BPR・SS・BPOとは?それぞれの違いと人事DX成功に向けた進め方

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BPR・SS・BPOとは?それぞれの違いと人事DX成功に向けた進め方

経済産業省がDXレポートで問題提起した「2025年の崖(※)」が来年に迫る中で、実際に「人事部の人員不足」に直面されている方も多いのではないでしょうか。

筆者は長年、業務効率化に向けたコンサルティング業務に従事してきましたが、このような状況を受けて、近年特に「人事業務における定型業務を効率化し、人事業務の中でもより戦略的な業務に多くの人員を配置したい」というご相談が増えました。

定型業務効率化のため、人事業務のDX化を検討される企業が多いですが、自社が何から手をつけるべきかわからない、というお悩みもよく伺います。

本コラムでは、人事業務効率化における代表的な手法であるBPR、SS、BPO各手法の特徴やメリット・デメリット、業務効率化の成功に向けて押さえるべきポイントを解説します。

※2025年の崖…2018年に経済産業省が開示した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」において、IT人材不足が加速する中で、既存システムの複雑化・ブラックボックス化を解決できなかった場合、DXが実現できないだけでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性がある(=2025年の崖)と問題提起された。

出典:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html

1分サマリ

・労働人口の減少等を背景に、人事業務をDX化し、定型業務を効率化することで、戦略業務に割り当てる人員を増やすニーズが急速に進んでいる状況

・人事DXを用いて業務効率化を実現することで、定型業務から脱却し、戦略業務へシフトチェンジが可能となる

・定型業務の効率化に有効な手法として、BPR(※1)、SS(※2)、BPO(※3)が挙げられるが、まずはBPRを十分に実行することが重要
 ※1 BPR:ビジネスプロセス・リエンジニアリングの略
 ※2 SS:シェアードサービスの略
 ※3 BPO:ビジネス・プロセス・アウトソーシングの略


・最初にBPRを実行することで、その後に実行するシェアードサービス化や、BPOの効果アップが期待できる

・BPRの実行にあたっては「Quick-Win施策(効果が高く、難易度が低い)」から着手し、早期に成功体験を積むことで、社内関係者の納得感を醸成しながら進めていくことが望ましい

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人事業務のDXとは?

「人事DX(HRDX:Human Resource Digital Transformation)」とは、人事部が法定業務の遂行を主とする定型的な機能のみならず、より経営に資する戦略的な機能を持つことを目的とし、「ビジネスプロセス自体の抜本的な改革」や「テクノロジーの駆使」により、業務効率化や、今までになかった新たな価値を創出するための手法です。

人事DXでは、まずは定型業務を効率化することで、戦略業務に割けるリソースを確保するという流れが一般的です。

BPR・SS・BPOのメリットとデメリット

人事業務を効率化する手法として、BPR・SS・BPOがあげられます。

BPR・SS・BPOそれぞれの違いや、メリット・デメリットを把握できていないと、局所的にSS等の打ち手ありきで進んでしまいがちです。効果的に進めるには全体像を捉え、何からはじめるべきか知ることが大切です。

BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)

BPRとは、ビジネスプロセス・リエンジニアリングの略です。業務本来の目的から逆算して、業務プロセス・運用体制・利用システム等、全体としての「在るべき理想」像を再構築することを指します。

SS(シェアードサービス)

SSとは、シェアードサービスの略です。グループ会社の人事・総務業務などをまとめて担当する組織(シェアードサービスセンター)を立ち上げ、業務を集約します。

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)

BPOとは、ビジネス・プロセス・アウトソーシングの略です。人事部の業務プロセスにおける、企画、設計、運用まで一貫して外部の専門業者に委託することを指します。

それぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。

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いずれの手法にもメリット・デメリットがありますが、成功のカギを握るのはBPRです。

業務効率化成功への第一歩 ”BPR”

