給与計算ミスを防ぐには?計算スタイルに応じた具体策4つ【整理シートつき】

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給与計算ミスを防ぐには?計算スタイルに応じた具体策4つ【整理シートつき】

近年、人事部門に求められる業務領域は拡大しています。筆者は長年、企業人事部の業務効率化や高度化を支援するコンサルタントとして活動してきました。お客様とのやり取りのなかで多く見られるようになったのが、人事部門に求められる役割の変化です。

たとえば、「労務管理などの定型業務から、人事企画やタレントマネジメントといった戦略業務にシフトするに伴い、戦略業務に充てる人材が増えた」という事例を、人事担当者の方々から直接伺う機会が増えました。

一方、人員シフトに伴い給与計算などの定型業務を長年支えてきた担当者の異動・離脱も発生しています。定型業務の人員縮小やノウハウ不足を背景に、「給与計算ミス」が起きるリスクも無視できません。

給与計算ミスは、従業員の信頼を損なうだけでなく、再計算や問い合わせ対応に追われることで人事担当者の負荷を高めます。場合によっては、組織全体への不信感や優秀な人材の離脱に繋がるリスクもあります。

本コラムでは、給与計算ミス撲滅に向けた具体的な進め方や、押さえるべきポイントについて、業務改善コンサルティングに携わってきた筆者の視点から解説。一般的な手法から、それだけでは解決できない課題にボトムアップでアプローチする具体的な手法までご紹介します。

1分サマリ

本コラムでは、給与計算ミス撲滅のための具体的な手法をご紹介します。

一般的な対策(システム化、BPO、マニュアル化・教育、コミュニケーション改善)に加えて、実際に発生したミスからPDCAサイクルを回す手法をご紹介します。

この手法の実行を支援するための「給与計算ミス撲滅シート」もご用意しています。

給与計算ミスは、担当者の努力だけで解決できる問題ではありません。
ぜひ組織全体でミス発生の真因に向き合い、効率的な改善を実行していきましょう!

給与計算の流れ

一般的に、給与計算業務は以下の流れで進みます。

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上記の流れはどの企業でも共通ですが、給与計算の実施にあたっては、様々な方法があります。

たとえば、無料で利用できる給与計算ソフトや表計算ソフトを使って自社の人事部門で対応している企業もあれば、専用の給与計算システムを導入している企業、さらにはアウトソーシングやシェアードサービス部門/子会社に業務を集約している企業もあります。

まずは自社の給与管理スタイルをチェック!

皆様は、給与計算業務に対してどのような体制で臨まれているでしょうか?

業務改善の前に、まずは現在の自社の給与管理スタイルを以下のマトリクスでチェックし、特徴と課題を把握することから始めてみましょう。

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A.燃え尽きファイター型

【特徴と課題】
担当者様が一生懸命にチェックされているにもかかわらず、しくみが追いつかないために、ヒューマンエラーが多いタイプです。業務改善の余地は非常に大きいといえます。即効性のある手法を選ぶ必要があります。

【解決策】
▼次章はこれがおすすめ!
1.手作業によるヒューマンエラー(対策:システム化)
4.コミュニケーションエラー(対策:まずは原因分析)

まずは、1で手作業による物理的な作業負荷を下げ、余力を作るのが先決です。そのあと、4で作業ミスの原因に担当者間のコミュニケーションエラーが潜んでいないかをチェックするのがおすすめです。

B.堅実ガーディアン型

【特徴と課題】
チェックが丁寧で誤支給は少ないものの、人力チェックの多さや、チェック観点の過度な細かさによって、業務負荷が非常に大きくなっているタイプです。担当者様の精神的負担や、パフォーマンス低下、離脱といった組織的な課題を抱えていることもあります。比較的、シェアードサービス部門/子会社にも多い傾向があります。「守りの強さ」を活かしつつ効率化できれば、最も理想的な形に近づけます。

【解決策】
▼次章はこれがおすすめ!
1.手作業によるヒューマンエラー(対策:システム化)
3.特定メンバーに属人化し、休暇・離脱時にミスが多発(対策:マニュアル化、教育)


まずは1で作業やチェックを自動化しつつ、同時に現状では不要な作業やチェックを廃止するなどして作業負荷を下げ、余力を作ります。それから3のメンバー教育に取り組み、将来的にも持続可能な体制を目指しましょう。

C.ヒヤヒヤスプリンター型

【特徴と課題】
人員不足やスピード優先といった理由でチェックを省きがちで、効率はよいものの誤支給のリスクが高いタイプです。スピードは強みですので、それを維持しつつ「最低限の精度ライン」を確保することが鍵となります。

