住民税特別徴収税額通知とは、毎年5月頃、前年の所得をもとに自治体が計算し決定した住民税の金額を納税者に知らせる書類です。
税制改正により、2024年から納税義務者用(従業員用)は電子配布の選択が可能となりました。
本記事では、「住民税特別徴収税額通知」に関する法改正内容と、電子化の方法を解説します。
住民税特別徴収税額通知の電子化を検討している、電子化してみたいが踏みとどまっている…といった人事の方はぜひ参考にしてください。
目次
住民税特別徴収税額通知とは
「住民税特別徴収税額通知」とは、給与所得者の住民税を会社が給与から天引き(特別徴収)し、代わりに自治体へ納付するために、自治体から会社(事業主)に特別徴収義務者の税額を通知することです。
特別徴収は、会社が従業員の給与から毎月住民税を差し引き、翌月10日までに自治体へ納付する制度で、給与所得者は原則としてこの方法で住民税を納めます。
住民税特別徴収税額通知書は、自治体が前年の所得や控除をもとに計算した住民税額を通知するもので、「特別徴収義務者用(事業主用)」と「納税義務者用(従業員用)」の2種類があります。
①事業主用の通知書:
複数の従業員の住民税額が一覧で記載され、会社はこれに基づいて給与から税額を控除
②従業員用の通知書:
前年の所得や控除内容、納税額の詳細が記載されており、本人が自分の住民税額を確認するために使用
住民税特別徴収税額通知に関する業務
毎年1月31日までに、事業主は給与支払報告書を自治体に提出します。
この給与支払報告書の内容を受けて、毎年5月頃、自治体から事業主に、各従業員から徴収する税額が通知されます。
人事部門で対応すべき主な業務は次の2点です。
①事業主は、届いた特徴通知のうち特別徴収義務者向けのデータを用いて従業員の天引き額を決定し、6月から翌年5月までの給与で1年かけて天引きします。
②事業主は、地方税法に基づき5月31日までに届いた特別徴収税額通知のうち、納税義務者向けの書類を各従業員に配布します。
2024年スタート 住民税特別徴収通知の電子データ受け取り(電子化)とは
住民税特別徴収税額通知には「特別徴収義務者用(事業主用)」と「納税義務者用(従業員用)」がありますが、2024年度よりこれまで書面で配布されていた「納税義務者用(従業員用)の税額通知を、電子データで受け取れるようになりました。
紙で配布していた住民税税額通知書を電子配布することで、従業員はPCやスマートフォンなどから税額通知書の確認ができるようになります。
<補足>電子データ(副本)の廃止
「特別徴収義務者用(事業主用)」は、従来より電子データで受け取り、給与計算システムへ取り込むことで給与天引きが可能でしたが、2024年から電子データ(副本)の配布が廃止されます。事業主は、書面または電子データのどちらかを選択することとなります。
住民税特別徴収税額通知を電子化するメリットは?
住民税特別徴収税額通知の納税義務者用通知を電子化する最大のメリットは、紙業務の廃止が可能な点です。
住民税は地方公共団体に納付する税金です。そのため従業員が生活している各地域の地方公共団体から特別徴収税額通知が届きます。
つまり、全国に事業所や店舗・支店がある場合などは特に、従業員の住む自治体の数だけ書類が郵送されてくることになり、対応がより煩雑になります。
そして受け取った通知書を、各従業員の自宅へ郵送するため、封入作業の負荷や郵送費が発生します。
通知の電子化により、紙運用で発生する紛失や誤送付のリスクを軽減できます。
住民税特別徴収税額通知 電子化後の業務フロー
この章では、住民税特別徴収税額通知を電子化した場合の業務フローについて説明します。大きく以下の4ステップに分けられます。
Step1 納税義務者用通知の電子データでの受け取りを選択
毎年1月31日までに実施する、給与支払報告書の提出時に、「納税義務者用通知」の電子データ受け取りを選択します。
受け取り方法の選択は法人単位です。
事業所ごとや従業員ごとに受け取り方法を選択することはできません。
Step2 eLTAXからZipファイルをダウンロード
市区町村単位で生成されたファイルをeLTAXからダウンロードします。
Step3 従業員に2種類のファイルを配布
「納税義務者用通知」と「パスワード取得WebサイトURL通知」を従業員ごとに分類し、
従業員に電子的方法(社内システム、メールなど)で配布します。
Step4 従業員が「納税義務者用通知」を開封
従業員はeLTAX Webサイトからパスワードを取得し、「納税義務者用通知」を開封します。
Point 電子的方法で配布できない従業員への対応
電子的方法で配布できない従業員に対しては、以下2つの方法で対応可能です。
①媒体(USBメモリなど)での配布
②従業員に代わって「納税義務者用通知」を印刷し配布
事前に従業員から同意を取得したうえで、事業者がパスワードを取得し、通知を開封、印刷・封緘し配布します。
住民税特別徴収税額通知を電子化する際の注意点3つ
一方で、住民税特別徴収税額通知を電子化する際にはいくつかの注意点があります。ここでは、主なものを3つ挙げます。
1.従業員に配布する電子データの通知書はZipファイルになっている
従業員にファイルを配布した後、従業員は1つのPDFファイルから専用Webサイトにアクセスしてパスワードを取得し、もう1つのZipファイルを解凍して、PDFの納税義務者用通知を閲覧します。
スマートデバイスでは通常、Zipファイルを解凍できません。スマートデバイスでの閲覧を想定している従業員には解凍アプリのインストールを案内する必要があります。
さらに、通知書のZipファイルは「AES256 暗号化方式」で圧縮・暗号化されています。
AES256暗号化方式はWindows標準機能では復号できないため、WindowsPCを利用できるユーザであっても解凍用アプリのインストールが必要となるでしょう。
上記の通り、配布ができても、実際にファイルを開くためには、ひと手間かかる可能性があります。
2.紙か電子データかどちらかしか選択できない
給与支払報告書を提出するタイミングで企業は住民税特別徴収税額通知を「紙で受け取る」か「電子で受け取る」かを選択します。この選択は二者択一であり「紙も電子も受け取る」ことはできません。
一部の従業員のみ紙で配布したい場合には、電子で受け取ったデータをもとに人事部でファイルの解凍・印刷・配布を実施する手間が発生してしまいます。
3.電子データ化しても通知書の管理は必要
住民税特別徴収税額通知を電子データ化した場合も、ファイルの精査や仕分け、退職者や休職者への対応など、通知書配布前の管理業務は必要です。
電子化に対する企業の反応や対応状況は?
