サッポロビール様が実践する女性のキャリア支援とは?個性を活かすダイバーシティ推進を紐解く(後編)

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サッポロビール様が実践する女性のキャリア支援とは?個性を活かすダイバーシティ推進を紐解く(後編)

酒類を国内や海外で製造・販売しているサッポロビール様では、グループの経営理念として「潤いを創造し 豊かさに貢献する」を掲げています。この経営理念を実現するために、ダイバーシティ推進に取り組んでおり、女性の活躍を促すための様々な取り組みを実施しています。

本対談では、サッポロビール株式会社様の高田様、宮澤様、傳田様、直江様に、WHI総研(※1)の井上がインタビュー。サッポロビール様における女性活躍推進施策の課題や具体的な取り組みに迫りました。

(※1)WHI総研:当社製品「COMPANY」の約1,200法人グループの利用実績を通して、大手法人人事部の人事制度設計や業務改善ノウハウの集約・分析・提言を行う組織

後半となる本記事では、サッポロビール様の女性活躍推進に向けた今後の取り組みや成功のための秘訣、また目指すゴールについてご紹介します。​​​​​​

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今回の対談者
(写真左から)
宮澤 悠 様 / サッポロビール株式会社 人事総務部 マネージャー
直江 伸夫 様 / サッポロビール株式会社 人事総務部 アシスタントマネージャー
傳田 法子 様 / サッポロビール株式会社 人事総務部 マネージャー
高田 塁 様 / サッポロビール株式会社 人事総務部 人事企画・D&Iグループリーダー
 

従業員の声に耳を傾け、相互の想いを伝える

Q6. 施策に対する反応や要望等、従業員の意見をどのように収集していますか。

高田様:
ダイバーシティ&インクルージョンの浸透や人事制度に関する意見を収集するための人事アンケートや、人事評価制度や異動配置に関する意見を人事総務部が現場に出向いてヒアリングする人事キャラバン等を実施しています。従業員の生の声を聞くことを非常に大事にしており、そのための労力は惜しみません。

宮澤様:
人事キャラバンは、2023年6月頃に始めた取り組みで、人事総務部が事業場に赴いて役職や立場に関係なく、そこに所属している従業員と制度等について議論するというものです。
工場やR&D部門でも実施しており、異動配置やキャリアへの考え方、育成評価制度について様々な意見をいただいています。

井上:
全国の事業場を回るのはすごく大変そうですよね。また、ダイバーシティ&インクルージョンだけでなく、人事制度全般についてヒアリングされているので、現場からは幅広い意見が出るのではないでしょうか。

宮澤様:
はい、事業場を回るのは大変です。1事業場で半日はかかるので、全事業場を回ると時間だけではなく体力も使いますね。

また、従業員との意見交換について、人事としては回答に窮する場面もあるのですが、直接顔を見ながら意見を交換し、信頼関係を築くことができるという点でも重要な取り組みだと考えています。

直江様:
私はちょうど、キャラバンがはじまった1年半前くらいに人事総務部に異動してきたのですが、事業場にいた時は人事制度を考える機会がそんなにはありませんでした。そのため、人事総務部に来てあらためて制度のよさに気付きました。

事業場に所属している従業員にはあまり浸透していない制度も、知ったらこんな使い方があると気付けるので、キャラバンは従業員にとっても制度を知る良い機会だなと思います。

傳田様:
制度そのものだけではなく、会社がこんなふうに考えてくれていたんだとわかってもらえるように、制度の背景を伝えることはとても重要だと人事に来てから私も思いました。

井上:
キャラバンは人事総務部としての考えや想いを現場に伝える場にもなっているということですね。従業員の声をお聞きすると、施策の改善や新たな施策の実施にも繋がると思います。

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Q7.女性活躍推進施策について、これまで実施した中でよかった点や新たに取り組もうとされていることがあれば教えてください。

直江様:
女性活躍推進の一環として、新たに社外メンタリングを実施しました。これは、社外の方にメンター役となっていただき、女性管理職の候補となる従業員と対話してもらうというものです。

管理職一歩手前の女性従業員の声を聞くと、キャリアで悩んでいる方がかなりいらっしゃいます。ライフイベントもあるので、管理職で働くイメージがなかなか湧かない方も多い印象ですね。

そのため、女性管理職として活躍されている方に協力をいただき、会社から様々なタイプのパーツモデルを提示するようにしています。

また、我々の文化と違う社外の方と接することで、従業員にも様々な気付きが出てきています。取り組み開始から3か月後に収集したアンケートでは、「こんな管理職の働き方があるんだ」とか、「これなら自分でもできる」といった声が寄せられており、従業員の気づきや刺激になっていることを実感しています。

他にも育児との両立で悩んでいる方もいますが、社外の方も育児をされていたときに同じ思いをしているので、それ乗り越えた実例を知れるのはすごく参考になりますし、アドバイスをもらうこともできるので、この取り組みは非常によかったなと思います。

井上:
管理職の方を見ていると本当に忙しそうなので、自分にはできないとつい思ってしまいますが、実際話を聞いてみると、自分でもできるのではないかという意識が芽生えるのかなと思います。