弊社ユーザー様の取り組みを振り返り、シェアードサービス化・BPO化成功の要となる「BPR」について下記で説明します。

SS(シェアードサービス)化検討の場合

グループ内の人事・総務業務などを行う組織を1つに集約化することで、人事業務の効率化を図るシェアードサービスにおいて、より大きなメリットを得るには、受託会社間の制度、運用方法、運用システムの統一化 / シンプル化が重要です。

受託会社ごとのイレギュラー業務の発生を可能な限り抑えることで、対応工数の抑制のみならず、業務品質の向上や、コンプライアンスの強化も期待できます。

そのため、シェアードサービス化を検討する際は、各社の業務を現行のまま集約するのではなく、現行制度や運用方法、運用手法のうち統一化、シンプル化できる余地がないかを見直すBPRの実施からはじめることを推奨します。

BPO化検討の場合

シェアードサービス化とBPO化の一番の違いは、業務実施者が自社(自グループ)外の人員になる点です。これまでの業務文化や、制度改定の積み重ねによる業務等のイレギュラーな業務や複雑な計算式を、外部専門業者が自社の人員と同じように理解できるとは限りません。

むしろ、イレギュラー業務の量は、コミュニケーションロスの発生を高めるリスクとなり、そのようなロスにより発生した追加業務は、そのまま追加委託費用に直結します。

業務効率化、コストの適正化の観点からも、BPO化前に現行業務を見直し、イレギュラー業務を削減するBPRの実施を推奨します。


上記のように、まずはBPRを実施することで、シェアードサービスやBPOの効果を高めることが可能です。

よくある失敗例と近年の企業の取り組み

BPRが不十分な状態でシェアードサービスやBPOを実施した企業の中には、期待したほどの効果が出せずに、元の運用に戻されたケースも散見されます。

一方で、過去のケーススタディから、より大きな成果を目指して、工夫して取り組みを進めているケースもあります。

以下は弊社ユーザー企業様で、近年SS、BPOに取り組まれた様子を一部ご紹介します。

SS(シェアードサービス)

弊社ユーザー企業様の声を聞くと、グループ内すべてで制度が統一されている企業は少ないという傾向が見えてきました。

各社各様の制度を踏襲してシェアードサービス展開する場合、各社ごとの制度内容を理解する必要があるため、シェアードサービス運用部隊も、受託会社ごとに担当者を配置する体制をとることが多いです。

上記の場合、シェアードサービス運用部隊に十分な人員を配置することが困難となり、従来の品質を保ちつつ業務受託を継続することが難しいケースが見受けられます。

一方、最近シェアードサービス展開の検討を開始された弊社ユーザー企業様からは「極力制度も統一し、より高い業務集約効果を狙いつつ、持続可能なシェアードサービス運用を目指したい」といったご相談をよくいただくようになりました。

また、早期にシェアードサービスを展開された弊社ユーザー企業様からも「今後は制度の統一も検討したい」という声を伺うことが増えました。

この背景には、人事部の人員不足等を理由に、シェアードサービスのゴールが「システムやデータの一元管理」から、「システムやデータの一元管理 + 生産性の向上」に設定されることが増えたことがあるのではないかと推察しています。

BPO

近年、人手不足の加速等を背景に、BPOが再注目されていますが、早期にBPOされた弊社ユーザー企業様の中には、「期待していたほどの効果が出ない」「業務品質が著しく低下した」といった理由で、内製に戻されたケースもありました。

これは事前の業務整理が不十分な状況でBPOを進めたことにより、「自社とBPOベンダーの業務重複が多く発生してしまった」「既存業務が複雑なためにBPOベンダーからの問い合わせ対応工数が増えてしまった」といったことに起因することが多いです。

一方、最近BPO展開の検討を開始された弊社ユーザー企業様からは「最初にどのような業務整理をしてからBPOベンダーに相談すべきか」といったご相談をいただくことが増えました。

