変形労働時間制とは?メリット・デメリットや導入手順を解説

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最終更新日 2024年9月24日

変形労働時間制とは?メリット・デメリットや導入手順を解説

働き方改革の推進に役立つ制度に「変形労働時間制」があります。変形労働時間制では業務の繁閑に合わせて労働時間を調整できるため、従業員の総労働時間の短縮に繋がります。

本記事では、変形労働時間制とはどのような制度なのか、その種類やメリット・デメリット、導入の流れまでを解説します。
 

多くの企業が導入している「変形労働時間制」とは

まずは、変形労働時間制の概要と種類について見ていきましょう。

変形労働時間制の概要

変形労働時間制とは、時期や季節によって業務量に大きな差がある場合に労働時間を調整できる制度です。労働基準法において、法定労働時間は原則的に「1日8時間まで・週40時間まで」と定められています。

しかし、変形労働時間制を導入すると、一定期間の平均労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において「忙しい月末は労働時間を長く、業務量が少ない月初は短く」といった調整が可能です。

変形労働時間制を導入すれば業務量に応じたメリハリのある働き方を実現できるため、すでに多くの企業で導入が進んでいます。

厚生労働省が実施した「令和5年就労条件総合調査」によると、変形労働時間制を導入している企業の割合は全体で59.3%であるのに対し、従業員数1,000人以上の企業では77.3%と高い水準となっています。企業規模が大きいほど変形労働時間制を積極的に導入し、働き方改革を推進している傾向が見られます。

出典:厚生労働省 令和5年就労条件総合調査 結果の概要 労働時間制度 第8表 変形労働時間制の有無、種類別採用企業割合
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/23/

変形労働時間制の種類とフレックスタイム制との違い

変形労働時間制は、対象期間によって「1か月単位」「1年単位」「1週間単位」の3種類にわかれています。それぞれの内容を見ていきましょう。

1か月単位の変形労働時間制(労働基準法32条の2)

1か月以内の期間における平均労働時間が週40時間を超えなければ、特定の日・週に法定労働時間を超えてもよい(超過しても残業扱いにならない)とする制度です。たとえば、業務量が増える最終週は労働時間を1日10時間とし、それ以外の週は7時間にするといった調整が可能です。1か月の中で繁閑の差が大きい職場に適しています。

参考:厚生労働省 労働基準関係リーフレット 1か月単位の変形労働時間制
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000056460.html

1年単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の4)

1か月を超える1年以内の期間において、平均労働時間が週40時間を超えない範囲であれば、労働時間を任意で調整できる制度です。たとえば、繁忙期の10月~12月は1日9時間、閑散期の1月~3月は1日7時間にする等、数か月にわたる期間での調整が可能です。

ただし、労働者を守るために「1日あたり10時間」「1週間あたり52時間」という上限が設けられています。

参考:厚生労働省 変形労働時間制の概要 1年単位の変形労働時間制度
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/henkei.html

1週間単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の5)

労働時間が1日10時間、週40時間を超えない範囲であれば、1日単位で毎日の労働時間を設定できる制度です。この制度は1週間の中で繁閑がある業種が対象となっており、従業員数が30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店のみに適用されます。

変形労働時間制とフレックスタイム制との違い

変形労働時間制と同様に、労働時間を調整できる制度にフレックスタイム制があります。両者は混同されやすいですが、「労働時間の決定権が誰にあるか」という点が異なります。

フレックスタイム制は、従業員(労働者)が個々の事情に合わせて始業時刻と終業時刻を自由に設定できる制度です。
一方、変形労働時間制では、企業や部署ごとの繁閑に合わせて企業側(使用者)が労働時間および始業時刻・終業時刻を設定します。

また、「ワークライフバランスの向上」を主な目的としているフレックスタイム制に対し、変形労働時間制では、業務の繁閑や業務特性に合わせて労働力を合理的に配分し、労働時間の短縮を目指す制度となっています。

変形労働時間制のメリット・デメリット

ここでは、変形労働時間制のメリットとデメリットについて、企業側と従業員側にわけて見ていきます。

企業側のメリット

変形労働時間制の導入によって、企業は繁忙期の所定労働時間を長く設定できるため、その範囲内であれば、1日の労働時間が8時間を超えても残業代が発生しません。時期によって繁閑の差が大きく、繁忙期に多くの残業代が発生していた企業にとっては大幅なコスト削減に繋がるでしょう。

一方、業務量が少ない時期は所定労働時間を短縮できるため、時間を持て余すような従業員を減らすことができます。繁閑の業務量に応じてリソースを適切に配分することで、業務効率および労働生産性の向上が期待できます。

企業側のデメリット

変形労働時間制では週や月ごとに所定労働時間が変動するため、1日8時間・週40時間の一般的な働き方と比べて勤怠管理や給与計算が煩雑になります。紙や表計算ソフト等で勤怠管理や給与計算を行っている場合、事務担当者の負担が増大するだけではなく、人為的なミスが増えることも懸念されます。

