昨今のビジネス環境では、従業員一人ひとりのスキルを可視化し、最大限に活用することが不可欠です。人事領域では「スキルベース」という考え方が登場し、人的資本マネジメントのアプローチとして注目されています。
WHIでは、一部職種におけるスキル管理施策に取り組み、「スキルベースの人的資本マネジメント」への挑戦を始めました。この施策は、従業員のキャリア自律と成長実感の促進、お客様と作り上げるプロジェクトの品質向上を目指したものです。
本記事では、WHI人事部へのインタビューを通じて、取り組みの背景や実施の流れ、従業員から協力を得るための工夫などを整理しています。WHI人事は施策に取り組むうえで、どのように課題と向き合い、成果を導いたのか。
「スキルベースの人的資本マネジメント」において、WHI人事部が歩む挑戦の道のりと、未来への展望をまとめました。自社で取り組む際のヒントとなれば幸いです。
インタビューに参加したWHI人事部メンバー
上村 太郎
Human Resources & General Affairs Div. 人事 Dept.
Learning & Organization Development Grp. Grp Manger
新卒入社後、約10年間エンジニア、マネジャーを経て人事部に異動。現在は人材育成・組織開発全般に携わる。
1. 施策実施の背景
Q1. WHI人事部が「スキルベースの人的資本マネジメント」を始めるにいたった背景を教えてください
コンサルタント職のキャリア自律を支援し、デリバリー品質を高めたい
WHI 上村:
ひとつは、従業員のキャリア自律支援をより深めていきたいというところです。
WHIのスキル管理施策は、全社一斉ではなく職種別に進めています。職種が、コンサルタント・エンジニア・営業・管理と分かれているのですが、まずコンサルタント職から始め、現在はエンジニア職に展開中です。
コンサルタント職でスキル管理施策を始めることになった背景は、キャリア自律の観点で、WHIコンサルタントのキャリアパスが見えにくいという課題があったことでした。WHIのコンサルタントは、一般的な戦略コンサルやITコンサルとは異なるため、「どのようなキャリアビジョンを描くべきかわかりづらい」という声が現場からもあがっていました。
もうひとつは、コンサルタントのプロジェクトアサインを、より客観的な情報にもとづいて判断する動きがあったことです。コンサルタント一人ひとりのスキルを明確化したうえで、各プロジェクトに求められるスキルやレベルに合わせ、プロジェクトアサインの精度を高めたいというニーズがありました。組織としても、より安定した、品質の高いデリバリーをお客様に提供したいということで、施策の実施にいたりました。
エンジニア職の成長実感を高めたい
WHI 上村:
エンジニア職への施策展開を決めた理由は、コンサルタント職での話と共通する部分もあるのですが、スキルを可視化することで従業員に成長を実感してもらいたかったからです。
COMPANYは大規模な製品であるため、配属されたエンジニアは、お客様の問い合わせ対応や製品の不具合改修に始まり、徐々に新機能の開発といった形で業務がステップアップしていきます。ところが日々の開発業務に取り組んでいると、難易度の高い課題に向き合い続けることになるため、「この半年間でこれが身についた」ということを実感するのはなかなか難しかったりするんですね。そこで、スキルという形に細分化して、定期的に身に着けたスキルを棚卸しすることで、成長のモチベーションにしてほしいと考えました。
日本の人事を担う企業の人事部門としてチャレンジしたい
WHI 上村:
社内から社外に目を移すと、グローバルでは「スキルベースの人的資本マネジメント」が進んでいます。ジョブディスクリプションによって仕事に求められるスキルが明確になっていて、仕事と従業員をマッチさせ、最適に配置するという手法です。
日本ではまだこれが浸透していない中で、WHIとしては、こういった取り組みに挑戦してみたいという思いがありました。もしこの取り組みがうまくいけば、お客様にも提供できるものがあるのではないかと考え、実施に踏み切りました。
Q2. 上記の課題や問題意識を持ったところから、施策が立ち上がるまでの流れを教えてください
WHI 上村:
はじめに、経営会議の中でコンサルティングのデリバリー品質を高めたいという話があがりました。WHIのビジネスをより加速させるため、優先的にこの課題を解決することになり、人事主導で進めてほしいと声がかかりました。
しかし、人事だけでスキル定義を行うのは現実的ではありません。スキル定義ひとつをとっても、各職種で本当に必要とされるスキルなのか、本当にそのスキルの情報を集めるべきなのか、整理する必要があります。そこで、現場を巻き込んだ体制づくりから始めました。
