賃上げ2026年最新動向!高水準が続く背景と「脱・物価高対応」の動きを解説

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賃上げ2026年最新動向!高水準が続く背景と「脱・物価高対応」の動きを解説

2023年から2025年にかけて、大手企業を中心に相次いだ賃上げ。本格的な実施から4年目となる2026年、各社の動向はどのように変化しているのでしょうか。

本記事では2026年の賃上げを振り返りつつ、2027年以降に予想される企業の動きを解説、考察します。

1分サマリ

・2026年の賃上げ率は5.26%を記録し、3年連続で5%超の高水準を維持
・背景には離職防止や採用強化を目的とした、戦略的な人材投資
・2027年もベースアップの流れは継続しますが、中堅層とのバランスを考慮した賃金カーブの再設計が課題となるケースも
・今後は専門人材への投資や自社の従業員の離職防止のための手当などへの「選択と集中」を行い、経営戦略と連動した投資が求められます

賃上げとは

賃上げとは、企業が従業員に支払う賃金を引き上げることで、大きく「定期昇給」と「ベースアップ」という2つの方法に分けられます。

定期昇給(定昇)とは

企業が定めた基準に沿って定期的に行われる昇給です。主に従業員の勤続年数や年齢、評価結果などに基づいて昇給額が決定されます。

ベースアップ(ベア)とは

全従業員に対して一律で行われるベース(基本給)の底上げです。

最近ではこれらの方法以外にも、株式報酬の導入、手当の増額なども賃上げとして取り上げられており、賃上げの方法は多様化してきているといえます。

2026年の最新賃上げ動向

日本労働組合総連合会(連合)の発表によると、2026年の賃上げ率は5.26%で、2025年に引き続き高水準でした。2025年は、1992年以降最高の賃上げ率でしたが、2026年もほぼ同じ水準を維持しています。

  2023 2024 2025 2026.3.23
賃上げ率(%) 3.58 5.1 5.25 5.26

※平均賃金方式での賃上げ率。2026年は3月23日発表の第1回回答集計結果を使用。

(出所)日本労働組合総連合会 「3年連続5%を上回る高水準の賃上げ!〜2026 春季生活闘争 第1回回答集計結果について〜

大手企業を中心に、業種を問わず組合の要求に対して満額回答、一部では要求を超える賃上げが実施されました。

2026年賃上げの背景

なぜ、3年連続でこれほどまでの高水準が維持されたのでしょうか。その要因は、2023年から変わらず「人材の定着と採用」です。

離職防止と人材定着(リテンション)

帝国データバンクの「2026年度の賃金動向に関する企業の意識調査」によると、賃金改善を実施する理由として「労働力の定着・確保」を挙げた企業は74.3%にのぼりました。

(出所)株式会社帝国データバンク 「2026年度の賃金動向に関する企業の意識調査」2026.2.24

同調査では、「優秀な人財の安定雇用継続、新規採用を行うことで、自社のさらなる基盤強化を図りたいため。」(一般貨物自動車運送)、「従業員の賃金は、コストではなく、資産であり、投資であるため」(ソフト受託開発)という声も、賃金改善の実施理由として挙がりました。

転職市場の活性化によって、人材の定着のために賃金を上げる企業が多かったのではないかと考えられます。また、人材にかけるお金はコストではなく投資であるという考え方のもと、収益が厳しい状況下でも賃上げをする企業も一部見られました。

採用意欲の回復と競争力の強化

さらに同社の別の調査では、2026年度において、正社員の採用予定がある企業の割合が前回調査(2025年2月実施)から1.5ポイント増の60.3%となり、3年ぶりに前の年度を上回りました。

特に大手企業では採用予定がある企業の割合が85.0%(前年度より1.4ポイント増)で、うち29.9%の企業が採用数を「増加する」(前年度より2.2ポイント増)としています。

(出所)株式会社帝国データバンク
2025年度の雇用動向に関する企業の意識調査」2025.3.25

2026年度の雇用動向に関する企業の意識調査」2026.3.23

このように、企業の採用意欲が回復の兆しを見せている中、優秀な人材を採用するためには賃上げが必要との見方が強まっているようです。

物価高への対応

総務省の発表によれば、2月の消費者物価指数(総合指数)は前月比で0.2%下落しています。若干の落ち着きを見せてはいるものの、前年同月比では1.3%上昇しており、物価の上昇は継続中です。特に食料は前年同月比で4.0%上昇しているため、従業員の生活を支えるためにも、賃上げが必要との判断があったと考えられます。

​​​​​​​(出所)総務省 「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)2月分

2027年の賃上げ動向予測

ベースライン底上げのための賃上げは続く

企業が人材の採用や定着に注力するのは、少子化により若年層が減ってきていること、転職市場が活性化していることなどに起因し、これらの傾向は2027年以降も継続すると考えられます。

