【労働安全衛生法】 2024年施行内容をわかりやすく解説!

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最終更新日 2024年11月8日

【労働安全衛生法】 2024年施行内容をわかりやすく解説!

労働安全衛生法とは、労働者の安全と衛生についての基準を定めた法律です。労働者が快適に働くための環境を作ることは事業者としての役割であり、その役割を適切に果たすために、労働安全衛生法は様々なことを企業に義務付けています。

また、エンゲージメントスコアの向上など、労働者が働きやすい環境をつくることは、企業にとってもメリットの享受が期待できます。

本コラムでは、労働安全衛生法の基礎知識や、2024年の施行内容、違反した場合の罰則等をわかりやすく解説します。

目次

労働安全衛生法とは
2024年に施行された内容とは?
労働安全衛生法に違反した場合の罰則
労働安全衛生法において事業者が遵守すべきポイント
安全衛生活動が企業に与えるメリット
より安全な職場環境を目指しましょう

労働安全衛生法とは

 

労働安全衛生法とは、労働者の安全と健康の確保・快適な職場環境作りを促進する
ため、事業者に対し責任体制の明確化や、自主的な活動の推進を定めた法律です。


労働安全衛生法における、「事業者」・「労働者」とは以下を指します。

事業者

・事業を行うもので、労働者を使用する者。
・事業場の規模や業務区分に応じた衛生管理委員会の設置や衛生管理者の選任、
 働きやすい職場づくりを行う。

 

労働安全衛生法における労働者は、労働基準法9条に規定する労働者と同じであり、
以下に労働基準法における労働者の定義を記載します。

労働者

・職業の種類を問わず、事業や事務所に使用される者で、賃金を支払われる者。
 ※ただし、同居の親族のみが営む事業や事務所に使用されている人、家事使用人は、
   労働者に当てはまりません。

 

労働安全衛生法が最初に制定された1972年と比べ、労働者の働き方は大きく変化・
多様化しました。こうした働き方の変化に伴い、労働安全衛生に関連した法律の改正や新制度の創設が行われています。
事業者は常に最新の情報を取得し、職場づくりに反映させる必要があります。

2024年に施行された内容とは?

2022年5月31日、労働安全衛生法施行令の一部が改正され、化学物質を規制する、
新たな制度が導入されました。

 

厚生労働省はこの改正の目的について、年間約450件発生する化学物質を原因とする
労働災害を防ぐ事が目的であると発表しています。

改正の主なポイントとしては、「リスクアセスメント対象物」に該当する化学物質の
管理体制や教育、情報伝達体制の強化や拡充が挙げられます。この改正内容は、2023年4月、2024年4月と段階的に施行されています。

以下は、2024年4月に施行された内容のポイントです。

 

▼2024年4月施行内容の主なポイント
  
(厚生労働省HP「化学物質による労働災害防止のための新たな規制について」記載内容より作成)       

          2024年4月施行内容の主なポイント.PNG

参考:厚生労働省「労働安全衛生法の新たな化学物質規制
参考:厚生労働省「化学物質による労働災害防止のための新たな規制について


労働安全衛生法の新たな施行に伴い、自社の化学物質管理体制の強化やラベルや
SDS(安全データシート)等による必要な情報伝達を行いましょう。

労働安全衛生法に違反した場合の罰則

労働安全衛生法の遵守は事業者の義務です。事業者は、労働安全衛生法に違反すると
罰則が課せられます。罰則の対象となりやすいものは、「作業主任者選任義務違反」「安全衛生教育実施違反」「無資格運転」「労災報告義務違反(虚偽報告)」です。

それぞれの内容と罰則は以下の通りです。

      罰則.PNG

 

労働安全衛生法において事業者が遵守すべきポイント

労働安全衛生法は、労働安全や労働衛生に関する事項が幅広く制定されています。特に、事業者が遵守すべき内容は労働災害を防止するための措置、安全衛生教育、リスクアセスメント、健康の保持、増進のための措置、快適な職場環境の形成の5点です。

            労働安全衛生法において事業者が遵守すべきポイント.PNG

 