具体的には、執行役員、コンサルタント・エンジニア両方のマネジャー、メンバー層でスキルの可視化に興味を持つ方などに声をかけて、プロジェクト体制を組んでいます。人事はファシリテーションの立場をとりながら、現場の方々と役割分担して取り組みました。
2. 施策の内容
Q3. 「スキルベースの人的資本マネジメント」施策の全体像について教えてください
WHI 上村:
最初のステップは、職種ごとに求められるスキルの定義です。既存のスキル定義をベースにしたのではなく、ゼロから始めたので、どのようなスキルがあるのか、どのような粒度で分けるのかを現場関係者と何度も議論しました。こうして作成したものをスキルマップと呼んでいます。
次のステップでは、スキルマップにそって従業員一人ひとりのスキル情報を収集しました。収集には当社製品の「COMPANY Talent Management」(以下CTM)を使用し、従業員本人に入力・提出してもらいました。
次に収集したデータを集計し、組織やグレードごとの傾向を分析して、組織の現状把握を行いました。
最後に、収集・分析したスキル情報をプロジェクトアサインや人材育成に活用しました。具体的には以下のような内容です。
・コンサルタントのプロジェクトアサインにスキル情報を組み込む
・プロジェクトマネジメントスキルのレベルに応じて、研修の受講対象者をリストアップする
・UdemyやGLOBISなどのオンライン動画学習プラットフォームで、スキルごとにそのスキルを高めるためのラーニングパスを設定し、従業員に提供する
上記のサイクルを一度実施して終わるのではなく、継続的に回すところが、WHIの取り組みにおけるポイントです。スキル情報は、陳腐化してしまって使いづらいという問題が起きやすいので、それを防ぎながら、従業員が自分のありたい姿に近づく機会を提供できるよう、アップデートを重ねています。
「COMPANY Talent Management」シリーズについてはこちら
Q4. スキル設計の具体的な方法を教えてください
WHI 上村:
スキル設計の方法は、コンサルタントとエンジニアで異なります。順にお話しします。
コンサルタント職のスキル設計は、自社特有のスキルとポータブルスキルに分けて実施
WHI 上村:
コンサルタント職のスキル設計は、先にお話しした通り、外部のスキルディクショナリなどの既存のスキル定義を参照せずに始めました。
もともと社内にあったキャリアモデル定義書に、求められる専門知識が記載されていたので、それをブレイクダウンする方法でスキルを設計しています。専門知識というのは、たとえば「COMPANY」を導入するのに必要な製品知識・導入スキルなど、自社特有のものです。
そのあと、自社だけにとらわれないポータブルスキルについては、一般的な定義を参照しながら設計しました。たとえばプロジェクトマネジメントスキルや、一般的なコンサルタントとしてのコアスキル、コミュニケーションスキルやドキュメンテーションスキル、問題解決スキルなどはこれに含まれます。
スキルの習熟度や各レベルの定義は、「ITスキル標準(ITSS)」という外部指標を参考にして、5段階に設定しています。
エンジニア職のスキル設計は、外部指標をWHI仕様にローカライズして実施
WHI 上村:
エンジニア職のスキル設計は、現時点で日本で最も使われているiCDというスキルディクショナリを使って実施しました。なぜエンジニア職では全面的に外部の定義を参照したかというと、自身の市場価値を可視化して成長の実感を持ってもらうことを目的に置いていたためです。
WHIの中で着実にスキルを身に着けていけば、自然と市場価値も高まっていき、「自分は成長している」「WHIの外に出てもやっていける」と感じられる状態にしたいという思いがありました。WHIで経験を積むことにモチベーションを感じてもらうことが、ひとつの狙いです。
ただ、iCDをそのまま使えたかというと、そう甘くはありませんでした。実際には、文言を自社で理解できるものに編集する作業が多く発生しています。やはり世の中で一般的に出回っているものは抽象度が高く、「言いたいことはわかるが、自分ごとに感じられない」という課題があったんですね。
そのため、エンジニア組織の部長の力を借りて言葉一つひとつを社内で通じるものに置き換えることで、エンジニアが見たときに「これはあの業務のことを言っているんだな」とわかるようローカライズしました。この作業にはじっくりと時間をかけました。
スキルレベルについては、コンサルタントのときと同じく、外部指標を参考にしています。職種を跨いで見たときに、コンサルタントとエンジニアでスキルレベルの定義が異なると直感性がないので、ある程度そろえるようにしました。
3. 施策に対する従業員の反応や、協力度合い
Q5. スキル情報の収集について、どのように従業員に周知し、納得を得ましたか?
