要員管理とは、企業がプロジェクトを推進していく際に適切な人材配置を実現するための手法です。
多くの企業が人材不足に頭を悩ませる時代、貴重な人的資本をどう活用できるかで企業経営の状況も変わることでしょう。一方で、人材の活用を効果的に行えていないことに課題を感じている人事部の方は少なくありません。
目次
ー要員管理とは
ー要員管理を行う4つのメリット
ー要員管理のポイントと効果的な運用方法
ー要員管理のプロセス4つ
要員管理とは
要員管理とは、プロジェクトごとに必要なスキルのある人材を調達し、適正に配置することです。本章では、要員管理の基本的な概念とその重要性を説明します。
要員管理の基本的な考え方
要員管理は、要員の状況を全体的に把握し、適材適所を実現するための取り組みです。
要員とは必要なスキルを満たす人材であり、そうした人材を正しく活用するためには、常日ごろからスキルを把握しておかなければなりません。従業員のスキルをデータとして管理し、適宜見られるようにしておく等、体制の整備が必要です。
要員管理によって、要員のスキルを事業・プロジェクトごとのニーズに合わせて活用できるようになります。要員管理は最適な配置計画を策定していくために不可欠の要素です。要員管理が適切に行われることで、プロジェクトの進行は円滑になり、企業目標の達成に繋がることでしょう。
要員管理の重要性
要員の能力が正しく把握されていない場合、以下のようなリスクが懸念されます。
・人員の能力不足による業務の遅れ
・業務品質の低下
上記のような状況は、プロジェクト全体の進行や、企業目標の達成にとって大きな障害となります。改善に向けて不足人員を補うことになれば、余分なコストがかかるでしょう。
また、従業員の能力が過少評価されている場合、業務に対して不満が生じ、モチベーションの低下に繋がる可能性があります。反対に能力が過大評価されており、努力しても求められる成果を達成できない場合も、疲弊やあきらめからモチベーションの低下が懸念されます。
つまり、個々の特性やスキルを活用し良好なパフォーマンスを引き出すためには、能力を正しく把握することが求められるのです。企業としてのビジョンや目標実現には、経営の根幹である人的資本の最大活用が重要なポイントです。
要員管理を行う4つのメリット
本章では、要員管理を適切に行うことで期待される効果を4つ紹介します。
①効果的な人員配置の実現
各プロジェクトで求められる場所に、必要な能力のある人員を配置できるようになります。事業計画の円滑な推進や作業品質の向上が実現され、能力不足や作業の遅れ等を原因とするトラブルの発生防止に繋がります。
②生産性の向上
適材適所の配置により作業効率が上がり、企業全体の生産性が向上します。個々のポテンシャルに見合った業務の振り分けは、効率的な事業推進に効果的です。
③従業員満足度の向上
スキルや適性にマッチした業務を与えられることで、ストレスなく能力を発揮できるようになり、仕事や企業に対する満足度が向上します。自身のスキルが正しく評価され、会社に必要とされているという意識が高まると、従業員満足度の向上やエンゲージメントの強化に繋がりやすいです。
④コストの抑制
限られた人材を効果的に活用することで、余分な人件費の抑制にもなるでしょう。業務の遅れに対して人員を補充するといったコストが発生しなくなり、予算の最適化に繋がります。
要員管理のポイントと効果的な運用方法
要員管理を実施する際に、注意すべきポイントと効果的な運用方法を説明します。
要員管理を実施する際のポイント
従業員の理解を得る
要員管理の実施によって何がどのように変わるのか、組織にとってのメリットだけではなく、従業員にとってのメリットを伝えることで、スキル把握の際に協力を得やすくなります。
能力をデータ化して把握する
要員管理においては、スキル、資格、経験、さらに興味やキャリア志向等、人員配置に役立つ個人の情報を把握します。具体的な手法としては、自己申告、適性検査、日常業務からの観察報告等があり、多角的に情報収集を行うことが求められるでしょう。
また、得意分野だけでなく苦手分野についても合わせて調査することで、マッチングの精度が高められます。収集したデータは、一律のフォーマットで標準化し、データベース化して活用しやすい形に整理することが大切です。
配置計画を立てる
要員管理の内容に従って人員の配置計画を策定します。プロジェクト遂行に必要な人員、求められるスキル・能力、役割や責任等を明らかにし、人的資本マネジメントを実施します。
