人事のアタマ|クラレでの人事キャリアと人的資本経営を紐解く

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人事のアタマ|クラレでの人事キャリアと人的資本経営を紐解く

高性能樹脂や繊維製品を中心に世界トップシェア商品を展開し、化学業界を牽引する株式会社クラレ様。「人と組織のトランスフォーメーション」を中期経営計画の一つの挑戦にすえ、独自の人的資本経営を進めています。

本対談では、株式会社クラレ グローバル人事センター 人事システムチームの浅川秀太様にWHI総研の奈良和正がインタビュー。浅川様のキャリアとクラレ様の人的資本経営に迫りました。

前半となる本記事では、浅川様のこれまでのキャリアやご担当されている業務、またクラレ様の人的資本経営推進における課題や今後の方針についてご紹介します。

※WHI総研:当社製品「COMPANY」の約1,200法人グループの利用実績を通して、大手法人人事部の人事制度設計や業務改善ノウハウの集約・分析・提言を行う組織

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今回の対談者
浅川 秀太 様(写真右)
株式会社クラレ グローバル人事センター 人事システムチーム

 

人事のキャリア|システム導入からDX推進、グローバル人事まで幅広く

Q1. はじめに、浅川様のこれまでのキャリアについてお聞かせください

浅川様:
私は大学卒業後、2017年にクラレに新卒で入社しました。
入社当初は営業希望でしたが、人事部に配属され、主に従業員研修を担当しました。

奈良:
まだ働き始めてまもない、事業内容、仕事内容も熟知しているわけではない入社1年目から従業員の研修を担当するというのも難度が高いですね。

浅川様:
クラレは技術系の会社であるため大学院を卒業された年上の従業員も多く、年上の方に私が研修をする場もあり大変でした。当時は若手の育成に力を入れはじめた頃でもあり、若手にアドバイザーをつけるというアドバイザー制度があったのですが、そのアドバイザー向けの研修等も担当しましたね。

2019年4月に、クラレはCOMPANY就労・プロジェクト管理(以下、CSR)を導入することになりました。その際、当時の導入担当が2019年9月に退職することになり、2019年7月に私がCSR導入担当の後任として異動しました。

奈良:
研修担当からシステムの導入担当という変化は、かなり大きいものですね。苦労されたことも多かったのではないでしょうか。

浅川様:
その異動は本当に青天の霹靂でした。業務を7月から9月の2か月で引き継いでシステムの導入をしました。

2019年から2021年は、CSRの主担当としてフレックス制度の導入や時間単位年休、勤務締め日を10日から末日へ変更したこと等も含めて、数か月単位のプロジェクトを何個か経験しました。同時にCSRの主担当としての仕事以外にも、人員人件費計画業務やグローバル人事システムの保守運用等にも携わりました。

2022年から新しくDX推進部が設立され、CSRの担当を続けながらDX推進部を兼務することになりました。DX推進部での兼務は、具体的な目標が設けられてはおらず、広く人事のDX化を進めるというもので、なかなか大変でしたね。

この後にも出てくる話題ですが、経営陣が何のデータが欲しいかわからず、とにかくBIツールで一つずつ重要そうなデータを洗い出し、可視化して、関係者と議論を行いました。

奈良 :
データを可視化したものの中で、一番思い入れ深いものは何ですか。

浅川様:
退職率データですね。

当時は全社の定点での退職率しかみられていませんでした。
ちょうどその頃、私の同期の優秀な従業員が何人か退職していたこともあり、若手従業員の離職に少し関心が高まっていました。

その際に「最近の若者は辞めやすいんじゃない?」ではなくて、過去から現在までの推移や部署ごとの違い等が、わかっているか、わかっていないかでは、取れる対策が大きく異なります。現段階で徹底できているとは言い切れないですが、このような所に着手できたのは非常によかったと思っています。

Q2. 現在の浅川様の業務についてお聞かせください

浅川様:
2023年からグローバル人事センターという部署が総務人事本部の下に新設されました。グローバル人事センターの中に人事システムチームができ、私は今ここで働いています。

われわれのチームは、人事戦略やこれから進めていく人事施策に対してよりよいアーキテクチャになるよう、現在のグローバルの人事システムやデータを変えていくというミッションを持っています。

奈良:
たしかCSRの主担当時代に、グローバル人事システムの保守もされていたと思うのですが、そのあたりからの繋がりなのでしょうか。

浅川様:
はい。若干話は戻りますが、CSRの主担当をしていた際に別の仕事として、サクセッションプランニングをグローバル人事システムに導入していく話もありました。

当時はグローバルでのポジション管理がとても大変で、3日間かけて各国の人事データを手作業でグローバル人事システムにアップロードしていました。他にも2022年からグローバルでのエンゲージメントサーベイを実施していますが、その際にも数日かけて各国からデータを集めてシステムに登録しました。

