生成AI活用で人事業務に変革を。活用テクニックを紹介|イベントレポート

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生成AI活用で人事業務に変革を。活用テクニックを紹介|イベントレポート

2025年も引き続き注目される生成AI。多くの企業が業務への導入方法を模索しているものの、まだ十分な活用は進んでいません。

そうした背景を踏まえ、WHIは2024年11〜12月、「WHI総研(※)といっしょに挑戦!人事業務での生成AI利用ワークショップ」を、3回にわたり開催しました。各会合わせて大手法人18社の人事部24名の方にご参加いただき、参加者からは「有益な情報を得られた」「わかりやすく、実務で実践しやすい」との声が寄せられました。

本レポートでは、ワークショップの内容を振り返るとともに、人事業務に役立つ生成AIの活用テクニック注意点などのポイントを詳しくまとめています。ぜひ自社における取り組みの参考にしていただけますと幸いです。

※WHI総研とは・・・大手法人人事部の人事制度設計や業務改善ノウハウの集約・分析・提言を行う組織。最先端技術である生成AIの調査・研究もしており、人事部での活用方法を発信。また、生成AI講座や実態調査を通じて得た知見を、当社製品である統合人事システム「COMPANY」の開発部門へフィードバックする取り組みを行っている。

 

開催概要

WHI総研といっしょに挑戦!人事業務での生成AI利用ワークショップ

テーマ :人事業務での生成AI利用
開催日 :2024年11月27日 (水)、2024年11月28日 (木)、2024年12月24日 (火)
対象  :人事業務での生成AI利用に興味のあるお客様
参加者数:18社24名様

ワークショップの内容とWHI総研流の生成AI活用テクニック

1. ワークショップの内容・流れ

セッション0|事前学習「プロンプトの考案」

ワークショップでの理解を深めるため、事前に参加者へ資料を配布し、基礎学習、プロンプト考案、発表準備の3ステップで事前学習に取り組んでいただきました。

①事前学習の進め方_修正版3_生成AI.jpg

セッション1|座学編「生成AIとは?」

②セッション1_生成AI.jpg

当日は、生成AIの活用に関する基礎知識から具体的なユースケースに基づく実践的なプロンプト設計までを体験していただきました。以下、プログラム進行と参加者の学びをご紹介します。

1-1. 生成AIの基本を知る:プロンプト作成で意識すべき3要素

まず、参加者間での共通認識を深めるため、生成AIの基本概念と可能性について解説。

その後、生成AIの動作原理やプロンプト設計の重要性を感じていただくためのクイズを実施しました

クイズ:生成AIに猫の鳴き声を聞き、「ニャー」の3文字のみ回答させるには?


プロンプト設計においては、「条件」「ルール」「アウトプット」の3要素が重要であることを共有しました。3要素をそれぞれ意識したプロンプトとその回答例は以下です。

参加者からは「意外に難しい」「具体的な指示が結果に大きな影響を与えることがよくわかった」といったご感想をいただいております。体験型学習により、生成AIへの理解を深めていただきました。

③回答例_修正版_生成AI.jpg(画像をクリックすると、大きな画像が表示されます)

1-2. 生成AIへの指示のコツを紹介「新入社員」としてAIを扱う

生成AIを活用する際のコツとして、AIを「新入社員」として扱うアプローチを紹介しました。人間は双方向のコミュニケーションを行い、背景知識や常識を活用します。一方でAIは「膨大な知識を持ちながら融通が利かない新入社員」のような存在であると捉え、適切な指示を与える必要があります

アンケート分析を例に挙げ、プロンプト設計を解説しました。実際のプロンプトは以下の通りです。

④プロンプトの書き方_修正版_生成AI.jpg
(画像をクリックすると、大きな画像が表示されます)

1-3. 生成AI活用の注意点を知る

生成AIへの過剰な期待を避ける重要性について取り上げました。「生成AIの精度は60点程度」とされる現状を踏まえ、100%の自動化を目指すのではなく、業務の一部をAIに任せることで、業務の効率化が図れることを強調しました。

セッション2|実践編1「社内イベントを企画立案する」

⑤セッション2_生成AI.jpg

座学が終わった後、参加者は実際に生成AIを活用して、社内イベントの企画立案に挑戦しました。本セッションでは以下のタスクを通じて、生成AIがどのように業務を支援できるかを体験していただきました。