要員管理により把握し蓄積したスキル情報を、配置計画等のアウトプットに生かしていくことが大切です。
人材配置を実施する
要員管理により把握したスキルと、プロジェクトや各事業でのニーズを照らし合わせ、実際の配置とチーム編成を行います。人材育成や稼働における課題抽出等、現場の実情に即した対応が必要です。
効果測定を実施する
要員管理の効果を分析し、配置計画の不備やその他課題を明確にします。短期間では効果が正しく計測できないため、一定のサイクルで実施することが大切です。また、効果分析の結果次第では、再配置も検討します。
要員管理を効果的に行う方法
要員管理においてはExcelを利用する企業も見られますが、より効果的に実施するためには、タレントマネジメントシステムのようなツールの活用がおすすめです。ツール導入が推奨される理由として、Excelによる要員管理の限界が挙げられます。
多くの場合、管理状況を見やすくするためにガントチャート作成が行われています。一方で、事業規模の拡大やプロジェクトの増加、要員の増加により煩雑化し、整合性を失いやすいことが課題です。データ量が多くなると全体像が把握しにくくなることもデメリットです。
少人数、小規模な事業であればExcelでもしのげますが、ある程度の規模になると正確な要員管理が難しくなります。そのような場合、システムやその他ツールを活用することで、効率的な実施が可能です。
要員管理のプロセス4つ
本章では、要員管理実施のプロセスを説明します。要員管理は、企業のプロジェクトマネジメントに関する知識を体系的にまとめたPMBOK(Project Management Body Of Knowledge)に沿って進めることで、必要なプロセスを追うことが可能です。
①人的資本マネジメント計画
プロジェクトの各フェーズでどのくらいの人員が必要となるかを計画し、それをもとに要員の人数・責任範囲を明確にしていきます。人的資本マネジメント計画の項目例は以下のとおりです。
▼人的資本マネジメント計画の項目例
要員調達 | 調達先、調達方法、調達コスト |
資源カレンダー | 作業期間、調達時期 |
要員ヒストグラム | 月毎の要員数、作業時間のグラフ |
要員離任計画 | 要員の離任方法、時期 |
表彰・報奨 | 表彰・報奨の明確な基準や運用 |
トレーニング | チーム全体を見据えた要員の能力、スキルの育成計画 |
要員役割・責任範囲 | 要員ごとの権限や責任範囲の決定 |
法令遵守 | 関連する法令とそれに沿った運用 |
安全 | 安全運用への方針 |
②チーム編成
人的資本マネジメント計画をもとに、プロジェクト遂行に必要なチームを編成します。このとき、必要な要員が不足している場合には社外からの調達も検討しましょう。また、チーム内の組織図を策定し、報告ルートの決定等を行います。
編成においては、チームメンバーが所属している部署への依頼、必要に応じて社外調達の手続きが必要です。各メンバーに対しても、役割・責任範囲の決定と通知、組織図の共有を行います。
③チーム育成
チームの成長を5段階で表すタックマンモデルを活用し、状況を把握しながら、学習や話し合い、指導によってチームビルディングを進めます。
タックマンモデルとは、チームが理想的な成長を遂げる過程を示すもので、「形成期」「混乱期」「統一期」「機能期」「散会期」の段階で表されます。
④チームマネジメント
チーム内における課題の発見と解決を行います。報告書や観察を通じて常に課題を認識するようにし、チーム全体の課題とすることで全員が当事者となります。
チーム内の不穏な状態がプロジェクト進行に支障をきたす前に業務上の問題をコントロールする、コンフリクトマネジメントの実施も重要です。
ツールを活用した要員計画の実施で安定したプロジェクトに
優秀な人材を集めても、適材適所が実行されていないと十分に能力を活かしきれません。
プロジェクトの進行が滞るといった事態を防ぐためにも、組織の要員管理はとても重要です。要員管理が適切にできていれば、プロジェクトや事業への正しい人員配置がしやすくなります。各人材が力を発揮することで、企業としての成果につながります。
安定的な人材確保が困難な今だからこそ、人的資本を最大限に活かせるよう、タレントマネジメントシステム等のツールを活用して要員管理に取り組むことが求められます。