管理職育成の課題を解決!|階層別の研修カリキュラムとその他3施策を紹介

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最終更新日 2025年2月4日

管理職育成の課題を解決!|階層別の研修カリキュラムとその他3施策を紹介

管理職に求められる役割やスキルは多岐にわたります。管理職育成は、研修やその他の施策を通じて効果的に行う必要がありますが、その内容に悩む企業は少なくありません。

本記事では、管理職育成に役立つ研修カリキュラムの例と、研修以外の施策について解説します。

企業の管理職育成における課題とは

管理職は経営層と現場を繋ぐ、組織の要(かなめ)となるポジションです。管理職のパフォーマンスは会社の業績やチームの成果に影響を与えるため、管理職育成は、企業の中長期的な競争力を高めるうえでも重要です。

しかし、多くの企業が管理職の育成に課題を感じています。

一般的な管理職の定義

一般的に管理職は、チームや部門のマネジメント業務を担うポジション(係長、課長、部長等)を指し、その業務内容や権限の範囲、役職名等は企業によって異なります。

管理職はチームや部門等の組織を率いる立場として一定の決裁権を持ち、その裁量と責任において組織の管理を任されます。

管理職の具体的な役割は以下の通りです。

・組織の戦略立案や目標設定
・目標達成に向けた業務管理
・予算管理
・労務管理
・部下の指導、育成、評価

管理職と他の社員(一般社員や主任、リーダー)は、権限や責任の範囲に違いがあります。

一般社員の主な役割は、上司にあたる管理職から任された特定の業務を遂行することです。基本的に、一般社員に与えられる権限と責任は、自身が担当する業務の範囲に限定されます。

主任やリーダーは役職者ではありますが、決裁権は与えられていないことが多く、一般的に管理職にはあたりません。主にチームの調整役のようなポジションを担い、プレイヤーとして業務を遂行しながら、管理職のサポートや一般社員の指導等を行います。

管理職に求められるスキル

一般社員やリーダー層との役割の違いから、チームや部門を率いる管理職には様々なスキルが求められます。本項では、企業の管理職に必要とされることが多いスキルの例を、3つに分けてご紹介します。

ヒューマンスキル(対人能力)

良好な対人関係を築き、相手に動いてもらうための能力です。目標達成に向けて組織をまとめたり、他部門や取引先との関係を円滑にしたりするためにも、欠かせないスキルといえます。

▼具体例
・コミュニケーションスキル
・ヒアリングスキル
・プレゼンテーションスキル
・リーダーシップ

テクニカルスキル(業務遂行能力)

業務の遂行に必要な知識や技術です。組織の業務管理や部下の指導を行ううえで、現場の実務に関する専門的なノウハウが求められます。

▼具体例
・業界や商品・サービスの知識
・リサーチスキル・アナライズスキル
・アドミンサポートスキル
・ライティングスキル

コンセプチュアルスキル(概念化能力)

ものごとの本質を見極める能力です。複雑な状況下でも問題の本質を捉え、有効な戦略や解決策を導き出す際に必要とされます。

▼具体例
・ロジカルシンキングスキル(論理的思考力)
・ラテラルシンキングスキル(水平思考力)
・クリティカルシンキングスキル(批判的思考力)
・広い視野でものごとを捉える力(俯瞰力)

企業が抱える管理職育成の課題

先述の通り管理職には幅広いスキルが求められますが、現状として、多くの企業が管理職候補者のスキル不足に悩みを抱えています。

厚生労働省の調査結果(※1)によると、管理職の登用・育成において、企業は「管理職候補者の能力・資質にムラがある」ことを最も課題に感じています。厚生労働省は、このことを企業の共通課題であると指摘しました。

また別の調査では(※2)、近年の管理職に不足している能力・資質について、以下の回答が目立ちました。

・部下や後継者の指導、育成力(傾聴、対話力)61.7%
・リーダーシップ、統率、実行力 43.3%
・新たな事業や戦略、プロジェクト等の企画・立案力 40.9%

(※1)参考:厚生労働省. “第II部 働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について”. 平成30年版 労働経済の分析 -働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について-
(※2)参考:厚生労働省. “第2章 企業における人材マネジメントの動向と課題”. 平成26年版 労働経済の分析 -人材力の最大発揮に向けて-


企業が感じている課題を踏まえ、次章では管理職の育成に有効な研修をご紹介します。

【役職クラス別】管理職研修のカリキュラム例

一般的に、管理職は役職クラスに応じて「初級管理職」「中級管理職」「上級管理職」の3階層に大別されます。

▼管理職の階層例
・初級管理職:係長や課長補佐クラス
・中級管理職:課長クラス
・上級管理職:部長クラス

それぞれ統括する組織の規模や役割・責任の範囲に違いがあるため、管理職研修は階層別にカリキュラムを構成し、実施することが望ましいです。

ここからは、階層別に有効な研修のカリキュラム例をご紹介します。

初級管理職向けの研修

初級管理職研修は、主に管理職に昇進したばかりの社員や管理職候補者が対象です。
新任管理職はプレイングマネジャーとしての役割を期待されることも多く、プレイヤー視点を持ちながら、目標達成に向けて組織をマネジメントするスキルが求められます。

