ティール組織とは?注目される新たな組織モデルの事例とデメリット

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最終更新日 2023年6月6日

ティール組織とは?注目される新たな組織モデルの事例とデメリット

ティール組織とは、社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても、目的の達成に向けて進化し続ける組織を指します。従来、組織はトップが指示を出し、従業員は指示に従いながら企業目標のために動いていました。

しかし近年では、それらとは異なる新たな組織の形「ティール組織」が注目を集めています。

この記事では、ティール組織の基礎知識や失敗しないためのポイント、事例等について解説します。
 

目次

ティール組織とは
ティール組織とホラクラシーの違い
ティール組織のメリット
ティール組織のデメリット
失敗しないためのポイント3つ
ティール組織の事例
まずは取り入れられるポイントから参考に

 

ティール組織とは

ティール組織とは、経営陣がマイクロマネジメントを行わずに、自律した従業員によって進化する組織です。従業員は一人ひとりが組織内のルールや自分の役割を正しく把握し、独自に工夫しながら意思決定していきます。そうすることで、企業トップの監督や干渉なしに、個々が目標達成に向けて努力する組織が形成されます。

ティール組織が注目されはじめたきっかけは、2014年のフレデリック・ラルー氏によって書かれた『Reinventing Organizations』です。著書の中で、トップダウン型の組織形態は組織に悪影響を及ぼしていると指摘されています。この内容に経営者たちが関心を向け、従来の組織形態を覆すティール組織が注目を集めるようになりました。

著者は、組織がその進化の段階に応じて5つの色に分けられると述べています。

【図表】ビジネスコラム_ティール組織.jpg


ここからは、色ごとに組織の特徴を見ていきましょう。

ティール組織(進化型)

ティール組織は、権力のあるリーダーを配置せずに、現場の従業員が意思決定する組織です。組織としての目標を従業員一人ひとりが理解し、自身の役割を把握して自発的に行動します。

従業員間での上下関係を持たないことが、ティール組織の大きな特徴です。先述したティール組織以外の形態では集団をまとめる役割が存在しますが、ティール組織にはトップやリーダーがおらず、従業員は全員が対等な立場です。

そのためティール組織は、組織としての目標達成に向けて、個人が成長しながら活動できる環境にあります。これまでとは異なる新たな組織形態を取ることから「進化型」とも呼ばれます。

グリーン組織(多元型)

グリーン組織は、後述のオレンジ組織と同様に組織として成果の達成を目指す形態ですが、さらに従業員個々が主体性を持って行動します。

グリーン組織をまとめるリーダーは、組織の団結力を高めるだけではなく、従業員が働きやすい環境を整える役割も担います。

グリーン組織では、従業員の個性が多様化する傾向にあるため、「多元型」とも呼ばれていますが、物事の決定権があるのは依然としてリーダー側です。

オレンジ組織(達成型)

オレンジ組織は、階層的構造(ヒエラルキー)を土台としながら、柔軟に時代や環境の変化に適応している組織です。日本では最も一般的な組織形態とされています。

オレンジ組織は、リーダーの監督を受けながら、それぞれの従業員が持つ強みを活かし、組織としての目標達成を目指すことが特徴です。リーダーは、組織の目標を達成するため、従業員をまとめます。

また、目標に大きく貢献した従業員には出世の機会が与えられ、組織のトップを目指すことも可能です。一方で、他の従業員を出し抜いてでも成果を上げたいという思いから過重労働の常態化を引き起こし、過労死や労災に至る危険性が問題視されています。

アンバー組織(順応型)

アンバー組織は、階層的構造(ヒエラルキー)を持っている組織です。階級や制度が細かく設定されており、上下関係を明確化させることで組織としての秩序を保っています。現代の社会にもよく見られる構造で、軍隊や警察等がここに含まれます。

アンバー組織に所属している従業員の特徴は、集団における自分の立場や役割に沿った行動をする点です。そのため、自発的に行動を起こしたり、自分の意見を上司に伝えたりする機会が少なく、上司の指示に従ってマニュアル通りに動くという傾向があります。

組織としての秩序が明確に保たれている一方で、規律を重んじるあまり新しいアイデアが生まれにくく、時代の変化に対応しにくいというデメリットもあります。

レッド組織(衝動型)

レッド組織は、5色の中で最も原始的な組織です。犯罪組織のように、集団のトップが支配者であり、圧倒的な権力を有していることが特徴です。そのため、組織の従業員を力と精神的な恐怖心でまとめる傾向にあります。

また、レッド組織の組織運営で重視されるのは、中長期的な目標ではなく目先の利益です。短期的かつ衝動的な行動を取ることが多いため、「衝動型の組織」に分類されます。トップの圧倒的な力に頼る組織形態であることから、トップがいなくなると組織としての機能を保てなくなる危険性があります。
 

ティール組織とホラクラシーの違い

ティール組織に近い組織形態としてホラクラシーが挙げられますが、これらは似て非なる概念です。ティール組織とホラクラシーは、組織を構成するメンバーに上下関係がなく、意思決定権が分散されているという点で共通しています。その一方で、運用のされ方については明確な違いがあります。

