とうとう効力の発生まで半年を切っ
特定の法人に対し、社会保険・労働保険に関する一部の手続きにおいて電子申請が義務化されますが、準備は着実に進んでいるでしょうか。
本記事では、半年後に控えた電子申請義務化への対応に向けどのような対応が必要になるのか、いま一度振り返ってみようと思います。
目次
2020年に控えた電子申請義務化の概要
いつから?
2020年4⽉から特定の法人について電子申請が義務化されます。
対象となる「特定の法人」の定義とは?
・資本金または出資金額が1億円を超える法人
・相互会社
・投資法人
・特定目的会社
なお、今回の義務化の対象外であったとしても、今後義務化の範囲対象が広がると見られているため、
電子申請への移行を意識することが必要です。
電子申請義務化対象となる書類
今回の義務化の対象は以下の書類になります。
健康保険関連
· 被保険者賞与支払届
· 被保険者報酬月額算定基礎届
· 被保険者報酬月額変更届
厚生年金関連
· 被保険者賞与支払届
· 被保険者報酬月額算定基礎届
· 被保険者報酬月額変更届
雇用保険関連
· 被保険者資格取得届
· 被保険者資格喪失届
· 被保険者転勤届
· 高年齢雇用継続給付支給申請
· 育児休業給付支給申請
労働保険関連
継続事業(一括有期事業を含む)を行う事業主が提出する以下の申告書
・年度更新に関する申告書
概算保険料申告書
確定保険料申告書
一般拠出⾦申告書
・増加概算保険料申告書
罰則はあるの?
違反した場合の罰則はありませんが、申請が無効なものと扱われ受理されない可能性が高いです。
ただし、『労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則及び厚生労働省関係石綿による健康被害の救済に関する法律施行規則の一部を改正する省令(案)の概要』(厚生労働省)によると、「やむを得ない理由がある場合は次回以降の電子申請を促しつつ、紙での申請を受け付ける」と明記されており、一定の場合には申請が受理される可能性もあります。
やむを得ない理由とは?
厚生労働省によると、以下に該当する場合は電子申請によらない方法により届出が可能と記しています。
(1)電気通信回線の故障や災害などの理由により、電子申請が困難と認められる場合
(2)労働保険関係⼿続(保険料申告関係)については、労働保険事務組合に労働保険事務が委託されている場合、単独有期事業を⾏う場合、年度途中に保険関係が成⽴した事業において、保険関係が成⽴し た日から50日以内に
申告書を提出する場合
しかし、次回以降の手続きには電子申請が促されることになりますので、企業では確実に準備を進める必要があります。
電子申請義務化で認められている、2つの手続き方法とは
電子申請手続きには、政府が提供しているe-Gov電子申請システムから直接申請する方法と、外部連携のAPI対応専用ソフトから申請する方法の2通りの方法があります。これまでは「書面以外の電子媒体」としてCD-Rなどでの提出も可能でしたが、今回の電子申請義務化においてはCD-Rなどの電子媒体は認められず、上記2通りの方法から選ぶことになります。
e-Gov電子申請システムを利用する方法
e-Govサイトは、総務省が運営する行政情報ポータルサイトです。さまざまな行政手続きについてオンライン申請・届出を行うことができるほか、行政情報の総合的な検索・案内サービスの提供や、政策に対して意見の提出もできるなど、国民と政府をつなぐパイプのような役割を担っています。e-Govサイト上で直接データを入力し、電子申請を行います。
e-Gov電子申請システムを利用するためには以下の事前準備が必要になります。
・利用環境の確認/準備
対応するOSはWindowsのみとなっているので、パソコン環境はしっかり確認しておきましょう。ポップアップ
ブロックの解除や、信頼済サイトへの登録も必要です。
・電子証明書の取得
電子証明書とは、書面の場合の「印鑑証明書」に相当するもので、本人確認などのための電子的な身分証明書
のことです。電子認証登記所(商業登記認証局)などの「認証局」から、電子証明書を事前に取得する必要が
あります。
・プログラムのインストール
e-Gov電子申請システムを利用するためには、e-Gov電子申請アプリケーションをインストールする必要があり
ます。
外部連携API対応システムを利用する方法
APIとは「Application Programming Interface」の略称で、アプリケーションの機能を他のアプリケーションでも利用できるようにする仕組みのことです。外部システムに連携するためのAPIを、外部連携APIと呼びます。外部連携API対応のソフトウエアを使用することで、申請データの作成から、申請、公文書取得までの全ての機能をソフトウエア上から行えるようになるため、e-Gov電子申請システム上からの操作は不要となります。さらに、既存システムのデータを利用して申請書を作成することができるため、より効率的な申請が可能となります。
外部連携API対応システムを利用するためには以下の事前準備が必要になります。
・自社システムの確認
いまお使いのシステムが、外部連携API対応のバージョンアップが可能か確認する必要があります。
また、時期によっては義務化施行の時期に間に合わない可能性があるので、早めの確認が必要です。
・自社に適したソフトウェアの検討
外部連携API対応のソフトウエアはこの世に多数存在するので、
自社システムや業務運用を鑑みて、適したソフトウェアを見極める必要があります。
また、e-Gov電子申請システムの利用にはコストがかかりませんが、
ソフトウェアを利用する際にはもちろん利用コストがかかりますので予算取得が必須になります。
・電子証明書の取得
e-Gov電子申請システムを利用する時と同様、電子認証登記所(商業登記認証局)などの「認証局」から、
電子証明書を事前に取得する必要があります。
どちらの方法をとるにせよ、様々な対応が必要になります。新しい運用に慣れる準備期間を設けるため、早め早めの対応を推奨します。