年末調整電子化はもうすぐそこ。電子化によるメリットと対応に必要な準備とは?

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最終更新日 2023年10月26日

年末調整電子化はもうすぐそこ。電子化によるメリットと対応に必要な準備とは?

ビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変化する昨今、人事部門にとって年に一度の大イベントである「年末調整」にも大きな変化が訪れようとしています。年末調整以外の各種申告/申請の電子化が義務化される中、年末調整の電子化にはどのようなメリットがあるのか、デメリットはないのか。各社の対応状況や電子化に向けて必要な準備等をご紹介していきます。

 

目次


企業の年末調整電子化の対応状況
年末調整は何が大変?
電子化される領域とそのメリット
電子提出の仕組み
マイナンバー/マイナポータルを利用した証明書の取得とは
電子提出対応に必要な準備
<併せて読みたい> 大手企業における「年末調整電子化」の対応状況
 

企業の年末調整電子化の対応状況

 

年末調整業務には、申告書の配布、回収、内容チェック、計算、申告書の保管、各種提出書類の作成といくつもの業務工程があり、人事部にとっては非常にボリュームの大きい業務です。

そのため、比較的システム化の進んでいる領域でもあります。主な申告書のうち、住宅借入金特別控除申告書以外の申告書は所定の手続を経ることで電子提出・保管が可能です。ゆえに、紙の申告書の提出ではなく電子申告とし、申告内容に基づきシステムで自動で年末調整計算を行う企業が増えています。
 

[参考]2019年度年末調整時までの電子化可能範囲
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[参考]弊社ユーザー様における年末調整電子化度合い(※)
(2020年1月30日(木)~3月31日(火)、254社306名に実施したアンケートより)
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※年末調整の対象者のうち、申告用紙の配布・回収を行わず、システム等によって電子的に申告を行っている従業員数の割合を指します。

年末調整は何が大変?


しかしながら、住宅借入金等特別控除申告書、生損保の保険料控除証明書・残高証明書の提出・保管がこれまで電子化されていなかったことにより、以下のようなお悩み/デメリットが発生していました。

・申告者本人や担当者が、申告書や申告システムへ証明書の内容を転記する必要がある
・証明書のフォーマットが統一されておらず、保険会社等により異なる

フォーマットがばらばらの証明書が紙で届くために、申告内容と証明書の内容との突き合わせのチェックに大幅な工数がとられてしまいます。企業によっては、特に申告内容が多岐にわたる住宅については業務歴の長い一部の担当者のみにチェック業務が集中しているという場合や、年末調整の担当以外のメンバーにも応援を頼み、人事部総出で確認を行わなければならないというデメリットを抱える場合もありました。
このように、紙の証明書が残っているがゆえに年末調整業務の効率化は頭打ち状態でした。そこで、控除証明書等の電子提出導入が、この問題の解決の大きな一手となります。

 

電子化される領域とそのメリット

 

2020年度の年末調整からは、生損保の保険料控除証明書及び残高証明書の電子提出が可能となります。また併せて、従来電子提出・保管が不可であった住宅借入金等特別控除申告書についても電子提出・保管が可能になります。

[参考]2020年度年末調整時からの電子化可能範囲
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このメリットは、証明書内容の転記が不要になるため申告者の申告負荷が軽減するという点です。また証明書原本の提出がそのまま申告となるため申告ミスが発生することなく、担当者による確認も不要になります。更には証明書を印刷・郵送している各種保険会社・銀行の業務負荷や、企業の担当者・申告者から問い合わせを受ける税務署の負荷の軽減も見込まれる等、様々な領域でのメリットが期待されています。電子化によるデメリットはありませんが、後述のように電子化に対応するために各企業・申告者個人に準備が求められること、2020年度の年末調整時点では、控除証明書の電子提出「導入」であり「義務化」ではないため、紙による証明書も併存する点は注意が必要です。
 

 

電子提出の仕組み

 

電子化された証明書は、契約中の保険会社・銀行等のマイページやマイナポータルからXMLファイルでの取得が可能になります。
 

[参考]証明書の受取方法の変化
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マイナンバー/マイナポータルを利用した証明書の取得とは

 

マイナポータルとは政府が運営するオンラインサービスです。マイナンバーを利用することで、子育てや介護をはじめとする行政手続がマイナポータルからワンストップでできたり、行政機関からのお知らせを確認することが可能になります。
マイナポータルから控除証明書を取得する場合、「民間送達サービス」を経由します。民間送達サービスとは、マイナポータルと連携し、行政機関や民間企業等からのお知らせ等を受け取るためのサービスのことです。日本郵便株式会社が提供する「MyPost」と株式会社野村総合研究所が提供する「e-私書箱」があり、控除証明書の取得には「e-私書箱」を利用します。
 

電子提出対応に必要な準備

 

証明書の電子提出に対応するために、そもそも申告書を紙で回収している場合はシステム化が求められます(1st Step)。既にシステム化ができている場合には、控除証明書の電子提出への対応を進めます(2nd Step)。

 1st Step 申告書の電子化の準備


・申告を電子化するためのシステムの導入
・申告書を電子提出を行うための手続(所定の書類を所轄税務署へ提出)
 

 2nd Step 証明書の電子化への対応の準備


<申告者(従業員)に必要な準備>
 ・保険会社・銀行への電子による証明書の発行依頼
 (マイナポータルを利用する場合)
  ・マイナンバーカードの取得
  ・マイナポータルへの初回アクセス
  ・e-私書箱の開設手続

<担当者(人事部)で必要な準備>
 ・電子申告ができる環境の整備
  …業務用の個人PCがない従業員がいる場合は、PCの貸し出し、
   スマートフォンや私用のPCからの申告を可能にする等の対応が必要です。
 ・従業員へのアナウンス
  …証明書の電子提出が可能になった旨のアナウンス、
   保険会社・銀行への電子による証明書の発行依頼やマイナンバーカードの取得、
   マイナポータルへのアクセス、e-私書箱の開設手続についてのアナウンスが必要です。
 ・マニュアル作成
  …電子による証明書の受取・提出方法についてのマニュアル作成が必要です。
 (マイナポータルを利用する場合)
 ・ICカードリーダーの手配
  …従業員がマイナポータルへアクセスするには、要件を満たしたスマートフォンもしくは
   ICカードリーダーを利用するため、現在ICカードリーダーを利用していない場合は
   手配と動作確認を行う必要があります。

年末調整の準備は9月頃から始める企業も多いですが、今年度に限っては、早めの準備をおすすめします。

<併せて読みたい> 大手企業における「年末調整電子化」の対応状況

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