介護休業制度とは?人材流出を防ぐ制度設計のヒント|介護両立支援シリーズ vol.2

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介護休業制度とは?人材流出を防ぐ制度設計のヒント|介護両立支援シリーズ vol.2

前回の「2025年問題が企業に与える影響とは|介護両立支援シリーズ vol.1」では、『2025年問題』によって企業に起こりうる急速な人手不足の懸念と、従業員への介護両立支援のメリットを説明しました。

本記事は、介護を抱える従業員が離職をせずに今後も働き続けるため、「一時的に集中して休むこと」に着目します。国の制度である介護休業制度や、企業が設ける介護利用可能な休暇制度について見ていきましょう。

 

目次

国が定める介護休業制度
従業員から介護休業申請があった際の注意点
企業が定める介護のための休暇制度


国が定める介護休業制度

介護休業制度とは

介護休業制度とは、労働者が要介護状態にある対象家族を介護するための休業で、「育児・介護休業法」によって定められた制度です。

介護休業を取得できる方

要介護状態にある対象家族がいる労働者は、事業主に申し出れば介護休業を取得できます。

要介護状態とは
負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態

対象家族とは
配偶者(事実婚を含む)、父母、子(*)、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫
(*)介護関係の「子」の範囲は、法律上の親子関係がある子(養子含む)のみ。
 


参考:厚生労働省「介護休業について

介護休業を取得できる日数

介護休業は、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで取得できます。
 


参考:厚生労働省「介護休業について

介護休業の取得方法

上述のとおり、介護休業は対象家族1人につき通算93日まで、最大3回まで分割して取得できます。

そのため、祖父の介護に対して通算93日の一部あるいは全部をすでに取得していても、祖母の介護ではそれとは別に通算93日を取得できます。

3回までの分割が可能なのは、対象家族に対して介護が必要になってから亡くなるまでの間に、以下の各状況に応じた介護体制を構築できるようにするためです。

・状況① これまで介護の必要がなかったが介護が必要
・状況② 要介護者の状況が変わってより大きな介護が必要
・状況③ 看取り前の重篤状態の介護や看取りの準備が必要

これらを組み合わせると、以下の例のように介護休業を取得できます。

・祖父の介護で分割して20日取得した後に祖父は安定した
・今度は祖母の介護が必要になった
・祖父の介護のための介護休業とは別に、祖母の介護のための介護休業を35日取得

なお、休業中は育児・介護休業法により、雇用保険の被保険者で一定の要件を満たしていれば、休業開始時賃金月額の67%の介護休業給付金が支給されます。

参考:厚生労働省「介護休業制度特設サイト

従業員から介護休業申請があった際の注意点

本章では、従業員から介護休業取得の希望があがった際に、人事が気を付けるべき点について説明します。

1. 従業員や所属部署との認識合わせを行う 

従業員から人事に介護休業の取得申請があった場合、取得の条件に合致するかどうかを確認し、介護期間・業務調整・休業中の連絡方法等について認識を合わせましょう。

原則的には、法的な条件に適合しているのであれば希望に応じて取得を認め、申請者の所属部署と協力して休業・復帰の計画や業務整理を促します。

2. 要介護認定を求めない

介護休業を取得するにあたって要介護認定は必要ありません。人事部から「要介護認定の区分がわかる書類」を求めることは、次の2つの観点で誤っています。

①介護休業は介護の準備にも対応できるようにするための制度

上述の通り、状況①これまで介護の必要がなかったが介護が必要になった際の準備に利用でき、「要介護度の認定を受けるための手配」も含みます。

介護休業は、「従業員が1か月ほど帰省し、離れて暮らす親が現在どのような状態でどの程度の介護が必要なのかを医師やケアマネージャーらと相談し、介護体制を構築する」といったことに対応できるようにしているのです。

②介護休業は介護の実情に寄り添った制度

「要介護度」はあくまで、要介護者が介護サービスを利用する際に、介護保険制度から支給される金額の上限を決めるための指標です。

一方、介護休業を取得するには、対象家族が以下⑴⑵のいずれかにあてはまればよく、必ずしも要介護度がわかる必要はありません。要介護度が低くても、実際は日常生活に介助が必要であるケースが多く、介護休業はそのような方の支援も想定しているからです。

常時介護を必要とする状態に関する判断基準
⑴介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。
⑵状態①~⑫のうち、2が2つ以上または3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること

ただし、この基準に従うことにとらわれて労働者の介護休業の取得が制限されてしまわないように、介護をしている労働者の個々の事情にあわせて労働者が仕事と介護を両立できるよう、事業主は柔軟に運用することが望まれます。

