テレワークを機に人事労務業務におけるペーパーレス化を促進するためには

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最終更新日 2023年6月6日

テレワークを機に人事労務業務におけるペーパーレス化を促進するためには

 

新型コロナウイルス感染症感染拡大防止のため、多くの企業が在宅勤務/テレワークへと舵を切った中で、企業全体として今まで以上に働き方改革、そしてペーパーレス化が進んだ、という企業も多かったのではないでしょうか。
一方で、うまくペーパーレス化を進め切れなかったがゆえに在宅勤務/テレワークが思うように進まなかった、という企業や、会議はオンラインの会議システムを使って在宅勤務/テレワークができたものの、紙を扱う業務のために完全な在宅勤務/テレワークは実現しなかった、という企業もありました。
そこで本記事では、ペーパーレス化の壁にぶつかっている企業に向けて、ペーパーレス化の実現方法についてお伝えし、より業務効率化を図っていくためのヒントもご紹介していきます。
 

目次

ペーパーレス化の目的と現状
多くの企業がペーパーレス化に踏み切れない理由とその解決方法
  投資対効果をきちんと算出し、メリットを明確にする
  UI/UXが整ったシステムを入れる/部分的にペーパーレスを導入する
  モバイル端末の利用によるペーパーレス化の実現
ペーパーレス化を実現して得られるもう1つのメリット
まとめ

 

ペーパーレス化の目的と現状

皆さんはペーパーレス化の目的をどのように捉えていますか?

・紙の保管場所をなくすこと
・判子業務をなくすこと
・破損/紛失を防ぐこと

等、様々あるかと思います。そして多くの方が、紙で行っていた業務をシステム等に置き換える、という方法をペーパーレス化と認識していると思います。しかしながら、ペーパーレス化を実現する本当の目的は、ただ紙をなくすのではなく、紙がなくなった結果不要な業務がなくなり、業務が効率化・高度化されることにあります。

たとえば、会社で行われる会議が在宅勤務/テレワークによってオンライン会議になると、資料を印刷したり並べたりする作業がなくなり、会議システムを使って画面に映すだけでよくなるため、業務が効率化されます。

しかし詳しく企業の実態を見てみると、年末調整業務のペーパーレス化を実現したい、あるいは、労務関係の申請業務を効率化したい、とは思っているものの、なかなかペーパーレス化の実現までは手が出せていない、思うように進まない、というような事例が多く見受けられます。その理由は何なのか、そしてどのようにすれば解決するのか。具体的な方法について事例を交えながらご紹介していきます。
 

多くの企業がペーパーレス化に踏み切れない理由とその解決方法

ペーパーレス化に踏み切れない理由はいくつかあります。

・システムの導入コストがかかるというデメリットがある
・紙文化が強く根付いていて方法を変えられない
・全社的にITリテラシーが低いためシステム活用が難しい
・ひとり1台PCを持っていない
・社内システムを使わせていない派遣社員やアルバイトが多い

しかし、上記の理由を掲げてペーパーレス化が進まなければ、昨今の世の中の変化や今後の法改正等への対応がどんどん遅れてしまうデメリットがあります。そこで今回は、ペーパーレス化が進まない理由をなくしていくための考え方や方法をお伝えしていきます。
 

投資対効果をきちんと算出し、メリットを明確にする

今まで紙で運用していた業務をシステムに乗せ換えることは、一時的にコストがかかるというデメリットがあります。しかしながら長期的な目線で捉え、これからも紙を使い続ける場合のコストとシステムを入れた後でのコストを比較し、きちんと投資に対するメリットを明確にすることで、この理由は払拭することが可能です。

紙での運用にかかるコストは紙とインクの費用だけだと思っていませんか?

たとえば人事労務関係の申請を行う場合の事例を考えてみましょう。紙の運用だと判子を押して回覧する、という紙の受け渡し作業が発生します。仮に何か気になる点を付箋にメモ書きをして差し戻しをしたとしましょう。すると申請者の手元に戻ってくるまでに時間がかかります。加えて、指摘に質問があった場合、さらに電話で確認を取るといった二重の手間がかかります。提出が完了した後も人事側でシステムへの転記作業が発生します。

この業務フローに慣れていれば気づきにくいものではありますが、「紙の受け渡し作業によるタイムラグ」「電話での指摘内容の確認」「承認内容の転記作業」等の作業は、本来申請作業を行う上では必要のないものです。そして関わった人の工数もすべて紙での運用コストに含まれます。

少し手のかかる方法ではありますが、すべて含めて今かかっているコストと、システムを入れた際に削減されるコストを鑑みて投資に対するメリットを考えてみます。そうすることで、導入コストはかかる、けれども将来的には費用が抑えられるということが見えてくると思います。しかし必ずしもすべてペーパーレス化すればよい、というものでもないでしょう。紙の場合のメリット・デメリットとペーパーレス化した場合のメリット・デメリットを今一度見直してみてください。

