株式会社Works Human Intelligence(本社:東京都港区、代表取締役最高経営責任者:安斎富太郎、以下 WHI)は、統合人事システム「COMPANY」のユーザーである大手法人を対象に、働き方の変化が企業のジョブローテーションに与える影響の調査を実施し、39法人から回答を得ましたので調査結果をお知らせします(調査期間:2022年8月10日~2022年9月16日)。 

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本調査の背景

岸田首相よりジョブ型の職務給中心の給与体系への移行を促す指針を作成する意向が示され、日本企業において雇用システムを変えようとする動きが見受けられるようになりました。
従来、大企業を中心に広く日本企業では、メンバーシップ雇用を実施し、従業員の育成、適材適所の実現等を目的として、従業員に一定の期間(スパン)で多くの部署や支店を経験させ、会社主導で計画的に従業員の配置転換を行う、ジョブローテーションの実施が主流でした。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大後、在宅勤務の導入が進む等働き方が変化し、それに伴い、ジョブローテーションによって発生する転居を伴う異動(転勤)や単身赴任を見直す企業が出てきました。在宅勤務によって、場所を問わず働くことも可能になったため、転勤や単身赴任に対する理解が得にくくなっていることが背景として考えられます。
働き方の変化する中での企業のジョブローテーションの実態を調査し、今後の制度、施策立案の一助としていただくために本調査を実施いたしました。


 

ジョブローテーションに関する調査結果概要

1.   ジョブローテーションを行っている企業の割合は76.9%と、7割以上の企業で実施。
ジョブローテーションを行う目的で最も多かったのは「幅広く業務を経験することで、広い視野を養ってもらうため」であった。
2.    異動に関して、対象者本人に「拒否権がある」とした企業は9.1%と1割未満で、「条件によっては(拒否権が)ある」とした企業が63.6%。
「条件によっては(拒否権が)ある」とした企業では、拒否できる条件は「家族、近親者の都合」や「本人の体調、精神面の不調」とやむをえない理由であれば拒否できるという回答がほとんどだった。
3.    ジョブローテーションによって転勤が発生する企業の割合は80.0%
転勤についての今後の意向は「現状維持」が50.0%と約半数を占めた一方で、16.7%の企業は転勤を「減らしていく」と回答しており、一部企業において転勤を見直す動きが見られる。
4.    新型コロナウイルスの感染拡大前と現在では、ジョブローテーションの数は「変わらない」の回答が83.3%を占め、新型コロナウイルスの感染拡大によって、在宅勤務が導入される等働き方に変化があったものの、ジョブローテーションの実施にはほとんど影響していないという結果だった。

 

調査結果

1.ジョブローテーションを行っている企業の割合は76.9%と、7割以上の企業で実施。ジョブローテーションを行う目的で最も多かったのは「幅広く業務を経験することで、広い視野を養ってもらうため」であった。

Q1-1.ジョブローテーションの実施有無(n=39、単一選択) 

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Q1-2.ジョブローテーションを行う理由・目的(n=30、複数選択)

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ジョブローテーションの実施状況については、「行っている」と回答した企業は76.9%で、7割以上の企業において会社主導で計画的に従業員の配置転換を行っている状況でした。
ジョブローテーションを行う理由・目的は、「幅広く業務を経験することで、広い視野を養ってもらうため」が最も多く、ジョブローテーションを行っている全ての企業が選択しており、人材育成を主な目的として実施されていることがわかります。

 

2.異動に関して、対象者本人に「拒否権がある」とした企業は9.1%と1割未満で、「条件によっては拒否権がある」とした企業が63.6%。「条件によっては拒否権がある」とした企業では、拒否できる条件は「家族、近親者の都合」や「本人の体調、精神面の不調」とやむを得ない理由であれば拒否できるという回答がほとんどだった。

 

Q2-1.ジョブローテーションでの異動に対する、本人の拒否権の有無(n=22、単一選択)

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Q2-2.ジョブローテーションによる異動を拒否できる理由(n=16、複数選択)

