人事パッケージシステム選定の比較・検討ポイントとは?導入の手順から徹底解説

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最終更新日 2023年6月6日

人事パッケージシステム選定の比較・検討ポイントとは?導入の手順から徹底解説


販売管理・調達管理・在庫管理システム等とは異なり、人事給与システムはいわゆる既製品の「パッケージシステム」を導入する企業が増加しています。その場合、オーダーメイドのシステム構築ではないため、事前に様々な観点からパッケージ選定におけるチェックを行う必要があります。パッケージを比較検討する際は、自社の業務にあった個別機能を開発するのではなく、自社の業務を網羅できる機能を備えているか細かく検証する必要があります。また、現行業務を担保するのみならず、将来的に業務改善・効率化が実現でき、結果としてシステム投資の投資対効果が算出できている方が望ましいです。

 

目次

パッケージ選定に潜む3つの落とし穴

業務の洗い出し不足を避けるためには?

業務の見直し不足を避けるためには?

導入効果の評価不足を避けるためには?

人事システムを選ぶ際に比較するべきポイント

3つの不足を防ぎ、正しい観点で比較するための理想的なパッケージ選定の手順

 

パッケージ選定に潜む3つの落とし穴


要件の決定、提案依頼の作成、予算取得、ベンダーとの交渉といったように、パッケージ選定には数々のプロセスがありますが、同時に多くの「落とし穴」が潜んでいます。

たとえば現状調査が不足しており、関係各所の業務が全て洗い出せていないかもしれません。現行業務の洗い出しが不足すると、新しいパッケージシステムを導入しても、機能不足といった事象に陥る可能性があります。 または、円滑にシステム導入が完了したにも関わらず、社内でシステム投資に対する期待効果が十分に共有されていなかったために、実際にはシステム導入が「成功した」と認知が得られなかったケースもあります。 

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こういったパッケージ導入の失敗事例の多くは、以下の3つの「不足」に集約することができます。

  • ・業務の洗い出し不足
  • ・業務の見直し不足
  • ・導入効果の評価不足
     

こういった「不足」は、どのように防ぐことができるのでしょうか。

 

業務の洗い出し不足を避けるためには?


パッケージにどのような機能を求めるかを知るために、現行業務の洗い出しを網羅的に行います。 

業務の棚卸しができていなかったがために、従来のシステムでは運用できていた業務が新しいシステムではできなくなったり、非効率的な業務になってしまったりするケースが往々にして存在します。 長年自社開発をしてきた場合や、パッケージに対して多数の追加開発を施している場合は、現行システムの機能の全体像を正しく把握していない場合もあるかもしれません。

 
今システム化できていることを新しいパッケージを導入しても継続できるように、現行業務や機能の洗い出しを正しく行う必要があります。
 

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業務の洗い出し不足には、大きく「広さ」と「深さ」の2つのパターンがあります。 
 

「広さ」の不足 

特定の業務領域に関する要件が丸ごと抜けてしまうケースがあります。 この問題は、各担当者がただ社内の業務を羅列することで業務を洗い出したことに起因します。 「広さ」の不足を防ぐためには、部署・担当ごとの業務体系を作成し、大枠となる業務の分類を決めておくことで、取りまとめの際の重大な漏れを防ぐことができます。 

例えば給与計算を考えてみましょう。 一般社員についての給与計算の業務フローについてはきちんと業務の棚卸しができたとしても、例えば一部社員にのみ海外給与計算が必要で、その業務は実は担当者が手計算で行っていたといった場合には、そちらももれなく記載する必要があります。しかし、この担当者は「今システム化できていることだけを記載すればいい」という認識違いを起こしているかもしれません。 こういった事態を防ぐために、大枠となる業務の分類をあらかじめ決めておくことは、非常に重要なのです。
 

「深さ」の不足 

大枠となる業務の分類を決めていたとしても、どこまで細かく業務を洗い出せるかどうかも重要な観点です。 

毎月必ず実施している業務であれば、業務棚卸しの際に漏れる可能性は低いかもしれません。 しかし、イレギュラー的に発生する業務で、実は非常に負荷がかかってる業務であれば、どうでしょうか。 

こちらも給与計算を例に考えてみます。 A「海外社員の給与計算を実施する」 B「海外社員の赴任地に応じた購買力指数や物価指数等を考慮して、給与計算を行う」 AとBとでは、その業務の粒度や深さが全く異なります。どちらの書き方が、導入時の失敗を防ぐことができるでしょうか。 

こういった「広さ」や「深さ」の不足リスクを意識しつつ、業務の洗い出しを行うことができなければ、本来効率化・自動化できた業務を効率化・自動化する機会を失うこととなります。 

なお、こういった事態を防ぐために、一般的なテンプレートを利用するのも一つの手段です。 弊社でも、一般的な大手企業の業務一覧に関するテンプレートを保有しています。
 

 

業務の見直し不足を避けるためには?