ここからは、それぞれの内容について詳しく説明します。

1.労働災害を防止するための措置

労働災害を防止するための措置は、危険防止や健康被害の防止により労働災害が発生
しないように努めることです。

具体的には、設備や機器、作業で発生する危険への対策や、放射線や高音、振動等に
対する健康被害防止対策が挙げられます。

万が一、労働災害を防止するための措置を怠っていた場合には、法律違反として規定の罰則が課せられます。ただし、労働災害を防止するための措置をしていたにもかかわらず、労働者自身が防止措置に関するルールを守らなかった場合は罰則の対象外です。

2.安全衛生教育

安全衛生教育とは、労働者が安全に職務を行えるように教育することです。
先述の通り労働安全衛生法では、新しく労働者を雇用した場合や、業務内容の変更が
生じた場合に労働者に対する安全教育の実施が定められています。

安全衛生教育の内容は「物的」と「人的」に大別されます。「物的」は、設備メンテナンス等職場環境の安全性に関する教育、「人的」は労働者のスキル向上を目的とした教育です。

安全衛生教育の内容は、事業場の業種や労働者の知識レベルによって省略できるものもあります。あらかじめ自社の業種に必要な教育項目を確認しておくとよいでしょう。

3.リスクアセスメント

リスクアセスメントとは、リスクの見積り、作業現場の有害性や危険性の特定、
リスク低減措置の決定等、リスクへの措置に関する一連の流れのことです。

労働安全衛生法第28条第2項に規定されており、製造業や建設業の事業者は
リスクアセスメントと、リスクアセスメントに関連した措置を実施することが
義務付けられています。

4.健康の保持・増進のための措置

労働安全衛生法第7章では、労働者の健康保持・増進のために事業者が行わなければ
ならない措置が定められています。具体的には、労働者が健康に働き続けるための、
定期的な作業環境の測定や健康診断の実施、病者の就業禁止等です。

たとえば、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、1年に1回の定期健康診断が義務付けられています。健康診断の結果は、労働基準監督署に報告したうえで5年間の保管が必要です。

従事する業務の内容によっては、上記に加えて特定業務健康診断や歯科医師健康診断を行わなければなりません。これらの健康診断は既定の業務を実施する都度行われます。

5.快適な職場環境の形成

最後に、快適な職場環境の形成も重要です。労働安全衛生法では、作業環境・作業方法・疲労回復支援施設・職場生活支援施設の4つの視点で、快適な職場環境作りの形成を促しています。それぞれの視点の概要は以下の通りです。

            快適な職場環境の形成.PNG

 

安全衛生活動が企業に与えるメリット

安全衛生活動をすることで、労働者が働きやすい環境を得られるメリットがありますが、企業側にも以下3つの効果が期待できます。

  • 1.モチベーション・エンゲージメントの向上

安全衛生活動を行うことで働きやすい環境が整えられ、業務に熱意を持ち、積極的に取り組む従業員が増えることで、従業員の業務へのモチベーションやエンゲージメントの向上が期待できます。

2.生産性向上

労働者が安全衛生に関する正しい知識を身に付け、安全で効率のよい作業をすることで、企業の生産性が上がります。現場での事故やトラブルが減り、想定外の生産ロスを防げるでしょう。

3.人件費の削減

安全衛生管理の徹底は、人件費を削減する効果もあります。従業員が心身ともに健康な状態で長く働くことで、休職や離職率を抑え、都度の人員調整の発生を抑える効果を
期待できます。

 

このように、安全衛生活動は労働者のためだけではなく、事業者側にも様々なメリットがあります。株主や求職者へのアピールポイントにもなるため、単に法令を遵守する
ためだけでなく、積極的に安全衛生への取り組みを行うとよいでしょう。

より安全な職場環境を目指しましょう

労働者の安全を守ることは事業者の義務です。日本では、労働安全衛生法で労働者の
安全かつ健康を守る措置が明確に定義されています。

労働安全衛生法に違反すると懲役や罰金等の罰則が課せられるため、労働安全衛生法に基づいて労働者の安全な職場環境を確保しましょう。

また、労働安全衛生法はほぼ毎年法改正が行われる流動性の高い法律です。世の中の変化に合った適切な労働安全衛生管理を行えるよう、常に最新の改正情報を確認しましょう。

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