアプランのデメリット
一方で、以下のようなデメリットも考えられます。
従業員の不満に繋がる可能性も
カフェテリアプランは多様なニーズに応えられ、従業員満足度の向上に繋がると前述しました。
一方で、利用したいサービスと保有ポイントが合わず、ポイントが使い切れないケースも考えられます。従業員にとっては、未消化ポイント分の福利厚生を受けられなかったことになり、従業員の不満に繋がる可能性もあります。
課税・非課税のサービスが混在
カフェテリアプランのサービスには、課税対象と非課税対象のサービスが混在します。課税対象の場合は給与とみなされ、所得税の計算に含まなければなりません。
同じカフェテリアプランで提供するサービスでも、内容に応じた取り扱いが必要となります。
運営コストが発生
カフェテリアプランを自社で運営するには、多くの手間やコストが必要です。
自社運営の負担を軽減するためには、代行サービスを利用することも有力な選択肢の一つです。福利厚生をアウトソーシングすることで業務委託料が発生しますが、業務負担の軽減に繋がります。
福利厚生の充実に向けてカフェテリアプランへの理解を深めよう
近年、ライフスタイルや価値観の多様化が進み、福利厚生のニーズも様々です。全従業員に一律の福利厚生を提供する体制では、従業員の要望に応えられない可能性があります。
カフェテリアプランは従業員主体で選択できる福利厚生制度であり、従業員満足度の向上も見込める一方、ポイントが未消化となる可能性や課税関連等、いくつかの注意点もあります。メリットとデメリットを理解し、導入を検討してみてはいかがでしょうか。