従業員からの納得を得るのが難しい理由
WHI 上村:
従業員からの納得を得るのは、特に難易度が高いところだと思います。
理由はふたつありまして、ひとつは、入力してもらうスキルがかなりの数になってしまう点です。実際にWHIでも、コンサルタントだと200項目、エンジニアだと300項目以上のスキルがあるのですが、これを一つひとつ入力するのは骨が折れる作業ですよね。
もうひとつは、施策を始めた段階で、集めたスキル情報が今後どのように活用されるのか説明しきれない点です。「このような活用や効果を想定しています。従業員の皆さんのキャリアに役立つように使います。」と説明するのですが、どうしてもその効果を実感できるのは、入力が終わって活用が進んだあとです。そのため、最初はネガティブな状態から始まることが多いですね。
従業員に協力してもらうために工夫したこと
WHI 上村:
工夫のひとつは、人事と現場で連携して説明会を実施したり、従業員ポータルで告知をしたり、Slackのようなメッセンジャーツールを活用したりして、従業員が気軽に不明点を解消できるようにしたことです。
もうひとつは、スキル情報の収集を対象者全体に展開する前に、トライアルとして一部メンバーで実施してみて、そこで出た意見や不満を改善したことです。全体で実施したあとも、結果を開示したり今後の改善点を伝えたりして、「徐々によくなっていきそう」という感覚を持ってもらえるよう心がけました。
Q6. 施策を実施した結果、WHI従業員からポジティブな反応はありましたか?反対にネガティブな反応は?
従業員からのポジティブな反応
WHI 上村:
ポジティブな反応としては、「自分自身でスキルの棚卸しをしたことで、自分は何ができるのかクリアに自覚できるようになった」という声が多いです。
マネジャー層からも、「各メンバーのできることをなんとなく把握していたつもりだったが、より解像度が高まった。持っているスキルをもとにアサインするだけでなく、今後身に着けてほしいスキルも意識しながらアサインできるようになった」と聞いています。
従業員からのネガティブな反応
WHI 上村:
先ほどお話しした通り、ネガティブな反応の中で一番多いのは、入力コストが大きいというものですね。
他には、各々のスキルレベルについて、人によって認識が変わるのではないかという声もあります。現状、スキルレベルを自己申告で設定するようになっているのですが、自分自身を過小評価する人と、反対に過大評価する人がいるのではないかという懸念です。正確にスキルレベルをはかるのは難しい側面がありますので、それは今後の課題だと感じています。
Q7. 従業員は施策にどのくらい協力してくれていますか?