また、繁忙期の所定労働時間が増えることで、従業員から「長時間働いても残業代が出ない」「収入が減る」といった不満の声が上がる可能性もあります。

従業員側のメリット

所定労働時間が1日8時間に固定されている場合、業務量がかなり少ない時期でも従業員は終業時刻まで会社に居続けなければなりません。変形労働時間制を導入すると、業務量に適したメリハリのある働き方ができるようになるため、従業員は余分な居残り時間やストレスから解放されます。

また、業務量に合わせた柔軟な勤務体制により、「繁忙期はしっかり働き、閑散期はプライベートの時間を充実させよう」等の計画を立てやすくなるでしょう。閑散期に心身のリフレッシュに充てる時間を確保しやすくなることで、仕事に対するモチベーションの向上にも繋がります。

従業員側のデメリット

変形労働時間制を導入すると、閑散期は早く帰れるようになる一方、繁忙期の拘束時間は長くなります。通常より長時間働いても時間外労働とみなされないケースがあるため、残業代が出ないことをデメリットに感じる従業員も出てくるでしょう。

また、変形労働時間制が特定の部署のみに適用される場合、部署によって就業時間が異なることで会議や打ち合わせ等の調整がしづらくなる可能性もあります。

変形労働時間制を導入する基本的な流れ

変形労働時間制の導入は、基本的に以下の手順に沿って進めます。

1.勤務状況の実態調査

まず、現状を把握するために従業員の勤務実態を調査しましょう。勤怠管理表を基に「繁忙期と閑散期はいつか」「どの職種・役職に時間外労働が多いか」といった実態を把握したうえで、変形労働時間制を採用するかどうかを判断します。

2.対象者の選定

次に、変形労働時間制の対象とする従業員の範囲を決めます。勤務実態調査の内容を基に、繁閑での労働時間の差が大きい部署、職種、従業員を抽出しましょう。法令上、変形労働時間制の対象者の範囲は明確に定める必要があるため、運用面や管理面も考慮したうえで適用範囲を決定しましょう。

3.対象期間と所定労働時間の決定

調査した勤務実態を踏まえ、変形労働時間制を適用する期間や起算日、所定労働時間を決定します。所定労働時間は、採用する種類によって日・週・月ごとに設定する必要があります。

4.就業規則の見直し・改定

対象者や労働時間等が決まったら、その内容を就業規則に反映させる必要があります。変形労働時間制を導入すると、始業時刻・終業時刻や残業等に関する規定が従来と変わるため、しっかりと見直して整備しましょう。

5.労使協定の締結

「1年単位」「1週間単位」の変形労働時間制を導入する場合、対象者の範囲や対象期間、所定労働時間等について労使協定を締結する必要があります。なお、1か月単位の変形労働時間制では、就業規則を改定すれば労使協定の締結は不要です。

6.労働基準監督署への届け出

改定した就業規則や労使協定について、所轄の労働基準監督署に届け出を行います。残業や休日出勤が生じる可能性がある場合は、36協定も合わせて提出しましょう。

7.従業員への通達・周知

変形労働時間制の運用にあたっては、従業員に制度導入の主旨や就業規則・労使協定の内容について周知し、理解を得ることが重要です。労働時間や賃金に関わることなので、誤解や混乱を招かないように丁寧に説明しましょう。

8.運用・管理 

運用開始後は、改定した就業規則や労働時間に沿って、適切に運用されているかの管理を行う必要があります。変形労働時間制の勤怠管理や給与計算は煩雑で人為的なミスが発生しやすいため、勤怠管理システムを活用することをおすすめします。

変形労働時間制に対応した勤怠管理システムを導入すれば、期間ごとの勤怠管理や残業代の計算をミスなく効率的に行えるようになります。

変形労働時間制の運用には勤怠管理システムが最適

前述の通り、変形労働時間制とは、繁忙期と閑散期の業務量に合わせて労働時間を柔軟に調整できる制度です。

時期による業務量の増減が大きい企業の場合、変形労働時間制を導入することで、リソース配分の適正化や不要な残業の抑制等に繋がります。従業員にとっても、メリハリのある働き方ができるようになり、仕事に対するモチベーションやワークライフバランスの向上が期待できます。

メリットがある一方、勤怠管理や給与計算が煩雑であるため、紙や表計算ソフト等では担当者の負担や人為的なミスが増えることが懸念されます。

変形労働時間制をミスなく効率的に行える管理手段として、当社の統合人事システム「COMPANY 就労・プロジェクト管理」を最後にご紹介します。

COMPANYでは、1年、1か月、1週間単位の変形労働制の管理はもちろんフレックスタイム制、裁量労働制等、多様な勤怠管理を実現します。
手作業での計算や表計算ソフトによる管理を削減し、労働基準法や就業規則に則った勤怠管理を実現します。
COMPANYを利用した勤怠管理についてはぜひ下記ホワイトペーパーもご参照ください。

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