株式会社Works Human Intelligence(本社:東京都港区、代表取締役社長最高経営責任者:安斎富太郎、以下 ワークスHI)は、統合人事システム「COMPANY」のユーザーである大手法人を対象に中高年人材(45歳~59歳)の働き方に関する状況調査を実施し、54法人から回答を得ました(調査期間:2021年8月13日~9月30日)。各法人における中高年の雇用制度の状況や課題感について調査結果をお知らせします。

 

本調査の背景

2021年4月に改正された高年齢者雇用安定法では、定年引き上げを含む70歳までの就業機会確保が努力義務となりました。企業の人材活用に関しては、人を資本と捉え価値向上に努めるべきという人的資本経営への注目も高まる中で、従業員がより長くパフォーマンスを発揮し続けるためのしくみ作りに関心が高まっています。中でも、質・量ともに企業の中核を担い、企業価値に大きな影響を与える45歳~59歳の中高年人材の活用は急務として捉えられています。

そのため本調査では、中高年人材の処遇について現在企業が抱えている課題やその背景の把握を目的とし、調査を実施しました。中高年人材のこれからの働き方を考える一助になれば幸いです。

※本調査では調査対象となる「中高年人材」について、厚生労働省の「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」等を参考とし、45歳~59歳までの正社員を対象とします。

 

調査結果概要

1.     人事担当が考える中高年人材の課題、1位は「自律的なリスキル(学び直し)の必要性」
2.     45歳以上の正社員に対してキャリア形成や学び直しのための研修制度が「ある」と回答した企業は22.2%
3.     キャリア制度に関して、45歳以上の正社員が自ら仕事を選択するしくみ(社内公募、コース選択等)が「ない」法人は77.8%、キャリアの複線型制度が「ない」法人は74.1%
4.     周囲の社員を巻き込む課題は、1位「スキルや知識、経験の継承」

 

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調査結果

1. 人事担当が考える中高年人材の課題、1位は「自律的なリスキル(学び直し)の必要性」

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中高年人材の状態変化とサポートに関する各項目に対して、課題感の有無を聞いた結果、「課題感あり」の回答が多い順に、1位「自律的なリスキル(学び直し)の必要性」、2位「教育・研修、学びの場の少なさ」、3位「キャリア支援の不足」となり、中高年人材の学びや、キャリア支援の不足に対する課題感の存在が浮き彫りになりました。

(※5件法で聴取し、「強くそう思う」「そう思う」の合計を「課題感あり」として集計)

 

「特に課題感が強いもの」について、自由回答を募集したところ、リスキルや役職定年(ポストオフ)後のモチベーションに関するもの等、以下のような回答が得られました。

・50歳以上の方に対する教育研修の機会があまりないので充実させたい。 
・専門性やスキルが時代によって変わっているにもかかわらず、昔取った杵柄や過去の成功体験に引きずられている人がいる。
・40代から50代にかけて、ライン管理職となっている者が多く、多忙のために自己研鑽の時間が取れない。
・役職定年後の管理職のモチベーション維持が課題。特に定年延長(65歳)されれば当該期間が10年となるため、無視できない。
・役職定年後に求められているミッションや役割を理解する機会がないまま業務に就いている状態であり、人によってはモチベーションが低下したり、事業所内のお荷物状態になってしまっている社員が出てきている。
・滞留者のリテンション。

 

2. 45歳以上の正社員に対してキャリア形成や学び直しのための研修制度が「ある」と回答した企業は22.2

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研修制度について、45歳以上の正社員に対してキャリア形成や学び直しのための研修制度が「ある」と回答した企業は22.2%でした。1の結果によると自律的なリスキルの必要性に課題を感じているものの、中高年人材向けの研修制度の導入はあまり進んでいない様子がうかがえます。

 

3. キャリア制度に関して、45歳以上の正社員が自ら仕事を選択するしくみ(社内公募、コース選択等)が「ない」法人は77.8%、キャリアの複線型制度が「ない」法人は74.1%