WHI 上村:
定量的な観点でいうと、コンサルタント職では実施率が80%強、エンジニア職はより実施率が高く、90%超という結果でした。全体的によく協力してくれていると思います。
定性的な観点では、マネジャーが組織目標にスキルレベルを取り入れて活用する動きがあります。「今期うちの組織ではこのスキルのレベルを上げよう」という目標を立て、メンバーにも会社の支援制度を使ったスキル向上を促しているようです。
さらに、これはとてもエンジニアらしいなと思ったのですが、自分のスキルレベルやどういうタイプのエンジニアなのかが一目でわかるツールを作ってくれました。CTMにスキル情報を入力してツールに読み込ませると、スキルごとの自分のレベルや、グレード・組織別の平均と比較して自分に足りないところがわかります。
おもしろいのが、スキルのレベルを空手の帯に見立てて、色でレベルを表現する遊び心があるところです。エンジニアならではの方法で、楽しみながら協力してくれています。
4. スキル情報の活用成果
Q8. 集めたスキル情報を活用した成果があれば教えてください
WHI 上村:
コンサルタントのプロジェクトアサインでは、デリバリーの品質がかなり高まったと聞いています。それ以外にも、「COMPANY」製品ごとのスキル需要や供給見込みについて、将来を含めて見渡せるようになったことが大きな成果です。
たとえば向こう半年や1年にかけて、どういうプロジェクトが走る予定になっているか、そのときどのスキルを持つ人がどのくらいいて、不足なく割り当てられるのかを予測できます。1か月単位で「このスキルを持った人が何人足りない」といった状況を把握できるので、事前の調整が容易になったそうです。
人材育成においても、研修の受講対象者を抽出できるようになっただけでなく、マネジャーや本人に、根拠を持って受講してほしい理由を説明できるようになりました。
5. 施策の課題
Q9. 「スキルベースの人的資本マネジメント」施策についての課題を教えてください
WHI 上村:
現在コンサルタント職とエンジニア職で展開していますが、営業職や管理部門での実施が今後の課題です。
現状なかなか取り組みを進められていない理由のひとつは、職種によってスキルの定義が難しい点にあります。たとえば営業職の場合、エンジニアのようにテクニカルなスキルというより、どちらかというと人当たりやコミュニケーションスキルのような、ファンダメンタルな要素が重視されがちです。それをあえて可視化することにメリットがあるのか、判断しづらいところがあります。
私たちのような管理部門については、こういった施策においてどうしても後回しになりがちなので、自分のスキルも可視化したいですがまだできていないですね。
このように、全社一斉に施策を実施するのが難しい中で、対象外の部門にもメリットを提供するためには今後どうしたらいいだろう、ということを考えています。
6. 将来の展望
Q10. 「スキルベースの人的資本マネジメント」施策について、将来の構想を教えてください
WHI 上村:
まずは、スキルマネジメントをしっかりと展開して、WHI全体の共通言語にしていきたいと考えています。
社内公募への活用
WHI 上村:
そのうえで、スキル情報を社内公募に活用したいです。WHIでは社内公募を年に1回行っていまして、50~60ポジションほどオープンされています。そのポジションがどのような人を求めているのか、そのポジションを経験することでどのようなスキルが身につくのかを、スキル情報によって可視化できるといいなと思います。これによって、ポジションと自分が持つスキルのマッチ度がわかりやすくなるといいですね。
さらに、自分のスキルをもとにキャリアパスを描いたり、理想のキャリアを歩むために必要なスキルが見えるようにしたりと、従業員自身のディベロップメントプランに繋げていきたいです。
評価サイクルやMBOサイクルとの連携
WHI 上村:
評価サイクルやMBOサイクルとの結びつけも効果的に行っていきたいですね。組織目標や個人目標の達成は、個人が成長するうえで大きな動機になるので、スキル向上との連動を人事からも働きかけたいと思っています。
蓄積したスキルデータのさらなる分析
WHI 上村:
スキル情報は、収集を続けていくと年々膨大な量が蓄積されると思います。データストラテジー部門とも連携して、より深い分析を行えるのが理想ですね。個人が持つスキルはもちろん、特定の組織で充実しているスキルとか、将来ビジネスにおいて求められるであろうスキルとWHIとのギャップなどを可視化したいです。
全社での人材マネジメントへの活用
WHI 上村:
ここまでお話した通り、WHIにおけるスキルベース施策は、個のキャリア自律支援という側面が色濃く表れた取り組みです。しかしこれと同様に、会社としてスキル情報をどのように活用するかも重要です。採用や要員計画といった全社での人材マネジメントにもスキル情報を取り入れることで、より質の高い人材マネジメントが実現するのではないかと考えています。
参考:スキル管理セミナー参加者からの質問
当社では、2024年9月25日にユーザー様向けのセミナー「WHIが紹介!『見える化』で終わらせないスキル管理への挑戦」を開催しました。参加者の皆様から寄せられたご質問も、あわせてご紹介します。
Q1. スキルの習得状況や習熟度は評価に影響しますか?