ティール組織は従業員一人ひとりの自律的な判断で機能し、状況や環境に応じて進化するためはっきりしたモデルはありません。対してホラクラシーは、「ホラクラシー憲法」という絶対的なルールが設けられており、様々な組織で同じように運用されます。
 

ティール組織のメリット

ティール組織のメリットは、以下の通りです。

  • ・従業員の主体性を尊重できる
  • ・計画実行力の高い従業員を増やせる
  • ・柔軟性の高い組織になる
     

メリットの一つは、従業員の主体性を尊重できることです。ティール組織は意思決定権が従業員個人にある組織構造であるため、上司の判断をあおぎ、承認を受けてから作業に移る必要はありません。様々な場面で判断を任されることで、従業員は自信を持つようになり、主体的な行動へのモチベーションも上がるでしょう。

また、計画実行力がある従業員の育成も期待できます。なぜならティール組織では、上からの監督・指示がない分、企業目標の達成が従業員一人ひとりの行動にかかっているからです。それぞれの従業員が自律して工夫を凝らしながら業務をするため、ゴールへの道筋の立て方が身につきます。    

さらに、組織に想定外のことが起きたとき柔軟に対応できる、という点も挙げられます。それは従業員一人ひとりが、普段から当事者意識を高く持って働いているからです。不測の事態が生じた際に、誰かの指示を待つのではなく、各自が自分で打開策を考えて行動できることは組織にとって大きなメリットです。
 

ティール組織のデメリット

ティール組織のデメリットは、以下の通りです。

  • ・セルフマネジメントできない人が多いと、組織として成り立たなくなる
  • ・従業員それぞれが何の業務に携わっているのか管理しにくい
  • ・リスク管理が困難になる可能性がある
     

ティール組織は業務フローの大部分を従業員個人に任せるため、マネジメントしにくいというデメリットがあります。上記のデメリットを回避するためには、定期的にコミュニケーションの場を設けて、進捗管理のしくみを作ることが重要です。
 

失敗しないためのポイント3つ

企業運営にティール組織を取り入れる場合には、以下の3点を押さえておく必要があります。

  • ①エボリューショナリーパーパス(存在目的)
  • ②セルフマネジメント(自主経営)
  • ③ホールネス(全体性)


それぞれについて詳しく解説します。

①エボリューショナリーパーパス(存在目的)

エボリューショナリーパーパスとは、組織の根本的な存在目的を指します。組織の存在目的を従業員全員が理解して追求することは、ティール組織を形成するうえで必要不可欠な思考です。

ティール組織ではトップの人間は作らず、全員が対等の立場にいます。そのため、従業員同士が競合するという概念が生まれず、全員が一致団結して組織のために活動します。

反対に、従業員全体が組織の存在目的を把握していなければ、自己方針を決めることができません。その場合、アンバー組織やオレンジ組織と同じように、トップダウン型のフローに依存してしまうでしょう。

②セルフマネジメント(自主経営)

ティール組織はトップに立って組織をまとめる人がいないため、一人ひとりが自主的に活動します。業務を滞りなく行うためには、従業員全員がセルフマネジメントを意識しなければなりません。

従業員が自主的であるということは、それぞれが意思決定権を持ち、自分の思い通りに仕事を進めるということです。しかし、全員が何もかも自由に決めると組織としてのまとまりがなくなってしまいます。

そのため、提案や意思決定をする際は自分ひとりでは決めずに、別の従業員に助言を求めるようにするとよいです。各々がセルフマネジメントしながらも、提案に対する客観的な意見を得るしくみがあれば、メンバー同士がお互い納得できる決定になるでしょう。 

③ホールネス(全体性)

ホールネスとは、従業員全員が対等な立場であり、安心して互いを認め合える状態のことです。ホールネスは「全体性」と訳され、組織に属する従業員全員の心理的安全性が高い職場環境を意味します。

Apple社やGoogle社では、従業員が心理的な安心を得るための取り組みのひとつとして、ヨガやマインドフルネスを導入しています。精神的な安定を維持し、自己方針の決定に役立てることは、セルフマネジメントにも役立つほか社内のホールネス向上にも繋がるでしょう。

ティール組織の事例

この章では、ホールネスを成し遂げて、ティール組織化に成功した企業の事例を紹介します。

ある企業ではホールネスの向上を目的に、「Thanks day」と「Good or New」という制度を導入しました。

Thanks day:
一年に一日、希望する従業員が誰かに感謝するための休暇を取る制度です。休暇取得の際に、現金2万円が給付されます。

Good or New:
仕事で直接関わりのない人とコミュニケーションを図るための制度です。毎朝5〜6人と会話をする時間が設けられています。

この2つの制度を取り入れたことで社内にホールネスが確立し、ティール組織という新たな組織形態に近づきました。

まずは取り入れられるポイントから参考に

ティール組織の考え方を取り入れると、従業員の主体性を尊重する、柔軟性の高い組織作りを実現できます。従業員が自律することによって、企業の成長やエンゲージメントの向上が期待できるでしょう。

ティール組織を構築するためには、エボリューショナリーパーパス・ホールネス・セルフマネジメントの3つが重要です。すべてを一度に実践しようとするのではなく、取り入れやすいものを試しながら、徐々にティール組織の形成を目指しましょう。

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