では、現行業務や現行システムの機能を全て網羅できていれば、それでよいのでしょうか。 

新しいシステムを導入するには費用がかかります。そのため、その投資に値するだけのシステム導入の価値を証明する必要があります。 そのために、現行業務の課題のうち、新システムで一定の効果を見込む必要があります。

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業務の見直し方法には、大きく2つの方法があります。 
 

業務を無くす 

一つは、その業務をなくすという方法です。 企業規模が大きければ大きいほどに、無くすことのできる業務というのは多く存在します。たとえば、誰が見ているのか分からない帳票作成や、どういった場面で使われているのか分からないデータ入力等の「無駄かもしれない業務」が貴社にもあるかもしれません。 システム入替えは、業務をなくす絶好のチャンスです。 
 

業務のやり方を変える 

もうひとつは、その業務のやり方を変えるという方法です。 たとえば、ペーパーレス化。今までは従業員に紙に記入して提出してもらっていた各種申請書をWeb化し、管理部門での入力業務を減らすことで、社内全体で削減できる工数は非常に大きなものがあります。 しかしながら、このような業務改善は、運用変更の社内コンセンサスを取りながら、新しい業務手順を丁寧に周知しなければ成功しません。成功のためにも他社の成功事例を参考にしましょう。

 

導入効果の評価不足を避けるためには?

現在の経営者は、数々のIT投資に関する失敗を体験・伝聞してきた世代です。その結果として、企業はより安心・安定したシステム導入を期待し、また、より正確な効果測定を要求しています。 営業管理・販売管理システムや生産システムといったフロント系のシステムと比べ、人事システムは低コストで運用できるということが非常に強く要求されます。

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とはいえ、複雑多岐にわたる業務処理が存在する大手企業においては、バックオフィス系のシステムも中小企業のシステムと比較して、高機能・高額にならざるを得ません。 そのため、投資対効果に関する適切な指標がなければ、「バックオフィスのシステムであるのに高額すぎるのではないか」といった経営者の不満を招くこととなります。 


 このような経営者の不満を招かないためにも、新システムを導入する前に、投資に対する説明責任を果たすための適切なKPIを設定しておきましょう。 このKPIは、その企業のシステム状況に応じて設定する必要があります。 自社開発システムの場合は、現在かかっている維持費を可視化するのも一手です。業務を棚卸しした結果に対して、現状どれだけ工数がかかっているのかを明確化し、新システムを導入することでどれだけの工数削減が見込めるかを算出しておくことも有効かもしれません。
 

 

人事システムを選ぶ際に比較するべきポイント

システムを選ぶ前に自社の中で気を付けるべきこととして3点お伝えしましたが、実際にシステムを比較する際にはどこに焦点を置いて比較をすればよいのか。各社で重視する点が異なるとは思いますが、大企業の人事部やこれからの時代に必要かつ重要となってくる部分について見ていきます。
 

①変化に対応しやすいかどうか

2020年は在宅勤務/テレワークが一気に普及し、非常に変化の激しい時代でした。しかし、そこに対してシステムが追いつかないといった悩みを抱える企業も出てきています。変化のスピードは年々速くなっているため、それらに対して人だけではなくシステムも追いつく必要があります。そうすると今後比較・選定していく人事システムには、変化に対応しやすい、柔軟なものであるという特徴が必要になってきます。
たとえばグループ会社を持っており、将来グループ会社全体でひとつの人事システムを使いたいとなる可能性がある場合は、制度の変更等の様々な変化が生じます。また、2020年はジョブ型雇用がトレンドキーワードに上がる中で、多くの企業がその移行に向けて人事制度や評価制度の変更を検討したことと思います。こういった将来的な変化、トレンドへの追随にそのシステムは対応ができるのか。これも新しく人事システムを選ぶ際に比較検討するべきポイントです。

 

②コストが膨れ上がらないか

最初に提示された価格だけで比較することはおすすめしません。①で変化に対応しやすいかどうか、について触れましたが、変化に対応ができてもその都度費用がかかるようでは、必ず対応できるとは言い難いものです。また、変化の多い世の中で都度システムの変更に対して費用がかかると、最初は価格が安かったのに気が付くとシステム費が高くなっていた、ということが起きかねません。そうならないために、変化や変更に対してコストがかからず対応ができるシステムを選ぶことも比較ポイントとして重要です。

 

③他のシステムと連携しやすいかどうか

現在様々なSaaSが存在しています。新時代においてはますますクラウド化が進み、今後も多くの部分的な業務に特化したSaaSが展開されることが予想されます。そうした各部分に特化したソフトウェアをうまく活用するためにも、それらの情報のハブとなるデータベースが統合管理されているシステムが必要となります。連携のしやすさを考える場合、インターフェースやAPI連携等のつなぎの部分だけでなく、多様な種類の情報を管理できる統合データベースを持っているか否かも比較すべきポイントとして重要です。
 

3つの不足を防ぎ、正しい観点で比較するための理想的なパッケージ選定の手順

上記をまとめると、以下のようなプロセスを経ることが望ましいと言えます。

  • ・現状調査…現行業務や課題の洗い出しを行う。なお洗い出された業務・課題の体系化・分類化と、各業務にかかる概算工数が算出できている状態が望ましい。

  • ・要件策定…新しい業務の流れを決定し、新システムに求める機能要件の一覧を作成する。

  • ・予算取得…新システムに求める期待効果を明確にしたうえで、必要な予算を上申する。どれだけのコスト削減ができるのか、といった定量的な期待効果のみならず、定性的な効果も明確にできていることが望ましい。

  • ・提案依頼/選定…提案依頼書を作成する。また、機能以外でシステムに求めること(インフラの運用面等も委託したいのか等)を書きだし、各ベンダーの選定を行う。
     

  • そして各ベンダーの選定の際には①変化に対応しやすいかどうか、②コストが膨れ上がらないか、③他のシステムと連携しやすいかどうか、を確認する。

    システムの比較・選定に失敗しないために、ぜひ上記の手順を踏んでみてください。

 


本記事は、2018年8月1日にワークスアプリケーションズのHPへ掲載された内容を一部編集し、転載したものです。

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