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会社主導の配置転換に対して従業員本人に拒否権があるかについては、対象者本人に「拒否権がある」とした企業は9.1%だったのに対して「条件によっては(拒否権が)ある」とした企業が63.6%、「拒否権がない」とした企業が「27.3%」でした。
「条件によっては(拒否権が)ある」とした企業では、拒否できる条件は「家族、近親者の都合」や「本人の体調、精神面の不調」がほとんどでした。この結果から、やむを得ない理由で異動を拒否することはできるものの、職種、勤務地が本人の希望ではないという理由では異動を拒否できない企業が多いことがわかります。
 

3.ジョブローテーションによって転勤が発生する企業の割合は80.0%だった。転勤についての今後の意向は「現状維持」が50.0%と約半数を占めた一方で16.7%の企業は転勤を「減らしていく」と回答しており、一部企業において転勤を見直す動きが見られる。

Q3-1.ジョブローテーションによって転勤(転居を伴う勤務地変更)が発生するか(n=30、単一選択)

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Q3-2.転勤についての今後の意向(n=24、単一選択)

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ジョブローテーションによって転勤が発生することがある企業の割合は80.0%を占めました。
転勤についての今後の意向は「現状維持」が最も多く50.0%と約半数を占めており、本調査では働き方が変化する中、転勤の廃止が大きな流れとなっているとは言えない結果でした。一方で16.7%の企業(4法人)は転勤を「減らしていく」と回答しており、一部企業において転勤を見直す動きが見られます。
 

4.新型コロナウイルスの感染拡大前と現在では、ジョブローテーションの数は「変わらない」の回答が83.3%を占め、新型コロナウイルスの感染拡大によって、在宅勤務が導入される等働き方に変化があったものの、ジョブローテーションの実施にはほとんど影響していないという結果だった。

Q4-1.新型コロナウイルスの感染拡大前と現在とで、ジョブローテーションの数(転勤有無問わず)に変化があったか(n=30、単一選択)

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Q4-2.ジョブローテーションの数が増えたまたは減った理由(記述)

(一部回答抜粋)
▼減った
海外赴任・帰任は、コロナ禍で移動が難しくなり減った
▼増えた
新卒採用を始めたので、ジョブローテーションは新卒採用者3年目までに対応をしているから

 

新型コロナウイルスの感染拡大前と現在でのジョブローテーションの数(転勤の有無問わず)の変化については、「変わらない」の回答が最も多く83.3%を占めました。今回の調査では、新型コロナウイルスの感染拡大によって、在宅勤務が導入される等働き方に変化があったものの、ジョブローテーションの実施状況にはほとんど影響していないという結果でした。
一方で、「減った」理由としては「海外赴任・帰任は、コロナ禍で移動が難しくなり減った」という声もあり、転勤を伴い海外を跨ぐジョブローテーションには影響があることが窺えました。

 

総括(解説:WHI総研 井上 翔平)

一定の期間で職務や勤務地が変わるジョブローテーションは、職務や勤務地を限定しないメンバーシップ型雇用の日本に特徴的な施策です。海外で一般的なジョブ型雇用ではジョブディスクリプションによってあらかじめ職務内容、勤務地を定めて人材を採用しますので、その後、職務や勤務地が頻繁に変わるということは通常ありません。

さらに日本では新卒一括採用が行われていますので、スキルが明確に定まっていない新卒人材の適性の見極め、人材育成の手段としてもジョブローテーションは活用されてきました。本調査でも、7割以上の企業でジョブローテーションが実施されており、その目的は「幅広く業務を経験することで、広い視野を養ってもらうため」と教育的価値が重視されていることがわかりました。

ただジョブローテーションそのものは明文化された制度というわけではなく、各社がその時々の方針や従業員の状況に合わせて運用しています。

最近では従業員が主体的にキャリアを形成していくキャリア自律といった考え方も注目されています。また在宅勤務が普及する中で、転勤を原則廃止し、勤務地を自由とする企業も出てきており、従業員が自ら職務や勤務地を選択することを後押ししていく動きも見られるようになりました。