弊社製品「COMPANY」をご利用中のユーザに調査※した結果、2024年度に住民税特別徴収税額通知の電子化を行った企業は、一部電子化を含め44.5%(96名)でした。
また、電子化した法人に、紙での受取・配布時と比較した工数削減割合を尋ねたところ、半数以上の法人が「削減割合50%超」と回答しました。
※「住民税特別徴収税額通知の電子化対応に関するアンケート」
(対象) 「COMPANY」をご利用中のお客様、(回答期間) 2024年8月14日~9月11日、(調査方法) インターネットを利用したアンケート調査、(回答数) 205社 216名
「COMPANY」の住民税特別徴収税額通知機能 4つのポイント
人事部でeLTAXからダウンロードしたファイルを「COMPANY」に取り込むことで、従業員への電子配布が可能です。従業員は配布されたファイルを、PCやスマートデバイス上で確認できます。「COMPANY」を活用した全体像は次の図の通りです。
参考:eLTAXホームページ 仕様公開
個人住民税特別徴収税額通知(納税義務者用)電子化に係る特別徴収義務者向けドキュメントの公開について | eLTAX 地方税ポータルシステム
さらに、「COMPANY」の住民税特別徴収税額通知機能に備わる4つのポイントをご紹介します。
Point①税額通知のアップロードから、配布方法の設定、進捗管理までを一つの画面で実施可能
使いやすさにこだわったUIで、住民税特別徴収税額通知に関するすべての人事業務を行えます。
受領した税額通知のアップロード、配布方法の設定、自治体からの受領状況・従業員への配布状況の確認、取込の結果対応が必要な人のチェックなど、一連の業務が一つの画面で完結します。
Point②税額通知書の配布に関する進捗管理が可能
COMPANYで管理している個人情報や給与支払報告書の情報をもとに、住民税特別徴収税額通知書の進捗管理が可能です。
通知書がまだ届いていない自治体を管理し「未着自治体一覧」として表示できます。
自治体から通知書が届き、「COMPANY」にアップロードすると、自動で内容を判別して一覧化し、煩雑なデータ管理をサポートします。
・退職者・非居住者・休職者などの特別対応が必要となり得る従業員の一覧
・給与支払報告書記載の自治体や受給者番号と合致しない、イレギュラーな通知書一覧
・自治体から届くはずが含まれていなかった不足通知書の一覧
・期中の変更通知や、過去年度分の変更通知の一覧
Point③Zip解凍ソフトのインストールが不要
従業員は「COMPANY」からeLTAXサイトを経由してパスワードを取得でき、そのパスワードを画面に入力することで、「COMPANY」上から税額通知書を確認可能です。
PCに加え、スマートデバイスからのアクセスでも、Zipファイルの解凍ソフトをインストールすることなく税額通知書の内容を確認いただけます。
▼照会画面(一覧)
▼eLTAXサイトにてパスワードを取得したら画面上で入力
▼スマートフォンからも閲覧可能
Point④従業員ごとに税額通知書の配布方法を選択できる
「COMPANY」にアクセスできない従業員にむけて、メール送付や紙での印刷など、税額通知書の配布方法がフレキシブルに設定可能です。
おわりに
住民税特別徴収税額通知の電子化は今年が2年目です。いまだ電子化に踏み切れていない企業も見られますが、より「COMPANY」の機能を使いやすくアップデートすることで、少しでも人事部門の負担軽減に貢献していきます。
また、WHIは必要とされる機能を開発するだけではなく、COMPANYのお客様である多くの大手法人から寄せられた声を行政に届け、制度自体の改善提案にも取り組んでいます。活動の詳細については以下の記事でご紹介しておりますので、こちらもぜひご覧ください。
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