「今後、グローバルでのポジション管理を実施するとなると、各国の企業でポジション内容や該当ポジションについている人が変わる際にリアルタイムで情報が更新されるのが望ましいのですが、手作業ではあまりに工数負荷が大きすぎて継続できません」という話を今の人事総務本部長と話していたこともあり、それらも関係して、私は今グローバル人事センターにいるのかもしれません。

奈良:
従業員のグレードもグローバルで統一される前でしょうし、各国で保有しているシステムも違うでしょうから、各国のグレードの読み替え等もしながら、1つの場所にデータ登録していくのは難儀ですよね。

浅川様:
そうなんです。ポジション自体の変更も各国で自由にできるので、変更の管理もままならないという感じでした。

奈良:
ご苦労されて整備しはじめたグローバル人事システムですが、引き続き今はそこに注力されているのですか。

浅川様:
そうですね。今は、グローバル人事センターの人事システムチームとDX-IT本部のDX推進部とは別に、もう一つ人材活性化グループという部署も兼務しています。

この部署では、複数事業部でサクセッションプランニングのトライアルをしてまして、ここに力をいれています。

奈良:
この兼務は大変ですね。HRシステムとDXと人材活性化とそれぞれ繋がっていますが、カバーすべき領域が広いですね。

浅川様:
そうですね。領域も広く業務量も多いですが、すべて繋がっており楽しみながらやっています。

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クラレの人的資本経営|従業員の戦力最大化に向けて

Q3. クラレ様の事業の現状について教えてください

奈良:
クラレ様の人的資本経営について伺いたいと思います。まずクラレ様の概況について教えてください。

クラレ様は化学業界でも多くの世界トップシェアの商品をお持ちで、かつ海外売上比率も多く、これらをテコに今後さらに強くなっていくような印象を持っています。

浅川様:
仰る通り、現在海外売上比率は約8割、外国人従業員比率約4割と日本企業の中では高い方だと思います。戦略的にやってきた部分もありますが、買収を重ねてこういう状態になった部分もありまして、目下ではグローバル化、グローバル対応が課題です。

人材や売上の構成比だけみるとグローバル企業ですが、内部の人事制度や運用、システム、データ等は対応しきれているとはいえず、シナジーを生み出すために活用できる余地がたくさんあります。

また、仰っていただいたように、世界トップシェアを誇る製品群をベースに、さらなるグローバル展開を進めていくことも一つの方向ではありますが、これはクラレの主要4セグメントにおける1セグメントに偏っている傾向があります。

そのため、他の3セグメントでの強化というのも、社内では緊迫感を持ちながら取り組んでいる最中です。

※主要4セグメントはビニルアセテート、イソプレン、機能材料、繊維を指す。

奈良:
安易にイノベーションという言葉を用いたくはないですが、かなり重要視されているのですね。4セグメントのうち、最も売上比率が高いビニルアセテートはこれからも強くしていく前提で、その他の機能材料やイソプレン等にイノベーションが必要になってくるということでしょうか。

浅川様:
仰る通り、主力領域で利益が出る構造ですが、それ以外の分野でイノベーションを生むことで次のステップに進めると感じています。ここは会社として危機感を持って取り組んでいるところです。

奈良:
私は、クラレ様のステートメントである「世のため人のため、他人(ひと)のやれないことをやる」という言葉が、実際に多くの世界トップシェアの製品で証明されているのは、とてもすごいことだと思います。

その裏では、危機感を持って果敢に他の領域で挑戦されているのですね。

Q4. クラレ様の人的資本経営の方針について教えてください

奈良:
これまでの得意領域でさらにグローバルに展開するという方針に加え、その他の領域でもイノベーションに挑戦されているという現状をここまで伺ってきました。このような中、クラレ様では人的資本経営としてどのようなことが必要だと考えられていますか。

浅川様:
様々ありますが、ここでは2つ挙げたいと思います。

1つ目は、全従業員の4割を占めるグローバル人材にさらに能力を発揮してもらうこと。
2つ目は、人材の流動性が高まり優秀人材の採用競争が激しくなっている時代背景を考慮して、既存の従業員の戦力最大化をはかるための全体最適と個人最適の融合です。

奈良:
両テーマとも各社で苦労するポイントですね。特に後者は、「今持っている能力を効果的に発揮すること」と「能力を伸ばすこと」、「組織目線での要望」と「個人目線での要望」等相反する観点があるので、非常に難しいテーマだと感じています。

 

後編に続く

この記事を書いた人

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奈良 和正(Nara Kazumasa)

2016年にワークスアプリケーションズ入社後、首都圏を中心に業種業界を問わず100以上の大手企業の人事システム提案を行う。現在は、入社以来継続して実践している各企業の人事部とのディスカッションと、それらを通じて得られるタレントマネジメント、戦略人事における業務実態の分析・ノウハウ提供に従事している。

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