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キャリア制度として、45歳以上の正社員が仕事を自ら選択するしくみ(社内公募、コース選択等)が「ない」と回答した法人は77.8%、キャリアの複線化制度が「ない」と回答した法人は74.1%と、従業員自らがキャリアを選択する制度の導入はまだあまり進んでいないことがうかがえます。

 

4. 周囲の社員を巻き込む課題は、1位「スキルや知識、経験の継承」

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周囲の社員への影響に関する項目に対して、課題感の有無を聞いた結果は、「課題感あり」の回答が多い順に、1位「スキルや知識、経験の継承」、2位「次世代の中高年層に対する打ち手」、3位「評価や昇格の年功化、中心化傾向」となり、中高年人材の持つ経験に由来するノウハウ継承については多くの法人が課題を感じている結果になりました。

(※5件法で聴取し、「強くそう思う」「そう思う」の合計を「課題感あり」として集計)

 

「特に課題感が強いもの」について、自由回答を募集したところ、以下のような回答が得られました。

・熟練者から若手社員へのスキル継承が実地作業および個々人の力量に偏りがちとなり、結果的に環境(若手社員の優秀さ・定着度合い等)に差が出易い傾向にある状況。
・経験をノウハウにするためのスキルが足りておらず、それが後進の育成、業務におけるイノベーションに繋がっていない。
・後継者の整理ができていない、次世代の管理者の育成・教育が進んでいない。
・同一賃金がうたわれている中での、役職定年者・再雇用者への業務内容
・役職定年者が急増していく中で次世代の管理職候補も少なく、ポスト不足が懸念される。

 

総括(解説:WHI総研シニアマネージャー 伊藤 裕之)

アンケート結果からは多くの企業にとって、中高年社員の自律的なリスキル(学び直し)の実現が必要不可欠と考えられているにもかかわらず、教育や学びの場所の整備、今後のキャリア形成に向けた支援については不足や課題があることがうかがえるため、対策が求められる状況といえるでしょう。

 

《中高年人材の自律的なリスキルの具体的な進め方》

オンラインの研修サービス等自主的な学びの環境の整備や、研修や学習への参加のための金銭面、業務面のサポート、社内公募や副業、兼業といったキャリアの多様性への準備といった制度面のサポートが考えられますが、併せて下記の3点について考慮した実施の検討が望ましいと考えます。

 

①リスキル・学び直しとキャリア形成に対する経営からのメッセージ

まずは、今後のキャリアを見つめ直し、リスキルや学び直しを行うことについて、これからの企業の持続的成長に不可欠であり、何よりも優先すべき事項であると、経営部門から社内外に発信することが第一です。現業が優先となりがちな管理職や従業員に対して、リスキルや本人の意思を尊重したキャリア選択が妨げられないように原則を示します。

 

②本人のモチベーションを加味した学びやキャリアの選択

施策の前に中高年人材の今の仕事を整理して、各人の仕事が会社にどんな価値を生むのか、どんなスキルや経験が必要なのか、そして企業が何を期待しているのかを明確にすべきです。そして、従業員の意識の実態と課題、ギャップを把握したうえで、業務に生かせるリスキルが本人にとってもメリットとなるようなしくみが必要でしょう。具体的には下記のような例が挙げられます。

 

 ・これまでの経験、知見やリスキルの成果を生かした、社内外への発信、ナレッジの提供
 ・リスキルした結果を生かすことができる、新たな業務や事業への参画の機会や社内公募、社内/社外副業等、キャリアや働き方に対する選択肢の提示
 ・リスキルを生かした成果や社内へのナレッジ、知見提供に対する評価、処遇の明確化

 

特に、中高年人材の経験(暗黙知)を企業と次世代人材のナレッジ(形式知)に転換することを評価し、称賛することは大きなモチベーションに繋がるとともに、業務の持続性に貢献するものと考えます。