また「BPO導入前の業務整理コンサルティング」を強みとするベンダーも増えてきたため、BPOパートナー検討の際には注目いただくとよいかもしれません。

BPR・SS・BPO何からはじめる?チェックポイント

取り組みの目的や会社規模、業種等によって異なる部分はありますが、BPR・シェアードサービス・BPOをはじめる前のチェックポイントの例をご紹介します。

STEP1:BPR実行状況の確認

まずは自社のBPRの実行状況を、以下のチェックリストに沿って確認してみましょう。ひとつでも当てはまれば、BPRからはじめるのがよいと考えられます。

BPRチェックリスト.JPG

STEP2:シェアードサービスとBPOの検討

グループ会社があり、シェアードサービスやBPOも検討されている場合、以下のチェックリストを確認しましょう。ひとつでも当てはまればシェアードサービス / BPOを進めるとよいでしょう。

基本的には、シェアードサービス→BPOの順番で取り組むことをおすすめします。

▼シェアードサービス

SSチェックリスト.JPG

▼BPO

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弊社ソリューションのご紹介

いかがでしたでしょうか。
本コラムで解説の通り、業務効率化を進めるためにはBPRからはじめることがカギです。

BPRを完遂するには、数年単位で時間がかかるケースが多いため、何を実施するかを洗い出したうえで、その中でも「Quick-Win施策(効果が高く、難易度が低い)」から着手し、早期に成功体験を積むことで、社内関係者の納得感を醸成しながら進めて行くことが成功のポイントです。

「一般論としてのイメージはついたが、もう少し自社の状況も踏まえて検討したい」という場合にお役立ていただける弊社ソリューションをご紹介いたします。

BPR支援(Business Consulting Service)

お客様の課題感に応じて、弊社製品であるCOMPANYの活用はもちろんのこと、COMPANY周辺領域まで、広く人事業務プロセスの調査、分析、改善提案までをコンサルティングするサービスです。調査結果等をもとに、Quick-Winを意識した施策の実行順についてアドバイスが可能です。

また必要に応じて、具体的な施策の実行や効果測定をサポートいたします。

 

これまで弊社がご支援したBPRプロジェクトについて、進め方、意識したこと、工夫したポイント等を一部ご紹介します。

 

・業務量調査で、50業務(手続きレベルでは100フロー)、約3万時間分の工数配分と課題概要を可視化した
・うち課題のある業務においては、約3割程度の工数を削減できるポテンシャルがあると試算した
・すべての課題を解決しようとすると膨大な労力がかかるため、改善施策実行による費用対効果を試算し、実行順を決定した
・BPRプロジェクト期間を3年と置いて、フェーズを5つに区切り、予算を確保した
・具体的な改善施策を検討する段階で、DX部門と経理部門との連携業務の効率化も必要になり、時間がかかることがわかったため、プロジェクト全体の進捗への影響を最小限にするため、施策実行順を再検討した
・勤怠回収の業務のフローが社員区分や勤務形態によって30パターンあることが可視化され、人為的ミスに繋がっていることがわかった
・「Quick-Win施策(効果が高く、難易度が低い)」を優先実行し、成果が出るたびに社内関係者に広報して、協力体制を意図的に醸成した
・結果として、業務システム両輪での再設計により、年間約3,000時間の業務工数が削減できた。これはBPRを先に行っていないと見落とす可能性があった

※特定のお客様の事例ではなく、複数事例を総括したモデルイメージです

BPR、人事DX相談会(※COMPANYユーザー様限定)

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この記事を書いた人

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井上 奈甫(Inoue Naho)

2009年ワークスアプリケーションズ入社。人事システムの保守コンサルタントとして、業種を問わず100社を超える大手法人の業務改善を支援。その後、保守経験を活かした「持続可能なBPR」を専門とし、問題解決に向けた調査やアドバイザリー、プロジェクトマネジメント支援等のコンサルティングサービスの提供に従事している。

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