2-1. 実践

参加者は、自社の社内イベントを題材に、以下の課題に取り組みました。

課題1:アジェンダと時間割案の作成
生成AIに「当日のイベントアジェンダ」と「時間割案」を作成させ、イベント進行の計画を立てました。

課題2:イベント紹介文案の作成
従業員向けのイベント紹介文案を作成し、参加者が魅力的に感じる表現方法を模索しました。

⑥事前課題 _生成AI.jpg

2-2. WHI総研の解説:効果的な質問とプロンプト設計の工夫

生成AIを活用する際、以下のような具体的な質問を投げかけることで、アウトプットの質を向上させることを解説しました。

・ チェックリスト作成: 必要な準備項目をリスト化し、タスクを明確にする
・ プロモーション支援: ターゲット層に響くメッセージや方法を提案する
・ フォローアップ設計: イベント後の効果を最大化する施策を立案する
・ 成果測定方法: 指標設定やデータ収集案を提案する


上記に加え、生成AIをより効果的に業務に取り入れる高度なプロンプト設計方法として、以下の3つを紹介しました。

1. Score Anchoring: AIの出力を評価し、「100点」となる改善案を導く
2. Generated Knowledge: 特定テーマの特徴や新案をAIに考えさせ、企画に活かす
3. Proactive Prompting: 情報不足を補完する質問をAIに投げかけ、深掘りさせる

セッション3|実践編2「資料を読み込んでFAQを作成する」

⑦セッション3_生成AI.jpg

参加者がインターネット上の資料を活用して、従業員向けのFAQを作成する課題に取り組みました。この演習では、実際の資料を読み解き、生成AIを活用して効果的なFAQの作成プロセスを学びます

3-1. 実践

住民税の特別徴収税額通知に関するFAQを作成しました。経団連が公開している「個人住民税の特別徴収税額通知の受取方法が変わります!」や、協会けんぽが公開している「健康保険証とマイナンバーカードの一体化(マイナ保険証)に関する制度説明資料」といった資料をもとに、従業員から寄せられる可能性の高い質問と、その回答を生成AIで作成。

資料を生成AIに読み込ませたうえで、質問と回答を表形式でまとめることで、FAQを簡潔かつ実務的な形で整理できます。いずれの資料も事業者向けの資料というのが、企画側の隠れたポイントになっており、従業員向けに作り変える工夫も考えていただきました。

⑧課題_生成AI.jpg

3-2. WHI総研の解説

生成AIでFAQを作成するための3つのポイントをWHI総研から解説しました。これらを実践することで、効率的で幅広い読者に対応できるFAQを作成できます。

①情報を視覚的に整理し、誰でも理解しやすい簡潔な回答を用意すること

②読者目線を意識し、短時間で必要な情報にたどり着けるようプロンプトを設計すること

③初歩から専門的内容まで、異なる知識レベルに合わせた質問を用意すること

2. 実践編での参加者の声

本章では、ワークショップの実践パートで寄せられた参加者の声を一部ご紹介します。

セッション2|実践「社内イベントの企画立案」
・プロンプトで具体的に指示を出すことで、期待した結果を得られやすくなることがわかりました。特にアジェンダや時間割を段階的に作成する方法が効果的でした。

・簡単なプロンプトでもAIが期待に応える結果を出してくれたことに驚きました。誘導しながらの調整がポイントだと判明しました。

・初めての挑戦でしたが、生成AIを使ったイベント企画のプロセスが楽しく、短時間でも成果が出ました。


セッション3|実践「資料を読み込んでFAQを作成する」
・ちょっとした資料からQAを作る必要性を知り、カテゴリ分けのテクニックも有益でした。

・生成AIで添付ファイルを読み込んでFAQを作成する工程を体験でき、対話による精度向上も実感しました。

・法改正や新制度などを要約する際にも、FAQ作成と同様のアプローチが使えそうと感じます。

・PDFからのFAQ作成など、AIの可能性は利用者の発想次第でいくらでも広がると再認識できました。

3. WHI総研からの総評

本ワークショップは、生成AIの実践的な活用を目的とし、企画から運営まで一貫してWHI総研が携わりました。当初は講義形式による知見共有を予定していましたが、実際の人事部門の生成AI活用状況を踏まえ、より効果的な学習方法として「体験型ワークショップ」を採用しました。