一方で、これまで上記と同様に賃上げの要因とされていた物価の上昇は、高市政権の物価高対策もあり、2023年~2025年に比べると緩やかになりそうです。

(出所)厚生労働省 「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年1月分結果速報

これらを考慮すると、2027年の賃上げは物価高への対応というフェーズを終え、人材の定着や獲得のためのベースアップに集中すると考えられます。

今後賃金カーブの再設計が必要になるケースも

2027年もベースアップの傾向は続くと考えられますが、全従業員一律のベースアップは企業の人件費負担も重く、相当の資金的余力がなければ継続は難しいでしょう。今後はべースアップの他に、賃金カーブを再設計していく流れも出てくると考えられます。これからどのような形で賃上げが行われるのか、考察してみたいと思います。

中堅層や専門人材確保のための賃上げ

2023年以降の賃上げは採用力強化を意識したものであり、特に新卒採用で多くの人材を確保する傾向がある日本では、新卒初任給の引き上げをベースアップに加えて行うケースも見られました。

これにより、20代後半~30代前半の中堅層と新卒人材との給与の差が小さくなり、一部では逆転してしまう可能性があるため、従業員全体の賃金カーブを再設計する必要性も出てきています。特に中堅層については、転職も多い年代であるため、定着を促すための賃上げを行う企業も増えてくるのではないでしょうか。

また経済産業省によれば、今後AI・ロボットなどの利活用人材が約300万人不足すると言われています。このような専門人材を確保するための賃上げも起こると考えられます。

(出所)経済産業省 「経済産業省の産業人材育成に関する取組について

大手企業に対する「賃上げ促進税制」の終了

賃上げを支援する政府の姿勢にも変化が出ています。2024年度から強化されていた「賃上げ促進税制」ですが、大手企業向けに関しては、当初の予定を前倒しする形で2026年3月末の終了が決定しました。

また、教育訓練費が前年と比較して10%増加している場合は、5%税額控除率がアップする措置もありましたが、これも廃止されることになりました。

(出所)財務省 「令和8年度税制改正の大綱の概要

しかし、2026年3月に企業と組合が妥結した賃上げの多くは、税制優遇が後押ししたものではありません。なぜなら、これらは2026年4月の給与から適用されるものだからです。2026年の賃上げは、企業が自らの資金力で人材に投資するという考えのもと行われていると言えます。

選択と集中を意識した人材投資へ

2026年3月23日、内閣官房・金融庁・経済産業省から 「人的資本可視化指針(改訂版)」が発表されました。その中で述べられているのは、経営戦略を人材戦略へと落とし込み、それに適したKPIを設定するという考え方です。

投資家の関心事項.jpg

人的資本可視化指針(改訂版).jpg

(参考)内閣官房、金融庁、経済産業省 「人的資本可視化指針(改訂版)」を参考にWHIが作成

今後数年間、足元ではベースアップを中心とした賃上げが続くと考えられます。その後は自社の経営戦略にはどのような人材が必要で、そのためにはどのような投資が必要なのか、ストーリーを考えて投資家、従業員、求職者等のステークホルダーに示していく必要があります。

最近では、AIが単純業務や事務作業を代替できるようになったことで、従来そのような業務に従事していた人材を他の業務に再配置する例も出てきました。この流れの中で、企業は将来の人材ポートフォリオを作成し、それを実現するための採用や人材配置、人材投資の計画を可視化することが求められています。「賃上げ」という投資を、どのような仕事、働きに対して行うのか、ストーリーを作らなければなりません。

たとえば建設業では、先述した中堅層やAI人材以外にも、不足する技術者をいかに確保するかといった課題があります。

また転勤が多い企業では、従業員の生活負荷の軽減はもちろん、転勤によって自社の人材が流出しないよう、転勤手当を増額するという選択肢があるでしょう。自社ではどのような人材が必要で、そこにどれだけ投資をするのか、定着のためにはどのような賃上げが必要なのか、議論することが重要です。

まとめ|賃上げは、自社の人材戦略に応じた集中投資へ

2026年の賃上げ動向を振り返ると、これまでの「物価高への対応」というフェーズを終え、「人材の確保と定着(リテンション)」を目的とした投資へ移行していることが分かりました。

今後は一律のベースアップだけでなく、初任給の引き上げに伴う「賃金カーブの再設計」や、AI・専門人材への重点的な配分など、経営戦略と連動した「戦略的賃上げ」が求められます。
2027年以降、企業には「なぜ、どの層に対して、どのような目的で投資するのか」という人的資本経営のストーリーが問われると予測されます。自社に必要な人材ポートフォリオを明確にし、エンゲージメント強化と採用競争力を両立させる賃金体系の構築が、持続的な成長のカギとなるでしょう。

本記事が、自社の賃上げを見直すきっかけになれば幸いです。

この記事を書いた人

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井上 翔平(Inoue Shohei)

2012年、政府系金融機関に入社。融資担当として企業の財務分析や経営者からの融資相談業務に従事。2015年、調査会社に移り、民間企業向けの各種市場調査から地方自治体向けの企業誘致調査まで幅広く担当。2022年、Works Human Intelligence入社。様々な企業、業界を見てきた経験を活かし、経営者と従業員、双方の視点から人事課題を解決するための研究・発信活動を行っている。また、社会保険労務士の資格を所持しており、法改正の解説や労務相談Q&Aの執筆を行っている。

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