しかしながら、本調査では、転勤の今後の意向について「現状維持」とする企業が半数であり、転勤を減少させる、廃止するような動きはまだ一部の企業に限られていることがわかりました。またジョブローテーションについての今後の方針や意見では、「経験の幅や人脈の広がり、思考が深まることから、人材育成には必要不可欠」(商社)という意見がある一方で、ジョブローテーションを減らしていく、廃止していくという声は見られませんでした。

ジョブローテーションはその教育的価値が重視され、日本企業に深く根付いていることがわかりましたが、かつてのような経済成長が見込めなくなっている今、従業員も自身のキャリアを会社に任せておけば安心という時代ではなくなってきています。場当たり的で理由が明確でないジョブローテーションは従業員の納得を得られない可能性もあります。

企業は従業員との対話の機会が十分に確保できているか、そしてジョブローテーションの意図、目的、期待する役割を伝えられているか、改めて見直す必要があるでしょう。ジョブローテーションを実施する中で、企業と従業員双方がキャリアに向き合い、その仕事をやる意味、価値を見出す必要が出てきています。

 

●解説者プロフィール

inouesan_hp用.JPG   WHI総研※ 井上 翔平(いのうえ しょうへい)


大学卒業後、銀行の営業、その後調査会社でアンケート調査業務を経験。
2022年1月にWHIへ入社し、現職。当社ユーザー基盤をもとにした調査・分析や、市場トレンドの調査に従事している

 


※WHI総研:当社製品「COMPANY®」の約1,200法人グループの利用実績を通して、大手法人人事部の人事制度設計や業務改善ノウハウの集約・分析・提言を行う組織。


<調査概要>

調査名  :働き方の変化とジョブローテーションへの影響
期間   :2022年8月10日~9月16日
調査機関 :自社調べ
対象    :当社製品統合人事システム「COMPANY®」ユーザーである国内大手法人39法人
調査方法 :インターネットを利用したアンケート調査
有効回答数:39


<引用・転載時のクレジット記載のお願い>

本リリース内容の転載にあたりましては、「Works Human Intelligence調べ」という表記をお使いいただきますようお願い申し上げます。
本記事のグラフの内訳は、小数点第一位まで表示しています。そのため、端数処理の関係で内訳の和が100%にならない場合がございます。
なお、本調査では他にも「異動に関する各社の方針や運用詳細」「ジョブローテーションの実施対象や期間」「在宅勤務の実施状況」等に対する回答も得ております。詳細レポートをご要望の方は、当社ホームページのお問い合わせフォームよりご連絡ください。
https://www.works-hi.co.jp/contact

WHIでは引き続き、大手法人の人事トレンドや業務実態について調査をしてまいります。

 

WHI調査レポートとは ~HR領域における大手法人の実態を調査~

当社の製品・サービスは、約1,200の日本の大手法人グループにご利用いただいており、そのほとんどが当社のユーザー会「ユーザーコミッティ」へ加入しています。オンライン会員サイトをはじめとしたユーザーコミッティのネットワークを通じて、当社では適宜、社会・経済情勢に合わせた諸課題について調査を実施。その結果を製品・サービスに反映するとともに、ユーザー法人様・行政機関・学術機関への還元を行っています。
(ユーザーコミッティについてはこちら https://www.works-hi.co.jp/service/user-committee

 

WHIについて

WHIは大手法人向け統合人事システム「COMPANY」の開発・販売・サポートの他、HR関連サービスの提供を行っています。「COMPANY」は、人事管理、給与計算、勤怠管理、タレントマネジメント等人事にまつわる業務領域を広くカバーしており、約1,200法人グループへの導入実績を持つ、ERP市場人事・給与業務分野シェアNo.1※の製品です。
私たちは、日々複雑化・多様化する社会課題に対してあらゆる「人の知恵」を結集し解決に取り組み、すべてのビジネスパーソンが情熱と貢献意欲を持って「はたらく」を楽しむ社会を実現します。

※2020年度 ERP市場 - 人事・給与業務分野:ベンダー別売上金額シェア 
出典:ITR「ITR Market View:ERP市場2022」

* 会社名、製品名等はそれぞれ各社の商標または登録商標です。
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この記事に関するお問い合わせ先

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広報(担当:羽鳥、北村)

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