新任管理職向けのカリキュラム例は以下の通りです。

▼研修のゴール
・プレイヤーから管理職への意識転換を促す
・マネジメントスキルやリーダーシップを養う
・部下の指導・育成スキルを養う

▼研修のカリキュラム例
・部下とのコミュニケーション方法
・管理職に求められる役割・スキル
・組織の目標設定と進捗管理
・労務管理やコンプライアンスの基礎知識
・部下の評価とフィードバック

新任の管理職は部下とのかかわり方でつまずくことがあるため、コミュニケーションに関するカリキュラムがおすすめです。指導力や育成力を早期に養うことで、企業課題として先述した「部下や後継者の指導、育成力」の改善が期待できます。

中級管理職向けの研修

課長クラスに相当する中級管理職は、経営層と現場の橋渡し役を担い、経営方針に基づいて管轄組織の業務管理や部下の育成を行います。新任管理職と比較してマネジメント業務の比重が大きいため、中級管理職研修にはマネジメントスキルやリーダーシップを高める内容が適しています。

中級管理職向けのカリキュラム例は以下の通りです。

▼研修のゴール
・マネジメントスキルやリーダーシップ、戦略的思考を強化する
・次期上級管理職候補としての意識を高める

▼研修のカリキュラム例
・中規模組織のチームビルディング
・ヒト・モノ・カネ・情報のマネジメント
・部下のコーチングとモチベーション管理
・ロジカルシンキングや戦略的思考
・リスクマネジメント

先述の企業課題に対しては、部下の指導・育成に役立つスキルをさらに強化するほか、戦略的思考を鍛える研修が有効でしょう。

上級管理職向けの研修

部門のトップを任される上級管理職は、部門全体の目標達成に向けた戦略立案や組織の設計・運営を担います。経営者視点で戦略的に組織を率いるため、高度なスキルや知識を身に付ける必要があります。

上級管理職向けのカリキュラム例は以下の通りです。

▼研修のゴール
・経営視点での戦略立案および部門全体を牽引するスキルを磨く
・次期経営幹部候補としての高い視座を養う

▼研修のカリキュラム例
・経営環境の把握・分析手法
・経営視点の組織マネジメント
・経営資源の配分と有効活用
・戦略的な人材育成・人材配置

ここまでで説明したように、管理職研修は各階層の特性に合わせたカリキュラム設計が重要です。

さらに、研修以外の施策を併用することで管理職育成の効果をより高められます。

研修以外で管理職を育成する施策3例

本章では、研修以外で管理職を育成する3つの施策をご紹介します。

施策1:管理職に必要な役割やスキルを明示する

管理職に必要な役割やスキルは高度で幅広いため、社内での立ち回りに悩んだり、身に着けるべきスキルを迷う社員は少なくありません。特に新任管理職は、求められるものがこれまでと大きく変わることに戸惑いを覚えやすいでしょう。

そこで、自社の管理職に求める役割や職務内容、スキル等を、ジョブディスクリプション(職務記述書)で明確化することをおすすめします。これを社内に広く周知することで、管理職は自身のとるべき行動がわかり、将来の管理職候補にも早期に管理職の役割を認識させられます。

施策2:昇格前に多様な業務を経験させる

管理職のスキル不足や、計画的な育成ができていないという課題を改善するには、管理職候補者を早期に選抜し、昇格前に多様な業務を経験させることが有効です。

厚生労働省は、将来の管理職や経営幹部の育成を計画的かつ効果的に行うための施策として、候補者の早期選抜と育成を挙げています(※3)。早期選抜を行う企業では以下のような施策を実施し、管理職の早期育成に繋げているとしています。

・多様な経験を積むため、優先的に配置転換を行う(国内転勤含む)
・特別なプロジェクトへの参加や中枢部門への配置等を通じて、重要な仕事を経験させる
・経営幹部との対話の場や、幹部から直に経営哲学を学ぶ機会を与える

(※3)参考:厚生労働省. “第2章 企業における人材マネジメントの動向と課題”. 平成26年版 労働経済の分析 -人材力の最大発揮に向けて-

施策3:管理職のサポート体制を整える 

幅広い役割を担う管理職は業務量が増大しやすいため、安定したサポート体制の整備も重要です。厚生労働省は、特に業務負荷が重い課長クラスの負担軽減策として、次のような施策を挙げています(※4)

・プレイヤー業務を減らし、マネジメント業務や部下指導・育成に取り組める環境を組織的に整える
・管理職のやる気や意欲を高めるような精神的な支援を充実させる

また、管理職の自律的な成長を支援するためには、OFF-JT(職場外研修)の強化も有効です。

(※4)参考:厚生労働省. “第2章 企業における人材マネジメントの動向と課題”. 平成26年版 労働経済の分析 -人材力の最大発揮に向けて-

まとめ:「研修+施策」で管理職を育成しよう

企業の中枢を担う管理職の育成は企業共通の課題です。管理職に求められる幅広いスキルを習得・向上させるには、管理職研修を階層別に実施するほか、自社の管理職に求める役割を明確にすることや、昇格前に様々な職務経験を積ませる等の施策も有効です。

研修と研修以外の施策を併用することで、効果的に管理職を育成しやすくなるでしょう。本記事でご紹介した施策例を参考に、自社に合った育成計画を検討してください。
 

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