大東建託様が実践するクオータ制とは?女性活躍推進の秘訣に迫る(前編)

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大東建託様が実践するクオータ制とは?女性活躍推進の秘訣に迫る(前編)

不動産賃貸や仲介、賃貸用住宅の建設を手掛ける大東建託様では、女性活躍推進を経営課題の1つと捉え、早くから働き方改革やワークライフバランスの推進といった施策に取り組まれています。

2021年には、建設業界でいち早くクオータ制(※1)を導入し、最近では教育にも力を入れる等、よりいっそう女性活躍推進施策を実施しています。

本対談では、大東建託株式会社 ダイバーシティ推進部 宮崎緑様に、WHI総研(※2)の井上がインタビュー。大東建託様における女性活躍推進施策の課題や秘訣に迫りました。

(※1)クオータ制:役職者の一定数を女性に割り当てること
(※2)WHI総研:当社製品「COMPANY」の約1,200法人グループの利用実績を通して、大手法人人事部の人事制度設計や業務改善ノウハウの集約・分析・提言を行う組織


前半となる本記事では、大東建託様の女性活躍推進施策の推進体制や、クオータ制を導入した背景、従業員の声について触れています。

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今回の対談者
宮崎 緑 様(写真右)
大東建託株式会社 ダイバーシティ推進部

 

女性活躍推進を支えるダイバーシティ推進部

Q1. 大東建託様では2015年にダイバーシティ専門組織を立ち上げられました。女性活躍推進などダイバーシティ推進に積極的に取り組もうとした背景を教えてください。

宮崎様:
一番大きかったのは、2015年に女性活躍推進法制定の動きがあったことです。

世の中で女性活躍推進の機運が高まる中、社内でも、前年に営業職の女性課長が誕生したり、女性社員の活躍を見据えた研修を全国で開催しようという動きが出てきていました。

もう1つの背景は介護との両立です。社内で介護に関するアンケートを取ったところ、5年後、10年後に介護との両立が必要になる従業員がとても多いことがわかりました。

特に多かったのが、管理職でした。社内では会社のキーパーソンである管理職に、将来、時間的な制約が生まれてしまうことに不安がありました。その結果を踏まえて、仕事と家庭の両立ができる会社、また女性をはじめとするあらゆる人が活躍できる会社にならないといけないよね、という意見があがったのが走り出しです。

井上:
女性活躍推進に加えて、将来会社として管理職不足に陥らないようにダイバーシティ推進の取り組みが始まったということですね。

宮崎様:
そうですね。女性に対する両立支援は昔からずっとやっていたのですが、アンケートをきっかけに、介護両立ということも視野に入ってきました。

Q2. ダイバーシティ推進部のメンバーはどのようなきっかけ、経緯で異動してくるのでしょうか。

宮崎様:
私自身がダイバーシティ推進部に異動するきっかけになったのは、TQC活動(※)という社内の課題に対して、改善提案を行う活動でした。

(※)TQC活動・・・Total Quality Controlの略で、社内の課題に対し、従業員一人ひとりが改善提案を行うことで全社的な取り組みに繋げるもの。

当時、私は大東建託リーシングの教育部門に所属していました。その際にTQC活動として、ルームアドバイザー職の女性活躍をテーマに提案を行いました。すると当時のTQCマネジャーが、「宮崎さん、これから法律もできるからこの提案はとてもいいと思う」と、声をかけてくれたのです。

それをきっかけに女性活躍推進法やダイバーシティ推進という言葉を知り、会社全体で取り組めば、もっと皆が働きやすくなるという思いが湧いてきました。

人事からダイバーシティをやってみないかという話もあり、「ぜひやりたいです」と自ら希望しました。もちろん、メンバーの中には、普通の異動や選考で来た人もいます。本人の意思や適性に合わせて異動してくるというのが多いです。