本章では、WHI総研によるワークショップを終えての所感をまとめます。

ワークショップを通して得た学び ~活用の鍵は“質問力”~

多くの人事担当者にとって、生成AIは「難しそう」「どこから始めればいいかわからない」と感じる技術かもしれません。「AIを導入すれば何かが変わる」と期待する一方で、実際の業務に落とし込めず、活用が進まないケースが多く見受けられます。

しかし、本ワークショップを通じて実際に生成AIに触れてみることで、その可能性や限界を理解し、業務への導入方法を見出せました。特に、生成AIを効果的に活用するためには「質問力」が重要です。AIは曖昧な表現の解釈が苦手なため、具体的かつ明確な指示が求められます。「どのような業務で使うのか」「どのような成果を期待するのか」を明確にすることで、より精度の高いアウトプットを得ることが可能になります。

人事業務における生成AI活用のポイント ~検証と改善を繰り返し~

生成AIは指示された内容を実行するツールであり、ビジョンを持つものではありません。そのため、活用の際には「何を達成したいのか」というゴール設定が不可欠です。具体的には、以下のような業務での応用が考えられます。

 ・文書作成支援:求人原稿や社内通知のドラフト作成
 ・サポート業務自動化:FAQや問い合わせ対応の自動化
 ・情報整理:社内資料の要約や翻訳


実際に導入した企業では、「従来数時間かかっていた業務が、わずか数分でドラフト作成できるようになった」「問い合わせ対応の負担が軽減され、人事担当者がより戦略的な業務に集中できるようになった」といった成果が出ています。

また、日本では「完璧でないこと」に対する許容度が低い傾向にありますが、生成AI活用においては「アジャイルなアプローチ」が重要です。70%の完成度でも実行し、検証と改善を繰り返すことで、効果的な活用が可能になります。

生成AI導入時における現場の不安 ~実践がもたらす気づき~

企業でAIを導入する際の不安としてよく指摘されるのは「誤情報が混じるリスク」「どの範囲までAIに任せられるか不透明」といった点です。

人事の現場では忙しさゆえに生成AIを触る時間が十分に取れず、実際に試していない方が多い印象を受けました。「周りはすでに活用しているのではないか」という不安から、なかなか着手しづらいという声もありました。しかし、今回のワークショップ参加者で普段から積極的にAIを使っている方は少なく、習熟度もほぼ同じでした。一緒に手を動かすことで「使ってみないとわからない」という気づきを得やすかったようです。

自社で生成AI活用を広げるためのポイント ~本質は「対話」ではなく「生成」~

生成AIを「対話AI」と誤解し、検索ツールの延長として使う人が多いです。しかし、本質は「対話」ではなく「生成」です。この生成の特性を理解することで、活用の幅が大きく広がります。

今後、生成AIはより多様なデータ形式に対応し、PDFだけでなく画像や音声の解析・生成も可能になります。たとえば、採用面接においてAIが候補者の適性を分析し、人事担当者に最適な質問を提示するような活用も想定されます。

企業の独自データ(一次情報)と生成AIを連携させ、特化した活用を進めることがポイントです。また、生成AIが処理できるのはデジタル化されたデータのみであり、十分な業務データが蓄積されていない環境では活用が難しいです。そのため今後は、データ基盤を統合し、部門横断で管理・活用しながら、生成AIと連携させる必要性が高まるでしょう。

まとめ|身近な業務から生成AI導入の第一歩を

本ワークショップを通じて、生成AIの本質を理解し、実際の業務での活用方法について考える機会を提供できたことは、大きな成果でした。特に「まずは試してみること」「小さな成功体験を積むこと」の重要性を共有し、今後の生成AI活用を広げるうえでの力強い後押しができました。

人事業務における生成AI活用の可能性は無限に広がっています。まずは身近な業務から試し、試行錯誤しながら活用を広げていくことが、生成AI導入の第一歩です。

今後もより実践的で参加者同士が学び合えるワークショップを企画し、企業のAI活用における不安や課題を解消しながら、新たなアイデア創出に貢献していきたいと考えています。どうぞご期待ください。


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この記事を書いた人

ライター写真

袋瀬 淳(Fukurose Jun)

2008年、大手不動産会社へ入社。企業の寮・社宅運用のソリューション 営業、コンサルタントとしてキャリアをスタート。 導入コンサルティング、および、導入後のカスタマーサクセス支援を通じ、 企業の業務改革に従事。2020年、Works Human Intelligence入社。保守コンサルタントを歴て、多くの企業を見てきた経験を活かし、人事全体の事例・トピックスの研究・発信活動を行っている。

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