休憩時間管理から考える、在宅勤務に適した勤怠管理とは

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最終更新日 2024年2月29日

休憩時間管理から考える、在宅勤務に適した勤怠管理とは

 

以前の記事において、在宅勤務/テレワークが浸透したWithコロナ時代の今、改めて労働時間の客観的把握方法を見直していただくための整理の仕方と改善例のご紹介をしました。

【参考記事】
Withコロナの今こそ見直すべき労働時間の客観的把握方法とは」 

 

今回は、勤怠管理を行う上で労働時間と対の関係にある「休憩時間」にも焦点を当てていきます。

労働時間と同じく休憩時間についても、在宅勤務/テレワークの状況でどこまで管理/監視すべきか、明確な答えを持てていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、「休憩時間」のそもそもの定義を改めて確認しつつ、実際どの程度の勤怠管理が適切なのかについて考えていきます。

 

目次


「休憩時間」と「手待ち時間」の区別
在宅勤務であることと勤怠管理の難しさは比例しない?
時間管理を簡易化するための工夫を
より多様な働き方ができる環境を作るために会社ができること

 

「休憩時間」と「手待ち時間」の区別

意外と正しく認識されていないことが多いですが、労働時間と休憩時間の定義上の関係性は以下の通りです。

 

労働時間 =「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」

休憩時間 =「労働者が権利として労働から離れることが保障されている時間」

 

つまり、実際に作業に従事しているか否かではなく、「管理監督者による指揮命令下に置かれている状態」か「離れることが権利として保証されている状態」かによって、労働時間か否かが区別されます。

一方で、作業から手が離れているだけであり、いつでも指揮命令があれば作業に着手・再開できるような状態でいる時間は、「手待ち時間」と呼ばれます。
実はこの「手待ち時間」は、先ほどの定義になぞらえると指揮命令下に置かれていることになるので、労働時間と見なされます。

この「休憩時間」と「手待ち時間」との不明確さは、時に未払割増賃金の支払いを求める法的事例において争点となることが見受けられるため、ここまでの話については知識としてご存じの方も多いのではないでしょうか。

次章では上記の定義をもとに、在宅勤務/テレワーク下での勤怠管理をどうすべきかについて触れていきます。

 

在宅勤務であることと勤怠管理の難しさは比例しない?

 

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あなたの会社は、在宅勤務/テレワークを会社として認めているものの、業務状況を直接確認できないからという理由で、システム的な管理強化を図ろうとしていないでしょうか?

確かに在宅勤務/テレワーク下では、出社状況下と同じ管理監督手法を当てはめるのは非常に難しいと言えます。
特に管理監督者としては、部下がサボっていないか、しっかり手を動かしているのか、パソコンの前に向かっているのかということが心理的に気になってしまうかと思います。オフィスという同じ空間にいれば目で見てわかるものが、そうではないからです。

人事部門やシステム運用部門としてもそうした現場上長の心中を察して、あの手この手でシステム上の勤怠管理や労働状況の監視厳密化を検討することもあろうかと思います。ともすれば、パソコンが動いていない時間と本人申告の休憩時間との照合を行いたい、というようなことも耳にします。

しかしながら、現在のテクノロジーに目を向けてみると、高性能で便利なモバイル端末の普及、高速な通信技術とクラウド技術を駆使したチャット・Web会議ツールの台頭など、オンライン上でも容易な業務管理・コミュニケーションが実現できる状況はすでに整っていると言えます。

これらを駆使できる時代であるため、必ずしもパソコンに向かって手を動かしていないと全く仕事ができない/していないという訳ではありません。

つまり、環境の変化に対して適切な手段を採択すれば、在宅勤務/テレワークであることと管理監督の難しさは決して比例しないということになります。
管理監督ができる状態であれば指揮命令下に置けますので、自宅での勤務スタイルをある程度本人の裁量に任せても特に問題はないと言えます。

 

時間管理を簡易化するための工夫を

 