井上:
TQC活動ではどういったご提案をされたのでしょうか。

宮崎様:
私は本社の教育部門に来る前は、山口県内の店舗でルームアドバイザーとして約6年間働いていました。私が入社した時から、すでにベテランの女性の先輩たちが実績をあげて、活躍していたんですよ。でも活躍している状況を全社で共有し合えていないという課題があって、社内の情報共有サイトを立ち上げませんかという提案をしました。

井上:
その提案が上司の目に留まり、人事からもお声がけがあって、ダイバーシティ推進部に異動されたということですね。

宮崎様:
はい。私が入った時は3名だったのですが、現在は11名体制で、男性3名、女性8名です。ダイバーシティ推進課からダイバーシティ推進部になり、年齢は20~50代まで、メンバーも増えて「課」から「部」らしくなりました。

Q3. ダイバーシティ推進部のメンバーは、女性活躍推進に対してどのような役割を持ち、どのような実務をされていますか。

宮崎様:
実務としては、有給休暇取得促進、テレワーク、フレックス制度等働き方改革を推進するメンバーや女性のキャリア形成、女性育成プログラムを担う人がいます。弊社は職種によってカラーが全然違うので、職種ごとにフォローして対策を考えたりしています。

また、ボトムアップアクションもありまして、「パソリス」という活動や「いろどりLAB」という取り組みで女性活躍推進をサポートしています。

(※)パソリス・・・「会社を変えよう・良くしよう」と本気で考える社員を全国から公募し、定期的にダイバーシティ推進をテーマとして実施しているワークショップ。本社と現場のコミュニケーション機会を創出することで、現場の声を定期的に収集している。

(※)いろどりLAB・・・女性も含めたすべての従業員が活躍することができる「十人十色を活かすことができる企業に。」をスローガンに働き方改革を推進しているプロジェクト。本プロジェクトから「家族休暇(不妊治療休暇、マタニティー休暇、看護休暇)」、「不妊治療休業」が生まれた。


井上:
トップダウン的な働き方改革や教育施策を担うと同時に、従業員の方も参加するボトムアップ活動のサポートもされているのですね。メンバーの方々は現場の従業員ともコミュニケーションをとられているのでしょうか。

宮崎様:
はい。「パソリス」はいくつかのグループに分かれているのですが、ダイバーシティ推進部の各メンバーがそれぞれグループを担当しています。定例会を月に2回開いて、そこで現場の人が普段思っていることや考えていることを吸い上げています。

「パソリス」の活動に限らず、ダイバーシティ推進部の仕事としては、みんなが思っていることを丁寧に吸い上げる仕事が多いかなと。

他部門からは提案業務が多いように映りますが、提案に繋げるにはやはり現場の声がないとできないので、現場がどう思っているのか、何が不満なのか、女性活躍するうえでの阻害要因等を対話の中で繰り返していくことはずっと続けています。

井上:
本社だけであれをやりましょう、これをやりましょうと言っても、なかなか従業員がついてこられないということになりかねないですよね。大東建託様では従業員の声を聞くことに重点を置かれているように感じました。

宮崎様:
経営層も、ボトムアップで現場の声を聞こうという姿勢でいますし、最近はその傾向が特に強いですね。エンゲージメント調査もそうですが、現場の声をもとに現場改善をどんどんやろうとしています。

強みは伸ばして、弱みは改善していくという考えのもと、現場の声を聞くことを大事にしている文化があるのかなと思います。

井上:
従業員の声がすべて実現できるわけではないと思いますが、要望を実現できなかった場合はどのように対応されるのでしょうか。

宮崎様:
一番大切にしていることは、なぜ実現できなかったのか理由をお伝えすることです。

 今できること、できないことと、会社にも優先順位があるのでやむを得ない時もあります。実現できなかった理由をもとにどうしたら要望が通るか、納得いただけるか、出た意見をフィードバックする等して、別の視点でもう一度考え直してもらうことを働きかけます。