 

③現場をカバーする制度運用の用意

中高年人材のキャリアや、本人の学び直しへの意思を尊重したことによって、現場の業務や職務に空きが生まれるのであれば、周囲の従業員にとっても業務負荷とネガティブな印象を与えかねません。該当の部門に対して次の異動時期に優先的に配置を行う、リスキルや中高年のキャリア形成にポジティブな影響を与える管理職を昇格や賞与で報いる、という形でメリットを提示し、協力を促すことが必要となるでしょう。

 

以上のように、リスキル、学び直しは単なる教育施策ではなく、全社的な重要課題として捉え、等級制度、評価、処遇、配置といった様々な制度や運用の中で組み込むことが、具体的な成果への第一歩になると考えます。

 

●解説者プロフィール

hiroyukisann.jpg 伊藤 裕之(いとう ひろゆき)
 株式会社Works Human Intelligence WHI総研 シニアマネージャー

 2002年にワークスアプリケーションズ入社後、九州エリアのコンサルタントとして人事システム導入および保守を担当。その後、関西エリアのユーザー担当責任者として複数の大手企業でBPRを実施。現在は、17年に渡り大手企業の人事業務設計・運用に携わった経験と、約1,200のユーザーから得られた事例・ノウハウを分析し、人事トピックに関する情報を発信している。


※WHI総研:当社製品「COMPANY」の約1,200法人グループの利用実績を通して、大手法人人事部の人事制度設計や業務改善ノウハウの集約・分析・提言を行う組織。

 

<調査概要>

調査名 :中高年人材の働き方に関するアンケート
期間  :2021年8月13日~9月30日
対象  :当社ユーザーである国内大手法人54法人   
調査方法:インターネットを利用したアンケート調査

 

<引用・転載時のクレジット記載のお願い>

本リリース内容の転載にあたりましては、「Works Human Intelligence調べ」という表記をお使いいただきますようお願い申し上げます。
なお、本調査では他にも「役職定年制度について」「中高年人材の人員構成と処遇、パフォーマンスのギャップについて」等に対する回答も得ております。
詳細レポートをご要望の方は、当社ホームページのお問い合わせフォームよりご連絡ください。

 

ワークスHIでは引き続き、大手法人の人事トレンドや業務実態について調査をしてまいります。

 

ワークスHI調査レポートとは ~HR領域における大手法人の実態を調査~

当社の製品・サービスは、約1,200の日本の大手法人グループにご利用いただいており、ほぼすべてのユーザー法人様にオンライン会員サイトへのご登録をいただいています。

このユーザーネットワークを通じて、当社では適宜、社会・経済情勢に合わせた諸課題について調査を実施。その結果を製品・サービスに反映するとともに、ユーザー法人様・行政機関・学術機関への還元を行っています。

 

Works Human Intelligenceについて

株式会社Works Human Intelligenceは大手法人向け統合人事システム「COMPANY」の開発・販売・サポートの他、HR 関連サービスの提供を行っています。「COMPANY」は、人事管理、給与計算、勤怠管理、タレントマネジメント等人事にまつわる業務領域を広くカバーしており、約1,200法人グループへの導入実績を持つ、ERP市場人事・給与業務分野シェアNo.1の製品です。

私たちは、日々複雑化・多様化する社会課題に対してあらゆる「人の知恵」を結集し解決に取り組み、すべてのビジネスパーソンが情熱と貢献意欲を持って「はたらく」を楽しむ社会を実現します。

※2019年度 ERP市場 - 人事・給与業務分野:ベンダー別売上金額シェア
出典:ITR「ITR Market View:ERP市場2021」

 

※一部グラフおよび本文を2021年12月27日に修正しております。

* 会社名、製品名等はそれぞれ各社の商標または登録商標です。
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この記事に関するお問い合わせ先

株式会社Works Human Intelligence
広報(担当:羽鳥、若林)

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