直江様:
最初は知らない人と何をしゃべればよいのか、という声もあったのですが、徐々に時間が足りないという声に変わりました。最初は乗り気でなくても実際に話しをすることで従業員の意識も変わります。

ダイバーシティ推進のポイントと目指すゴール

Q8. 女性活躍を含め、ダイバーシティ推進で何が重要か、ご担当者様の考えを教えてください。

高田様:
女性に限ったことではないのですが、やはり個性の発揮が人財戦略を推進するうえで大事だと思っています。

サッポログループの人財戦略として「ちがいを活かして変化に挑む 越境集団となる」を掲げており、この”ちがい”を活かせるかどうかという点が重要です。

たとえば性別の違いであったり、キャリアの違い、国籍の違いがありますが、そのような違いのある個々人がどのように力を発揮できるのか、力を発揮できる環境がつくれているか、という点を人事総務部門としては考えて議論しています。

少しずつ施策に反映できるように取り組んでいますので、一歩ずつでも結果に繋がっていくことを期待しています。

直江様:
私は今のサッポロビール、サッポログループの従業員の人生像はいろいろあると思っているので、その多様性を受け入れていくことが大事だと思っています。

また、先ほどのキャラバンの話もありましたが、制度の背景や人事総務部の想いがなかなか伝わっていないので、それをいかに伝えられるかが今後重要になってきます。

そういった想いを現場に伝える取り組みを意識的にやっていくことが必要かなと思いますね。今回の社外メンタリングもそうですが、小規模でもまずやってみて、効果を見ていくことが非常に重要だと考えています。

傳田様:
私が自分自身でも感じているところですが、サッポロビールは性別関係なく頑張ったら正当に評価される会社です。

宮澤から「女性を優遇しているわけではない」と発言もあったと思うのですが、女性から見ても自分たちが優遇されていると思われていたら嫌ですし、逆に拒否反応が出ると思います。

応援してくれるのはすごく嬉しいですが、実際評価されるときは自分自身をしっかり見てくれていて、正当に評価されていると感じられることが、もっと上を目指していきたいという気持ちに繋がると思っています。

上司と話していても、すごく応援してくれていて自分の考えも受け入れてくれる、そういう環境があるからこそ、この会社でやっていきたいなと思うようになり、それが女性活躍にも繋がると実感しています。

宮澤様:
私は以前よりも経営層からのダイバーシティ&インクルージョンに関する発信が増えたと感じています。ダイバーシティ&インクルージョンはトップダウンだと思っていまして、トップダウンの力がないとなかなかみんな動かず、理念も浸透しにくいと感じています。

以前から、ダイバーシティ&インクルージョンという言葉は掲げていましたが、ここ最近は会社として明確な方向性や数字を出しはじめて、具体的な動きになってきました。
これからも進めていくにはもっともっとトップダウンで発信してもらいたいなと思いますし、人事としてもそのサポートをしていきたいです。

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Q9. サッポロビール様の女性活躍推進において、どのような状態になっていれば成功と言えるのか、成功イメージや目指しているゴールを教えてください。

高田様:
従業員全体の男女比率と管理職の男女比率が変わらない状態が、結果としてもわかりやすいと思うので、そこがゴールになると思います。

サッポロビールの現状は、正社員の男女比率はおおよそで男性8割、女性2割なので、2030年に女性管理職比率20%という目標を対外的にも掲げています。

本来は男女問わずですが、やはり女性が自らが持っている強みや個性を存分に発揮できる環境づくりがポイントだと思います。ライフイベントの中で様々な制約が出てくる中で、それでも自分は「サッポログループで働きたい」と思ってもらえれば、その制約の中でもいきいきと働ける状態を作ることが大事だと考えています。

究極的にはサッポログループの理念、ビジョンに共感し、その実現に向けて頑張りたいと思う人が、力を発揮できる環境を作ることですね。

そのような思いを持つ従業員が増えて、一人ひとりの従業員が成長することが組織の成長にも繋がると思います。それによって企業価値の向上にも繋がり、お客様の支持が得られると思っています。

お酒の企業、食品企業としてこれまで以上にお客様に選んでいただける企業を目指していきたいです。

一人ひとりが自分が思い描くキャリアを追いかけて、成長できる会社を目指していきたいです。これがベースにあって、今日お話してきたようなダイバーシティ推進の施策も実施しています。

井上:
女性活躍は女性だけではなく、全従業員が活躍するために必要な施策ということですよね。

高田様:
女性が活躍できれば、自ずと男性も一緒に活躍できると思います。

井上:
本日はお時間をいただきましてありがとうございました。

この記事を書いた人

ライター写真

井上 翔平( Inoue Shohei)

2012年、政府系金融機関に入社。融資担当として企業の財務分析や経営者からの融資相談業務に従事。2015年、調査会社に移り、民間企業向けの各種市場調査から地方自治体向けの企業誘致調査まで幅広く担当。2022年、Works Human Intelligence入社。様々な企業、業界を見てきた経験を活かし、経営者と従業員、双方の視点から人事課題を解決するための研究・発信活動を行っている。

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