WHI 上村:
WHIの評価制度において、持っているスキルが直接評価に影響することはありません。WHIの評価制度は、行動や成果の評価をポリシーとしています。目に見えないスキルやマインド、知識といったものは評価対象から外しています。
一方で、スキルと評価にまったく関係がないと、スキル向上のモチベーションが上がりませんよね。人事として、これらにどのような関連があるのかを伝え、納得してもらうことは重要だと考えています。これについては、下の説明をしています。
持っているスキルが増えたり、習熟度が上がったりすると、業務にアサインされる機会が増えていきます。アサインされる業務が増えたり多様化したりするにつれ、そこから生まれる行動や成果も、結果的に変容していきます。これが最終的に評価に繋がるということです。
アサインされた業務で実際に成果を出せるかどうかは本人次第ですが、業務の数や種類が少ないよりは多い方が結果にも繋げやすいだろうということで、スキルは評価に間接的な影響を与えているとしています。
Q2. 事業が幅広く職種も多いため、管理すべきスキルが多くなります。その定義と更新が課題です。
WHI 上村:
これはWHIでも課題で、答えが見えていないもののひとつです。グローバルを見ると、シンガポールやアメリカでは「スキルベースの人的資本マネジメント」が進んでいますが、国が主導してスキルディクショナリを作っているんですね。
各社が共通して参照できるものがすでにある状態なので、ゼロからスキルを定義したり、更新したりする必要がないのではないかと推測しています。
欧米ではジョブ型が主流であることも影響しているのでしょうね。仕事が変わらなければ求められるスキルも変わらないので、やりやすいのだろうなと。
反対に日本のようなメンバーシップ型では、スキル定義や更新の難易度が高い印象があります。これもCTMを活用してうまくやれるようにしていきたいですね。
Q3. スキル定義や入力を現場任せにすると情報の質・粒度に差が出てきます。どのように解決しましたか?
WHI 上村:
先ほどスキルの自己評価が高い人・低い人いるのでは、というお話をしましたが、実はWHIでスキル情報を収集したあと、グレードごとの平均値や分布を見てみると、グレードが上がればスキルも上がる傾向がありました。このことから、細かい認識のズレはあっても、全体で見たときに大きなズレはなさそうということを確認しています。
大きく結果がズレなかったのは偶然ではなく、入力の順序が影響していると考えています。入力の際は、グレードが上の人から順に実施してもらい、後に入力する人は、上長や同僚がどのくらいのレベルをつけたのか参照できるようにしていたんですね。
これによって、自分のレベルをどう評価したらいいのかわからない、という状況が起こりにくかったのだと思います。「この人がレベル3なら自分は2か」と、自発的に調整してもらえるような運用にしたことが、ひとつの解決策になったと思います。
Q4. 従業員が入力したスキル情報は上長が承認していますか?
WHI 上村:
上長が承認する方法も検討したのですが、かなり上長に負荷がかかることになりますし、評価に直接反映されないことを考えると過剰だと判断しました。また、キャリア自律の枠組みの中で施策を展開したかったという点もあり、自己申告という運用にしています。
Q5. 従業員に対して、スキルを登録するメリットをどのように説明しましたか?
WHI 上村:
人事からだけでなく、プロジェクトに参加してもらっている部長クラスや執行役員からも、「会社として重要な施策ですよ」「組織としてきちんと目的があって実施しますよ」とアナウンスしてもらいました。
そのうえで「従業員の皆さんのキャリアがよりよくなるように活用したい」ということを伝えて、協力を仰ぎました。
ありがたいことにWHIの社風として、キャリア自律の取り組みに関してはかなり従業員の理解があるんですね。あとはスキルベースの取り組みに対して、「どういうものなんだろう」という興味も高かったのでしょうね。
直接従業員に話してはいないのですが、HRテック企業として、いちはやくこうした取り組みを行うことで、失敗も含めてお客様に還元できることもあると考えています。その価値を従業員が感じ取って、ポジティブに取り組んでくれている部分も大きいのではないかなと思います。