UI・UXが整ったシステムを入れる/部分的にペーパーレスを導入する

企業によっては紙を非常に重んじていたり、紙こそ重要、という考える方が多いところもあるかと思います。それゆえシステムに慣れておらず、全体としてITリテラシーが低い、という企業も多いのではないでしょうか。
システムを導入すると大きく運用方法が変わるため反発が大きい、入れ替えたとしても問い合わせが多く逆に負担が増えた、という事例もあるかと思います。

ただ前述の通り、紙での運用には非効率な部分が多くあります。そこで、見た目にわかりやすく操作に迷いにくいシステムを使うことで、ITリテラシーがさほど高くなくてもスムーズな運用を可能にすることができます。
たとえば結婚した場合の申請を考えてみましょう。利用するシステムによっては、いくつかの質問に答えるだけで必要な人事労務関連の申請を洗い出したり,
提出すべき申請が出ていない人に対しては自動でお知らせし、申請画面に不備があればエラーを出したりすることも可能です。このようにUIやUXがわかりやすいシステムであれば、何を提出すべきかわからない申請であっても多少インターネットを触る方であれば問題なく使えるかと思います。

また、どうしても紙での提出を求められる場合であっても、最終の提出物が紙であれば問題ない、という場合もあるかと思います。この場合、最終的に紙で提出するまでの申請内容の提出や差し戻し、修正作業はWEB上で行うことで、紙の利用を最低限に抑えることが可能です。これもまたペーパーレス化のひとつの方法です。無理にすべてをペーパーレス化せず、一部だけペーパーレス化するという方法でも業務効率を上げることができるので、部分的な導入も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

モバイル端末の利用によるペーパーレス化の実現

そもそもひとり1台パソコンを持っていないために電子化も何も進められない、という声も多く伺います。実際に申請を提出する媒体そのものがなければ、紙に頼らざるを得ないと思われがちでしょう。

しかしながら、パソコンを持っていなかったり、そもそも社内システムを使わせていない人が多かったりしても、各個人のモバイル端末等を利用することでペーパーレス化を実現することが可能です。
たとえば、社内システムの一部を外部公開して、各個人のスマートフォンなどから打刻や申請、勤務実績の提出等を行ってもらうことで、タイムカードや紙の勤務実績表をなくすことができます。また、勤怠労務関係のペーパーレス化を進めることで、より多様で自由な働き方、まさに働き方改革の実現も可能になります。

社内システムを一部外部公開することには情報漏洩の可能性のようなの多少のリスクは伴いますが、きちんと管理をしていくことで効率化のメリットを得ることが可能です。
モバイル端末の貸出となると費用がかかるので断念しがちですが、私用の端末からの利用もひとつの案として考えてみてはいかがでしょうか。

ペーパーレス化を実現して得られるもう1つのメリット

ペーパーレス化の実現が業務効率化に大きく関わる話をしましたが、ペーパーレス化を進めることのメリットはもうひとつあります。それは、ただ人事労務関係等の情報を情報として置いておくだけではなく、集まった情報をデータとして活用できるということです。

情報が紙のまま蓄積されていくと情報の照会しかできませんが、情報がWEB上でデータとして保管されていると、それらを分析したり、横ぐしで見たりすることが可能になります。

一般的な個人情報だけでなく、これまで紙で残されていた自己申告や評価に関わるコメント、各人のスキルなども、データとして入力・保管しておくことで、今後のキャリアや異動案を考える際の参考にすることが可能です。

また、たとえば退職願の提出方法もデータにすることで、退職に至る理由の分析にも利用でき、離職率の低下に対して策を打つことが可能になるといった効果があります。このように、今まで紙で集めていた人事労務関係の情報をペーパーレス化して集めることで、テレワークか否かに関わらず、情報活用の幅を広げることが可能です。
ペーパーレス化を皮切りに人事データをビッグデータとして活用し、新たな人事戦略への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

まとめ

新型コロナウイルスにより大きく変化した世の中の働き方。そして働き方の変化を妨げる一因である紙の存在。しかし変化の激しい世の中だからこそ変化させやすいこともあるはずです。

在宅勤務/テレワークを機に更なるペーパーレス化を進めるために必要なことは、
・過去のやり方に縛られず今ある業務を冷静に見つめなおし、部分的にでもペーパーレスを導入すること
・単なる業務効率化に終わらず、情報を「活用する」という意識を持つこと

本記事が、ペーパーレス化が進んでいない企業にとっては少しでもこの在宅勤務/テレワークをきっかけにペーパーレス化へと動き出す方法を模索するヒントに、そしてペーパーレス化が進んでいる企業は更なる情報活用を進めるヒントになれば幸いです。

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