ボトムアップ施策は、何よりもいろいろな声を積極的に伝えられる環境が大事です。否定的な対応をして従業員が諦めてしまうと、何も言わない、言っても何も変わらないという考えになってしまいかねません。そのような状況にならないように従業員のマインドやモチベーションを保てることも大切にしています。

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キャリアの選択肢を広げるクオータ制

Q4. クオータ制を導入した背景を教えてください。

宮崎様:
もともと、建設業自体が他産業と比べて女性活躍が進んでいないということもあり、女性活躍推進をするのであればこれくらいのインパクトがあることをやろうと考え、最終的に役職者の一定数を女性にするという、クオータ制を導入しました。

井上:
やはり建設業は、他産業と比べると女性や女性管理職が少ないという実態はあるのでしょうか。

宮崎様:
建設業=体力が必要・筋肉がある人・男性中心の組織というイメージがあると思いますが、社内では昔から女性が活躍している部署もあります。ただ他業種と比べると女性活躍はまだ出遅れています。

決して不平等に扱っているわけではなく、女性も男性と同じように総合職ですし、登用や評価の仕方も男性と同じです。ただそれは男性基準で考えられたしくみなので、出産や育児があったときに男性と同じ働き方ができるかというと、どうしても難しい面はあるんですよね。

やはりそこで昇進が遅くなったり、男性が管理職でバリバリ働いている姿を見ても、私なんかできないと思ったり、自然とそうなっていましたね。

井上:
もともとの建設業のイメージを覆していく、現状を変えていくために女性活躍推進のメッセージ性を強く出そうという意図もあって、クオータ制を導入されたということですね。

宮崎様:
そうですね。優秀な女性を登用するという考えが強かったのですが、現在は資質のある原石のような女性を見つけて、育成して登用するという考え方にシフトしています。できる人を引き上げるのではなく、資質がある人を後押しするようなイメージです。

管理職といういきなり大きなハードルを越えるのは難しいと感じてしまうので、スモールステップを重ねるイメージで女性の意識改革ができればと考えて、育成プログラムを構築しています。

Q5. クオータ制を導入したとき、従業員からはどのような声がありましたか。

宮崎様:
男性は昇進する際のライバルとして、これまで以上に女性が入ってくるわけですから、昇進できなくなるんじゃないかという不安があったと思います。

一方で女性には、なぜ管理職比率を女性だけに定めるのか、それは逆差別になるんじゃないかという声が当時ありました。ネガティブな声も一部ではあがりましたね。

また「なぜわざわざ女性活躍推進をしないといけないのか、私は支援がなくても十分できている」という声もありましたね。だから、研修にアサインしても受けたくないという女性も中にはいます。

井上:
すでに十分活躍されている人ほど、女性活躍推進に違和感をおぼえたということですね。

宮崎様:
はい。ただ、今見てみると、当時ネガティブに捉えていた方が管理職になられていたりします。何をきっかけに変わって、管理職を目指されたか、いつか聞いてみたいなと思っています。

井上:
当時、ネガティブなお声が出たときはどういう対応をされましたか。

宮崎様:
ネガティブな声に対しては、特に丁寧な対応を心がけました。もともと男性優位という構図になっているので、男女の公平性を保つために、あえて女性を増やす策を行うことは自然なことではないかと、納得してもらえるように丁寧に説明をしました。

もちろん、納得してもらえない場合もありますが、基本的にはなぜ女性を活躍させたいのかという意図を丁寧に説明して、メールや対話で返すようにしています。

 

後編に続く

この記事を書いた人

ライター写真

井上 翔平(Inoue Shohei)

2012年、政府系金融機関に入社。融資担当として企業の財務分析や経営者からの融資相談業務に従事。2015年、調査会社に移り、民間企業向けの各種市場調査から地方自治体向けの企業誘致調査まで幅広く担当。2022年、Works Human Intelligence入社。様々な企業、業界を見てきた経験を活かし、経営者と従業員、双方の視点から人事課題を解決するための研究・発信活動を行っている。

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