【解決策】
▼次章はこれがおすすめ!
1.手作業によるヒューマンエラー(対策:システム化)
2.高負荷により本来実施すべき作業やチェックがしきれない(対策:体制強化 or BPO)


まずは1で現状のチェック業務を自動化して作業負荷を下げ、余力を作ります。そのあと、「最低限の精度ライン」を確保するためのチェック観点、およびチェックリストを作成するのがおすすめです。その上で足りない人員を補強されることが多いですが、どうしても内部で調達できない場合は、BPOなど外部リソースの活用を検討されるケースも多いです。

D.スマートマスター型

【特徴と課題】
しくみ化・自動化によってチェック負荷を下げ、かつチェック精度も高く維持できている、理想的な先進タイプです。

【解決策】
▼次章はこれがおすすめ!
3.特定メンバーに属人化し、休暇・離脱時にミスが多発(対策:マニュアル化、教育)


現在の理想状態を長く維持するために、人員確保や教育の検討が有効です。

一般的な原因と対策は?「COMPANY」でできることは?

給与計算ミスにはどのような原因があり、それに対してどのような対策が考えられるのでしょうか。WHIが提供する統合人事システム「COMPANY」の機能を活用した解決策もあわせてご紹介します。

原因1.手作業によるヒューマンエラー

システムへの入力ミスや、表計算ソフトでの集計・転記ミスなど、人為的なエラーは給与計算ミスの大きな原因の一つです。

対策1.システム化

一般的にはチェックシートの活用やダブルチェックといった対策がありますが、これらには対応工数がさらに増えてしまうデメリットもあります。「COMPANY」では、給与計算プロセスの自動化により、手作業そのものを減らすことでミスを未然に防ぎます。さらに、万が一のミスも効率的に検知する豊富なチェック機能を備えており、作業負荷を下げながら、精度の高い業務遂行を支援します。

原因2.高負荷により本来実施すべき作業やチェックがしきれない

給与計算担当者の業務負荷が高すぎると、本来必要なチェックが疎かになり、ミスに繋がります。

対策2.体制強化 or BPO

自社で人員を確保し、体制を強化することが理想ですが、困難な場合はBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)も選択肢となります。

原因3.特定メンバーに属人化し、休暇・離脱時にミスが多発

給与計算業務は、法改正や社内規定変更への対応も必要なため、ベテランメンバーにノウハウが集中し、属人化しやすい傾向があります。

対策3.マニュアル化、教育

マニュアル作成や教育が正攻法ですが、業務の変化スピードが早まっている昨今、マニュアルを作成してもすぐに陳腐化する恐れがあります。更新負荷の軽減や、継続的な教育などをセットで検討する必要があるでしょう。

弊社では、PS(プロフェッショナルサービス)(※1)によるマニュアル作成支援(※2)や、WBC(Works Business College)(※3)による継続的な教育の場をご提供しています。

(※1)PS(プロフェッショナルサービス):社内のリソース不足で業務改善等の工数が捻出できない場合は、人事業務とシステムの両方を理解したプロフェッショナル人員を弊社から提供し、お客様の一員として改善推進を支援します。

(※2)マニュアル作成支援は、原則として弊社フォーマットの利用を前提とします。
             また主に研修目的の資料となるため、貴社オペレーションに関する記載事項が多い場合は、ご支援をお断りする場合がございます。

(※3)WBC(Works Business College):製品の基礎知識をレクチャーする講座です。新しく人事に異動された方など向けに、人事業務と、それに関連する実務的な製品知識を体系立てて学べる集合型の講座をご用意しています。

WBS(Works Business College)の認定資格試験・製品知識講座
COMPANY Foundation 認定資格試験
製品知識講座

原因4.コミュニケーションエラー

給与計算業務は人事部門内だけでなく、他部門(労務管理、各事業所など)との情報連携が不可欠であり、この連携が円滑に行われないとミスが発生します。

・発令を登録する部署から必要な連絡がなかった 
・共有で管理している進捗管理表/システムが更新されていなかった 
・来月対応すると先送りした処理の実行を忘れていた 

対策4.まずは原因分析

特に、誰から誰へ、いつまでに、どのような情報が伝達されるべきかが曖昧な場合、ミスが発生しやすくなります。このため原因分析の際には、「誰が」という責任の所在を明確にすることも重要です(ただし、個人攻撃にならないよう、組織全体で原因分析に対する姿勢を共有することが大前提です)。

それでも給与計算ミスがなかなか減らない場合は?