ここまでのお話でお気付きかもしれませんが、時間による勤怠管理と在宅勤務/テレワークはそもそも相性があまり良くないとも言えます。

中抜け時間ほど厳密に指揮命令下から外れる必要はなくとも、自宅であれば、本人の自由意志によって手待ち時間(つまり、パソコンの前におらずとも、家の用事を行いつつモバイル端末などで仕事上のコミュニケーションもいつでも取れる状態である時間)が増えることは十分にあり得ます。
つまり、パソコンの前で手を動かしていない状態をすべて休憩時間と定義するかのごとく細かに管理/監視を行うことは、必ずしも最良の選択にはならないと言えます。

 

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では、業務従事時間の厳密な管理/監視をせずともきちんと勤怠管理をするにはどうすれば良いのか。

ひとつは、勤務形態や適用制度を変更することです。
例えば以下のような制度を採用することが、厚生労働省のテレワークにおける適切な労務管理のためのガイドラインとしても記されています。

・フレックスタイム制
・事業場外みなし労働時間制
・裁量労働制 ※ただし専門業務・企画業務従事者に限る
 

適用条件など、詳しくは当該のガイドラインをご確認いただきたいですが、このうちフレックスタイム制は特に、労働者側にとっては始業時刻や終業時刻の調整が可能であり、逆に企業側にとっては月の総労働時間数による割増賃金の算出でよいため、日単位で複数の休憩時間帯のすべてを事細かに記録する必然性はなくなります。
※ ただしどの制度であっても、労働時間(始業/終業時刻と、休憩を含めた総控除時間数)の客観的把握は必要となりますのでご注意ください。

一方で気を付けなければならないこととして、2つ目の事業場外みなし労働時間制については、在宅勤務/テレワークだからといってその制度が適用できるとは限らないという点が挙げられます。

事業場外みなし労働時間制が適用できるためには以下2つの条件が必要です。
1.事業場外で業務に従事している
かつ
2.使用者の具体的な指揮監督が及ばない

これらの条件から労働時間を算出することが困難な業務である、と認められる場合にのみ、適用することが可能です。

自宅は確かに事業場外ですが、前述の通り、自宅で業務に従事しているという状況だけでは使用者の具体的な指揮監督が及ばないと結論付けることはできませんので、慎重な見極めが必要となります。

より多様な働き方ができる環境を作るために会社ができること

いかがでしょうか。ここまで、どのように在宅勤務/テレワーク下の休憩時間を定義し、ひいては労働時間の管理を簡易化するかについて論じてきました。

どんな方法を取るにしても大切なのは、直接的には様子が見えづらい状況下でも、いかに業務上でコミュニケーションが取りやすい状態を確立するか、です。

 


 

厳密な勤怠管理はシステム入力や確認の手間が増えるというデメリットもあります。
そうするよりもむしろ、労働から完全に離れる権利はきちんと保障しながら、それ以外の時間においては在宅状況下でも管理が最小限で済むような環境の整備をまずは優先すべきではないでしょうか。
厳密な勤怠管理のためのシステム化にコストをかけるくらいであれば、遠隔コミュニケーションを容易にするようなシステム導入にコストをかけるべき、と言えます。

また、以下の記事でも触れさせていただいている通り、在宅勤務/テレワークにおいては労働従事時間ではなく、成果やパフォーマンス、そしてそのプロセスを適切に管理/評価することがむしろ重要と考えられます。
円滑なコミュニケーションを支援することに加えて、成果やそのプロセスについてもどのように管理/評価していくかも策を練っていただくことをおすすめします。

最後に、当たり前のことではありますが、法律で定められている時間数の休憩取得は遵守するようにしてください。
(1日の労働時間が6時間を越えたら45分以上、8時間を越えたら60分以上)

ここまで記載してきた内容はあくまでも、追加休憩に関する定義とその考え方についてのものです。
出社時以上に、高頻度かつ長時間パソコンの前から離れることの是非と、その時間をどの程度管理/監視すべきか、そしてシステム化の優先順位について、検討のご参考になれば幸いです。

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