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①座位保持(10分間一人で座っていることができる) 自分で可 支えてもらえればできる できない
②歩行(立ち止まらず、座り込まずに5m程度歩くことができる) つかまらないでできる 何かにつかまればできる できない
③移乗(ベッドと車いす、車いすと便座の間を移るなどの乗り移りの動作) 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面介助が必要
④水分・食事摂取 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面介助が必要
⑤排泄 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面介助が必要
⑥衣類の着脱 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面介助が必要
⑦意思の伝達 できる ときどきできない できない
⑧外出すると戻れない ない ときどきある ほとんど毎回ある
⑨物を壊したり衣類を破くことがある ない ときどきある ほとんど毎回ある
⑩周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れがある ない ときどきある ほとんど毎回ある
⑪薬の内服 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面介助が必要
⑫日常の意思決定 できる 本人に関する重要な意思決定はできない ほとんどできない

 

引用:厚生労働省「常時介護を必要とする状態に関する判断基準

身体的な要件で「要介護度1」の要介護者でも、認知症のため目を離せないケースはよくあります。従業員から個別の事情をよく聞き、基本的に法的な条件に適合しているのであれば希望に応じて取得を認めましょう。

企業が定める介護のための休暇制度

国が定める介護休業制度のほかに、各企業が従業員の介護支援のために設けている制度もあります。本章では、介護休暇制度積立有給休暇制度について説明します。

介護休暇制度とは

介護休暇とは、労働者が要介護状態にある対象家族を介護するための休暇で、「育児・介護休業法」によって定められた制度です。要介護状態と対象家族の定義は、上述の介護休業のものと同じです。

介護休業との大きな違いは、給付金の有無です。介護休業は雇用保険からの給付金がありますが、介護休暇では社会保険からの給付はありません。企業が規定で無給か有給かを定めます。

介護休暇は無給であっても、人事評価や給与・賞与に影響がある欠勤とは異なりますので、介護を抱える従業員に対して取得のメリットを伝えておきましょう。

また介護休暇を有給にする場合、年次有給休暇と別に有給の介護休暇があることは、従業員にとって単なる日数以上のメリットが生まれます。介護休暇は対象家族1人につき年5日まで取得でき、時間単位での取得も可能です。

通院や入院の付き添いのほか、介護サービスの手続きやケアマネージャーとの現状確認・介護計画等、必要な日数が少ない用途に活用されています。

積立有給休暇制度とは

積立有給休暇制度とは企業が独自に定められる休暇で、年次有給休暇の期限失効分を積み立てて後に利用できる休暇です。

積立有給休暇制度には様々な制度設計がありますが、筆者の200社程度の導入経験を振り返ると、ほとんどのケースで積立のハードルが低い代わりに利用要件が限定されています。

たとえば、「利用期限はなし、最大40日まで積立可能」である一方、利用要件を「年次有給休暇を残日数ゼロまで使用してから」「長期間の療養や、連続した一定期間の看護または介護に限定」とする、といったものです。

積立有給休暇は有給の休暇であることから、積立日数が十分にあれば、介護休業を取得して介護休業給付金を受給するより有利になる場合もあります。

また、積立有給休暇制度を活用することで、本当に必要な時まで介護休業を使わずに済むメリットもあります。介護休業の「対象家族1人につき通算93日まで」という制限は「対象家族の生涯で通算93日」です。積立有給休暇の利用で、「介護休業は本当に重い介護が必要になった時のためにまだ使わないでおきたい」という従業員のニーズに対応できます。

従業員の個別事情に配慮した対応を

前回の「2025年問題が企業に与える影響とは|介護両立支援シリーズ vol.1」で述べたように、これからの日本は生産年齢人口が減少し続ける社会になります。

このような社会において最も避けるべきことは、介護離職による必要なスキルを持った人材の流出です。上記の事態を防ぐため、企業は自社で働き続けてもらうための制度・環境の整備が求められます。

介護は必要だと分かった時に早急に体制を整え、できるだけ心身ともに健康な状態を維持できるようにすることが重要です。従業員の家族のことなのでプライベートな部分も大きいですが、本人の業務への影響やストレス状態等も含めて事情を聞けるとよいです。休業・休暇の必要性や今後の働き方について、法的要件や制度説明をしながら従業員本人とよく話し合いましょう。

また、従業員がある程度の長期間に渡って休暇・休業を取得する場合は、気持ちよく復帰できるように、人事も休業前や復帰前の業務調整に立ち会うことが望ましいです。特に復帰後も介護が継続的に続くことが多いでしょうから、定期的にフォローアップ面談を行うのもお勧めです。

続くvol.3では、両立支援の方法として休業・休暇前に必要な知識や、休まずに介護しながら就業し続けるための教育研修について解説します。

この記事を書いた人

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眞柴 亮(Mashiba Ryo)

2006年、ワークスアプリケーションズに入社後、通勤手当や寮社宅等福利厚生を専門に、大手法人の制度コンサルおよびシステム導入を担当。2019年、2020年と子会社の人事給与BPOベンダーであるワークスビジネスサービスに出向し、受託業務の効率化や品質改善に携わるほか、複数顧客に対し人事関連業務のBPRを実施。出向復帰後は顧客教育部門であるWorks Business Collegeを経て現職。

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