上記のような対策を一通り実行しても、PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルが回せてない場合、ミスが減りにくい場合があります。ミスの原因を分析し、確実に同じミスをしないようにしくみ化することが重要です。

では、給与計算業務においてPDCAサイクルを回すというのは、具体的にどういうことでしょうか。その一連の流れを解説します。

 1. ミス発生:実際に発生したミスを記録します。
 2. 原因分析・対策実施:「なぜなぜ分析」を実行し、真因を突き止め、具体的な対策を立案・実行します。
 3. 次月計算の計画立案:立案した対策を次月の作業プロセスに組み込みます。
 4. 次月計算の実行:計画に基づき給与計算を実行します。

このようにPDCAサイクルを継続して回すことで、着実なミスの減少が期待できます。

ただし、PDCAサイクルの継続的な実施は簡単ではありません。皆様は、過去にPDCAを回す取り組みをした結果、「半年ともたなかった」「辛うじて続けてはいるが、形骸化して本来の意味を成していない」といったことにお悩みではありませんか?

そのような場合は「外圧」、つまり外部からの監視や推進力が効果的です。定例会議を開催し関係者を招集したり、初期段階では第三者(コンサルタントなど)を参画させたりする手法が有効です。

給与計算ミス撲滅シートをご活用ください!

このボトムアップ型のPDCAサイクルを効果的に回すために活用できる、「給与計算ミス撲滅シート」をご紹介します。

給与計算ミスが発生した際、このシートに沿って発生事象を明確化し、なぜなぜ分析でミスの真因を特定することで、PDCAの『原因分析(C)』や『対策実施(A)』が具体的に進められます。

利用メリット

1.項目が具体的で、原因分析と対策に直結している

給与計算業務特有の記入項目(「過払/支払不足」「賃金区分」「業務区分」)を設けており、発生事象の正確な理解を助けます。
特に「原因のなぜなぜ分析」の列は、単なる表面的な原因だけでなく、真因を深掘りして特定するプロセスを組み込んでいるため、再発防止効果の高い対策を導きやすくなっています。
 

2.影響の可視化

発生事象に関する「対象者」と「理論金額との総差分額」を記入することで、発生したミスの規模や影響度が定量的に把握でき、対策着手の優先順位付けに役立ちます。
 

3.対策の実行者と進捗を明確に管理できる

「対応区分」「対応内容詳細」「完了予定日」「対応者」「対応状況」といった項目により、対策が計画倒れにならず、誰が、いつまでに、何を、どのような状況で進めているのかが明確に管理できます。
 

4.再発防止のためのチェック体制・観点へのフィードバックを想定している

「給与変更が発生するトリガー」と「対象者抽出ツール」の項目は、将来の給与計算前のチェック体制・観点にどう組み込むかという視点が含まれています。そのため、しくみとしての恒久的な改善を促します。


上記4つのポイントによって、このシートは単にミスを記録するだけでなく、給与計算業務の品質改善に向けたPDCAサイクルを回すためにお使いいただけるよう設計されています。

利用の流れ

本シートは、給与計算ミスが発生した際に、その事象を記録・明確化し、問題が発生した真の原因を特定、さらに恒久的な再発防止策の検討・管理をするために利用します。

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▼記入イメージ

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弊社ユーザー様は、カスタマーサポートサイトからもダウンロードいただけます。ぜひ、日々の業務改善にお役立てください。

業務プロセス全体を改善したい場合は?

給与計算ミス撲滅シートを活用してPDCAサイクルを回す改善手法でも限界を感じられた場合は、業務プロセスそのものを見直した方がよいかもしれません。

ただし「今の業務プロセスが当たり前と感じているため、自社メンバーだけでは現状の課題を洗い出しきれない」というお悩みを伺うこともあります。そのような場合は、第三者のプロの協力を依頼する方法もあります。

WHIでは、業務プロセスの見直しからシステム活用まで、一気通貫で改善のご提案が可能です。現状の可視化、課題の抽出、そしてその解決方針の検討まで、長年のコンサルティングノウハウを活かしてご支援いたします。ご興味があればぜひご活用ください。

この記事を書いた人

ライター写真

井上 奈甫(Inoue Naho)

2009年、Works Human Intelligenceの前身企業に入社。人事システムの保守コンサルタントとして、業種を問わず100社を超える大手法人の業務改善を支援。その後、保守経験を活かした「持続可能なBPR」を専門とし、問題解決に向けた調査やアドバイザリー、プロジェクトマネジメント支援等のコンサルティングサービスの提供に従事している。

共同執筆:橋ヶ谷 渉
2010年にWorks Human Intelligenceの前身企業へ入社。会計システムの開発部門からキャリアを開始し、同部門で導入および保守コンサルタントとして実績を積む傍ら、グループ会社であるワークスビジネスサービスへ出向し、人事システムの導入ならびに給与BPOの企画立案、受託業務の運用までを一気通貫して担う。当社でも数少ない会計/人事/運用の3領域に造詣のあるコンサルタントとして日々お客様の問題解決に注力している。

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